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項目 内容
ID J3001013
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1854/12/23
和暦 嘉永七年十一月四日
綱文 安政元年十一月四日・五日・七日(一八五四・一二・二三、二四、二六)〔関東~九州〕
書名 〔下の加江に於ける安政元年寅の大変について〕橋本登著「土佐史談」百二十号S43・7・31 土佐史談会発行
本文
[未校訂]一、序(略)
二、大西家文書
 私は、本稿執筆にあたり、資料蒐輯をやっていた。豈
図や父の青柳文庫を渉猟中、次に掲載する古文書を発見
した。文書は、昭和四十一年十二月大西正之氏宅(棟木
の継目に天明天保?大工下田村某とあったという)を取
り殷しの際、拙父若松がフスマの下張より発見し、保管
していたものである。
 この文筆は藩の家老福岡家の知行庄屋を務めていた組
頭(大西)栄五郎が書いたものらしい。
嘉永七年寅十一月五日昼七ツ時ふと大地震(破損)家蔵
共大ニ潰家ニ相成候内無間茂大潮入来る候事誠思茂よら
ぬ大変ニ相成然ニ人家浦分在家蔵共壱軒茂不残流家ニ相

相残候家は光明寺ト浦庄屋沖友右衛門
此弐軒大工勇平ト申者吉兵衛売人是平
駕間屋半潰成而相残候さり又間へ只七ト申者家半潰家ニ
相成候事相残候事其余一軒茂不残流失いたし候事同分茂
寺の下久ニ百姓惣兵衛ト申者初め不残流失浦分ぶたい茂
地震ニこわれ其ノ上之脇ニ安光命三ト申医師并ニ百姓源
七悦右衛門―ト申者有之候処残ふ流家相成候事(破)船
場安平常平貞次流家コンヤ銀八百姓市平半潰家小方而流
家数間組頭弥之助百姓
(破損)大庄屋百姓米蔵ト市
(以下破損してなし)
駕間屋(竃屋)
三、口碑
 大西家文書を、私と父と隣の田村与吉氏と解読中、仙
石悌次翁(明治十八年生)が遊びにやって来て、この大
変の事は長野の細木安太(災変当時二十二才)同弟寅吉
 (同十一才)両人より、ブエン(新鮮)の話を聞いた。
と言って話して呉れたので列挙してみよう。
一、小方、番所溝淵嘉三郎(同利吉祖)、大西栄五郎(同
正之祖先)の間にある小路まで潮境。
一、小方、池田亀平宅(現在田村福松氏が住んでいる)
まで潮境。
一、小方、田村孫平宅(現田村太郎氏創建田村神社しも
ての畑)のイモ壷に下茅浦の老女の死体が入っていたの
をカギでひっかけてあげたという。その後亡霊が祟って
田村家は栄えなくなったという。
 田村孫右衛門―孫平―長五郎―寿之助―宇之助―伝吉
一、長野々路の細木益平宅(同茂祖先)の下まで波涛が
押し寄せた。
一、[塩屋|しわん]谷の紺屋(田村貫一祖先)に千石船が当り家は
倒壊、あまつさえ流失。水汲みカギが、唯一つ残ったと
伝う。大変後当家は船場の御倉ん谷の高台に移住。
一、小方、組頭永井弥之助が地倉跡(現在楠目孝一宅し
もて)に新築中の家屋が、其侭流されて五味天満宮の社
頭、州賀崎の田の中に坐していた。
一、長野の木谷の永野栄次(同昭輔氏祖)の庭先まで波
が来たり。
一、最も奥は新堰まで津波入り来るという。

 中浜村、池道之助清澄が著した「嘉永七寅年地震津浪
記」の下の加江関係は斯の如し。「下の茅浦汐大入流家有、
ゑごの田へ廻船市艇干あがり候、ごみの家の田に市艇あ
かる。下茅の浜分不残家流失」とある。
又、下茅村の古記録に
下茅損田高五百高流失、家屋三十二戸潰家怪我人三十
一人あり死者なし(?)
釣掛村損田高一町流失、家屋七戸死者なし。と録して
いる。
四、復興
数年前田村与吉氏が、永野昭輔氏より拝借して読んだ。
永野栄次筆「津浪記」には詳細に書いていたというが、
本書は現在散逸している。同氏の記憶に依ると、復興の
世話人として如左の人物あり。
田村源次郎
田村和次郎
小方村嘉三郎
五味村常次

 猶、この大津波を記念して、五味天満宮にいしぶみが
建っている。此の碑は元伊豆田坂にあったものであるが、
昭和三十一年一月トンネル工事の為、楠目銀次郎、清岡
光両氏が還暦記念に当境内に運搬したものである。
頃は嘉永七年寅十月より潮くるひ十一月四日すつなみ
来り五日大地震間なく火潮入来る向々くるひし時大変
とこころえ用心すべし
 碑文は按ずる所、市野瀬の真念庵の僧侶の筆なりと推
察する。
五、結語
 駆使してきた資料を照合してみると、符合するところ
随所にみられるので、大西文書等は貴重な史料であると
思う。
 又、此の海嘯で農作物に被害を蒙った百姓、船を失っ
た漁師、おまけに夜露を凌ぐ家まで奪れた人々の苦難を
抱えて年を越した事は推して察すべし。
藩は徳川幕府に次の被害報告をしている。
潰家 二九三九軒
半潰 八八八八軒
焼失 二四六〇軒
流失 三一八二軒
死者 三七二人
その他にも克明に記載されているそうである。
(土佐史談会々員)
出典 日本の歴史地震史料 拾遺 四ノ上
ページ 1117
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 高知
市区町村 上ノ加江【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

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