地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（表紙）
「 安政二乙卯年
御用向留記
正月大辰綴之 」
（前略）
以廻文得御意候、然は一昨夜大地震ニ付怪我人・潰家并玉川筋村々之義は川縁損候場所有之候哉、取調有無共早々可申出旨 御役宅ゟ被仰付候ニ付則御達申上候間、今四日七ツ時まてニ無不参御申出可被成候、早々御順達留りより御返し可被成候、以上
上町
卯十月四日 宗 八印
（中略）
以書付御達申候、然ハ此度大地震ニ付御屋敷大損シニ相成、忽外囲并御家中衆并住居難相成ケ所御手当方ニ御入用板類売上、当地之向公辺御入用之様ニ相聞候得共、忽御差支ニ相成候間、世田谷御領分内ニ有之杉六分、板ハ勿論其余松杉之板は一切他江指遣し候義ハ御差留、其内右杉松六分板一刻も早ク御屋敷江差送り候様御取計可有之、右ハ売上ニ相成候儀有之、跡之処ハ如何様共御取計ニ可相成候間、持掛之処御不都合無之間、早々御取計御取計御指廻し可有之候、此段御達し度如斯御座候、以上
十月四日 山中宗十郎
急御用
大場隼之助殿
同 家四郎殿
（中略）
覚
一、壱人
右は、地震ニ付取片付御用ニ付御作事方江相詰可申、尤状廻り次第早々差出し可申候、無滞順達留ゟ可返候、以上
卯十月五日 御代官所印
（中略）
写 御目付江
去二日地震ニ付、翌朝為 御尋御使者鳥居権之助様・小浜熊之助様御出 御懇之被為蒙
上意恐悦之御事ニ候、
件之趣、諸御屋敷御家中衆江被相違候
十月五日
右之趣相触可申旨清左衛門殿御申渡ニ付相違候、被得其意各名ニ墨点可被成候、尤組下・支配下有之衆中ハ夫々御申渡可被成候、以上
十月五日 御目付中
一、御触書 三通
但、梵鐘大炮・小銃ニ可鋳換候事
六孫王九百年忌之事
地震ニ付御使番御出恐悦之事
右相廻り候間、得其意無滞早々順廻留ゟ可返候、以上
卯十月十日 御代官所印
（中略）
地震ニ付、先日ゟ御作事方江相詰候人足代合之節、何村幾人と致名主ゟ印付書付を以御賄方江相届可申、左候得は支度可被下旨申来候間、其旨相心得取計可申候、無滞早々順達留ゟ直ニ可返候、以上
卯十月十六日 御代官所印
上野毛村
国五郎
一、詰人足代り合弐人 兼二郎
右村
名主
卯十月十七日 七左衛門印
（中略）
写
（中略）
大目付江
此度江戸表地震出火ニ付、材木其外之諸色商人共ゟ在方江注文申遣候は、元直段成丈下直ニ売出運賃等決而引上ケ申間敷候、若無謂高直ニ致候もの於有之は可為曲事もの也、右之趣御料所ハ御代官、私領は領主・地頭ゟ不洩様可相触候、右之趣可被相触候
十月
御目付江
一、公儀御触書写 弐通
右遣之候間、諸御屋敷御家中衆江可被相触候、尤組下・支配下有之面々ハ其頭々ゟ被申渡候様、各ゟ相達可被申候
十月
右之通、御触面之趣不洩様夫々急度可申渡候、無滞早々順達留ゟ可返候、以上
卯十月廿一日 御代官所印
（中略）
写
大目付江
此度地震ニ付御府内潰家・類焼等多有之候ニ付而ハ、万石以上之面々を始精々手軽ニ普請可致旨被仰出候、右ニ付而は、在方宿村は猶更之義ニ付、潰家等ニ而無拠家作致候とも弥以手軽可致候、若相背におゐてハ咎可申付候、右之趣御料ハ御代官、私領ハ領主・地頭ゟ急度可申付候
右之通り関八州ニ領分・知行有之面々江可被相触候
十一月
以書付御達し申候
一、公儀御触書写 壱通
但、此度地震ニ付家作等手軽ニ可致事
右相廻し候、例之通り御取計可有之候
一、各方弥御堅固御勤珍重存候、以上
十一月廿三日 田中喜兵衛
世田谷
御代官衆
（中略）
大目付江
近頃兎角浮説を立見越之事抔相唱、中ニは不容易儀抔も有之哉ニ而以之外之事ニ候、此度地震ニ付而ハ猶更其虚ニ乗し種々之義申ふらし候ものも不少、依而ハ各衆人疑惑を生し、金銀取引迄江も差響不融通之由、於 公義御救助筋等厚御配慮も被為在折柄、別而正実ニ可心懸処、却而人心を誑惑為致候始末は重々不埒之至ニ候、以後右様之義聞ゆるニおゐてハ、糺之上厳重之沙汰ニ可及条、聊心得違無之様可致候、右之趣町奉行江相達し候間、為心得向々江最寄江可被相達候
十一月
（下略）
註：本史料は、武蔵国荏原郡上野毛村（東京都世田谷区）の名主田中家文書の「御用留」である。