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項目 内容
ID J2400384
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1662/06/16
和暦 寛文二年五月一日
綱文 寛文二年五月一日(一六六二・六・一六)〔若狭・美濃・畿内〕
書名 〔マキノ町誌〕マキノ町誌編さん委員会S62・1・30 マキノ町
本文
[未校訂] 16番の寛文二年(江戸時代)の地震は、大溝地震とも、
また勝野地震あるいは寛文の大地震、寅の大地震ともい
われるもので、当町に一番大きな影響を与えた地震と思
われる。五月一日、朝よりどんよりと曇っていたが午の
刻、大地震があり、地われ家倒れ、湖西と京都に大きな
損害を与えた。余震も一〇〇回以上と伝えている(『続
史愚抄』)。郡内では山崩れによって安曇川がせき止めら
れ、朽木で水没が起きたと伝えている。当町域でも大被
害を受け、家屋の倒壊、山崩れ、湖岸線の変化などがあ
り死者数十人、知内川の流れも変わり、過半数の家が全
半壊したと伝えている(近世編第五章第四節で詳説)。
寛文の大地震江戸時代初期の寛文二年五月一日午の刻
(午前一一時)に発生した大地震で、記録
上では高島郡で最も激しく被害の多かった地震であろう。
震源地は高島町上音羽付近で(一説では北小松沖二キロ
メートル)、局地的ではあったが、当町は震源地にも近
く、「勝野の大地震」とか「[寅|とら]の地震」と呼ばれて大き
な爪跡を残した。勝野とは高島町大字勝野のことであり、
寅とはこの年が寅[歳|どし]であったためである。マグニチュー
ド七・六ぐらいと推定され、震度は七の激震である。余
震も一〇〇回に及んだと伝え(『続史愚抄』)、湖西から
京都にかけて大被害を受けている。『高島旧記』は、「今
津ハ三分ノ一崩レ、梅津ハ過半崩レル。[佐和|さわ]村(沢村)
ヨリ北西ヘハ六ケ村(六集落)二七間(軒)残ル外、[悉|ことこと]
ク崩レタリ。人モ七人死ス……(以下略)」と述べてお
り、当町全域で壊滅的な被害を被ったもののようである。
「石橋・石鳥居ハ悉ク皆崩レ」と伝え、余震も直後は一
日数十回に及んだ。町域での死者数などについては正確
な記録はないので、梅津願慶寺の過去帳の記録から推察
してみよう。
 表では六月・七月の死者数が異常に多くなっている。
五月一日の地震発生に対し、六月・七月に死者が多いと
いうことは、重傷者が多かったか、被災による悪病の発
生を物語るものであろう。五~七月の平均が一二人余で
あり、他の九か月平均が三人足らずなので、地震に関係
して死亡者数が四倍になったと推測できる。願慶寺だけ
でこれぐらいであるので、町域での犠牲者はかなりの数
に上ると思われる。直接の圧死は案外少なく、負傷者が
多かったことも考えられる。
願慶寺寛文2年
檀徒死亡数
 またこの激しい揺れのため、各所でがけ崩れや隆起・
[陥没|かんぼつ]が起こったらしい。このことは、約四〇年後出され
た『川役御赦免願』(『上開田区有文書』)でよくわかる。
中庄村からは「四拾壱年前、寅地震ヨリ湖水道切リ埋レ、
其ノ上年々波打上ゲ高浜ニ罷リ成リ」と述べているし、
上開田村は「山崩レ、年々石砂押シ流シ川高クナリ」と
述べ知内村・西浜村ともに寅地震からの異常により、魚
が溯上できなくなったので、川魚にかかる税を免じてほ
しいと述べている。
 震源地の高島町付近の大被害はもちろんのこと、朽木
地区では山崩れがあり、安曇川がせき止められ大災害に
なっている。『高島旧記』には「朽木ハ無残ニシテ、大
川ノ上リニハ朽木村待居村両所ニ他行ノ者、四二人坊主
一人残リ、其ノ外老若男女、崩レ山ニ埋レテ死ス。他所
ノ買人往来ノ牛馬死スル事、数ヲ知ラズ。……二百間、
二(ママ)千百八十間海トナル」と述べているし、『明王院文書』
の記述では「榎村東ノ大峯、十三町程上ヨリ二ツニ破レ
テ、榎・町居両村悉ク打埋レ、即チ大川ヲ関留メ……坊
村ノ在家等、残ラズ流レニ浮キテオワンヌ……」と出て
いる。
 また、福井県三方五湖付近の変動も著しく、隆起のた
め三方五湖の排水路を失い、湖畔の諸村は水没したので、
余震の続く中で排水路をつくる突貫工事を始め、約一年
後に完成している。三方断層と比良断層は南北に一直線
状に連なっており、この付近での隆起や陥没がひどかっ
たのであろう。
出典 新収日本地震史料 続補遺
ページ 83
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 滋賀
市区町村 マキノ【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

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