地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（注、他出するものは省略）
一七七七 弘化四年四月 水内郡梅木村地震変死人別書上帳
（表紙）「 弘化四未年
地震寄（揺）潰変死人別御書上帳
四月
海木村下組 」
乍恐以書付奉願上候
一変死人 当村喜太右衛門
当未五十七才但し天井下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 磯右衛門女房たそ
当未三十五才一同 同人養女まん
当未十一才右弐人天井下ニ罷成、但し疵無御座候、相果申候
一同 金左衛門
当未六十二才同人女子みき
当未二十四才右弐人壁下ニ罷成、但し疵無御座候、相果申候
一同 庄左衛門女子みね
当未十五才一同 同人弟常八
当未三十九才右弐人中引者（物カ）之下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 銀左衛門
当未六十八才但し析乗下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 彦右衛門
当未六十二才一同 同人女房まつ
当未四十四才右弐人柱下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 嘉左衛門
当未七十八才一同 同人子喜祖八
当未三十九才右弐人、但し壁下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 源五郎孫あこ
当未四才但し柱下ニ罷成、疵無御座候、相果申候
一同 甚太夫孫よ志
当未六つ一同 同人孫当年生男 半助
当未壱才右弐人壁下ニ罷成、但し疵無御座候、相果申候
一同 浅五郎
当未七十三才右は善光寺参り西之門十三屋ニ泊り居、焼果申候、畠間村
方江引取申候
一同 勝右衛門弟福之丞
当未二十八才右は念仏寺村臥雲院江畳刺ニ罷越居、焼果申候、畠間村方
江引取申候
一同 大工栄蔵
当未三十八才右は笹平村与吉処江細工参り居、同村栄左衛門宅江休居、
天井下ニ罷成相果申候、死骸村方江引取申候
一同 長蔵子杣銀蔵
当未二十二才右は伊折村罷越、山抜入相果申候、死村（骸脱）方江引取申候
一同 忠之助
当未六十五才右は善光寺参り西之門十三屋ニ居、震潰ニ而帳家仕候処、
岩田村義左衛門処帰り疵無御座候、相果申候、尤忠之助子
は相立元吉同所ニ壱季奉公仕罷在候付、同人附添看病致死
骸村方引取申候
右は当二十四日夜大地震ニ而銘々居家寄潰候節、逃出兼右書
面之通柱・天井・壁之下ニ罷成相果候ニ付、其段先達而御届
申上置、帰村之上銘々親類組合・私共一同立会相改候処、書
面之通相違無御座全不慮之災難ニ而相果候上は、余人江対し
聊申分・御願筋無御座、自然相違之儀申上候ハゝ、連印之者
共何分之曲事ニ茂可被 仰付候、此度之義は格別之御委（意）を以
死骸取置被 仰付被成下置候様奉願候、幾重ニ茂 御憐愍之
程奉願候 以上
梅木村下組
変死喜太衛門（親類脱）佐次兵衛
組合亀右衛門
磯右衛門女房変死たそ同人養女まん親類安左衛門
組合勝右衛門
変死金左衛門同人子みき親類専左衛門
組合兼吉
圧左衛門弟変死常八・庄左衛門女子変死みね親類長蔵
組合六左衛門
変死銀左衛門親類平五郎
組合弥八
変死彦右衛門同人女房まつ親類磯右衛門
組合安左衛門
変死嘉左衛門同人子喜祖八親類大治
組合泰助
勝右衛門弟変死福之丞親類磯右衛門
組合安左衛門
変死栄蔵親類勝右衛門
組合儀右衛門
変死忠之助親類泰助
組合大治
郡御奉行所
長蔵子変死銀蔵親類庄左衛門
組合六左衛門
変死浅五郎親類安左衛門
組合磯右衛門
喜太夫孫変死よ志儀助親類喜代三郎
組合市郎治
源五郎孫変死あこ親類弥祖八
組合庄五郎
頭立惣代泰助
名主与五左衛門
組頭勝右衛門
同断栄之助
長百姓磯右衛門
（上水内郡中条村梅木 第七区共有）
一七七八 弘化四年四月 水内郡竹生村居宅等倒潰人別書上帳
（表紙）「 弘化四未年 竹生村
大地震之節居宅揺潰人別御訴調帳
四 月 名主新右衛門 」
竹生村
居宅潰人別
一居宅 壱軒
房右衛門○
（以下○印省略）但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石三斗九升壱合
〆
一居宅 壱軒 原九郎
但長九間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石四斗六升八合
〆
一居宅 壱軒 惣吉
但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高三石壱斗七升四合
〆
一居宅 壱軒 伝左衛門
但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高六石壱斗八升四合
〆
一居宅 壱軒 久蔵
但長七間半横四間半
一灰屋 壱ッ
一高三石九升壱合余
〆
一居宅 壱軒 久五郎
但長八間横四間半
一灰屋 壱ッ
一高弐石四斗壱升弐合
〆
一居宅 壱軒 要左衛門
但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高三石七斗三合
〆
一居宅 壱軒 清右衛門
但長七間半横四間
一灰屋 壱ッ
一高壱石三斗九升五合余
〆
一居宅 壱軒 弥右衛門
但長七間半横四間半
一灰屋 壱ッ
一高壱石弐斗八升弐合
〆
一居宅 壱軒 島五郎
但長七間横四間
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石九斗四合五夕
〆
一居宅 壱軒 久左衛門
但長八間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高三石八合五夕
〆
一居宅 壱軒 吉郎兵衛
但長八間半横四間半
一灰屋 壱ッ
一高弐石三斗壱升五合七夕
〆
一居宅 壱軒 藤左衛門
但長八間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高四石五升八合弐夕
〆
一居宅 壱軒 宇作
但長七間横四間
一灰屋 壱ッ
一高五升三合
〆
一居宅 壱軒 縫作
但長七間半横四間半
一灰屋 壱ッ
一高壱石四升五夕
〆
一居宅 壱軒 喜作
但長七間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石三斗七升四合余
〆
一居宅 壱軒 弥太郎
但長八間横四間半
一灰屋 壱ッ
一高弐石三升五合三夕
〆
一居宅 壱軒 吉右衛門
但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高壱石弐斗七升六合余
〆
一居宅 壱軒 熊左衛門
但長六間横五間
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高三石九升六合余
〆
蕗畑組 人〆拾九軒 此人別住居見定無之候者御座候
一居宅 壱軒 △大日方源吾殿
但長拾壱間横七間壱尺
物置 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石八斗八升
〆
一居宅 壱軒 五郎右衛門
但長八間半横四間弐尺
一土蔵 壱ヶ所
一物置 壱ッ
一長屋・灰屋共 壱ッ
一高五斗四合余
〆
一居宅 壱軒 △義右衛門
但長五間半横四間弐尺
一土蔵 弐ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高壱石三斗六升弐合
〆
一居宅 壱軒 △猶右衛門
但長九間半横六間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高七石七斗三升九合
〆
一居宅 壱軒 △忠助
但長六間半横四間弐尺
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高弐石四斗三升壱合
〆
一居宅 壱 軒 初右衛門
但長六間横三間
一灰屋 壱ッ
一高壱斗六升五合
〆
一居宅 壱 軒 浜吉
但長六間横三間
一灰屋 壱ッ
一高八斗弐升五夕
〆
一居宅 壱軒 留吉
但長五間横四間
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高壱石九斗五升壱合
〆
一居宅 壱軒 △専之助
但長七間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高四石壱升三合
〆
一居宅 壱軒 △庄吉
但長四間半横四間
一灰屋 壱ッ
一高八升壱合
〆
一居宅 壱軒 △弥左衛門
但長六間半横四間
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高壱石三斗六升弐合
〆
一居宅 壱軒 宗竹
但長四間半横四間壱尺
一灰屋 壱ッ
一高三斗弐升四合
〆
一居宅 壱軒 弥長治
但長六間横四間
一土蔵 壱ヶ所
一長屋 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高四石六斗三升七合余
〆
一居宅 壱軒 平三郎
但長七間半横四間
一灰屋 壱ッ
一高壱石七斗九升壱合余
〆
一居宅 壱軒 与市
但長八間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高三石三斗余
〆
一居宅 壱軒 △小平治
但長六間半横四間半
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 佐善太
但長七間半横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆拾七人
土蔵斗り人別
一土蔵 壱ヶ所 蔵之助
一同 壱ヶ所 茂右衛門
一同 壱ヶ所 長右衛門
一同 壱ヶ所 甚左衛門
一同 壱ヶ所 義左衛門
〆五人
都合家数三拾六軒潰
同 土蔵数弐拾七ヶ所同
同 灰屋数三拾七ヶ所同
小以百軒
外ニ
半潰人別
一居宅 壱軒 神主高山伊速
但長九間半横五間
〆
一居宅 壱軒 蔵右衛門
但長八間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 仁左衛門
但長七間横四間
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 慶作
但長七間横四間
一灰屋 壱ッ
一高四斗七升三合五夕
〆
一居宅 壱軒 嘉左衛門
但長七間横四間半
一土蔵 壱ヶ所
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 甚左衛門
但長七間横四間
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 富士太
但長五間半横四間
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一庵宅 壱軒 留吉
但長五間横五間
一灰屋 壱ッ
一高壱石九斗五升壱合
〆
一居宅 壱軒 玄庵
但長六間半横四間
一灰屋 壱ッ
一高
（ママ）〆
一居宅 壱軒 寅吉
但長八間半横五間
一土蔵 壱ヶ所
一高
（ママ）〆
家数〆 拾軒
土蔵〆 三ヶ所
灰屋〆 八軒
都合弐拾壱軒 半潰
惣〆百弐拾壱軒
右は先月廿四日大地震ニ而揺潰、其上山抜ニ而押潰候軒数取
調御訴申上候処相違無御座候、此上幾重ニも御憐愍之程奉仰
候 以上
弘化四未年四月 竹生村
御代官所
郡御奉行所
竹生付
三役人
一高四百拾三石六斗八升七合六夕
本新田無役本田共
内
一高百九拾弐石 本新田御願高
内
三拾石 本田
中尾東沖ゟ同山手通夏和村境迄
一弐拾石 本田
中尾道上通ゟ外石通町北沢入通迄
一五拾石 本田
町屋敷ゟ家浦通り同北山手通りゟ二反田家脇通迄
弐拾四石 本田
壱石 新田
小以
島田沖ゟ見せ之尾林下通り迄
五石 本田
見せ之尾西沖ゟ大久保西沖通迄
五拾石 本田
弐石 新田
蕗畑組上下ゟ宮西平沖迄
五石 無役本田
穴尾沖
小以百九拾弐石 本新田御願高
右は去月廿四日夜大地震ニ而、山抜田畑覆りニ相成候付、明
細相改候処相違無御座候ニ付、ケ所切御書上仕候、此上幾重
ニも御憐愍之御意奉仰候 以上
（上水内郡小川村高府 高府町共有）
一七七九 弘化四年五月 水内郡古山村往来山抜間数書上帳
（表紙）「弘化四未年
大地震ニ而往来山抜損間数御書上帳
五月 古山村 」
（注、表にとりまとめた）
松代善光寺江往来
大町往来
馬曲村寺往来共
松代・善光寺村道往来
小根山・大町通往来
御他領青具村江往来
村道共
入会山小屋村江往来
件数
五
二
三
一二八
二四
一三間数
最大
間
九八九五
一二二
一六〇
一四四
二四〇
一七二
〃
最小
間四
四四
三〇
一〇
六
六
一〇
幅
七・八尺
右同
右同
七・八尺
四・五尺
四・五尺
四・五尺
三・四尺
八・九尺
六・七尺
（上水内郡小川村小川村役場所蔵）
一七八〇 弘化四年五月 更級郡大塚村田方川欠・石砂入等書上
帳
（表紙）「 弘化四未年
田方川欠・石砂入・押堀・厚砂入・作土押流御書上帳
五月 大塚村両組 」
一高六百九拾八石四斗六升三合 田方
内
拾四石六斗三升九合 品々御引高
百弐拾八石 御願除
残五百五拾五石八斗弐升四合
内
四石五斗 川欠・石砂入分
大北北河原沖
押堀厚砂入
五百五拾壱石三斗弐升四合作土押流之分
北島前裏・阿ら町前裏
南村同断・宿村同断
久新河原沖ゟ大北沖迄
右之通田方川欠・石砂入・押堀・厚砂入・作土押流之分御書
上仕候 以上
大塚村両組
名主重左衛門
弘化四未年五月
同断藤吉
組頭佐源冶
同断五左衛門
長百姓義一
同断五郎左衛門
伊藤新右衛門様
酒井市治様
人久左衛門様
（中表紙）「 弘化四未年
畑方川欠・石砂入・押堀（埋カ）・厚砂入御書上帳
五月 大塚村両組 」
高弐百四拾五石弐斗弐升九合 畑方
内
弐石九斗六升 品々御引高
六拾弐石六斗七升六合 屋鋪高
残百七拾九石五斗九升三合 水損麦不作御願高
内
六石五斗 川欠・石砂入分
大北北河原沖
百七拾三石九升三合 押堀・厚砂入分
北島裏・五反田沖・南村
西原・宿村沖迄
右之通畑方川欠・石砂入・押堀・厚砂入之分御書上仕候 以
上
弘化四未年 大塚村両組
五月 三役人
伊藤新右衛門様
酒井市治様
入久左衛門様
（長野市青木島町大塚 宮下恵子氏所蔵）
一七八一 弘化四年七月 更級郡丹波島村常七流失品請取証文
（注、省略）
（長野市青木島町綱島 綱島共有）
一七八二 一七八二弘化五年二月 松代家中某貧士救済方献策
（端裏書）「 大地震翌年之事 弘化五戊申年二月七日
貧士御救ひ方愚意草稿 」
御家中勝手向極窮者御救ひ方之義ニ付、御評議書并向々書類
御下ケ見込御尋御座候処、壱印郡方御勝手元〆書面中於 御上茂
御取救ひ御術計被為尽候上之儀ニ而、如何共被成下兼候御場
合ニて御座候処、第一御勝手向之義不案内ニ而申出候は如何
ニ御座候得共、敢而御術計被為尽候義と而已は不奉存候、偖
又御知行御宛行之内返上、右ニ応し拝借金御下ケ切并小給勤
仕出来兼候向、格式御引下ケ御徒士・御足軽等ニ成共、夫々
取続きニて無余岐（ママ）次第之様と有之、是又以之外之御義只々薄
命借財之為而已ニ如斯御義は、君臣一通之情義ニ而さい如何
と奉存候処、御勝手御不如意故とハ申なから、況而数年来半知
割引ケ等御借増被 仰付置候上之義ニ付、極窮必死相極候場
ニ至り候程之者共江は、復古取続方一入御配意不被成下は、乍
恐難相済御義理合歟と奉存候、二印御勘定吟味在住ニて之見
込、責而も之義大略同意尤之様奉存候、一体奉申上候は甚以奉
恐入候御義ニ御座候得とも、御代初御勝手御不如意ニ付 御
直諭被成下候内衆人逸ニ相成、辛労を君臣一同ニ致可申旨有
之、実以孰之世治乱盛衰共ニ此道理ニ反し候義無之、右御趣
意より熟々（つらつら）勘考仕候得は、乍恐 御上之御配慮厚薄浅深ゟ為、
格別御文庫内御費無之候とも御世話さい被成下候ハゝ、御家
中取続方術計手段は随分浮み出可申候、此段ニ至り候而は
甚兵衛書面之趣殊ニ改書与奉存、友之進義衆議をあつめ取候上御勘弁と申孰茂一理有之尤之様奉存
候、就而は此限ニも無御座候、其策段等幾通りも可有之御義
哉ニも奉存候、大凡之次第左ニ申上候、第一御倹約御制度被
仰出被成下候様仕度御義ニ御座候事
右子細は去年大災之砌、御尋も有之申立仕置候義ニ而、一体御
先代は五ヶ年或ハ三ヶ年と歟被 仰出、右年限過候得は又々
被仰出継御座候様奉存候処、当 御代初尤初厳重 御手許
等之御倹約之義被 仰出も御座候得しが、御年限明候後は無
其義候故、近年之処孰を規矩取押所と仕宜御座候哉、第一御締
向相勤罷在候私共ニ而も聢と弁別仕兼罷在奉恐入候、先つは
御家督之節被 仰出候大御条目而已之義之様奉存候、然ル処
時勢とは申なから、僅三十ヶ年前後を近年江引競見候得は、何
歟ニ就き以之外奢侈ニ押移り、且諸色高直ニ罷成来候処、御
節倹之御法則相弛み居候ニ付、自然と御家中衰微困窮之一旦
とは罷成候事、尤去歳銘々覚悟次第と御倹約被 仰出候得と
も、是又実ニ変災ニ就而之三ヶ年一時之義と奉存、其上銘々覚
悟次第と御座候ニ付強弱を一つニ進退致し、御法ニ無之候故
出精者或ハ貧士世並ニ連れ痛み煩ニは余程相成可申事之様奉存候、
兎角御倹約之底（底、以下同ジ）を御入れ不被成下、是迄之趣ニ而被差置候ハ
ゝ、鄙言諺底抜ケ柄杓以テ水汲候ニ等く、譬ひ御救ひ筋被成
下候とも其甲斐有之間敷哉、大身・中身・小身三等之内中身は
いつれ江も附き、格別之差支も有之間敷哉ニ候得共、大身と
小身は御制度之有無ニ依、余程保亡之差別可有御座事と奉存
候、厳法有りてさい数年大平之御恩沢ニ甘ひ、花美驕奢ニ追
年相流れ行候は人情時勢と奉存候処、況俗ニ帯取裸と申様成
る御制度ニ相成居候得は、年を積而衰微極窮ニ至り候は眼前
之様ニ奉存候
第二江府御番士勤番之義、乍恐 御先代之御仕風ニ被為復度
御義と奉存候事
右子細は悉意味合可有之事ニ而、善悪可否如何とも極而は
難申上、且勤番出精仕候者誰仕出し候と申者も不及承、却
而土地柄故若輩者抔ニは魂の時計壱つ犯ひ候と、身上・家
名迄も及破滅ニ候様之義も間々有之、危難之勤場ニは候得
共、去迚如当時一向ニ勤番無之、譬ひハ例二十人入用之御番土之内十六人ニ而相仕舞、残り四人を御益ニ立て候者御尤之義ニ御座候悉皆御雇等而已ニ而御間合居候義 御上
之御勝手江取候而は御勤略之第一眼前莫太之御益御出方罷
成、結構之御義ニ候得共御家中少給者或貧士勤仕を以時凌たも仕
候場所無之、其上 御参府 御帰城等は立帰御供と而已
罷成居候得は、是又不容易雑費御家中之痛み難渋罷成候、
一旦ニ而南涌北没之理り実ニ右等積年弘く押及ひ来り候よ
り、無余岐身上持候者共侍之日雇場無之凌方弥増差支、無詮方自
ら猟師・漁師之所行ニも至り、士道之操も自然と相汚れ候
程の者多く出来候哉ニ被存、索（素）ゟ上智能者は少しく、中智・
下愚・無能人多きハ世之習ひ何分取続方差支、遂ニは衰窮
ニ至り候哉ニ而、是又三拾ヶ年前後と当時山川漁猟人等之
多寡、尤揚ケ而算ふ暇無御座候、貧福共ニ右等之場は国
主・郡主之第一無御余岐御勤役歟と奉存候
附り江府詰高御改革之義も意味合可有之事ニ而、猶此段
ニ少々籠り居候事哉ニ御座候
盛衰貧福時運世の中ニ候得共、右両条抔は厚御勘弁被成下
度奉存候
一就而は差向極窮必死ニ迫り候者御救ひ之事
右願候者之内ニも上中下可有御座候義ニ付
御知行頂戴物之多少
借財之多少
家内人数之多少
三品を懸合其釣合を以算当手段付ケ、先つ其極窮より順ニ
御手入有之度候、借財取片付方は矢張年賦、是迄之分江無
利足之金子御取交差替夫々暮し方仕法附ケ、都而禄給共其
懸り役人ニ而引揚取扱此所勘弁手立少しく可有御座義と奉存候仕払、尤残高暮前
は当人江相渡り候様、且年々の一紙は当人江も為見候様仕
度候
一右取扱懸り御郡奉行壱人厚人之上配意候仁柄別ニ御立被成下度候
事、右手附御勘定役も同断、尤人数其御用之次第ニ寄へし
右は当御役方抔江当時之場存知競申上候事ニ而、御当用相
勤居、外ニ中々右程之懸りは如何可有御座候哉、巨細人之
上迄之義行届申間敷義と奉存候、乍去両様行届候ハゝ、別
ニ御増被成下候ニは及ひ申間敷候
一金子調達方之義御領中無災之村々ゟ、先つ五ヶ年之間年々
高懸り御借増被 仰出度奉存候事
右は大凡壱石ニ付壱匁八分懸り位は格別村方難渋無之、何
と歟出可申哉、且又御用達可申村方三万石位は可有御座候
哉、左候ハゝ先つ大旨小千両は出可申候、五ヶ年ニ而は五
千両無利足ニ而拾ヶ年過候而、又年々元々江御返し下ケ切
ニ被成下度候事
一嫡子勤之分御役料五ヶ年御借戻し有之度候事但 被下物有之御雇之内も同断右は御有余被為在候平穏之御時節ニ候ハゝ格別之義ニ候得
共、当時上下同時ニ差詰り、既ニ壱軒前勤仕当主之者共及
困窮、在住無勤等迄ニも 御許容も可被成下哉、御郡方ニ
而も御救ひ方御術計被為尽候と申訴節ニ至り候而は不容易
御場合、外向御役人等二十ヶ年三十ケ年普勤切を積、漸被
下候謹（勤カ）役料とは少しく差別有之候哉ニ被存候間、聊ニ而も
右等之御有余金を以、壱軒前勤仕之当主困窮御救ひ方江御
廻し被成下候方、御筋合宜様ニ奉存候
一出格拝借奉願候向々ニて候共、以来は先つ御見合被成下、
御救ひ方御趣法聢と御内定相立候上、御渡方ニ相成候様仕
度義ニ御座候
右拝借之義は決而行立難と申ニも有御座間敷候得共、是迄
之御振合ニ而は、多分難行立意味合御座候義故申上候義ニ
御座候
右極窮は積年之義ニ候得は、迚も一朝一タニは復古仕間敷候
得共、右位ニも委敷御手入被成下候ハゝ済切ニは不至候共、
拾ヶ年前後ニ而は何と歟一応之凌方は付き可申哉ニ奉存候、
乍去第一其基差向金子調達方進而之義ニも候ハゝ、又手段も
附可申候得共、何を申も一統之変災世上差詰り候上之義、別
ニ御金出方も有御座間敷哉ニ就、孰ニも災害薄き町・町外・
村里より御借増を以、一先つ危窮之方御救ひニ御備被成下、
追年取続き候ニ随ひ猶又其方より御取立元々江御返し下ケ被
成下候ハゝ、可也ニは事成就可仕奉存候、一体去年之大変災
往古は不奉存、御当城 御入国以来第一之御大難、実ニ未曾
有之義既ニ例御手伝被為蒙仰候節たに御借増御座候義、況而
此度之処御家中此御借増は拝借上納之方差支可申、此所如何可有御座候哉町・在隅々迄も
都而御借増有之、御尤之義と奉存候得共、難事不同就無余岐
次第、只災害薄き地所之余力を以、大災難場江平均潤補之趣
（柄カ）法有之度義と奉存候、且又極難之向は其仁物ニ随ひ、夫々御
遺ひ方少しく手心御用ひ被成下候ハゝ、別段之御手充被成下
恒よりは、却而渡方之一助とも可罷成義ニ而、右様之趣ニも
被成下候ハゝ、御家中之分は何と歟道附可申、甚心痛之至り
は山中方之事、当夏作取入ニ至り候ハゝ荒々凌方出来可仕、
是迄厚き御手充筋有之候ニ而、最早可宜敷候得ともいまた場
所ニ寄、大災村は此上迚も五七年之間は、御手放と申ニも相
成兼可申候、尤五ヶ年とも相経候ハゝ、何と歟融通方其外農
事・産業等手段出来可申、是江之手充御備は害薄き御領内富
有之者より外宛無之訳柄ニも候半歟、此所如何可有御座哉、
是迄迚も疎は無之なから、当歳之処猶更其向下役之者等厚相
心得、農事格段出精其時を不違無油断世話は有之度事、天季
之変動は無余岐候共、何分民力及ふ丈之豊熟為致度期節ニ
而、海国と違ひ当国抔は万事鍬先より財産不仕候而は、別而
国用乏しく、困窮ニ至り可申哉と深く心配仕候、猶宜様御勘
弁可被成下候、御尋ニ付恐□を不顧此段愚意申上候 以上
二月
（『真田家文書』長野市所蔵）
一七八三 嘉永元年四月 埴科郡矢崎新田村宛震災慰労酒代下付
状
矢崎新田村
未年役人
（弘化四年）去春大地震、引続犀川洪水以来何廉心配致太儀候付、酒代三
百文被下之もの也
四月九日
矢崎新田村
郷中
心懸宜御時節柄相弁奇特之儀有之付、酒代二十疋被下之もの
也
四月廿三日
（長野市松代町関屋 吾妻勇氏所蔵）
一七八五 嘉永元年四月 松代家中屋敷水道御普請立合見届帳
（表紙）「 嘉永元申年
水道御普請立合見届〓
四月 堤右兵衛
山本権平 」
一八間 刺樋
但内法幅七寸・深六寸
一壱つ 水升
（枡、以下同シ）印但 長弐尺三寸
印横弐尺九寸
深弐尺三寸五分
片枘刺
右は御泉水懸り御馬場脇臥樋水桝朽腐候付、取替御入料
一八間 刺樋
但 内法幅七寸・深六寸
一弐間 右同断
但 内法幅六寸・深五寸
一壱つ 水升
但 長三尺三寸
印印横弐尺九寸
深弐尺三寸五分
片柄刺
一四間 古樋
但 祢津神平屋敷前御普請之節出候品、朽腐寸法不知
右は御泉水懸り御馬場向木戸外水桝、夫ゟ南土手上臥樋朽
腐候付取替御入料
一壱間 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右は磯田音門屋敷前水道蓋板朽腐候付、取替御入料
一弐間 松板
但 右同断
右は海野蔵主屋敷前、右同断
一弐間 松板
但 右同断
右は藤田典膳屋敷前、右同断
一弐間 松板
但 右同断
右は大熊大太郎屋敷前東之方、右同断
一六間
但 内法幅六寸・深五寸
右は右同人門前水道樋朽腐候付、取替御入科
一七間 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右は同所水道蓋板朽腐候付、取替御入料
一八間 古底板
右同断
一拾間 刺樋
但 内法幅六寸・深五寸
右は祢津神平屋敷前水道樋朽腐候付、取替御入料
一拾壱間 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右は同所水道樋蓋板朽腐候付、取替御入料
一壱間 松板
但 右同断
右は御蔵屋敷前、右同断
〆拾六筆
印印右之通御普請御入料如斯御座候 以上
四月 堤右兵衛印
立合坂本□助印
一三間三尺 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右は海野蔵主屋敷前水道樋蓋板朽腐候付、取替御入□
（料）一弐間 松板
但 右同断
右は望月主水殿屋敷前、右同断
一弐間 刺樋
但 内法幅六寸・深五寸
右は黒崎五郎大輔屋敷裏御曲輪用水揚口、下水抜臥樋朽
腐候付臥替御入料
一弐間 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右同断蓋板御入料
〆四筆
印印右之通御普請御入料如斯御座候 以上
印五月 堤右兵衛印
立合伊藤新右衛門印
一壱間 古底板
右は御預所会所用水出口樋蓋板腐朽候付、取替御入料
一弐間 松板
但 幅九寸・厚壱寸五分
右は海野蔵主屋敷前水道樋蓋板、右同断
一五間 松板
但 右同断
右は望月主水殿屋敷前水道樋蓋板、右同断
一壱間 松板
但 右同断
右同断
一壱間 松板
但 右同断
右は原彦左衛門屋敷裏分水場関板御入料
（『松代真田家文書』東京都 国立史料館所蔵）
一七八六 嘉永元年十月 利安御借入金御用立申諭
申喩之大意
去ル巳年細々申喩有之候通、弘化之度大変災以来種々之御臨
時御用途莫大之儀ニ而、追年御勝手向御不如江被為 成候ニ
付、江府御殿を初諸御長屋向御普請等御差向（閊）之処、御手段無
之必至と御差支ニ付、御領内村々等利安御借入金被 仰出申
喩候処、何れも出精分限ニ応し御用立候ニ付、夫々御普請御
成就ニ相成候段寄特之事ニ候、然ル処一躰御勝手向之儀は、
兼而申諭候通近年打続種々未曾有之御用途ニ付、無御余岐他
所向を初御借入金有之、年々何と歟被為凌候処、当今ニ至り
莫太之御借財ニ相成、就中八分・壱割等之御借入金多分有
之、御利払斗ニ而も不容易大金故年々御借財相増、其上拝借
御貸下金等御損財ニ相成候茂不少、猶夫々上納方之儀可及沙
汰候得共、中々容易ニ元之鞘へも納る間敷、如右之次第故第
一御収納御取箇を以、差定り候年中之御暮しニも立兼候程之
儀故、勿論御臨時之御引当等更ニ無之、僅之御臨時有之候而
茂御手段ニ差支、無御余岐高利之御借入ニ茂及ひ、年々歳々
御借財相嵩候儀ニ付、此儘ニ而は御取復之期無之而已なら
す、御手段之相尽き候上は、乍 御不本意御領分之者共江
茂、過分之御用金被 仰出候様之域ニ至り候半と深痛心致
し、是非何と歟格別之御趣法相立御勝手向御取復ニ相成、右様
之御手詰ニ不至候様取計不申候半てハ難相済事ニ候処、其段
達 御聴、是迄之姿ニ而は往々必至と御差詰り、第一御公務
を始御領民 御撫育等 御仁政茂被為 行届兼候ニ至り候半
歟と 恐多く茂深厚ニ 御心痛被遊、日夜 御苦悩 思召
御手許之御儀を初め奉り、万事格外之御省略被遊、御勝手向
御改正御取締方厳重相立、御取復相成弥増御領民御撫育 御
仁政被為 張、往々末々迄難渋無之様被成下度旨、段々被
仰出候 御旨茂有之、誠ニ難有御趣意ニ付、自分共ニおゐて
も精々篤と致評儀候処、猶此上茂万端格外ニ厳重之御省略被
成下候上は、利安御借入金相募、是迄之高利之御借財悉皆御
払、或は御利下相成候ハゝ、御利間斗ニ而も莫太之御出方ニ
相成可申候間、右ゟ御取復之道茂相立候儀、其外夫々御手法
厳重相立候ハゝ、何と歟御取復可相成事ニ候、依之無御余岐
猶又今般利安御用達金被 仰出候間、富有之者ハ別而之儀、
其外銘々 御国恩之程相弁ひ、幾重ニ茂出精力之及丈御用立
可致、利分之儀は年々十二月廿日迄ニ無相違御下金取計可申
候、且元金之儀茂無余岐次第有之、相願候節は御下金可被成
下候、将又去ル巳年御借入金之儀は、江府御普請御用途ニ付
被 仰出候儀之処、此度之御趣意は御用途ニは無之、全く御
勝手御取復之為之御手段ニ候間、其段能々相弁ひ不容易御時
節柄之儀ニ付、彼是之見渡等ニ不抱（拘）、丹誠を尽し可成丈出精
御用立候様厚く可申談候
（嘉永元年）申十月
（長野市風間 風間共有）
○コノ文書、年次ノ記載ヲ欠クモ、関連文書ニヨリ、コノ年
ニ推定シ、ココニ揚グ
一七八七 嘉永二年三月 埴科郡岩野村震災横死人供養塔銘
表 石惣丈壱丈八寸程・横三尺余罹災横死供養塔
裏弘化四年丁未三月二十□（四カ）夜地大震、松代封内及所管公田之民
圧死・焚死男女共二千七百六十四人、是時犀川両岸山崩壅塞
流水、至四月十三日而決下流氾濫、溺死男女四十六人、嗚呼
惨哉、於是連年于妻女山大修仏事而弔其亡魂、今茲己酉三回
忌辰又修仏事乃記因由、於石以示後人云爾、経曰願以此功徳
普及於一切、我等と衆生皆共成仏道
嘉永二年春三月
長国禅寺二十四世住持比丘圭白翁謹誌
（『田野口村 小林家文書』東京都 国立史料館所蔵）
一七八八 嘉永三年 水内郡上野村宛地震断水新堰開削承諾証文
為取替規定書一礼之事
去ル未年大地震ニ而其御村字河わらと申処、五人方呑用水必
至と相止住居難相成候ニ付、新堰堀（掘）割引水仕相用度之処、出
水微少ニて引足不申候ニ付、当村分地出水相用被成度由、段
々御頼被成候間、役人并地先人別和談之上承知致候 御上様
江奉願堰筋御高障り之場所御見分之上は申分無御座候間、新
堰堀割引水可被成候、尤当村田懸用水ニ候得は、其節は水引
候儀御延引可被成候、然ル上は当村ニおゐて地障りと申、故
障ケ間敷義申間敷候、為後証規定致し一札取為替如件
嘉永三戌年 瀬戸川村
名主吉右衛門印
組頭義右衛門印
同断安兵衛印
長百姓伴左衛門印
堰筋地主人別弥五左衛門印
同旅久左衛門印
同断亀左衛門印
同旅徳兵衛印
同断弥惣太印
同断半右衛門印
上野村
御役人衆中
呑用水人別御人別衆中
（上水内郡小川村見瀬之尾 鎌倉甲子夫氏所蔵）
一七八九 嘉永四年六月 更級郡上小島田村囲穀無断割渡一件赦
免願
乍恐以書付御縋り奉願上候
雑穀御願下ケ銭一弐百弐拾表壱斗壱升六合八夕
雑穀三百弐拾五表四斗三升三合五夕代一金七拾三両拾壱匁八分九りん
右は当村囲穀之内、去ル天保之度鼠喰・腐表等有之候ニ付、
御願下ケ売払代金村役人ニ而預り置、年中七分之利分を以
弁穀仕居候処、五ヶ年前未年変災ニ付至必（ママ）と夫喰差支候間、
其段奉願銘々割渡難渋相凌難有仕合奉存候、然ル処右雑穀
御願下ケ残、并右代金之取計置方如何之旨蒙 御尋、可申
上様無御座奉恐入候得共、内実は居家流失・半流・半潰、
又ハ床上水入等之人別多銘々難取続候ニ付、右雑穀代金共
変災之砌御願下ケ仕度申談候処、倉崎泰助申候ニ、不残御
願下ケニ相成候趣申候ニ付、御願茂不仕夫々江不残別紙帳
面之通割渡し、尤世并（並）相直り次第積穀為仕可申心得を以、
申談之上取計置候得共、今以不熟ニ付、右之場合ニ茂不行
届罷在候処、此度右始末蒙 御尋、前申上候通重々奉恐入
候得共、一同難取続趣ニ付泰助申条ニ而御願下ケ残迄割合
候段、役人・頭立一同心得違不調法至極奉恐入候、可罷成
御儀ニ御座候ハゝ、以 御情右心得違不調法之段 御赦免
被成下置候様御縋り奉歎願候、此上幾重ニ茂 御憐愍之程
奉仰候 以上
嘉永四亥年六月
上小島田村
名主三右衛門印
組頭清兵衛
長百姓弥右衛門
頭立惣代文左衛門印
御代官所
（長野市小島田町上小島田 杉山利治氏所蔵）
二〇三五 自弘化四年六月至安政五年十二月 善光寺領震災松代借入金調帳
（表紙）「弘化四丁未年六月松代表ゟ御借入金手続
尚亦御返済懸ケ合振り御皆済勘定等之調帳
中野治兵衛 」
弘化四未年六月廿一日松代ゟ借用金之義ニ付、先達而中丹下
（上田）罷出懸り役人中江段々頼入候処、内実承知ニ付弥表向御頼御
名代法成院罷出御口上左之通
口上手控
甚暑之節弥無御障被成御勤仕珍重存候、然は当表春中変災以
来段々蒙御厚恩、其上 日光御門主格別之以 思召拝借金被
仰付、三寺中始寺領之者共救方は行渡候得共、此上本堂・諸
堂舎修復、仁王門・別当処普請等莫太之物入ニ付難及自力候
間、十万人講相企三ヶ津其外有縁之国々江喜捨頼入候得共、
右講金相集り候迄修覆捨置候ニも相成兼、此節本堂修覆ニ取
懸り、追々三門・経蔵・諸堂社致修覆候事ニ御座候得共、此
節柄諸職人其外日雇ニ至迄日々手間代現金ニ相成、乍去日々
普請等有之候得は、寺領一統之救方ニも相成旁ニ付不得止事
此節専ら普請相企候事ニ付差当り金子差支甚致難渋候、貴御
領内迚も春以来格別ニ御心配御物入も被為在候御中、何共恐
入候義ニ御座候得共、格別之御憐愍を以追而講金相集候迄金
三千両拝借被仰付被下候様致度、此段野院直参御願可申之所
此節夏中禁足ニ付乍略義名代を以奉願候、何分宜御重役衆迄
御沙汰被下候様頼入存候尚委細は法成院ゟ口上申含候 以上
未六月
大仏頂院権僧正名代法成院
右は月番岡島荘蔵方江罷越口上申述候処、荘蔵申聞候は早
速之御挨拶も致兼候間、其内書状ニ而磯右衛門殿迄御挨拶
可申旨也
七月十三日
一此間中松代表江借用金之義御願有之候処、内弐千両借用之
義承知之趣挨拶有之ニ付、丹下・磯右衛門罷出直様内金五
百両持参之事
同月十四日
一今朝御名代法成院・上田丹下・今井磯右衛門同道松代江罷
越、片桐重之助ゟ残金千五百両請取之証文差出ス
一同日御家老始懸り諸役人江御挨拶有之
一真綿壱包 恩田頼母殿江
但し金壱両弐歩分
（分、以下同ジ）一同
此代金壱両壱歩分 岡島荘蔵殿江
外ニ
奈良晒弐疋此代金弐両弐歩銀四匁
一同 竹村金吾殿江
北代金壱両壱歩分
外ニ奈良晒三疋此代金四両弐歩銀六匁
一同 山寺源太夫殿江
此代金壱両壱歩分
一同 磯田音門殿江
此代金壱両壱歩分
外ニ奈良晒弐疋此代金弐両弐歩銀四匁
一同 寺内多宮殿江
此金壱両壱歩
外ニ銀三枚
上田丹下廻勤進物左之通一真綿壱包 片桐重之助殿 一真綿壱包 高野覚之進殿
此金壱両分 此金壱両分
外ニ金五両 外ニ銀五枚
一真綿壱包 宮地善次殿 一同 吉沢重助殿
此金壱両分
一銀三枚 春日儀左衛門殿 一真綿壱包 入久左衛門殿
此金壱両
外ニ銀五枚
一真綿壱包 池田良右衛門殿 一真綿壱包 水井忠蔵殿
此金壱両分 北金壱両
外ニ銀弐枚
一真綿壱包 菊池幸之助殿 一同 松本嘉三郎殿
此金壱両
以上
竹村金吾殿出入沼田や一金五百疋 大蔵 一真綿壱包 和田九郎右衛門
此金三歩
宿一金五百疋 新三郎 金五両
右は此度金子借用世話いたし呉候ニ付遣ス
一同年暮ゟ右元金利子年中壱割之勘定ニ而御遣し、申年ゟ戌
年迄右利子御遣しニ可相成之処、金子調達出来兼候ニ付金
五百両并大入作其外等御借入等ニ而御遣しニ相成候
亥年正月十三日
一松代表ゟ災害後多分之御借入金有之処、御勝手御難渋且又
町方之者共難渋之時節ニ付、去暮中より段々其懸り江治兵
衛罷出種々相縋り去暮御遣し之利三百両御勘弁被下度、何
れ当月中迄ニは調達可致旨云々頼入
口上
去未年大災ニ付寺領手当方必至差支無余義拝借金歎願仕候
処、厚御憐察被成下僧正方并町方共拝借被成下当座之凌ニ罷
成、只今迄取続一同難有奉存候、然ル上は御利子之義如何体ニ
茂無遅滞差出可申処、災後銘々小屋懸ケ同様之家作仕候斗ニ
て商売方元手等も無御座、漸日暮し商仕候義ニ候間、何分上
納方遅々仕僧正始役人共迄も申訳も無御座次第ニ付、厳敷取
立上納可仕候得共、昨年西国并当表等不作之町方ハ不及申寺
中迄も必至難渋当惑仕、無余義去御利分上納残并僧正方御利
分歎願仕候処、出格之思召を以当三月中迄御月延成被下難有
奉存候、依之右期月ニは無相違上納可仕候、万一相違之義御座
候節は、兼而証文面ニ認候通り御取計被下候共一言之義申出
間敷候、其段僧正江も申聞一札差出候処如此御座候 以上
正月 中野治兵衛
今井磯右衛門
片桐重之助殿
高野覚之進殿
右差出引続其向々江種々内縋り申入候得共、何分其後役筋
ニ而は聊取用ニ相成兼候段挨拶有之、無拠罷帰候、尚又其
時ニ委相縋り候処何れニも懸り役ニ而ハ兼而御挨拶及兼候
得共、僧正様御事極御忍ニ而当方勝手恩田頼母方御咄しな
から被為入御難渋之御場合御噺も御座候ハゝ又々取計向も
可有之哉之旨内話有之、何れニも此上之処宜敷御執成被下
度旨云々申演罷帰ル
右ニ付御出之義申立候処、無余義次第ニ候間何日頃罷越候
而宜哉、其段其筋江内問合可申旨被仰付候ニ付、早速松代
表江治兵衛罷出種々内談致置
二月三日
一松代ゟ先日御内話之御出之義、来六日ニ被為入被下度旨内
々治兵衛方迄申来
同月六日
一暁七つ時御出門松代江被為入
一九つ時頃頼母殿方ゟ内々申来候ニ付御忍ニ而御入種々御頼
有之、夜ニ入御帰院
一治兵衛義右ニ付向々江罷出委細相頼御跡ゟ罷帰り候事
同月十二日
一竹村金吾方江書取差出ス、右趣意は先日 御前 頼母方江
被為入御内願有之候御趣意認取持参、御口上振合正月十三
日之通
七月四日
一松代御金懸りより罷越候様治兵衛方江文通有之ニ付罷出候
処、竹村金吾面会之上申聞候は、兼々御頼御座候大勧進御
方并町方之者共御借用金之義、別紙之通御挨拶申候様主人
被申付候間御達し申候
覚
一金弐千両 当亥年ゟ申年迄無利足十ケ年賦
一金五百両 来子年三月ゟ月賦壱ケ月廿両つゝ、尤壱割利付
一金五百両
町方貸出し分一金千両 壱割御礼金其儘畳込三ケ年置居
右之通御承知被下改券可被成候旨申之、依之向々江御挨拶
有之
同月十一日
一今日松代表江先日御挨拶御使僧被遣候也
御口上左之通
今以残暑退兼候所信濃（幸貫、以下同ジ）守様益御勇健被成御座候珍重御儀奉
存候、然は去ル未年以来両院并寺領之もの共拝借金返納方
之儀ニ付春中相願候処、今度御仁恵を以格別ニ被仰付候段
不浅忝仕合ニ奉存候、依之為御礼麁末之一種以使僧致進上
候、此段宜頼入存候
一奈良晒壱疋箱入 台附
右信濃守様江
一御茶御菓子二重箱入 代金壱両壱歩
右信濃守様へ御内証ニ而為御挨拶被進候也
但し斎藤伊豆守様江御内願ニ付差出しニ相成候也
御菓子料一金三百疋
右斎藤伊豆守様江被進候也、御同人様も松代之借用之儀
ニ付真田家江御内繕も被下候旁ニ付、御挨拶有之
一菓子壱箱喜撰壱斤壱箱家老恩田頼母殿江
一喜せん壱斤壱箱 同小山田壱岐殿江
一同 同望月主水殿江
一同 同河原舎人殿江
一同 同鎌原猪之右衛門殿江
一同 同真田志摩殿江
一喜せん袋入壱斤 郡奉行岡島荘蔵江
一同 壱斤半三袋 同竹村金吾江
一同 袋入壱斤 同山寺源太夫江
一同 同磯田音門江
是迄は御使僧ニて
一銀弐枚喜せん袋入壱斤勘定役御金懸り片桐重之助江
一同弐枚同 壱斤同高野覚之進江
一同弐枚同 壱斤 島田大蔵江
此ものハ町方之者ニ候得共、当方借用金之義ニ付は諸
事心配いたし呉、当（尚）今度も勘弁筋相願候ニも格別之骨
折旁被下候也
右三軒ハ治兵衛ゟ遣之
十二月廿五日
一治兵衛義松代御金懸り江罷出頼入候は当月中拝借金之儀、
返上方成安被成下難有奉存候、右ニ付無相違当方返上可仕
之所、何分行届兼候間、来子年五月中迄何分御勘弁御猶予
被成下置旨種々相縋り罷帰ル、其後数度懸合有之候得共尚
又種々相歎置候事
子年十二月十三日
一治兵衛義松代江罷越御金懸江罷越、昨十二月中歎願仕候拝
借金返上之義、当暮は幾重ニも差繰差出し可申心得之処、
当月九日不計出火種々御厄介ニ相成候程之義難渋至極罷在
候間、尚又当暮之義御憐愍相願度旨委細相頼罷帰ル、右趣
意相認口上書差出ス
丑年三月
一治兵衛松代江罷越御金懸江拝借金之義種々相縋り別紙之通
相頼弘化三年十二月一金五百両 此分去丑年ゟ十ケ年之間元金其儘御置居被下
度
一金弐千両
内金六十両 追々返上
引而千九百四十両
此返上方
弐百五拾両 丑年ゟ五ヶ年之間五十両つゝ
六百九十両 午年ゟ十ヶ年之間六十両つゝ
千両 辰年ゟ十ヶ年之間百両つゝ
〆
一弐百両 元金五百両借用、酉・戌・亥・子年滞分
一五百両 亥年ゟ月賦ニ相成候分
内七十五両沼田屋名前
一百両 右五百両利子、亥・子両年滞
一弐百両 申年中ノ拝借
一四十両 右弐百両 亥・子両年利滞
〆千四十両
右之分外御元金年割上納相済候上、廿六ヶ年目ゟ御割合
を以返上仕度候間、尤年限之内其儘無利足ニ而御居置被
下度候事
右之通金吾殿江是迄御直書并御書取等を以数度御頼有之候得
共、中々以承知無之候得共、押而書取差出し置聞済と申ニは
無之候得共、先年々五十両つゝ御差出し之事
寅年二月廿一日
一松代ゟ御借用金御返済旁之儀ニ付、竹村金吾殿御頼御状左
之通也
以内状得御意候、先以追々暖和ニ相成候処弥御賢箇（固）被成御
勤珍重奉存候、然は以書状御頼申候義何共赤面至極、甚斟
酌之至りニ御座候得共不得止事御頼申候義は、当院先住代
々吉凶ニ付増借、極難渋之処江野院転住当惑至極之処、不
計未年天災之砌本堂・諸堂差当り仮普請其外院門（内）修覆、并
寺領之者共救方等莫太之物入ニ御座候而、小禄之寺院実々
進退致方無之、無拠御役筋江拝借願上、尚又別段斎藤伊豆
守殿を以感応院様へ御内々歎願仕候処、兼而蒙 御懇命候
野院義故殊之外御気之毒ニ被 思召旁ニ付、御役人中格別
之御執成 故殿様厚思召を以多分之拝借被仰付、野院初寺
領之者共渇命ニも及不申今日迄相続致候儀、莫太之御厚恩
と難有仕合奉存候、其節右之段日光御門主江申上御使を以
御挨拶御座候程之義故、中々以拝借金上納等之儀致遅滞候
而は本意之相済不申候ニ付、細敷役人共江も精々上納方之
儀申含候得共、大災以来は参詣等も少ク旁上納差滞候ニ付、
先年不得止事拝借金上納方にも御憐愍筋之事共、猶又伊豆
守殿を以御直々歎願仕候処、其節感応院様ゟ伊豆守殿江御
直々書之趣は近々国元ゟ恩田頼母外役人壱人参り候間、何
れニも右之者共江大勧進被致安堵候様申談取計申度趣、難
有御紙面只今以手元写取置、其外数通之御直筆御書も所持
致居、細敷拝見御厚恩之程致感拝事ニ御座候、其砌頼母外壱
人と被仰下候は全貴君様御事ニ御座候得は、定而其頃御参
府之上 思召も御伺被成下候御事と致推察候（ママ）居候、一体大
災必至と難渋之上不計昨年寺院焼失、仮住居等差支ニ付不
得止事仮普請取懸り候、旁以物入難渋至極之時節ニ御座候
間、無拠中野治兵衛罷出歎願可仕候間、何分宜御朋役衆御
評義之上御年寄中迄御申立御救被下候様奉願候、尤御恩金
之儀ニ御座候間、上納方之義は仮令拙僧老年ニ付代替ニ相
成候とも、聊以御不義理無之様、急度以書付申送り候事ニ御
座候間、当時難渋之場合取付候まで少々宛上納ニ而御免被
下度、追而身上向取直しニ相成候迄御心長ニ上納御聞済被
下候様偏ニ奉願候、委細は中野治兵衛ゟ以書取可奉願候間、故
殿様甚厚之御憐愍御汲取何分ニも御救可被下候、御直書等大切
ニ秘蔵致し置候間、若御覧被成度御座候ハゝ何時ニ而も懸御目
可申候、書外治兵衛ゟ可申上候間致文略候 以上
二月廿一日 大仏頂院権僧正
竹村金吾様
右御直書持参治兵衛ゟ書取を以精々相願候事
同年十二月
一竹村金吾ゟ右御頼之条々難相用旨申越し、是迄追々御先代
ゟ御差出しニ相成候御直書并口上書取等返却有之、依之尚
又御当代ニ相成治兵衛ゟ書取差出ス、左之通
口上認取
去ル未年災害以来大勧進始寺領一同必至困究殊之外難渋ニ
付、段々相願莫太之金子拝借仕一同危急之場合相凌難有仕合
奉存候、然ル処大災後通年参詣人も薄く随而取納向も減少仕
候ニ付、諸事行届兼難渋至極仕候ニ付、去ル亥年中種々相願
候処、格別之以御勘弁返上方成易被成下候得共、是以兎角行
届兼何共恐入当惑至極罷在候所、一昨子年自院焼失旁以必至
差支、御割合通上納も仕兼恐縮之義ニ奉存候間、無拠其節僧
正ゟ御内願之書状被差出、尚私ゟも委細歎願書差上候処、右
様之義ニ而は御迷惑之趣ニ而度々御断御座候得共、実以当惑
至極仕候付押而相願候処、右書面御預り之上、御内評茂可被
下旨被仰下難有奉存罷在候処 御当方様ニ而も御城内御住居
向御造営、尚又異国御応接場御固等ニて、多分之御用途被為
在御心配之御時節ニ付、歎願之次第御申立も被下兼候御義ニ
而、故僧正ゟ之書状并私ゟ差上候口上書取共御返却被下当惑
至極仕、一同評義之上院家江も委細申聞候処、兼而段々歎願
仕候次第ニ而実以如何共趣（手）段工風も尽果罷在候上、御承知も
被下候通り僧正義遷化、尚又当院家入院旁存外之入料相懸り
一同心痛至極罷在候、此上之相続方も如何可相成哉時々刻々
之相談のみ罷在候義、尤御当方様拝借金之義は、大勧進始寺
院一同危急之場合御救被下候御恩借之処、猶又亥年中類外之
御勘弁被成下候義故、如何様手談（段）返上仕度心底之処、尚又御
当方様ゟ御様子委細被仰聞御尤之義御心配之御義も恐察仕候
間、当節ニ相成又候彼是願ケ間敷義申上候而は、院家始私共
まで一同赤面至極恐入候仕合故、種々勘考寺領内少々宛も融
通出来候者迄も呼寄利解申聞才覚為致候処、当年之儀は早春
以来異国船之風聞旁別而参詣人も相減、其上当秋作之義も豊
作と申候義ニも無之、旁一同必至難渋相成居候ニ付、当節之
処纔而金子才覚之手段無御座十（途）方ニ暮罷在候、此上如何様勘
考仕候而も唯延々ニ相成候のみニ御座候故、恐多義ニは候得
共故僧正ゟ委細相願候通御勘弁之義、相願候ゟ外致方無御座
候、乍併段々被仰下候御趣意も失ひ候而は恐入奉存候間、無
利之才覚漸々金五十両調達上納仕候間、右ニ而今年ハ御勘弁
被下度奉願候、明年ニも相成候ハゝ又々如何様ニも才覚御返
納ニ相成候様仕度奉存候間、何卒出格之御慈愍を以御聞済被
成下度、幾重ニも奉願上候 以上
寅十二月 中野治兵衛
竹村金吾様
一前書書取之次第ニ付聞済は無之候得共、寅年ゟ毎年十二月
中金五拾両宛差出申訳いたし置候事
安政四巳年三月
一松代表ゟ御借入金之儀ニ付、当正月中ゟ御返金之義種々内
評候へ共兎角不行届、尤島田大蔵罷越、松代江戸屋敷普請
旁当時大金入用有之、時々其懸りニ而心痛いたし居候、御
手寄ニ而東叡山御府庫金拝借之義御執持被下候ニは相成間
敷哉、左候得は御当方御借入金之儀も又々御手段も可有之
旨内話有之、依之其段申立置
一右ニ付御奥ゟ上野御勝手衆江御内々御願被遺候処、右御府
庫金之儀は御定法も有之、容易ニ御貸出しは成兼、何れ其
宿坊ゟ表向不相願候而は調兼可申、乍併右出来候得は善光
寺興復之時節日夜御辛苦之御中、且御仕法之一助ニも相成
候義故、厚ク御含宿坊ゟ手続を以申立ニ相成候得は、当今
ニ而も御貸渡ニ可相成趣御内々被仰越候也
一右之趣島田大蔵方江内々申送り候様被仰付候ニ付、早飛脚
を以申遣し候処、竹村氏早々申立可申旨挨拶有之
三月十九日
一治兵衛義松代表江罷越大蔵へ面会、御府庫金拝借一条尚又
御借入金御返済方種々申談事候処、委細は竹村様江申立置
候義も御座候間、御出無御腹蔵御面談御座候様申之ニ付、竹
村氏江罷越御府庫金之義云々相話し候処、殊之外相悦ひ近
々私義も出府候間申談事取計可申旨被申候、治兵衛申候は、
大勧進拝借金返上方之儀内実大蔵を以歎願仕候次第、何卒
此上之御勘弁御執計被下度云々頼入候処、幾重ニも差含居
可申旨挨拶有之
一右御府庫金之儀、松代江戸屋敷役人中之存寄と竹村氏之存
寄行違候哉、竹村氏も心配有之由、依之治兵衛罷出同人江
面会悉ク相話し候所、何れニも御頼御願可申旨被申候也
五月四日
一竹村氏先日出府有之所、右御府庫金拝借之義矢張行違候様
子柄ニ付、今更上野表江対し不取留義内願候而は不相済儀
ニ付、治兵衛義出府之上竹村金吾江委細申談、上野表江も
内々申立候様被仰付今日出立也
一治兵衛出府護国院様江委細申立候処、尚又其筋江も承合可
及沙汰間、真田家江罷越候儀見合候様被仰付、其後御院主
様御意ニは段々承り候処兼而申候通宿坊ゟ手続を以申立有
之候得は、此場ニ而も御貸渡可相成間其段相含、真田家江
打合候様被仰聞候ニ付、新し橋屋敷へ罷越竹村金吾江面
会、右之次第巨細相咄し候処悉ク相悦ひ、右様之御手続候
処彼是行違ひ御出府御気之毒、然ル処右拝借金之儀ニ付御
内話も出来兼候意味合、屋敷内ニて出来残念之義ニは候得
共、此度之義は御流し被下度、乍併東叡山江対し恐入候次
第、私も護国院様江参上御詫可申上旨種々内話有之、治兵
衛申候は、右様之御次第ニ候得は無拠義、就而は御国元ニ
おゐても段々歎願候大勧進拝借返上方之儀、兼而御内々相
願候通御聞済被下度相頼候処、右は国元同役共江も申談事
置候間、何れニも国元ニて御書取御差出し御座候方ニいた
し度旨云々挨拶有之
一右之次第ニ付、在府治兵衛ゟ松代表江口上書差出し候儀申
越候ニ付差出ス、左之通
口上認取
去ル未年災害已来大勧進方始寺領一統必至難渋ニ付段々奉
願上、莫太之金子拝借仕危急之場合相凌難有仕合奉存候、
然処大災後参詣人茂薄随而収納向減少仕候ニ付、諸事不行
届難渋至極仕候之間、去ル亥年中種々相願候処、格外之以
御勘弁返上方成易被成下候得共、是以兎角行届兼何共恐入
当惑至極罷在候処、翌子年中自坊焼失旁以必至差支、御割
合通り上納も仕兼恐縮之儀ニ奉存候間、無拠再応種々歎願
仕候得共、御収用ニも相成兼候趣、厄介心配罷在候内僧正
命終、引続当院家住職入院等ニ而、尚又存外之物入而已出
来如何共いたし方無御座心痛至極仕、院家始一同打寄朝夕
評義之上其日を漸々相送り罷在候仕合、然ル処御当方様ニ
而も御城内御住居向御造営、其上異国御応接場御固等ニ而
多分之御用途被為在、引続昨年中御府内両度之変災ニ而其
御屋敷も御破損ニ付、今度御請（ママ）普向被為在候御心配之御
時節、旁拝借金返上方之儀先般ゟ厳敷蒙仰、乍恐御尤千万
之御儀奉恐察候得共、何分前段申上候通当今ニ至り術計尽
果当惑至極仕候、乍併御歎申上候而已ニ而は、兼而之御憐
愍筋をも不相弁次第ニ成行、弥以恐入奉存候間、当春以来
其向々江頼入種々才覚仕候処、大凡金八百両位は出来可仕
哉ニ奉存候、右之金子上納仕、跡金之儀は恐入候得共、御
憐愍を以御皆済之趣被成下候様奉歎願候、左候得は往々何
と歟取続ニも相成可申哉ニ奉存候間、一坊御引立てと被思
召、何分ニも此上之御取成を以歎願之通御勘弁御許容被成
下置度奉願上候 以上
閏五月
右書面相認、磯右衛門ゟ桜小路泰助召呼、口上申含め松代
片桐重之助方迄差遣ス
一昨日磯右衛門使泰助松代表ゟ罷帰磯右衛門江申立候趣は、
片桐重之助ゟ磯田音門江申談候処、委細之儀は在府竹村ゟ
拙者方江申送り有之具ニ致承知候、口上書取は是ニ而可然
存候得共篤と熟覧可致候、夫ニ付而は別口金千両御借入市
中江貸出し金之儀ニ付而は、兼而中野治兵衛殿ゟ竹村江被
申談候儀も有之候間、右之金子も相成丈御取立御返金被下
度、此場ニ而右様之儀を申候は如何ニ候得共、竹村ゟ申送
り候儀も有之同人江対し拙者場合も相立不申、可成丈御取
立之上残金之分証文ニ被成、金子共御遣し御座候様、左候
得は外御借入之金高之分は、此度御頼入之趣ニ而皆済ニ相
成候様幾重ニも取計可申候云々也
六月
一御返金之儀愈取究左之通
覚
無利足
一元金千七百拾両 元金弐千両借用金之内追々返済残金
〆高
壱割
一元金四百弐拾五両 亥年月賦ニ而借用分
一金弐百五拾五両 右元金四百弐拾五両之利、亥ゟ辰年迄六ケ年滞〆
壱割
一元金弐百両 申年借用
一金百弐拾両 右元金弐百両之利、亥ゟ辰迄六ヶ年
滞〆元利金
〆金弐千六百九拾両
右之処江金八百弐拾壱両三歩（分、以下同ジ）ニ而勘弁済方ニ相成
候事
壱割弐分
一元金七拾五両 島田大蔵ゟ亥年借用
一金五拾四両 右は七拾五両之利、亥年ゟ辰年迄六ケ年滞〆
元利
〆金百弐拾九両也
右大蔵義此度金談勘弁頼入一件ニ付、旧冬以来格
別骨折候ニ付、右之口は元利取揃返弁之事
右之趣内々取極候得共、表向聞済之返事無之延引ニ相成居
候処、六月十八日片桐重之助ゟ今井磯右衛門江書状到来、
左之通
右ニ付同廿日元利合金九百五拾両三歩、外ニ町方借用金
之内当金弐百両、都合金千百五拾両三歩今井磯右衛門・
上田速水両人罷越夫々江相渡候、其節戻り証文都合六通
請取
但し金弐千両 嘉永四亥年正月附証文壱通
籾弐千俵 右引当箱清水村・七瀬村両村ゟ受一札
壱通
金五百両 嘉永四亥年正月附証文壱通
別紙一札 同年月 御裏判証文壱通
弐千両并五百両之添書也
金弐百両 嘉永元申年六月附証文壱通、尤七瀬村
名前
別紙一札 同年月附 七瀬村受証文壱通
一元金千両 松代ゟ未年借川、町方人別江貸付分
右之口当金七百両ニ而皆済可致旨挨拶有之候所、早急
取立届兼前書之通当金弐百両差出し、残金五百両は巳
暮迄追々取立皆済ニおよひ候事
右戻り証文弐通受取
但し
金千両 弘化四未年十二月附証文壱通
籾千俵 同年月附 七瀬村受一札壱通
右請取残り証文差当り相見へ兼候ニ付、追而相渡候趣ニ而其
後来書左之通
御書翰拝誦仕候、残暑御座候処倍御安康奉恐察候、然は先
日は御労繁奉恐察候、扨又五百両之月賦証文江村方添書并
僧正様御添書御座候趣、右も御返し可申旨承知仕候、然ル
処早速見へ兼候ニ付見出し次第早速是ゟ差上可申奉存候、
宜敷此段被仰上可被下候、時下折角御厭御座候様専一ニ奉
存候 以上
六月廿六日 片桐拝
今井様
覚
一金百五両也
右之元金此度上納済ニ付証文御返し可申之所、早速見へ
兼候間見出し次第御引替可申、為念一札差出し申処仍如
件
六月 高野覚之進
片桐重之助印
今井磯右衛門殿
壱割一元金五百両 午年借用
一金四百両 右五百両酉ゟ辰迄八ヶ年利子滞〆
元利
〆金九百両
此分懸り役人別人ニ付跡廻しニ相成候事
右之外
一元金弐千五百両程
右は未年中寺領町方人別松代ゟ直ニ借用いたし置候分ニ
御座候処、追々勘弁筋頼入置候事
一前書御借入金勘弁打切ニ相成候ニ付、向々江御挨拶左之通
覚
一金三拾五両弐歩 松代借材打切謝義目録
一金五両弐歩弐朱 同断反もの弐疋、外ニ小遣分共
六百十弐文
此内訳
一御召晒壱疋 真田家江
但し箱入台附
一喜撰壱斤つゝ 家老六人江
一白縮壱反宛 恩田・望月両家懸りニ付
一白銀壱枚宛 郡奉行五人江
一白銀壱枚つゝ 金方両人江
一金五両 竹村江
一銀三枚 磯田江
一金拾両 片桐江
一金三両 高野江
一金拾両 大蔵へ
〆
右之外閏五月十四日側役両人江金弐両弐歩、喜撰七斤代銀
七拾匁、金子返済之節入用金弐歩
惣〆金四拾五両弐朱
壱貫八百四文
一午年中并未年ニ相成候而も細敷証文差戻し呉候様頼入候得
共、見当り兼候趣ニ而延々相成居候事
午十二月
一巳年御返金之節跡廻しニ相成居候午年御借入之元金五百両
之儀、追々懸金も有之十一月廿二日島田大蔵罷越、御目通
之上御相談有之、約定左之通
壱割一元金五百両 午年借用
一金四百両 右五百両酉ゟ辰迄八ヶ年利子滞〆
元利
〆金九百両
右之分利金四百両之内百両差遣し、三百両は勘弁ニ相成、
引而元金五百両也
内
金百両 午十二月返金相済
金百両 未三月・四月之内返金相済
金百両 未十二月返金之筈
金弐百両 未十二月返金ニ而五百両之証文請
取、右弐百両大蔵ゟ改無利足ニ而借
用之約
右之趣ニ取究、十一月廿四日当金百両島田大蔵江御渡しニ相
成候ニ付受取書左之通
覚
一金五百両也
右は去ル弘化三午年十二月御借入金高、尤御懸り池田良右
衛門殿・入久左衛門殿
一金百両也
右は去ル午年ゟ当午年迄十三ヶ年之内利分金不納之分
金百両ニ而御取切ニ相成候様急度取計其筋江上納可仕候
弐口分金六百両也
右之内金百両也、此度御渡し慥ニ御預り申候処相違無御座
候 以上
安政五午年十一月廿四日 島田大蔵
出先ニ付無印大勧進様
御役人中
一同十二月廿二日金百両相渡請取左之通
覚
一金百両也
右は去ル弘化三午年入久佐衛門殿・池田良右衛門殿御懸り
ニ而、御借入元金五百両之内此度右金子御返済慥ニ御頂り
申置、其筋江無相違差出し可申候、為念請取書仍而如件
安政五年午十二月 島田大蔵印
今井磯右衛門殿
中野治兵衛殿
一未四月十二日金百両相渡、請取十二月之通
一未六月二日金百両之本証文、懸り片桐重之助ゟ漸相戻し候
ニ付請取、則去々巳年六月中同人ゟ請取置候印証差戻ス
（長野市 善光寺大勧進所蔵）
二〇三六 弘化四年八月 善光寺横沢町震災作科等値上取締請証
文
（表紙貼紙）「弘化四年大地震后
布告調印書当町分 」
申渡
今般之大地震并焼失・大洪水之義ハ前代未聞ニ付、災害むら
方・町方共極難ニ陥、既ニ急難御救等茂被 仰付、然ル処追
々小屋掛修復ニ取掛り候ニ付、身分ニ応し諸職人・日雇稼之
者雇人候処、次第ニ作料・日雇賃雑（糶）上ケ、其外諸材木・諸式
ニ至迄直段引上候趣粗相聞不埓之至候、凶作飢饉等之節と違
穀類ニ相響候訳無之処、災害村々・町々等之虚ニ乗し、利欲ニ
迷ひ無謂直段引上候段不届至極、依之米穀等相当之直段を以
売買いたし下々難渋不及様可致、並作料・日雇等定之外余分
之賃銭取申間敷候、此上不埓之取計致者於有之は、急度可遂
吟味条其旨可存、災害村々・町々等之難渋ヲ汲訳決而不実之
取計致間鋪候
右之通 御代官所并松代御領分とも厳敷触示有之候間、町・
在々者共急度相守可申候、以来ハ是迄定之外作料・日雇賃等
受取候てハ不相済事ニ付、心得違無之様可致候、尚又相雇候
もの共茂右之趣急度相守可申、尤酒代抔ニ名付余分之増料決
而差出し申間鋪候、万一不実之取計歟多分之作料・日雇賃等
請取候者於有之は、吟味之上急度咎可申付候
右之通不洩様触示、諸職人・商人ともゟ請印取之可差出もの也
未八月 役所印
右之通被 仰渡一同難有承知奉畏候、依之御請印証文差上申
処如件頭茂兵衛印
金蔵印
市兵衛印
幸右衛門印
久兵衛印
武左衛門印
谷蔵印
忠左衛門印
金蔵店鯉兵衛印
市兵衛店幾右衛門印
藤助店喜代蔵印
忠左衛門店儀三郎印
○以下二百七名連印省略
（長野市横沢町 高橋四郎氏所蔵）
二〇三七 弘化四年十月 善光寺大門町小右衛門震災仮家作金借
用証文
御借用金証文之事
一金百両印
也 但 年中壱割壱分
右は当春大地震ニ而居家潰之上出火、一統家財等迄不残焼
失仕当惑罷在候、乍去如何躰ニ茂仮住居向家作仕、少々宛
茂売買不仕候而は家内之者扶助茂出来兼候ニ付、種々手段
仕候得共当表一円之儀、其上川中島・川北、亦山中筋迄一
統変災ニ而何分手段出来兼甚以難渋至極仕候ニ付、乍恐無
拠御拝借金奉願候処、御領分茂右同様之儀ニ而御手充筋莫
太之上、所々御修復等茂多分之御入料ニ付に御貸出難被成
下段乍憚御尤至極之御義ニ奉存候、然ル処前文申上候次第
外ニ而は一向手段茂不仕義、只管歎願申上候は奉恐入候得
共、出格之御救筋を以御貸下被成下候様奉願候処、段々申
立之次第御憐察被成下、御才覚御繰合を以書面之高金御貸
下被成下、正金慥印奉請取重々難有仕合奉存候、返上之儀は
来申十二月十五日限御元利共急印度返上可仕候、右引当之儀
は当人居屋敷地間口六間壱尺弐寸、裏行拾三間之処差出置
申候間、如何様当人身之上異変差支之儀御座候共、加判人
ニ而引受差配仕、万一引足不申候節は弁金仕無相違返上可
仕候、依之善光寺表御役所江茂委細申立御末書奉願候、御
文言之通聊異背仕間鋪候、為後証仍而如件
善光寺大門町
弘化四未年十月 御借主小右衛門印
親類惣代治右衛門印
組合惣代嘉七印
庄屋片桐重之助様 与三右衛門印
高野覚之進様
前書之通大門町小右衛門右次第ニ付無余義御拝借金相願候
処、御貸出難被成下之処厚御察、格別之御配慮を以御才覚御
繰合金之内御貸渡被下、於私共厚難有奉存候、然ル上は返上方
之儀当人共ニ不抱取（拘）立無相違返上可仕候、万一心得違之儀御
座候節は御領分同様御取計被下候共、其節一言之儀申間敷候、
兼而当人共江茂申渡置候、為後日奥書印形仕候処仍而如件
今井磯右衛門印
中野治兵衛印
（『今井家文書』長野市 県立長野図書館所蔵）
二〇三九 嘉永二年六月 筑摩郡殿野入村太田良右衛門等善光寺
修覆納金取計方申上書
乍恐以書付奉願上候
一昨未年未曾之大災ニ付、御本堂・諸堂舎及大破、追々御
修覆中奉伝承罷在候、然ル処私し共今般最寄手続を以有信
之輩江浄財を相進（勧）、御手伝奉申上度念願ニ付奉御伺候処、
御許容被成下置難有奉存候、右ニ付而は有信之輩江頼合方
并ニ納金取計方等趣意奉申上候、
一御山法ハ勿論都而御威光ケ間鋪義仕間敷候、
一納金寄集次第其時々 御別当所江相納可申候、尤有信之者
ゟ直納之分は世話方ニ而倚（綺）申間鋪候
一松本御預所喜捨頼合之儀は、前以テ 御奉行江御聞置申立
候上、有信之輩へ頼合可申候
一御当山ゟ御出張之御方上下共御旅中御賄之儀は、喜捨皆納
迄御取賄可仕、尤土産物等茂右同断取計可申候
前書之通御世話方丹誠可仕候 以上
松本御預所筑摩郡
嘉永弐酉年 （殿カ）股野入村
六月 太田良右衛門印
松本御領分安曇郡
草尾村
古師清四郎印
松本御領分筑摩郡
横田付
保苅曾一右衛門印
同領同郡
薄町村
善光寺御別当所 花岡長蔵印
大勧進様 当所東横町招解人
御役人中様 能登屋三左衛門印
（長野市桜枝町 矢島忠正氏所蔵）
二〇四〇 安政六年二月 善光寺大門町震災十三回忌吹流献備願
乍恐以書付奉申上候
去未年地震横死人十三回忌ニ付、明後廿一日より御回向御法
事御執行ニ付、吹流一対献備仕度、尤町内中程ニ建置申度此
段奉申上候 以上
安政六未年二月 大門町庄屋代
九兵衛印
御役所
（『今井家文書』長野市 県立長野図書館所蔵）
二二七〇 弘化四年三月 埴科郡杭瀬下村震災に付夫食等議定書
（表紙）「 弘化四丁未年
大地震ニ付村方議定連印帳 」
一今般古今稀成大地震ニ付、近郷稲荷山村ゟ川中島村々一統
押潰れ、其上犀川多分留水ニ而一時押崩れ候ハゝ、川中島
之内持穀ハ勿論当夏毛一円泥押ニ相成候ハゝ、弥以大変穀
物大切ニ被存候、是迄村方江入込候人数不少、此上入込候
ハゝ村方夫食乏敷相成小前之難渋ニ被存候ニ付、儀太夫殿
ゟ役元江籾子百俵被差出候間、村方小前之夫食差支ハ為致
間敷、右ニ付而は今日限他所ゟ頼入候共決而請負申間敷、
其上火之元大切心付可申候、且余穀有之役元之厄介不相成
者ハ格別、家内之夫食斗之ものハ他所人決而請負申間敷事
右之趣被申渡小前一同忝御思召ニ付連印いたし候所如件
弘化四年未三月 藤吉印
半左衛門印
元左衛門印
作右衛門印
○以下百名連印省略
（更埴市杭瀬下 杭瀬下共有）
（一三二三頁の図のあとに続 ）
右は三月廿四日夜地震後善光寺町ゟ出火、当村類焼場所絵図
面を以御届奉申上候
信州水内郡権堂村
弘化四未年四月 百姓代喜三郎
同断九左衛門
組頭三左衛門
同断曾兵衛
名主善左衛門
松代
御預所
御役所
（長野市箱清水 永井俊郎氏所蔵）
二二七二 弘化四年四月 水内郡問御所村震災安穀売調書進上証
文（椎谷領）
差上申調書之事
此度大地震大火ニ付村方一統夫喰ニ差支難渋仕、当村新兵衛
より 御役所江御願立、同人所持米穀安売仕候ニ付名々様数
日御出役被成下、村方勿論隣村・隣町迄茂人気相静難有仕合
奉存候、右ニ付私共御立合被仰付、新兵衛より安穀明細帳
相添奉差上候処少茂相違無御座候、仍而如件（一三二五頁に続く）
二〇三八 弘化四年 善光寺町地震焼失地図（『長野史料』長野市旭町信濃教育会教育参考室蔵）
（「長野史料」長野市旭町 信濃教育会教育参考室所蔵）
二二七一 弘化四年四月 水内郡権堂村震災類焼地絵図届書（松代御預所）
松代御領
三輪村
薄墨焼跡
焼残家数
焼失人別
右別紙ニ奉申上候
水内郡問御所村
弘化四未年四月十一日 百姓
新兵衛印
組代惣代
七郎右衛門印
右同断
五左衛門印
百姓代
定右衛門印
組頭
小兵衛印
名主
伊左衛門印
北島八郎兵衛殿
井出賢治殿
（『久保田家文書』長野市 県立長野図書館所蔵）
二二七三 弘化四年四月 水内郡問御所村震災夫喰籾御預り請書
（椎谷領）
差上申御請書之事
一籾弐拾壱表 但し新兵衛家内夫喰并ニ同人借屋之者夫
喰手当
一籾弐拾俵 但 此分当村借屋難渋之もの共手当之分
右は当村新兵衛所持之籾子御改メ御封印之上、私共江御預ケ
被成候旨被 仰付奉畏候、新兵衛方并ニ村方借屋難渋之者差
支之節は、其訳御願申上御差図次第取計可申候、依之御請書
差上申処如件
問御所村
百姓新兵衛印
弘化四未年四月十一日 組代惣代五左衛門印
同断七郎右衛門印
百姓代定右衛門印
組頭小兵衛印
名主伊左衛門印
北島八郎兵衛殿
井出賢治殿
右之通印書差上籾子御預、然ル処米穀払底ニ付其訳御願、籾
子御封印御免之上村方難渋者江売出候、仍而写書如斯
（『久保田家文書』長野市 県立長野図書館所蔵）
二二七四 弘化四年六月 水内郡下駒沢村震災潰家等巨細取調書
上帳
（表紙）「
地震水災潰家其外巨細取調書上帳
信濃国水内郡
下駒沢村 」
一皆潰居宅 壱軒 但間口拾壱間半奥行五間半
持高拾五石四斗九升六合市左衛門
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内七人
内即死壱人 同人悴助作
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間半持高壱石三斗六升七合藤七
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間半奥行弐間半持高六斗三升七合藤次郎娘くみ
一皆潰雪隠壱ヶ所
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高三石七斗三合百姓宇左衛門
一家内五人
一皆潰物置 壱ヶ所 持高弐石五斗四升三合百姓直右衛門
一家内拾人
内即死壱人 〆壱人
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所 持高七斗壱升三合百姓斧八
一家内五人
一皆潰居宅 但間口八間半奥行四間持高三石八升九合百姓源七
一家内六人
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
持高九斗八升弐合百姓元吉
一家内三人
一半潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行四間持高四石六升四合百姓佐兵衛
一皆潰物置 壱ヶ所
一家内拾人
内即死壱人 〆壱人
同人母うと
一皆潰居宅 但間口七間半奥行三間半持高三石五斗五升弐合百姓定六
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内三人
一皆潰居宅 但間口九間半奥行五間持高壱石六斗壱升九合百姓栄蔵
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内七人
一皆潰居宅 壱軒 但間口四間半奥行弐間半持高壱石六斗壱升九合百姓善吉
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内五人
内即死壱人
同人善吉
〆壱人
一皆潰居宅 但間口九間半奥行四間持高拾五石三斗弐升百姓源右衛門
一皆潰土蔵 壱棟 但長四間半横三間一皆潰物置 壱ヶ所
一家内七人
内即死壱人
同人悴末松
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行四間持高八石三斗六升壱合五夕百姓利左衛門
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内六人
内即死弐人
同人娘ちさ
同人娘ちと
〆弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行四間半持高三石八斗四升壱合五夕百姓茂吉
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内七人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行四間持高六石壱斗壱升五合百姓惣右衛門
一皆潰土蔵 壱ヶ所 但長三間半横弐間一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内七人
内即死弐人同人悴喜兵術
同人娘りか
〆弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間半持高弐石壱斗七升四合五夕百姓庄左衛門
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間半持高壱石六斗四升五合百姓長作
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間半奥行弐間半持高壱石九斗九升七合百姓千代吉
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内拾人
内即死壱人 同人悴久助
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間奥行三間持高四斗七升弐合五夕百姓又右衛門
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行三間持高四斗八升四合百姓政八
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口三間半奥行弐間半持高七斗三合五夕百姓文左衛門
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間半持高九斗五升三合五夕百姓喜曾七
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間奥行三間半持高九斗五升三合百姓惣兵衛
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間持高八斗弐升壱合百姓七郎右衛門
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間半持高弐石九斗壱升六合百姓九十郎
一家内五人
内即死壱人
同人女房のふ
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間半持高弐石七斗壱升四合百姓九兵衛
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口三間奥行弐間半持高八斗弐升四合百姓弥兵衛
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口九間奥行三間持高壱石七斗六升四合百姓太助
一家内三人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間奥行三間持高壱石七斗九升四合百姓清三郎
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内六人
内即死壱人
同人娘きく
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行三間持高弐石四斗四升弐合百姓藤三郎
一家内六人
一半潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高三石九斗八升五合百姓惣次郎
一家内七人
一皆潰居宅 壱軒 但間口拾壱間奥行五間持高三拾石弐斗五升弐合五勺百姓団七
一皆潰土蔵 壱棟 但長三間横弐間
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内六人
内即死三人
同人女房いわ
同人嫁ひさ
同人娘さた
〆三人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間奥行五間持高三石八斗四升八合五夕百姓半兵衛
一家内七人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間持高三石五斗四合百姓五郎兵衛
一皆潰物置 壱ヶ所
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間持高三石三斗五升弐合百姓磯右衛門
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行五間持高五石弐斗弐升四合五夕百姓和兵衛
一家内九人
内即死弐人
同人和兵衛
同人娘そち
〆弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高壱石七斗弐升百姓長三郎
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口四間奥行弐間持高五斗壱升六合百姓勝右衛門
一家内壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間持高六石五斗七升九合五夕百姓勘助
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間半持高壱石六斗七升七合八夕百姓甚五郎
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内七人
一皆潰居宅 壱軒 但間口四間奥行弐間半持高五斗壱升六合百姓直八
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口九間半奥行四間半持高弐石弐斗六合百姓幸四郎
一半潰雪隠 壱ヶ所
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高五石八斗四升四合百姓太左衛門
一皆潰物置 壱ヶ所
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行三間持高三石七斗八升八合六夕百姓勘五郎
一皆潰物置 壱ヶ所
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行弐間半持高四石八斗四升五合百姓吉次郎
一家内六人
同即死壱人 同人娘きく
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間半持高拾三石六斗五升七合五夕百姓伊兵衛
一皆潰土蔵 壱棟 但長三間半横弐間半
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内七人
内即死壱人 同人娘志せ
〆壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間奥行弐間半持高弐斗四升三合百姓伊曾次
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内三人
内即死弐人
同人伊曾次
同人弟松太郎
〆弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行弐間半持高弐斗四升七升百姓斧吉
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行弐間半持高四斗四升六合百姓彦五郎
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間半奥行弐間持高弐石弐升壱合百姓竹松
一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高六石七斗四升百姓八十吉
一皆潰土蔵 壱棟 但長四間横三間半
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内八人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間奥行三間持高八石六斗壱升九合百姓文次郎
一皆潰土蔵 壱棟 但長弐間半横三間一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内五人
内即死弐人
同人弟仲右衛門
同人女房たか
〆弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間半奥行弐間半持高弐石九斗三升六合百姓志め
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間奥行弐間半持高壱石四斗五升五合七夕百姓やひ
一家内壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口九間半奥行五間持高壱石三斗六升百姓忠太夫
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口三間半奥行弐間半持高四斗壱升百姓与吉
一家内三人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間持高六石壱斗三升百姓源蔵
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内九人
一皆潰居宅 壱軒 但間口四間奥行弐間半持高八斗壱升五合百姓林左衛門
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内七人
内即死四人
同人悴宇右衛門
同人女房りし
同人孫宇吉
同人孫りさ
〆四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行三間持高五石七斗壱升七合百姓久次郎
一家内八人
内怪我人壱人
同人女房きは
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間持高拾四石七斗壱石四合百姓清兵衛
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間半持高拾四石九斗九升壱合百姓又左衛門
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間持高五石壱升八合百姓良助
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間半奥行弐間半持高拾四石四斗九合百姓半左衛門
一皆潰土蔵 壱棟 但長四間横三間一家内六人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間奥行三間持高四石四斗九升八合百姓平右衛門
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間半奥行弐間半持高壱石壱斗九升壱合百姓文吉
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内三人
一皆潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行三間持高七石壱斗五升八合百姓留吉
一皆潰土蔵 壱棟 但長三間半横弐間半一家内六人
内即死弐人怪我人壱人同人母志ち
同人悴吉三郎
同人女房みた
〆三人
一皆潰居宅 壱軒 但間口七間半奥行三間持高七石三斗弐升弐合百姓伴助
一皆潰物置・雪隠 弐ヶ所
一家内五人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間奥行弐間持高壱石弐斗壱合治左衛門後家たけ
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内壱人
一皆潰居宅 壱軒 但間口六間奥行弐間半持高三斗四升百姓綾五郎
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内弐人
一皆潰居宅 壱軒 但間口四間半奥行弐間半持高七斗八升四合百姓弥惣次
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口五間奥行三間持高三斗六升久兵衛後家きた
一皆潰雪隠 壱ヶ所
一家内壱人
一皆（半）潰居宅 壱軒 但間口八間半奥行五間持高弐石弐合百姓治郎兵衛
一家内四人
一皆潰居宅 壱軒 但間口九間半奥行五間持高拾八石七斗二升八合百姓吉兵衛
一皆潰土蔵壱棟 但長三間横弐間半
一家内四人
右寄
皆潰居宅 六拾九軒
半潰居宅 弐軒
皆潰土蔵 九棟
皆潰物置・雪隠 六拾四ヶ所
半皆（潰）雪隠 壱ヶ所
家内三百七拾弐人 内男百八拾壱人女百九拾壱人
内
即死弐拾九人 内
怪我人女弐人男拾弐人女拾七人
一皆潰寺 壱ヶ寺 持高壱石八斗壱升弐合正沢寺
内
本堂
庫裏
一半潰社 壱ヶ所
内
諏訪明神 壱ヶ所
一皆潰堂 壱ヶ所
内
庚申堂 壱ヶ所
右は当三月廿四日夜大地震ニ付、潰家其外巨細ニ取調候所書
面之通相違無御座候 以上
弘化四未年六月水内郡下駒沢村
百姓代吉兵衛印
組頭作弥印
名主市左衛門印
高木清左衛門様
中野
御役所
（長野市下駒沢 下駒沢共有）
二二七五 自弘化四年七月至明治元年十二月 水内郡長沼五カ村千曲川御普請入用
割議定書并継書
為取替申一札之事
一当三月廿四日古今未曾之大地震ニ而更級郡山平林村続字虚
空蔵山ヲ犀川江崩落シ、同川筋数日水湛候処、四月十三日俄
ニ右之場所押抜千曲川江押出、川縁村々一時大満水ニ而地
震潰家は勿論無難之居宅押流、千曲川通六地蔵町貞心寺東
ゟ内町天神堂南迄堤長三百五拾間押切、村々一同両災ニ而
当日之夫喰ニも差支候程之儀ニ而、既ニ御支配従御役所茂
御手充御救金等被下置候、必至難渋之時節ニ而右切所堤築
立之儀村々難及自力ニ当惑罷在候処、従 御公儀様・御勘定
様并御普請役様当国災害村々御救筋御普請被成下、千曲川
堤川除共御普請奉願候へ共、格外変難困窮之時節柄ニ付皆
御入用ニ而御普請被 仰付、右ニ付御仕立被成下、然ル処当
時六地蔵町・内町両村之義千曲川本瀬突当難場村方ニ有
之、勿論先前ゟ当組合之義は一村同様之儀ニ付、堤御普請
・川除共万端五ヶ村ニ御普請無差支様相仕立可申候、自然
御普請ニ付弁金等相掛候共五ヶ村高割を以出金可仕候、且
亦千曲川・浅川・大田堤共後来御普請并堤大破之節自普請
ニ仕立候共、五ヶ村高割を以諸入用万端睦敷可致候、若又
五ヶ村之内村々御支配違等ニ而 御上様江対表向一同難相
成候節は、内実ニ而御普請人足并諸入用高割を以実意ニ普
請可致候、為後日五ヶ村役人連印を以議定取極書為取替申
処如件
弘化四未年七月
信州水内郡
御代官川上金吾助支配所
上町
名主甚三郎印
組頭茂兵衛印
同断孫左衛門印
百姓代治郎次印
栗田町
取締役名主助右衛門印
組頭利惣次印
同断要太郎印
百姓代幸四郎印
六地蔵町
名主市右衛門印
組頭四郎左衛門印
同断茂〓太印
百姓代彦三郎印
御代官高木清左衛門支配所
内町
名主勝右衛門印
組頭伴七印
百姓代伊左衛門印
御代官川上金吾助支配所
津野村新料
名主仁右衛門印
組頭勘五郎印
百姓代儀左衛門印
真田信濃（亨貫）守御預所
津野村古料
名主市右衛門印
組頭才次郎印
百姓代弥平太印
本文取極之内千曲川通御普請所・自普請所・岸囲刎出共、川
除之儀は村々限ニ可致其余取究之儀は是迄之通ニ可致、尤場
所ニより自普請相目論見候節は、場処見立組合之障りニ不相
成様睦敷致合可申候、為其添書仍而如件
慶応三年卯七月
上町名主治郎次印
栗田町
取締役名主寺田助右衛門印
六地蔵町
名主定治郎印
内町
名主政之助印
津野村古料
名主市右衛門印
同処新料
名主儀左衛門印
前顕継書ニ再取究候得は今般扱四人立入和談行届候上は、已
来弘化度取究之通り組合申合一村自儘不致様睦敷可申談候、
仍而慶応三卯年七月継書は反古可為候、為後日如件
明治元辰年十二月
上町
取締役兼名主治郎治印
（ママ）同
組合長左衛門印
栗田町
名主幸四郎印
同
取締役助右衛門印
六地蔵町
名主定治郎印
同
取締役奥右衛門印
内町
名主栄作印
津野村古料
名主市右衛門印
同 新料
名主儀左衛門印
富竹村
取締役富右衛門印
三才村
取締役寛兵衛印
上駒沢村
取締役吉左衛門印
中尾村名主作内印
（長野市長沼内町共有）
二二七六 嘉永元年十月 埴科郡下戸倉村柳沢儀右衛門宛震災施
米金請取証文
施米金請取証文之事
割印
一金三百両白米四拾表 但 四斗五升入
右は去未（弘化四年）地震・水災ニ而水内・高井両郡村々難渋人共江、
施米金同五月中被差出候ニ付書面之通請取之、当御役所ニ
おゐて極難之者江割渡相済候、為後日仍如件
割印
嘉永元申年十月
川上金吾助手代前田松三郎印
武井正三郎印
下戸倉村柳沢儀右衛門方
前書之通相違無之候 以上
（川上）川金吾助印
（埴科郡戸倉町戸倉 柳沢和恵氏所蔵）