地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（日記）
弘化四年丁未三月廿四日夜四ツ時頃大地震家屋潰直様大火
ニ相成焼失手扣左ニ記
一自宅棟数之覚
居宅間口拾三間梁間七間潰レ
但し居宅隠居所見せ小兵衛江貸置候分共壱棟也
勝手行間弐間
潰レ
梁間弐間半
但し二階座敷有之候
湯殿行間弐間
雪隠梁間弐間半相立居候而焼失也
但シ湯殿雪隠勝手分共仕切柱拾本有之ニ付（カ）潰レ不申と相
見江候
土蔵 間六間
潰レ梁間三間
但し東江四間西江弐間双方江開キ屋ね裂ケ申候
薪屋
下雪隠 壱棟行間五間程
うら門迄 梁間壱丈程
潰レ
塩所行間三間半
樽置場 壱棟梁間壱丈
潰レ酒屋行間拾六間
梁間五間四尺 潰レ但し右之外北之方江弐間通り出し
庇共潰レ
穀倉行間七間 少々傾キ
梁間三間 立居
焼失
室家行間五間
梁間弐間半
溜り 行間七間
船場蔵梁間弐間半
相立居候但し右之外東之方江弐間通庇
北西
角ノ溜り蔵行間五間
梁間三間
相立居候北ノ
溜り蔵行間拾間
梁間三間
潰レ北蔵 行間七間
梁間三間
潰レ材木置場行間六間
梁間九尺
潰レ片庇也
右之外
庇 北蔵分 九尺ニ七間
溜り蔵分九尺ニ拾間
穀倉分九尺ニ七間
小兵衛方江 九尺ニ
貸置候物置 四間
一地震ニ而家潰レ候処遁レ出候茂迚も難相成覚悟ニ而居申
候善作義は座敷ニ臥居候ニ付何卒遁候様ニと申聞候ニ付
同人は家の裂候処ゟ出申候
一酒蔵之者共無難遁出夫ゟ幸助庄作政吾等数人居宅之上江
参り呼候折柄善作罷出居一同立掛り屋ね等破り伊ちま野
女子弐人嫁おとよと母遁れ申候各無怪我立出
一隠居所之方江直様取掛り候得共南之方高塀倒レ居候ニ付
容易ニ破り明ケ候儀出来兼殊ニ何ニ而も道具類無之漸々
夜明ケ前ニ 御隠居様御遁ニ相成候尤其節鳶惣五郎参り
殊之外骨折申候事也御袋屋御□一（骸カ）同取出し申候
夫ゟ一同長野沖畑地江立退居申候
一地震直様出火火口数多相見江申候
一嫡子国吉義無尽会合有之連中は大門町ニ而小舛屋安兵衛
殿増や大吉殿いつミや平作殿蔦屋桂蔵殿高田や茂兵衛殿
同栄助殿丸屋半左衛門殿等ニ而罷越候儀ニ而行衛相訳り
不申候尤本城茶屋儀助方ハ立去り候後の地震故尋候義も
不行届罷過申候
一夜中ゟ手伝ニ参り候人数
鳶
惣五郎
〃宇兵衛
外ニ
庄左衛門
狐池村
三代吉おし
一夜明ケ頃ゟ追々近在ゟも手伝ニ参り呉候人数
狐池
祖兵衛殿
外男壱人
腰村
清蔵殿
新諏訪
彦左衛門殿
狐池三代吉殿
手寄之人
壱両人
右手伝等有之酒蔵人数一同ニ而土蔵二階ニ差置候品屋ね
裂候処ゟ取出し候得共中程ニ差置候品は少々茂出候得共
東之方壁際等ニ差置候品は出不申候勿論通路家潰レ居酒
蔵其外之分門等之潰レ家を越候而畑迄運ひ候事故手間取
レ申候夜中は一切手出しも不致候得共夜明ケ右之場所ゟ
転ひ出候道具類相見江候ニ付追々持運ひ候得共無程火掛
り参り候ニ付立去り申候
右之外居宅ニ差置候品は仏檀は不及申寝所単笥等茂一切
取出し不申其時節は取出し候様にと勧メ候者も有之候得
共一命を遁レ出候上は此上之望も無之と存且は人々怪我
等有之候而は不済と心得一切取出し不申後悔至極ニ存候
一国吉義と大門町連中之衆江追々承り候処本城之八人一同
ニ走候而堂庭ニ而散々ニ相成候由中ニは富小屋迄一同ニ
参り候者も有之大門人数は各堂庭冨之辺或は
上人様前抔ニ而地震ニ逢候由ニ付廿六日朝西之門町筋ゟ
順ニ相尋候処御霊屋小路槐の根ニ死骸有之候躰背高キ男
ニ相見候得は直様鳶惣五郎同道ニ而見請候処下ニ敷候右
之方衣類焼残り腰提烟草入等其儘ニ而有之相違無之ニ付
直様引取申候
一西方寺江相頼御袋屋国吉両人死骸仮埋ニ致し申候尤自分
持廟所地ニ埋申候、其節現住 英林和尚回向被致候
見舞到来左之通
一握飯重□入 腰村
香の物壱重 祖兵衛殿
一握飯 南俣村
梅漬 儀兵衛殿
一焼餅重箱入 茂菅村
嘉右衛門殿
一〃 飯次入 〃村
友左衛門殿
一握飯 〃村
小右衛門殿
一餅米 新スハ
彦左衛門殿
（注、以下見舞人及び、見舞品の記事省略）
一三月廿八日なか事里と親鬼無里小岡無（ママ、鬼）里常左衛門殿参り
候ニ付遺骨掘出し相渡し遣し申候 未ノ拾九才里と死去
一同日巳之吉親元笹平村大工長三郎方ゟ巳之吉兄平作参り
巳之吉死去之趣申聞候処当村も家潰レ殊ニ川筋水押出し
可申哉ニ付当時山ニ入小屋掛居候間遺骨等之儀何ニ成共
相知レ候ハゝ御当方ニ而御取納被下度旨親長三郎ゟも申
聞候由申帰ル
未ノ拾五年
巳之吉
死去
一腰村三代吉方江預置候品々同人方ニ而も小屋之内ニ差置
候ニ付今日伊右衛門罷越相改祖兵衛方土蔵江相頼預ケ申
候
一屛風 三双 周倍画
武清画
梅逸画
一諸夜着 三ツ
但し毛氈ニ包白布ニ而〆
一諸ふとん 弐ツ
〃かごふとん 壱ツ
木綿のし
唐草 壱ツ
かふ掛ふとん
同菊ちらし 壱ツ
五布ハ
の五寸 但しふとんばりニ而〆
（注、以下預けの品。省略）
一牟礼高野氏ゟ使半兵衛参り当方家内一同引越参り候様申
来候
素麵 到来
にしめ
（三月二十九日）
同日
一坂木宮原生吉殿ゟ山屋喜兵衛方江見舞之使参りゆ方おさ
たどのゟ御隠居様江見舞之□参ル
〃
一右坂木ゟ之使イニ付下戸倉坂井氏要右衛門殿出府留主ニ
付弟寛三郎殿ゟ見舞状参ル下戸倉ニ而茂当廿五日早速見
舞之使両人相立候得共矢代ニ松代ゟ出役有之往還通路差
留ニ付無余儀引帰り申候其後村方人留ニ而仰出無之且下
戸倉辺も同様震崩も有之坂井氏居宅かたむき酒くら等転
腹（ママ）も有之候趣委細書状ニ而申来候
一三月晦日初七日ニ付西方寺ゟ両霊戒名斗申請仮位牌斗相
建回向致し申候
正明院最誉貞好大姉
藤井喜一実幹妻藤井名左衛門賢音居士女俗名奈美
行年五拾八歳
隆厚院徳誉国豊居士
藤井伊右衛門伯昌嫡子俗名
藤井国吉昌後行年
弐拾歳
（四月二日）
同日
一下戸倉坂井氏ゟ見舞之使三人参ル
白米 弐俵
外ニ
煮豆 弐重
蠟燭 三十挺
かん瓢
すいき
味噌 壱樽
生か煮付 壱皿
右之通到来当節彼地仮住居小屋掛之由上蔵等茂壁崩レ候由
也
一岡田村久蔵見舞ニ参ル
同人方も家潰レ二男鶴吉死去之由也
（中略）
四月四日
一大勧進様江庄吉呼ニ付伊右衛門参上候処日光南照院様御
院代法成院様御両人ニ而御申聞ニは御寺領窮民御手充安
米御売出し被成度米穀之引合之儀牟礼高野九左衛門方江
伊右衛門ゟ申送り候様被仰付候
四月五日
一かんば小割立木 泉平村
弐東 太兵衛殿ゟ
見舞
中犬飼村
一小豆 壱升 三喜右衛門殿
山椒摺木弐本
一夕方牟礼ゟ使之者帰り大勧進様米之儀申遣し候処返事ニ
彼地茂村方潰レ難渋人等之手充方不行届由ニ而断申来候
四月六日
一大勧進様御仮屋江伊右衛門参上一昨日被仰聞候侔礼（ママ）米之
儀不行届断申来候書状持参南照院様江入御覧ニ申候
一同時ニ御伺として
瓜漬 五升樽人 僧上様江
献上
一仮家相建度候処諸方村木差支川東筋は牛馬留メ山中筋は
山抜ケ道崩レ牛馬用通無之当地有合之分近在等之分は
不残売切レ差支ニ付今日茂菅村江穿鑿ニ罷越候処嘉右衛
門殿方ニ而行間四間梁間弐間半之物置新規ニ相建候積ニ
而切組有之候分用立候ハゝ当節之儀故差譲り可申旨被申
呉候ニ付右之家相建御積りニ相頼大工は同村長五郎也是
迄細工致し置候ニ付同人江相頼建候積ニ相頼取究申候
（中略）
四月十日
一山極氏江仮宅江被呼伊右衛門罷越候処嶋順助殿立会ニ而
被申聞候ニは御屋敷御宝物調等之儀青沼喜八久保田甫一
両人立会罷出候処此度右両人共死去ニ付右立会之儀伊右
衛門罷出候処被仰度候伊右衛門御答申候ニは此度大変ニ
而不残焼失仕此上家名相続も如何可相成哉難斗候得は聊
之煮売酒店ニ而も出し相営度奉存候左候得は是迄と違召
仕等抱候ニも不相成悴と両人ニ而悉皆取斗候得は是迄之
身分ニ而被在ニ而は
御上様御外聞ニも相抱り候級も可有之哉奉恐入候仕合ニ
付近々少々茂片付候ハゝ願書を以願上度決心罷在候義ニ
御座候間此段御賢察被下
右之仰付之儀御許容被成下□奉願上候 已上
（中略）
四月二十四日
一昨廿三日神代村対次郎殿入来ニ付御払籾彦二郎方江出候
分拙宅江も直様其村之馬ニ而持込も有之右は去冬彦二郎
殿江百俵籾貸ニ致し置候分此節返籾相始り候折柄右之大
変ニ相成候儀ニ付此間中彦二郎殿兄万作殿江も相談ニ而
両人ニ而御地江罷越候積りニ而罷在候処早速御入来ニ而
此段御咄し申候当時夫食ニ差支候間御払可被下候
対二郎殿申候ニは此節村方も皆潰レ其上支配ゟも払籾一
切見合候様被仰付御内分ニは候得共迚も此節御払ニは相
成不申候間幾重追々少くも相片付之上は何共此節之場ニ
而は早速之事ニ不相成旨申候
（中略）
五月十一日
喜右衛門殿入来被申候ニは御商向之儀御様子如何哉私義只
今迄相休居申候此上御当家様ニ而酒御始メ被成候ハゝ其義
ゟ相始度若又酒御商御休ニ相成候ハゝ何と歟可仕此段御相
談ニ上り候由被申候
伊右衛門相答候は見せも間ニ合不申引越も未不仕尤盆前ニ
は商も相始度存候旨申候ニ付喜右衛門申候は左も候ハゝ私
も夫迄相休可申旨罷申候
（五月）
同十六日
一如来様万善堂江御仮座ニ付今朝五ツ時御遷座被為在候是
迄は堀きり坂手前畑中ニ御仮家有之候大勧進様も同所ニ
御仮屋有之候
今朝五ツ時御遷座ニ付御行例有之候略之
御輿は
御印文
御前立本尊
如来様 御輿白本ニ而
新規ニ出来申候
如来様御輿舁は三寺中一同ふくめんニ而かき申候
一如来様御遷座被為遊候ニ付大勧進様ゟ
赤飯弐重 被下候
（中略）
同十八日
上野母袋
一大根干 壱袋 幸之助殿
当百 弐枚
右入来之上当時抜ケニ相成居村をすもも平と申所引申候
右ニ付産神社地も同様ニ抜ケ申候故是も引移し申候、右
社地ニ杉の大木倒候も有之立居候も有之候酒桶等之御用
も候ハゝ御引取被成間敷哉里方より望之者も参り候得共
貴家様江御問合之上被存居候間此段御咄し申候 以上
同十九日
一戸隠宝光院谷作ニ参り候ニ付母袋社木之義承り候処随分
大木ニ而性も宜相見江申候拙者ニも買申嵩は如何哉申候
得共いまた見ニ不参候貴家ニ而御望ニ候ハゝ御取持可申
候間一両日之内ニ御登被成下候
一善作昼後ゟ出立下戸倉江杉之木ニ付御隠居様御相談ニ遣
し申候
五月廿日
一下戸倉ゟ善作帰着
同廿一日
一伊右衛門義上野村江参り加ゝや喜右衛門殿山師谷作殿両
人同道ニ而母袋村江罷越幸之助殿方江立寄相談之上杉木
六本撰抜御金八両ニ相極申候、夫ゟ上野村喜右衛門殿方
江帰り泊り
（後略）