地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（注、「史料」第四巻と重複する部分及びかわら版は省略する）
安政二卯年江戸十月二日之夜稀成大地震ニ付、沙汰書并所
々ゟ参候書付等実と覚度分左ニ記ス、朱ニて絵図も認置候
申上候書付
一当月二日之夜四ツ時頃にも可（有欠カ）之哉江戸表てひとき大地震ニ
而御殿向始所々大破、御内玄関大庇并北中ノ口御用部屋御
右筆詰所辺ゟ表御納戸役所辺不残、其外表御長屋通り表御
門ゟ北之方不残相潰レ、土手石垣も痛有之、其外柳原下谷
御陣屋敷も潰レ候所も有之
両殿様御始上々様方とも一点之御異条不被為在、御立退も
無之、益御機嫌克被遊御座候旨、同三日立早馬御足軽両人
唯今到着申来候
一同日立御飛脚も引続下着、別紙之通り同席ゟ申来候ニ付、
右来状写差越申候、右之趣宜敷被御申上候 以上
十月九日 小姓頭
猶々御預之御台場御別条無之旨申来候、此段も宜敷被
御申上候 以上
一来状之文言左之通り
已上留を以申遣候、昨夜地震之儀一通り今暁早馬御足軽江
申遣候、外ニ本所茅場町御屋敷茂表御殿并藤山金助御長屋
不残相潰レ、其外所々大破、同所新御屋敷は大破迄ニ而鎮
り、先ニ御同意安心致候扨々打続而候御物出ニは困入候事
御座候
御城内茂格別之痛も無之由、兵庫様御預御台場潰し出火相
成、是ハ即死人拾人余茂可有之歟ニ相聞候、于今時々相震
気味悪敷事御座候、御飛脚被差立候ニ付、又々一通り申遣
候 以上
御小姓頭江戸詰
榊原隼人
十月三日 山口八郎兵衛
黒崎与八
庄内御小姓頭江
坂部専太夫様
杉山右近様
猶々清光寺は別条無御座候、是又申遣候 以上
右は江戸詰御小姓頭ゟ此方御小姓頭迄申来候、申上り之書
付并内々之手紙如此候
榊原隼人ゟ内状直筆宿元江申参候書面之写左之通り
一役人ゟ申越候通り大変ニ候、休居候処右之地震ニ而をき上
り候所、行燈消たをされ、夫ゟ追つ取（おつとり）刀ニ而、玄関江向候
処、開き居り候間夫ゟ出、中間若堂（ママ）共を起シ、二階ゟ段々
居り（ママ）参り、内壱人不出大音ニ而呼掛けレハ不残被揃候、扨袴
不出候間誰ぞ出候事成間敷哉と申けレハ、中間壱人取出参
候間、歩行ながらはき御玄関江向候へ共、かたがり居り不
被参候、夫ゟ御内玄関江向候処、最早くつれ、無拠御馬場
江廻り候処御屛痛居り、夫ゟ参候処
上ニ而は御火事装束御召がゑし処江出御機嫌も伺、其辺ニ
御前様御始、御子孫方被為入、是又御機嫌伺、夫ゟ御差図
ニ従、御跡ニ付吾レ等も大働専火事ふせき致候、其内御表長
屋潰レ、夫ゟ為掘候処、八人御足軽之者被敷居候、乍去始
終御屋敷ニ而は火気不見相済候、火事御屋敷江余程御あぶ
なく不成候処ニ而、 殿様御登城、吹上御門辺江 公方様
御立退之処江御出被遊候事ニ而、外御大名は壱人も不出前
ニ而、格別御評ばんも御宜敷恐悦之事也、尤火事等其外御
屋敷始終御自身御廻り御世話被遊、一同も難有奉存候
○山崎槍吾ゟ重田三郎江参候状之写左之通り
一当人は一点之怪我無之、同長屋江庄内ゟ登り居候鱈場進じ
舟こし之事也、是等不出大困り候漸々出シ候、尤柳原御長屋
也、夫ゟ柳原御子様方江参御戻条も無之趣承り、直ニ神田
橋江出候処、御坊主金鉄有栄外ニ軍治兵衛・吉右衛門外ニ
誰ソ壱人名不知都合五人怪我致候、乍去格別之事ニも無之
故無間も出勤も可致候、酒井雅楽様ニ而抔は死人馬ニ付出
候事也、吉原千五百人余死候由也、鍋嶋ニ而も百人余と申
沙汰也、半田八内とも人抜口ニはしら様之物ニ而手とり押
ゑられ、御相手小沢勝治其外二三人ニ而漸ニ引切り候而出
し呉れ候由、乍去是又格別之怪我ニも無之由、三日之八ツ
時比ニ榊原様御屋敷潰レ焼出候、其夜不潰共追々潰レ候家
も有之候由也、松山御隠居御殿も潰レ候由也右之通申参候
（中略）
一往還壱丈余又は弐丈余之穴明き候所数万人之入部ニ而三日
之間ニ相直り候由也
一御手前ニ而は中嶋嘉助と申御徒士壱人御足軽両人退（即カ）死致候
由怪我は七八人有之候趣なり
沙汰書之写 笹喜右衛門ゟ借□左ニ記
一当御殿西向表御門続長屋半棟潰、松平越前守様御屋敷少々
壁落、松参院様御住居表長屋潰レ、小笠原様西御長屋潰レ、
酒井雅楽頭様清光院様御住居ゟ焼失、御添地とも不残焼る、
森川出羽守様御住居向不残焼失、阿部伊勢守様御屋敷西向
長屋潰レ、松平内蔵頭様後焼失、林大学頭様・増山河内守
様御長屋不残潰レ、増山様御殿向者不残潰レ、松平相模守
様御中屋敷不残焼る、松平采女様御住居向不残焼る、松平
相模守様潰レ、土井大炊頭御屋敷向不残焼ル、永井遠江守
様右同断、松平右京亮様半焼、遠藤但馬守様不残焼ル、小
笠原左衛門様半潰レ半焼、織田兵部少輔様御殿向少々潰レ、
久世大和守様表門続長屋潰レ、本多越中守様御殿向不残潰
レ、御厩後長屋不残潰レ、牧野備前守様御殿向不残潰レ、
内藤紀伊守様御殿向不残焼潰レ、松平玄蕃頭様御殿向半潰
レ、松平下総守様不残、松平肥後守様御添地とも不多焼失
十月七日昨日迄市中死人届五万六千人余と申事、其外武家
家死人多分可有也、会津様・雅楽様抔之様ニ潰レ之上焼失
之挨（ママ）ハ六七分通り之死人と申事ニ候
雅楽様ニ而ハ三百人も死候由、御届表向十八人と申候、御
屋敷仮屋壱棟百両余之積り、平常百文之物弐朱と申様之積
りニ而、万事右様之つり合之由也
以上
沙汰書
一吉原抱女沢山死候、家者二百人有之内三人ならて不生由、
惣高吉原斗ニ而死人六百人余之由也
一阿部伊勢守殿も所々面分きつ（ママ）にて登城被致候由
一朝（浅）草之観音一寸八分有之由此前天明之大火事之節も見なく成候
よし、此度も地震前ニ見江不申、于今出現無之ニ付、猶又
諸人安堵不致噂有之由也、右仏体天変事有之節ハ必隠レ候
と申伝之有し観音と申沙汰之趣なり
一会津ニ而は瓶七拾斗御買上、夫々焼死人江被下ニ相成候、
屋敷方、又は町中俵詰菰包ミ等ニ致シ死人持運候事、日々
夥敷よしなり
一地震後五日ニ渡辺惣右衛門と申者神田橋御屋敷ゟ柳原江罷
越候、途中店出シ商ひ等致者見当り不申候趣
一諸侯方勝手次第国元江罷越候様御達ニ相成候由
一地震度々致候ニ付、御家中ニ而前々空地江竹様之物ニ而幕
張屛風を廻し、天井へは渋紙抔張候而居候由也
一石川仁兵衛三御屋敷御殿向御破損、御普請出来迄御普請奉
行当分被仰付、尤御異変有之節ハ御組頭連レ御台場江罷出
候様被仰付候よし
右は七日立御飛脚江申参候
沙汰書
一内藤紀伊守殿御夫婦共御殿潰レ漸々掘出ニ而御出被成候
趣、乍去格別怪家は不被成候由、紀伊守殿ニは則登城被致
候、長井婆も被敷候へ共格別之怪家ニも無之由也
一御老若方御宅は不残潰レ焼失之由也
以上
是ゟ之書ハ十月三日四ツ時出立之早追、御足軽両人同
九日暮少シ前着承候なり、左ニ記ス
一御城中ニハ百人番所斗潰レ、孔雀門潰レ候迄之由
一二日之夜地震ゟ出火ニ而、三日之夜四ツ時ニ漸ニ火慎（ママ）候由
沙汰承ル
一市橋下総守様御上屋敷は表長屋潰レ、下谷御荒子部屋潰レ、
柳原ニ而ハ御米蔵潰レ候由ナリ
一雅楽頭殿御朱殿屋敷ゟ出火、御上屋敷共不残焼失、会津侯
御屋敷二ケ所共不残焼失、伊賀守殿・玄蕃頭殿・阿部殿・
土佐殿焼失、内神田日本橋通り三ケ所火事相見、小川町是
か余程焼広がり御上屋敷吹掛候、浅草門跡通り此辺所々失
火、又ハ潰レ家等ニ而往来も出来兼候斗、死骸首も無之抔
彼是七人斗見掛候由、吉原不残焼失、尤吉原ニ而ハ地震前
ニ少々之出火有之、家々抱女不残二階江揚置、危相成候節
亭主一同引連レ立退候手筈ニ而、右之通用意致候所江、右
之地震ニ而痛死人多有之候と申事也
一江戸ゟ九里有之粕壁宿ニ而相頼漸ニ食事致候、此辺迄も家
ニ大破、江戸近き草賀（加）ニ而ハ潰家三軒見掛り候
一小塚原不残焼失、千住駅ハ両側共不残潰レ、 （屋欠カ）根を渡り参候
一会津侯ニハ御奥様御見不被成候由、尤御殿不残潰レ焼失之
由也、乍去是は分明ニも無之、只シかくシ候者ニや此たぐ
い所々にも相聞候由
右之通り早追御足軽之咄ニ候
一死人多候而早桶もつきはて漬こが江も二人位ツゝ入レ、夫
も不残なくなり候程之由、死人多事ハ明暦以来と申沙汰也
一此方地震之節早速御登城ニ而甚御模様御宜敷候也
公辺ゟ御見舞之上使御戴被遊候由、譜代ニ而ハ無之事恐悦
なる事也、追々承候ニ御内々之事ニ候由なレ共、不表向為
候御登城御引取、無間モ御徒士体之者参候由也
愚考ニは御前様江之事と違候事も哉と暫多者之説を待へ
き者也
一地震寄り参候時分四ツ頃ニも可有之哉、双紙を乍見少シま
とろみ候時、西北ゟわり〳〵と夥敷音致し、参り屋鳴りかと
はつと思ふ内、はや寄り参り、そらと云ゟ北之壱間半斗之小
庭ニ出んと雨戸を明んと致し候得共不明、其内脇ニ而破候
音ニ而初而気付破り出候、其内先生不見故呼候処、早速被
出候、其内弱く相成候ニ付此所ハせまく、潰レられてハ迚も
不叶故、表之方江出んと一同出候、此処江出候者ハ先生・次
三郎・ゐね・源三郎・仲治・私也、先ツ弟近き故出て、跡
ゟ咄合候所□御へい之上ニ上り居候へハ潰レられても能
様ニ而登りニかゝり候由、先生ハ縁ゟ下らんと致候へとも
何分高き故いかかせんと致候所、幸雨戸橋ニ懸り候故、其
上をすべり下り候由、源三郎・仲治・私抔ハ如何致候か忘
却いたし、ゐね少し足をくづし、源三郎も足を切ル、仲治
も腰を摺りかき候由、五間斗もはね落候時石江（ママ）ニ而も落候
為か、足の平のそこいたきと申、私ハ先ツ少シも無難、柳
原ハ御台所之所潰レ候、御米蔵も不残潰レ候間、其外ニも
痛所ニ有之、下谷も御次口之方余程潰る、人も被埋候所、早
速被出候由、御上屋敷ハ表御門ゟ通用御門迄不残潰る、其
外御内玄関中之口茶部屋・御用部屋・小使部屋潰る、其外
御玄関大破御土蔵不残同様、御広式はり落候由、人ハ御徒
壱人・御足軽二人即死之由、怪我人も余程御座候由、酒井
雅楽様御上屋敷・御中屋敷焼る、会津様ニ而も二ツとも御
屋敷焼候由、死人も多勢之趣、御向之小笠原御長屋潰レ、死
人夥敷由、先ツ御家ニ而は三御屋敷共御別条も不被為有、
三人之死人而已、壱番御仕合と相聞候、其上壱番ニ御登城
両殿様也、被為有候為御側使参候由、早速御出仕之御方御
家と本多何某様斗之由
一夕方両国向ニ参り見候、本所深川尤大破、大抵潰る、稀ニ
立居候所も無痛処無之江川江参候所、是も潰レる、津軽様
御長屋も余程潰る、火事今ニ所々ニ有之、死人と覚敷者も
逢申候、実ニ目も当られぬ有様なり
一今四日朝船大工音八と申者参候、家ハ深川也、段々聞候所家
ハ同しく被潰、子供を両手ニ抱候内はりニ被落、無拠手ニ押
なから神寄（ママ）を致、今迄悪事致し候覚もなし、年来しんじん
も致候、是等の時御助け無之ハ何時か有と祈念致候所、は
りゟ手の出候処を見付られ、隣家ゟ掘被出、みなと家内一
同無事と申聞候
一五ツ時頃御台場江参り候時、船ニ而所々之痛所見候、両国
ゟ両所之破損誠ニ申様無之、安藤の赤門も不残潰れ跡形も
なくなる、夫ゟ永代向迄深川の方尤甚敷、野原之如く土蔵
は不痛所なく、永代向越前様御屋敷も潰る、御浜ゟ向ハ一
向不痛様相見候、乍去御陣屋此間出来之十ケ所とか之処七
ケ所、段々御台場江参候所、石垣ニも所々ひゞ有之、土手
抔ハ処々凸凹有之、ひゞも数ケ所也、其外何れももぐらもち
のもくり上候様也、扨御台場江参候所、何れも寄り集り居
候、先ツ無事之悦ひを述段々地震之仕末承り候、何れも二
日之御晩ニ草樹寝鎮る所々とん〳〵と云音致参り、一同に
震動致し、夫ゟ取物もとりあへす一同東南之口ゟ這出し候
由、勝手の西北之口ハくわんぬき指置か為甚手間取り出候
事之由、先ツ御番士之面々這出候而、初而我身の無事之事
を覚候との咄也、夫ゟ一同寄合咄居候所、会津様御台場ニ而
酒井やふ（ママ）助船〳〵と高声ニ呼候故、夫ゟ船支度致、潮干故漸
小船遣候由、又会津の物頭役の人細物（ママ）ニ脇指一本ニ而長□
トカニ而永（ママ）をこし参り助ケ呉候様申候由、又右之咄ニハ番
士共居候方之東南之口ゟ出候者ハ助り候へとも、勝手口ゟ
出候者戸不明、其内不残被潰、六十人斗之人二十人ならて
不申との事ニ相聞候由、助船参り候時最早火事ニ相成候へ
は、此上は壱人ニても怪我等有之候てハ済不申候間、火薬
蔵も甚あぶなき故拙者ともも船ニて逃候間、御帰り被下候
と申候由、夫ゟ帰船飯抔たき遣候由、其時之番ハ能二・新
内・秀之進・大作・文四郎・駒三郎・赤沢吉治之由、医者
ハ玄□也、昨日為弥与八郎殿ゟ案否之御使者ニ御台場江参
候時、一同其前迄安否も不知故心元なく居候所、蛇口迄出
無事を相聞より大悦、委細之咄を聞、嬉し涙を流す由、会
津様御台場其後未焼居候
一御台場休息所余程片かる由も、御立直しニ無之而ハ如何と
相見候、乍去会津様之御台場右体、川越も大痛、且ツ休息
所下ニ鎮候由、二尺程と相聞候、見廻り御役人申ニハ当御
台場一番能と申聞候
一会津御台場江当御台場ゟ其晩早速丸飯ニ香之物添遣候由、
今而も時々地震毎度腸に響候私斗ニもなく一同同様之由、
御屋敷抔ニ居候時とは別塩梅之物也、申さハとろ〳〵とそ
この方ゟ鉄炮の如き音致し候と地震来ル、何となく人之足
音も地震かと一同驚事ある、地□□□□□□□（ムシ喰）来候ものが
右四日ニ御台場ニ而認ル
一五日朝交代ニ而帰り候節も会津御台場残居候
一夕方大名小路辺江参見ル、追手前雅楽様両御屋敷不残焼、
表御門と御物見残、其外森川様焼、伊勢様大破、久世様長
屋潰れ、鳥井丹幡（波）守様・松平悌之助様ニ而も同様、織田兵部
少輔様焼、小笠原□某同断、外ニも不残大破、因州大門塀（カ）
と自若として有共、手前之方の長屋潰れ、其余の長屋も大
破甚し、御存之通因州様抔ハ新敷様ニ相見候へども如此、
此面々土佐様ハ少しも不痛自若たり、蜂須賀も長屋大破、
実ニ渺々として大名小路とは不思
一日本橋向白木屋手前之越後屋大丸抔ハ少しも不痛かはらの
はて迄も一枚も不落
一吉原辺ゟ芝井町辺人死尤多有由、吉原ニ而多死候所ハ三十
五人ニ五人ならて不生所随一之由、深川ニ而も十三人ある
家ニ而不残死候所も有之候由
一六日交代ニ而御台場江参節、会津御台場未焼居候
一内藤紀伊守様地震之節既ニ御夫婦とも被潰候処御運之能脇
ゟ御掘り出され、先ツ御無難之由、御両人とも少シハ御手
負被為遊候由、実ニ御安否なき事相聞候
一阿部伊勢様之奥様之貞様御見江不被成候由ニ御座候
○下坐見ゟ書上之写其内ニは甚分明不成処もあり下坐見とても大体ニ認候もの故必実にも無之候
一三番町堀田鎮太郎様表御門長屋続一棟潰れ、市谷町一丁目
水野土佐守様御長屋少々破損、同長円寺門前裏家三四軒程
潰、尾張様御長屋七八棟潰、御中口御玄関潰、御同所西御
長屋十間程潰れ、市谷月桂寺松平佐渡守様御中屋敷長屋一
棟潰れ、四ツ谷御門外松平佐渡守様御長屋一棟半潰れ、中
奥御小姓芝田能登守様表御門長屋続一棟潰、半蔵御門外南
部丹波守様永井若狭守様何れも表御長屋向少々破損、四ツ
谷塩町二丁目町家五六軒潰クイ違、外紀伊様内御長屋四棟
程潰レ、赤坂町二丁目ゟ四丁目迄町家凡五六十軒程潰、赤坂
氷川中野日向守様表御長屋少々破損、同三ふん坂酒井鐘之
助様御長屋所西長屋半棟程潰れ、同溜池松平美濃守様中屋
敷表御門続長屋半棟程潰、御小姓組番頭横田筑後守様御住
居向表長屋共不残潰、戸田采女正様長屋内長屋六棟程、御殿
向少々潰、外桜田小笠原佐渡守様御殿向内御長屋共不残潰
レ、朽木近江守様御殿向共不残焼失、丹羽長門守様表南長
屋半棟程潰、松平肥前守様御殿向共不残焼失、阿部播磨守
様御殿向表御長屋共不残潰、有馬備後守様御殿向御長屋共
不残残失、松平薩摩守様中屋敷御殿半潰、表長屋焼失、松
平時之介様御殿向御長屋共不残焼失、伊東修理太夫様御殿
向御長屋共不残焼失、亀井隠岐守様後少々焼失、南部美濃守
様御殿向長屋共不残残失、北条美濃守様後少々焼失、松平
美濃守様表御門続御長屋半棟潰、阿部因幡守様表土塀廻り
不残潰、内藤〓之助様御住居向不残潰、松平鋳之允様御住居
半潰、内藤紀伊守様中屋敷少々破損、安部摂津守様内長屋
少々破損
一一ツ橋御門前小川町松平豊後守様火元ニ而同所御旗本二軒
類焼、柳原式部大輔様御住居向半潰、戸田大炊頭様不残潰、
板倉伊予守様内御長屋少々潰、本多豊後守様御住居向半焼
半潰、表御長屋斗残ル、右続御旗本屋敷二軒焼失、同所御
旗本四軒潰れ、内藤駿河守様不残焼失、同所続御旗本屋敷
三軒焼失、同所火消屋敷櫓斗残ル、真名板橋御側本郷丹後守
様・小出信濃守様御屋敷不残焼失、同所御旗本一ツ橋通小
川町御旗本潰廿一軒、御側衆石河美濃守様不残潰、雉子橋
通御目附一色邦之助様半潰、同所中奥御番一色治郎様一軒
焼失、御台所町御側駒木根大内記様少々破損、広小路裏表
猿楽町凡あらまし潰、堀田備中守様焼失、伊東若狭守様御
住居向不残潰れ、御勘定奉行松平河内守様不残潰れ、小石
川御門内松平讃岐守様表御長屋不残潰、同添御屋敷表御長
屋不残潰、松平駿河守様不残焼失、岩城権五郎様御長屋半
潰、小川町堀留・飯田町御旗本屋敷五六軒潰れ、田沼玄蕃
頭様半潰、牛込御門内米倉丹後守様半潰、寄合永井房之助
様表御長屋斗少々潰れ、牛込御門外神楽坂本多修理様土塀
不残崩れ、同所寄合高木市太郎様表御長屋潰、同物持（ママ）町屋
不残崩レ、同舟尾町寄合久世政吉様半潰、小日向大通りお
川端御旗本屋敷八九軒潰、小石川百軒長屋下御旗本あらま
し潰、小石川御門外御勘定所二軒共不残潰、水戸様百軒長
屋不残大破、表御門脇御長屋潰、右並土蔵五ツ半潰、同御
長屋所々大破、春日町通土塀不残潰、青山大膳亮様御門潰
レ、土塀不残崩、本郷御弓町寄合戸田三郎四郎様・松平美
作守様・久永石見守様表御長屋少々宛潰、小笠原佐渡守様
御中屋敷表御長屋少々潰、本郷通裏表共町家あらまし屋根
瓦壁等崩落、松平加賀守様御長屋所々壁崩落、并土塀崩落、
御茶の水御旗本屋敷六軒程潰、火消屋敷表長屋少々潰れ、
聖堂土塀不残崩落、昌平橋内酒井修理大夫様表御門并御長
屋共潰、青山下野守様・土井能登守様・松平左衛門尉様表
御長屋斗所々潰、稲葉長門守様御長屋少々青（カ）土塀崩、駿河
台松平備中守様表御長屋所々潰
一伝奏屋敷西之方少々潰
一水野周防守様御住居向少々潰
一松平三河守様南の方御長屋十五六軒潰
一中川修理大夫様西之方御長屋三十四軒余、内御長屋少々潰、
外御長屋向所々破損
一永井遠江守様筑地御中屋敷表御長屋少々潰、并破損
一筑（ママ）地青山主水様御屋敷玄関向潰
一同所松平土佐守様御中屋敷外御長屋潰少々残ル
一同所松平内蔵頭様御下屋敷右同断
一同所贄 善右衛門様御長屋御玄関向破損
一同所堀 数馬様御住居向不残潰
一伊達若狭守様御玄関向破損
一松平遠江守様御長屋十五六軒潰
一筑地井伊掃部頭様下御屋敷表長屋向潰
一木挽町松下嘉兵衛様御住居向少々潰
一筑地水野因幡守様御玄関不残潰
一同所藤堂和泉守様御下屋敷御長屋少々潰
一同所田沼玄蕃頭様御中屋敷数ケ所破損
一同所中島敬三郎様御屋敷内御長屋潰
一同所花房大内記様同断
一門跡内外長屋数ケ所潰
一同所伊東大内蔵様御住居向少々潰
一同所春日中務様御住居向御長屋所々破損
一戸川権四郎様御長屋不残潰
一同所尾張様御屋敷外囲十四五間破損
一諏訪因幡守様御長屋向所々破損并潰
一増山河内守様御下屋敷表御長屋向十二三間破損
一松平越中守様御屋敷御長屋所々潰
一加納備中守様御屋敷御長屋向所々潰并破損
一稲葉兵部少輔様外御長屋所々破損
一多賀兵庫介様表御門潰
一御浜脇尾張様御長屋向所々破損
一奥平大膳大夫様右同断
一松平陸奥守様右同断
一松平肥後守様御下屋敷御長屋向所々破損潰
一脇坂淡路守様外御長屋不残潰、御屋敷向少々痛
一上田豊之介様所々破損
一幸山鎮之丞様御住居向少々、御長屋所々破損
一柴井町家五六軒焼失
一森越中守様表御門落
一関但馬様外塀残らす倒レ
一紀伊様御下屋敷内外御長屋所々破損并潰
一大久保加賀守様御長屋向所々破損
一芝山内諸寺院破損
一有馬中務大輔様御長屋所々破損
一三田三家町町（ママ）家十五六軒右同断
一薩摩守様御屋敷御長屋右同断
一御同所様御下屋敷三ケ所共所々右同断
一織田安芸守様御屋敷内外御長屋破損潰
一三田一丁め町家四五軒大破
一松平隠岐守様之同御屋敷少々破損
一嶋津淡路守様御長屋向所々破損并潰
一同所久保町町家七八軒破損
一織田鈴丸（カ）様内外御長屋所々破損
一保科弾正右様表御長屋右同断
一松平八十郎様右同断
一麻布善福寺門前町家五六軒破損
一山内遠江守様御長屋所々破損
一善福寺門前並元町南側壱丁程潰
一筧三郎左衛門様御住居向半分程潰
一五嶋左衛門尉様御長屋所々潰
一山内中之介様御玄関向并御長屋向所々破損
一内藤仲之進様御長屋向少々破損
一有馬教三郎様同断
一戸沢上総介様同断
一西久保車坂町家四五軒同断
一松平隠岐守様御長屋少々同断
一秋田安房守様同断
一毛利讃岐守様表御門倒レ、表御長屋十七八間潰
一松平兵部様御住居向御長屋共残らす焼失
一小堀大膳様同断
一松平鎌之左様御住居向半焼ル