地震史料集テキストデータベース
[未校訂]二八 文政十一年十一月 三条大地震風聞書
（表紙）「
文政十一年子十一月十二日辰ノ上刻
大地震風聞書
関矢多蔵」
文政十一年子十一月十二日辰ノ上刻大地震
翌十三日、片貝村佐藤佐平次・同大塚伝右衛門方江、地
震為見舞本家ゟ勘治遣候処、無難之段申来候事
十一月十三日夜五ツ時、椿沢村念覚寺ゟ使者到来申
来候ハ左之通り
急ニ以飛札為御知申上候、昨朝五ツ時大地震ニ而、惣拙
寺御堂始メ庫裏共不残震潰シ、勿論村方不残潰シ絶言語
ニ候、何れ過（ママ）急之事故、於拙寺ニも 御木仏出シ兼候、
定而御痛ニ可被遊と恐入、気之毒無申計り御賢察可被下
候、何分一統之事故無人今日迄其儘ニ仕置候、扨々無安
心、村中死人弐拾六人と申事ニ御座候、先ツ乍然寺中家
内無別条、此間姉も川崎江泊りニ子供連レ参居候へ共、
此表ハ少々軽キ方ニ而、姉家等台所さす折候而已之由、
先以目出度候、隣村田井村別而痛ミ寺焼失、五尊不残一
切何ニ而茂出し不申、旁以悲泣いたす計り、誠ニ三界無
宅之有様、平生承知致居候得共、今更かゝる儀とハ思ひ
よらず、たゞ〳〵無為之浄土江参り度候、其辺ハ如何之
御様子ニ候哉承度候、人遣申候、為其如此御座候 以上
十一月十三日 念覚寺智□（不詳）
関矢孫三郎様急用
前書之通り申来候ニ付、十一月十五日職人並人足、左
之通り遣候事
大工
（屋根葺）
松蔵 弥吉
同
左官
丈八 忠蔵
同
人足
友太 林蔵
同
哲蔵 佐六
同
甚蔵 与喜蔵
木挽
助太郎 八佐衛門
同
八兵衛 治右衛門
屋根葺
幸蔵 幸蔵
此七
外ニ 清三供永蔵
〆
右之通今日遣候処、先ツ当年ハ其儘ニ差置候積り相談一
決いたし候間、清三様並職人衆、人足中共延引致呉候様、
寺ヨリ右之飛脚被差出候処、峠ニ而行逢候ニ付大工三人
並人足林蔵・幸蔵・此七而已参り、余ハ皆峠ヨリ帰候事
昨十三日、片貝江差遣候勘治帰り候処、此度之大変
佐藤氏ヨリ申来候ハ、左之通り
佐藤・大塚並村方共無難之由申来候、尤、佐藤氏之土蔵
ニ少々疵付キ候よし
草生津ニ而家弐軒震崩、村中ノ井戸一ツも用立不申、大
地割レ青色のどろ吹出候由
長岡ニ而土蔵かべ損シ候分ハ不相知、家数余程震潰レ、
出火も弐、三ケ所有之
大工町本明寺江昨日迄ニ死去之告ケ、百八拾人余申来候
よし
椿沢・田井・川崎辺大変之風聞
今町百五拾軒計り焼失致候由、震潰レ候家数いまた風聞
不相知不申候
三条御坊震潰レ則刻焼失、町中不残震潰レ焼失、漸々二
ノ町三拾軒計り残り居候様子ニ候へ共、是も類焼無心元
由申来候
脇野（町欠カ）、家数五拾弐軒震崩レ、出火一ケ所ニ付早速しめし
候由申来候事
与板ハ八分通り震崩レ候よし、死人則刻書上、三拾四人
と申事ニ候、余は幾人死ニ候哉不相知由、御城ハ無難之
よし
柏崎ゟ浜通りハ格別茂無之風聞、乍去、耳（爾）今不相知候
前書之通り佐藤佐平治方ヨリ申来候事
十一月十五日、念覚寺ヨリ申来候ハ、左之通り
御堂・庫裏共ニ、来年迄其儘ニ差置候積り、昨日川崎ゟ
人足被遣候ニ付、弐間三間の小屋ヲ掛ケ貰候、今三間付
ケ出し、冬暮し可致と致落居候、最早御堂再建之望ハ、
老年故さつはり無御座、当住も其心得ニ候、此方門徒ニ
助力相頼候手段無之、只貴館之御力ヲ御頼申上候ゟ外ハ
無御座候、前文之心得ニ候間、清三様御出御無用、此段
坊守ゟも申上候、何卒大工弐人被遣被下候ヘハ、急度冬
暮しハ出来申候、昨日御本尊様御出し申候処、御面像少
も無御別条候へ共、右の御手なく、御足不相見恐入候、
蓮台座等ハ不残微塵ニ相成候、早速御修覆仕度候へ共、
仏師無之困入候、日用道具類ニは格別之損じ無之、から
さま前机・御障子等ハ、不残微塵ニ相成涙落仕候、拙寺
旦家ニテ今日迄死人拾五人、怪我人ハ其数不相知、当村・
田井村・なぎの村ニ而死人百五拾人余り、ケガ人ハ不相
分候事
右之通、今日寺ヨリ申来候事
十一月十六日、下行飛脚帰り候ニ付、宮九左衛門ゟ
申来候は、左之通り
三条御坊所潰レ出火、夫レヨリ本寺小路、其外小路〳〵
不残、一ノ町半分・大町一ノ町鶴屋ニテ火留ル、二ノ
町半分・三ノ町・四ノ町・五ノ丁・鍛冶小路不残焼失、
殊ニ十二日ノ朝市之最中ニ而、両側軒下タ見セ市人、
死人・怪我人いまだ其数不相知由、尚又、明日喜兵衛
下筋江差遣候間、追々為御知可申候
前書之通、申来候事
此間、三条ゟ帰り候由ニテ木津村同行佐兵衛、十一
月十六日参り候節、噺ニハ
御坊所潰レ出火御本尊様始メ不残御焼失、怪我人は無
之、一同之大変ニ付、人足は勿論飯米ひしと御差支ニ
相見候間、魚沼郡同行中ゟ差下し候様、御頼之趣申し
候事
御坊所江為御見舞十一月十六日幸助遣候事
十一月十七日念覚寺ゟ被申越候ニ付、翌十八日左之通
り遣候事此節被申越候ハ、庫裏計りも取片付ケ置不申
候ヘハ、来年之御堂取片付之差支ニも相成候間、此節
雪も降り延候得は、庫裏ハ取片付ケ候様、大工松蔵申
し候ニ付、尚又、職人並人足御頼申上候段申来候事
木挽
岩下
下ノ宮八兵衛 仁蔵
左官
村ノ治右衛門弟
金ケ沢忠蔵 又蔵
下男
下男 佐六 彦作
同
乙七 〆七人
十一月廿一日ホリノ内宮庫之丞方ヨリ到来目録之写
し、此節岩下又左衛門堀之内江出張、此書付相送り
為見候事
地震ニ付北組達書写
本潰レ 千八拾五軒 半潰 四百廿五軒
則死 百八拾六人 怪我人 百四拾五人
寺院十ケ寺潰 馬五拾疋
〆
長岡新町
長屋廿四軒 漆山御蔵潰
右村数三十三ケ村也
栃尾組
椿沢村家数百三拾軒之処、立家六軒、死人廿
弐人〆
田井村家数百三拾五軒之処、立家六軒、死人
拾七人〆
ナギ野村 家数百四拾五軒之処、皆潰レ、死人三
拾九人〆
和田村・時水両村 家数六拾五軒之所皆潰、死
人拾八人〆
太田村 家数六拾八軒之所、立家弐軒、死人拾
七人〆
悠久山御社、御本社潰、石燈籠三向計り残、不残た
おれ候よし
右は長岡御役所江達書之写し如斯
十一月十九日御廻文ヲ以御触御手当米金左之通り被
下之候由
庄屋潰家江 米三俵金壱分
百姓潰家江 米壱俵金壱分
半潰江 右半分
死人江 金壱分ツゝ
同子供江 右半金
怪我人ヘハ如何ニ候哉、いまだ不相知由、片貝佐
藤ヨリ本家へ申来候事
風聞書
一椿沢念覚寺震り崩レ、御堂ハ浦江（ママ）倒れ、庫裏は前江潰
レ候へ共寺中ニ怪我人無之、村方百廿軒程、寺壱軒震
潰シ候よし、死人廿六人、外ニ子供行衛不知ものも有
之由、怪我人いまだ聢と不相知よし
一田井村家数七拾軒計り震り崩レ候由、中ニも福善寺焼
失、坊守焼死被致候よし
田井・椿沢・ナギノ三ケ村ニ而、死人百五拾人余り
と申事、怪我人ハいまだ不相知候よし
一七日市拾七軒、上除村拾弐軒、長岡領ニ而福道村百軒
余り、鳥越村七、八軒潰レ候よし
一草生村家弐軒潰レ、村中井戸壱ツも用立不申、大地打
割レ、土中ゟ青色の泥ヲ吹出し場所、数ケ所有之よし、
長岡町中ノ土蔵皆壁落、御城内大痛ミ之よし、御宮並
石籠等多く震り崩シ候よし
一長岡大工町本明寺江十一月十三日暮時迄ニ、死去致候
告ケ百八拾人余り参候由、外ノ拾ケ寺江死人告ケ如何
ニ候哉不相知よし
一見附震り崩レ其上皆焼失致候由、則死怪我人耳（爾）今不相
知候よし
一今町百五拾軒計り震潰レ、其上焼失之由、死人・怪我
人いまだ不相知よし
一三条御坊所震崩シ、則刻焼失、怪我人ハ無之由、御尊
様始メ不残焼失之よし、庫裏の内仏御本尊ハ、御出し
被成候由
一三条町不残震り潰レ、則刻焼失、死人・怪我人いまた
不相知候よし
一脇野町家数五拾弐軒震り崩レ、焼失壱軒
一与板町八分通り震潰レ、死人・焼失・怪我人、耳（爾）今不
相分事、妙覚寺焼失、南城ニ而、家弐軒震崩レ候よし
在々之大変何程ニ候哉、いまた不相知候よし
（北魚沼郡広神村 関矢道太郎氏所蔵）
三二 文政十一年十一月 長岡藩被害検使役人派遣覚
覚
一文政十一子年十一月十二日朝四ツ時、大じしんニ而、
村々御用木初、道橋大破并潰家・怪家人為見届之、御
検使御役人、左之通り
御米見方
神保治部右衛門様
割元
青柳又左衛門様
書役庄屋
与五右衛門殿
供壱人
庄屋栄蔵宅ニ而御休被成候 以上
其節潰家御達し申上候処、御手当として庄屋壱軒ニ米五
俵、百姓壱軒ニ米三俵づゝ、名子壱軒ニ米壱俵つゝ被成
下候
（「諸願書留書帳」長岡市立互尊文庫所蔵 金安家文書）