地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（万変記）
余モ昔土府下ニ住居シ此戊寅ノ火災丁亥ノ変抔ニ浪人ノ世
渡ル品モ失ヒ今ハ片ホトリノ藁屋ノ床ムネ漏ル月ヲ閨ニ詠
メヨリツ菜ノ羮抔ニテ日ヲ暮シ茅カ軒端ノ春雨ノオヤミモ
ワカスタヘ〳〵ト降ルニツケテモ過ニシ事抔オモヒ出テス
ソロニカクソ筆ニマカセシ
カゝル身ヲ誰カ問フヘキニ春雨ノ昔ヲシノフ軒ノ玉水
チリシホレタル春ノ気色モ時移リ五月雨ノ長キ日ケフヲ過
クヘキ事モナクトシテカクシテアラマシ事ヲ案シ出タシ側
ナル硯ヲナラシマゝナラヌ筆ニ狂言綺語ノオフシニ其事此
事書マセ侍レハ留所ナク杖モタヌ瞽者ノ道アルキ耳聞ヌ聾
ノサゝメコトナン吾物ノ覚ノタメ人ノ嘲リノアラン物ヲ
土陽ノ府慶長五庚子年十月ニ一豊君御舎弟修理大夫康豊君
始而御国ニ入玉フ津呂ノ湊ニ御逗留有テ家臣浦戸ニ到リヌ
長曾我部残臣浦戸ノ城ニ楯籠リ夥シク蜂起ストイヘトモ同
極月ニ落去ニ及同六年丑ノ正月初ニ康豊君御著城其後一豊
君御入部有今此高知ニ移シ玉フ千歳万年ノ地トナレリ
元禄十一戊寅年ヨリ正徳元辛卯年迄年数十四ケ年ノ記
沢田弘列自分覚書
一十月四日宝永四年朝ヨリ風少モ不吹一天晴渡リテ雲見ヘス其アツ
キ事極暑ノコトク未ノ刻ハカリニ東南ノ方オヒタゝシク
鳴テ大地フルヒイツ其ユリワタル事天地モ一ツニ成カト
オモハル大地二三尺ニ割水湧出山崩人家潰事将棊倒ヲミ
ルカコトシ諸人広場ニ走出ルニ五人七人手ニ手ヲトリ組
トイヘトモウツフシニ倒レ三四間ノ内ヲ転ハシアルヒハ
ノケニナリヌウツニナリテニケ走ル事タヤスカラス半時
計大ユリ有テ暫止ル此間ニ男女気ヲ失フモノ数ヲシラス
又暫シテユリイタシヤミテハユリ幾度トイフ限ナシ凡一
時ノ内ニ六七度ユリ又止リタル間モ筏ニ乗タルコトクニ
テ大地定ラスワレサケタル所ヨリ泥水ワキ出世界モ今沈
ム様ニソ覚ユ其後半時斗アツテ沖ヨリ大波押入ルト声々
ニ呼ハリ上ヲ下ヘトカヘシ近辺ノ山ニ逃上ルタゝ前後弁
ルモノナシ此外在々浦々迄カクノコトシ又逃行内モ地震
ヒテ老幼殊ニ難義ニ及フ間モナク跡ヨリ大波ウチ入リ
御城下廻リ堤不残打コヘ押切リ大潮入込西ハ小高坂井口
北ハ万々久万秦泉寺薊野一宮布師田東ハ介良大津ノ山ノ
根迄一面ノ海トナル大波打事都合六七度其浪ノ高サ五六
丈モアルヘキ也サレトモ西孕ノ山ニテ波ヲ防キヌレハ
御城下ノ方ハ大波不入大潮ウツマキオシコム斗ナリ其外
海浜ノ在々同時ニ大波打入リ其破損左ニ記目録ノコトシ
其日モクレニナレト入込タル潮不引其ウツマキハヤキ事
矢ノコトシ又地震止事ナク人々生タル心地スルモノナシ
此時国主ヨリ海辺ノ山々ヘ貝役ヲ遣ハサレ沖ヨリ大波見
ユル時ハ同時貝ヲタテ告知ラスヘキトノ事ナリ五六日ノ
中ハ貴賤山籠リシアルヒハ高キ岡ニアレトモシハシノ間
モ安キ心ハナシ浦戸御畳瀬ハ後ニ山アルユヘ死人鮮シ種
崎ノ浜ノ死人最多シ浪入数度ノ内初度二度目ハ強カラズ
三度目ノ波高サ七八丈ハカリ此浪ニ磯崎御殿不残流失ス
マコトニ時移リ事去リセハ定メナキトハ言ナカラ今迄平
ラカナル波暫シノ内ニ起リテカノ御殿ヲハシメ所々民家
ニ至迄暫時ノ内ユリタヲシ押流シ算ヲ乱スコトニ数百ノ
男女老若波ニモマレアルヒハ大海ヘオシナカサレアルヒ
ハ磯ヘヨルトイヘトモ厳峨々トシテアケヘキ便リナク又
木屑ニトリツキ磯近クナレハ声アケテタスカラン事ヲ乞
フアルヒハ浜辺ノモノ綱ナントトリ集メテ投カケオモヒ
〳〵ニ助クモアリ又運命ツタナキモノハ引汐ユラレ流レ
アルヒハ五台山吸江薊野秦泉寺ノ磯ニアカルモアリサレ
トモ親ハ子ニハナレ子ハアカレトモ親ハナク又家アレト
モ住人ナク人アカレトモ家宅ナク此時ニイタリテ国中ノ
難義タトフルニモノナシ此時国主ヨリ御侍数十人東西ヘ
遣ハサレ其最寄〳〵ニテ諸民ノ飢ヲ救ハセラルマタ種崎
浜ノ死人地震ノ後廿日斗声空ニノコリ雨夜ナトニハ数百
人ノ声シテタスケ候ヘト呼フ聞モノ魂ヲ失ハサル事ナシ
此地震ハ城下廻リ六七里カウチ大地七八尺斗ユリサケ卑
クナリ津呂室津ノ辺ハマタ七八尺モ爾来ヨリユリアケ高
ク成ルコレヨリ津呂ノ港船出入不成通路不自由ナルユヘ
急ニ御普請アリシカトモトノコトクナラス此後此港船ノ
出入不自由ニ成シナリ同九日十日ニ至リテ潮引波モ静ニ
成リテ山々ニ籠リタルモノ夫々我家ニカヘリテ住居ス此
コロ大門筋帯屋町下ヨリ一丁二丁ノ内唐網アルヒハスク
ヒアミニテ海魚数多トリシナリ又愛宕山ノ麓ニテハ鯖鱸
王余魚ナト夥シクトリシト云但此月ノ末迄地震不止日中
七八度夜ヘカケテハ二十度ニモ及フ事毎日ナリ大地ユブ
ツキテ定マラサル事前ニ同シユリ出サントスル時ハ必大
筒ヲ側ニテウツコトク夥シク鳴渡ルナリ此地震日本国中
残ル所ナシ但京都ハ少シ東海道筋ハ大抵尤破損多ク九州
路少々破損アリ四国甚シク其内土佐中ニモ大破ナリ外ニ
モ津波入死人過分ノ所モアリト云
破損覚（本書〔南路志〕四二八頁参照）
右破損為御注進江戸表エ御奉行山内主馬殿被遣ナリ
一コトシ九月十九日ヨリ廿三日迄之中江戸中近辺クラヤミ
トナリ大地鳴動黒白砂フリ積事二三尺右五日之中昼夜不
相知其後空晴世間通路アリテ富士山ヨリ火燃出三十里四
方ヘ土砂吹上ケ如是ヨシ聞ニ此時富士ノ裾野ニ山一ツ出
来ル是ヲ宝永山トイフナリ人間五十年サカンナルモワツ
カナルニ目前ニ移リ換ル事キノフハケフノ夢トナリマタ
シキ花モチリヤスクアタシノゝ露鳥辺野ノ烟立サラテ夢
ノ夢見ル浮世ナレハ今サラ驚クヘキニモアラス人ノ身我
身ニオモヒシラレテケフヲシル人シナケレハトニカクニ
サタメナキ世ノ夢ヲミルカナ
一宝永五年子正月四日ヨリ山田橋ヨリ石淵ノ間往還御普請
出来ス此島ヨリ山田橋迄ハ大道分繕ヒ塩田橋ノ詰ヨリ此
島ノ人家迄ノ堤ハ新ニ築成シテ潮留ス地震ハコノコロマ
テユル事毎日ナリ
一同五月梅雨常ノ年ノコトク降リ其内二三日雨フラス六月
六日晩景ヨリ大雨夥シクフリ出シ七月末迄三月ノ間雨不
止又其内雨フラヌ日モアレト空晴レス此間東国ハ夥布日
テリノヨシマタ去年以来地震此雨ニ至リテヤスラキユフ
ツキシ地モカタマリテ動ク事ナシ諸人コゝニテ漸安堵ノ
オモヒナセリ
（後略）
未（末カ）世可相考㕝此書付板ニ書シテ羽根浦八幡宮ニ納ム今猶存スト云フ
一宝永四年丁亥十月四日晴天ニシテ午ノ一天大地震大地割
レ家コワレテ被打殺或大土内ヘ入死婦人目舞（ママ）シテ死又ハ
高山下ニ住者山崩テ死者アリ然所同日未刻ニ俄ニ磯ヨリ
沖ヘ三町余モ干其儘大潮入家財宝悉流失怠慢成者又ハ不
達者成者或山遠キ者共不残大潮ニ被引取死
一高知近辺一平ノ大潮石淵ヨリ城下迄大道筋船ニテ往来船
賃弐拾文宛
一浦戸御殿并種崎ノ御船倉此時ニ流ル
一城下ヨリ東安喜浦迄大潮高ク揚リ田野安田差テ不上奈半
利浦野根山大道下拾二三端ノ廻船打揚ル
一須川ヨリ東野根浦迄ノ内ハ潮高ク揚ラス甲浦不残流失夫
ヨリ東阿州地潮上ル由
一羽根浦尾僧新并船場前浪打際ヨリ一町半潮上ル最川筋四
町余上ル
一右同日ヨリ廿日頃迄大潮入ト申尾僧夷町ノ者共後ロノ一
段高キ田ヘ小屋作リ退ケリ船場ノ者共山ノ下高キ処或平
野山上ル
一地震右四日ヨリ不得止明ル五年八九月迄昼夜軽重六七度
或一二度宛ユルナリ
右大変御一国流失覚
一死人千八百四十四人 男女
一過人九百二十六人 同
一潰家四千八百六十六軒 御船屋共
一流家一万千四百七十軒 浦戸御殿共
一破損家千七百四十二軒 〆江戸ヘ言上趣
其外米穀諸品損失難記愚筆
一百四十年以前慶長九甲辰年大地震大潮此時ニモ当地中ヘ
汐不入当社御八幡御神力云々
宝永五戊子九月廿八日 作者 檜垣左近右衛門正治
筆者 檜垣新五兵衛息治賢
○大変年代記ニ云
宝永四年十月四日未ノ上刻大地震大潮大変ノ事
九月末方ヨリ沖合アシク日々ノ浪鳴雨天相続キ十月ニ至
リテモ波静ナラス雲行悪ク或ハ俄ニ晴天ニ成リ又ハ曇リ
雨天トモ不定雲ハ切レテ乾ノ方ヘ飛ケルホドニ諸人只事
ナラスト驚ケルハタシテ十月四日昼頃ヨリ東風ハゲシク
雨強ク時化ト成竹木ヲ吹倒シ人家ヲ損ケル内大地震ニ成
程ナク水上ヨリ赤土色ノ水押来リ田畑ヲ流シ見ルカ内ニ
一平ノ海ト成云々
丁亥変記
宝永四年丁亥十月四日天気晴朗暖気殊ノ外ニ而諸人単物幃（帷）
ヲ着スケフハイカナル事ソヤトイフ中巳ノ刻ヨリ大地震起
リ其騒動言葉ニモ不尽坤軸砕ルトハ唯此時也若輩達者タリ
トモ一足モ歩行ナラス山々ノ崩ルゝ土煙四方ニ渡リ忽闇夜
ノ如シ男女泣サケフ事限ナシ扨未ノ上刻ヨリ大潮溢レ入リ
人家悉ク流レ死人桴ヲ組カ如シ昼夜潮入来ル事明ル五日ノ
暁マテ十二度也予山ノ峯ニノホリテ眺ムルニ須崎ヨリ三里
沖ニ有ル石カ〓ヨリ沖ハ海上静ナリ是ヨリ潟ノ方大キニ騒
ク戸島ト長者ノ渡間ヘ懸ケ潮干付キシハラク沼トナル此沼
ヘ小船ニ二人乗リ流レ来リケルカ一人ハ船ヨリ下リテ此沼
ニ入ト見ヘシカ行衛ハ見ヘス成リヌ又一人ハ船ニ有ヨト見
ヘシカ大潮来リテ此舟モ行方不知成ニケル後ニ聞ハ一人ハ
新町ノ何某一人ハ須崎浦夷屋左五右衛門ニテ有ツルヨシ哀
モ悲モ唯此時ニ極リヌ
岩永ヨリ門屋坂迄ノ間道筋海ト成ニ付鳥越坂ノ峠ヨリ池ノ
内村ヘ横道ヲ通ル下分村岡本ヘ越ス笹カ峠ト云古道ヲ往還
トシテ門屋山際道ト成諸役人之送リ番所モ池ノ内村ニ当分
有之也送夫ノ者トモ爰ニ詰ル丑ノ年ノ秋今在家町本番ニカ
ヘル池水ノ中ニ死人筏ヲ組タル如ク有之尤衣服等見知ルヘ
キ覚アル族ハ是ヲ引取可求便ナキ者ハ池中ニ浮キ沈ミ鳶烏
ノ餌トナル誠ニ目モ当テラレヌ次第也依之公儀ヨリ被仰付
☓☓村カリ屋ノ後ニ長十間斗ノ大穴ヲ二行ニ掘ラセ此穴ニ
取入土ニ埋ム当所ノ死人四百余人トソ聞ヘシ
流助ノ者即餓ニ及ニ付公儀ヨリ御救米被下男ニ三合女ニ二
合ツゝ日数三十日或ハ四五十日ノ間面々家業ニ取ツク迄被
下外ニ小屋懸材木等手ヨリノ山ニテ被下其時須崎ヨリ下浦
御救役人
無足新扈従
田中善八
此大変ニ付諸人心落着ス明日ヲ知ラヌ命ト路頭ニ迷フ折カ
ラナレハ非道ノ溢レ者盗賊ノ族有之ニ付御詮儀之上其役人
ニ
無足新扈従
朝比奈忠蔵
此時御奉行
宿毛七千石山内蔵人
アキ千石五藤外記
高知千石山内主馬
郡奉行
祖父江作蔵
堀部七太夫
浦奉行
安喜儀兵衛
近藤与三左衛門
須崎浦庄屋太次右衛門
同年寄助九郎
同与八郎
同海部屋
勘之丞
一此度大変ニ付大守様御参勤不相成
江府ヘ御断之御使者
山内主馬
江戸ヘ被差上御書附
（注、被害数字が続くが本書〔南路志〕四三三頁と同じ
につき略す）
○須崎今在家町之家
大変前ハ二ツ石ヨリ沖ノ方十五六間町並成ケレトモ大潮
ニ地崩レ海二百間余地方寄町ニ不成ユヘ只今ノ所々町割
被仰付面々住居スル大変ヨリ前ハ大橋通リノ横町両輪ニ
並松有之人家ナシ橋ノツメ東ノ方今ノ舎屋ノ辺ニカウ介
トイフ者一人居シ也今在家今町筋二ツ右ヨリ宮原ヘ続キ
大木ノ松林ニテ昼モ日アタラス物クラキ所ニテ小児共ヲ
ソルゝ右ノ松原ノ跡今ノ町並也今ノ町後ノ畑ニ成タル所
ハ皆芝原ニテ蓑虫ノ名所也西今在家ノ町先年ノ町ヨリ十
間斗山ノ手ヘ寄ル西ノ町ハヅレ五郎右衛門屋敷ハ中州ノ
辺也
○宮崎高門竹助雑記ニ云
一右大変ニ付江戸御註進ハ山内主馬殿御越亥ノ十一月十五
日江戸着同十二月四日江戸発足帰国也○亥十一月廿五日
繕御（ママ）使者高屋惣兵衛ト有来年御参勤之儀御伺被仰上置候
処同廿七日土屋相模守様ヘ高屋惣兵衛罷出候様ニ有之仰
ニハ土佐国地震高潮ニ付過分損毛之旨被為聞召来年参勤
御免ト被仰出候也又来冬ニ至リ重テ参勤ノ儀伺候様トノ
御奉書ヲ以被仰出候也右御左右同廿八日道中五日ノ使ヲ
以御飛脚御指下也ト私家ノ雑記ニ有
一又云宝永丁亥十一月廿三日昼時ヨリ富士山自焼出十二月
二日迄数日武相駿三ケ国ニ砂降ル此砂払金トシテ知行百
石ニ金二両宛懸ル此方様二千五十二両翌子ノ三月十六日
ヲ上納ト旧記ニ見百石ニ二両ナラレハ四千両余上納之筈
四二ト誤歟ト山崎方成記録ニ記ス高門按ルニ御国ノ大変
ニ依テ半納ニ成タルニヤ猶可考此砂降ノ災ニヨリテ百石
ニ二両課役有シ事折焼（焚）柴ニ委シ又按スルニ国家財用不足
ニヨリテ課役ヲ益サレシハ専元禄年中ヨリ初ルト見ヘタ
リ御国銀札モ元禄十六未ノ年ヨリ初ル御借リ上モ宝永五
年ヨリ初リテ増減アリトイヘトモ今ニ至ルト見ヘタリ
一丁亥ノ変ニ御城大手門脇塀下石垣表裏トモニ三処孕城中
処々塀倒或傾損ス
一北ノ口櫓門潰并門脇塀崩ル
一同処櫓ノ石垣長十間崩ル
一同処西ノ方塀下長九間崩ル
一二ノ丸下曲輪塀下ノ石垣長七間ノ内石数々脱落
一三ノ丸石垣際之地行長四十間斗割塀際地形下石孕小石抜
落
文化四年丁卯之十月公事ニ因テ東灘ニ行キ崎ノ浜ニ至ル
偶偶得間暇遂ニ談義所ノ在ル処ヲ問フ里長寺田六兵衛分一
役所ヲ指テ示予且阿奢梨カ記録今義猶存スル乎否ヲ問ヘ
ハ古キ書記アリトテ則出シテ示之因テ騰写シ左ニ附ス是
即谷陵記ニ所謂阿闍梨暁印ガ記録ト云モノ也
宮崎竹助高門識
○安喜浦西浜八幡宮奉納板之写
奉寄進 当社
八幡大菩薩于時宝永四年丁亥十月四日八ツ未刻就大地震大
潮御国中浦郷江押入過半家財田畠流失并破損家之一巻
同廿六日山内主馬殿為御使者 御言上覚
土佐之国
（注、以下被害数宇が続くが本書〔南路志〕四三三頁と
同じにつき略す）
一潮押入申所
北ハ川筋横山限
西ハ八幡ノ前西由井之窪限
町ノ北ハ溝カ内限
一多門院寺床先規ヨリ高地潮不入在所之人々是ヘモ多ク逃
留
一地震不絶ユルギ去ル十月四日ヨリ明ル三月迄人民之身意
休ム事ナシ但正月閏月有
一氏神八幡山ニ人民住居之事
四日ヨリ八日迄日数五日之間前之住居へ帰ル事ナシ
一安田浦潮不入依之沖間ヨリ漁船人陸路ヲ見及申所八幡宮
神門之上ニ御幣立偏ニ氏神之誓難有依而御社俄ニ奉造営
事無限
一真宗真慶寺御堂六間四面之瓦葺地震ニ潰御本尊阿弥陀如
来傷ミ住持祐察再興仕候
但聖徳太子之御作ト有
一右時之御奉行
山内蔵人様
山内主馬様
五藤外記様
孕石主水様
一同御仕置
松下長兵衛様
仙石勝蔵様
右浦々就流失御介補為御見繕御役人数々入替々々御越即
餓之者共濡米男ハ一日ニ二合五勺女ハ一合五勺日数八日
分被成下頂載仕ル
一御国中流失材木 （此処文字不見）
元祖杉村孫左衛門義 （此処文字不見）
神主
杉村平太夫 書判アリ
右記所也
于時宝永五年戊子三月上旬
西浜村之庄屋
筆者 黒岩善助
岡村之改帖
寄進人 西野平兵衛 書判アリ
右三瀬栄七写加ヘル