地震史料集テキストデータベース

[未校訂]甲浦（室戸半島東岸）　大潮入り人家流失。
伊尾木・川北・安藝・赤野・和食　安藝郡―地震の爲倒壞家屋等
被害は相當大なりし趣なれども津浪の事實を聞かず。
浦戸灣内外（高知縣中央部沿岸）　高知市―十一月五日大潮入り
瞬く中、浦戸港地潮より三尺四、五寸高となり、城東新
町下知一圓海となる。津浪の害は輕微なりしも震災と火
災による被害は寳永の震災に劣らず。死者百〇六人を出
せしといふ。津浪は浦戸口より押込來り、先づ下知堤を
決潰して下町に侵入せり。十一月五日津浪起る。桂濱は
一軒も殘らず流出す。潮勢浦戸山にて防げるとの風説あ
り。而も餘波高く入り、人家座上より五尺上る。
浦の内灣内外　宇佐――五日夕刻より津浪襲來八、九度に及
び、人家漂流、殘家僅に六、七十軒、溺死の男女宇佐福
島を合して七十餘人なりしといふ。此の際山に逃れたる
ものは恙なく、衣食調度に留意したるもの、及び舟に乘
りたるものは流死せり。
須崎附近　須崎――地震は激甚なりしが、西町・新町・濱町・原
・古倉等の家屋は殆んど流失せり。死者三十餘人。久禮―
詳細は不明なるも海岸に接したる集團部落大半流失し、
多數の死者を出したるが如く、土民の中五十人許八幡社
山に登り難を免る。
上の加江附近　上の加江――海岸各部落に津浪襲來し、流失
家屋三五〇軒、倒潰家屋五〇戸、死者の記錄なし。
下川口附近　下川口――津浪の襲來せしは三回にして二回の
もの特に甚だ激しく、一度寄せて退きしときは下川口は
主碆、片粕は嶋碆、貝の川は浦の碆（今汽船の往來せる所）
を限り全く干潟となりしといふ。されど人畜の被害なか
りしは幸なり。
柏島附近　小滿目――四日より潮高く、五日大震、人家皆流
る。沖ノ島――五日大津浪侵入、庄屋三浦氏の米積船船
坂といへるに泊せしに、津浪の爲押流され、松の大木の
上など流れ行き、大深浦の山端にて自然と船坐り、兎角
する中干潮となり、三里許陸地を乘下り切戸より漸く海
に出づ。柏島――五日大震後山の如き大潮三度打來る。
稻荷社安産木の邊に至り退く。大潮退く後も平潮は猶一
尺餘の餘浪侵入し居れり。
宿毛附近　宿毛――海水山手に逹し人家全浸。