[未校訂]明和三年正月廿八日酉之刻大地震
今日天氣和らき元來雪厚く時分柄餘寒に候へとも、所々森條に霞厚くかゝり、一入春のきたる事と存候、然る所六ツ時否や乾の方よ〓〓〓、〓驚き百千の雷の如く、大地動揺して暫く不止、〓〓色黒く黄にして雲掩ひかゝり朦々として〓なく、殊に甚た火急の事にて遁れ出候間もなく怪我にて死傷の者夥數、戸毎に老少の女童とも悲傷号泣の声喧しく、其外鶏犬猫の類迄東西にかけ走り、鳴うめく声凄し、其内に潰火より出火にて四方に火の手上り誠に騒動いはん方なし、去共震動止事なく、既に曉迄二拾度餘に至、人々肝を冷し候事なり、
御家中は門内園の内、町家は街道の左右へ家々より各戸板畳等を持出し、老少幼少の者を夜具等にて圍置き、兎角して夜を明かし、火鉢或は雪の上に火を焚、やうやう朝飯など給候て、それより銘々假屋をしつらい住居せしこと既に四五日に至り候、尤雪消次第春風の戻には假屋をも幾度か掛直し住居せしなり、
二月四日江戸表ヘ九日振ノ御飛脚被差立此度大地震之儀公儀ヘ御届其大概
一、役所拾四ケ所一、寺三拾ケ所内五ケ寺津軽左近領分
一、青森〓塵一ケ所一、堂社十七ケ所
一、家五千四百九十七軒内三百九十四軒津軽左近領分
一、燒失寺四ケ所内一ケ寺津軽左近領分一、〓店六百八十二軒
一、半潰家三百五十五軒一、燒失家二百五十軒黒石共
一、土藏百九十八ケ所内在町百七十八ケ所伹黒石共
一、溜池水門三拾六
一、燒失土藏六十六一、水堤十三ケ所、
一、川除堤三千五百八十三間
一、山崩二ケ所
一、橋百三拾四ケ所内三拾四ケ所津軽左近領分
一、男女潰死千一人内五十四人津軽左近領分
一、出家死拾三人内二人黒石
一、男九人山歡崩二而死ス
一、同燒死三百一人内四十九人窯石
一、馬四百四拾七疋同二十八疋津軽左近領分
一、男女怪我百五十三人
此外御城内廻御破損等別紙にて御訴
明和三年二月八日大地震但廿八日以來なし拾度ニ拾度ツヽ震ヒ候得共、今日ハ別而強く、青森も地へ附く如く其ひヾき雷鳴にひとし、誠に二十八日以來也、此日先頃の破壞殘り或ハ危を免レ候、在町家々再び破損大壞に及ぶ、
同月地震ニ付弘前坐當四百人餘有之、内親類無えもの拾五人ヘ御米五俵ツ・被下候、