地震史料集テキストデータベース
（表紙）
「 甲ノ二 其三十冊
元禄十六癸未年
江戸日記
八月五日ヨリ十一月廿六日迄之日記、
十一月廿九日池端御屋敷ニ而焼失
十一月廿七日 」
元禄十六癸未年
十一月
廿七日己巳
天晴 地震昼夜動、小笠原佐渡守様〓昨日御奉書到来、依之今五時過御登 城被遊候処、於芙蓉間、御老中様御列座、小笠原佐渡守様被仰渡候は、去廿二日夜大地震付、 御城廻御破損、しまりとも不宜候、若出火等之節 御城向寄へ罷出、得指図可相勤旨也、右向寄之儀可申上之旨被仰聞候付、酒井左衛門尉様、御前、本多能登守様、板倉周防守様、板倉甲斐守様、松平対馬守様、御申合、大御目付中迄被仰達候、其所々、一橋外本多能登守様、神田橋外御前、馬場先御門外酒井左衛門尉様、田安御門外板倉甲斐守様、外桜田御門外板倉周防守様、常盤橋御門外松平対馬守様、御出障無之所ニ可有御座旨、被仰聞、 御城御下ニ為御礼御老中様、松平美濃守様、松平右京大夫様江御越
廿八日庚午
天晴 昼夜地震度々動、今朝月次之御礼、御城廻御修復有之付、相止候旨昨夕御奉書到来、無御登 城
廿九日辛未
天晴 昼夜地震度々、一昨日御用被 仰付候故、小笠原佐渡守様江御越被遊、御帰之節酒井雅楽頭様ヘ御見廻、即刻御帰駕、朝御膳過今度御用被 仰付候付、場所ヘ被召連候面々御目見、 御意之旨有、畢而右之儀付御条目之趣読聞候、今酉刻、小石川筋〓出火ニ付、神田御門之外ヘ御詰、然処従御老中様御奉書到来、火事場ヘ御越□、火御防御曲輪之内ヘ不入様ニ被成候様ニとの儀付、早速場所ヘ御越被遊、於筋違辺、三ケ所迄火御防止被成候而、又神田御門之外ヘ人数御集被成、夜明方迄右之所ニ被成御座、為御届御用番小笠原佐渡守様、松平美濃守様、松平右京大夫様ヘ御越被遊、右之節御覚書御持参、趣は
田丁ニ而酒依清左衛門殿屋舗并向頬町屋少々防止申候、以上
十一月廿九日 御名
此節御人数□、御先達而場所引取之夜明、直ニ御上屋敷ヘ被為入、御書院被成御座、御下屋敷類火付而也、深川御屋舗も類焼
十二月小
朔日壬申
天晴風有、地震昼夜度々動、昨夜之火事今昼前鎮、昨夕御奉書到来、例月之御礼無之旨ニ付、御登 城不被遊
二日癸酉
天晴 昼夜地震度々動、一昨夜之火事ニ而、水戸宰相様御屋舗焼失付、御見廻被遊、夫〓御下屋舗ヘ御越被成、焼跡御覧被成、早速御帰駕
三日甲戌
天晴 地震度々動、今早朝御老中様、松平美濃守様、松平右京大夫様、井上大和守様江御越被遊、是は寒入并火事窺御機嫌旁ニ御越也
四日乙亥
天晴 地震度々動、今度地震ニ付、御上屋敷大破、御下屋舗御住居被成度段、以御書付、阿部豊後守様ヘ大久保勘三郎様御頼、昨日被 仰上候処、今夕御留守居之者御呼、御下屋舗御住居御勝手次第可被成旨被仰聞
豊後守様ヘ被遣候御口上書
私上屋舗、就地震及大破候故、下屋舗住居仕候処、先月類焼仕候、依之上屋舗書院之内少宜所ニ当分罷在候、上屋舗ハ地狭御座候而家中之者少々指置申候、御用相勤候節下屋敷〓家中之者罷出候付、手支悪敷御座候、下屋敷往居仕候得は、家中之者一同ニ召れ罷出候、上屋敷居間〓奥方少々引取致家作、下屋敷住居仕度奉存候、上屋敷及大破第一地形悪敷罷成候間、早速修復出来兼申候、依之右之段御内意奉窺候、以上
十二月三日 御名
五日丙□
天晴 地震折々動、御屋方、御下屋敷ヘ御引取遊候付、御普請奉行藤田荘右衛門、森仁兵衛被 仰付候
六日丁巳
天晴 地震折々小動、黒沢団四郎儀、父六大夫病気大切之由申来候付、罷越見届申度段、奉願候処御暇被下置候
七日戊寅
天晴風有 地震少動、先月廿二日夜之大地震付、従村上為窺御機嫌、村上久兵衛今朝到着、則御目見披露、竹尾主馬、且又今度之地震并去月廿九日之火事ニ而御下屋敷類焼等之儀付、牧善左衛門、村上江御使被 仰付、帯刀大中老中ヘ御書被遣候、依之御暇被下、即刻発足
八日己卯
天晴 地震度々動
九日庚辰
天晴 地震時々動、今朝月次之御献上、塩鱈五以御使者苅部長左衛門被差上候、次御老中様方、松平美濃守様、松平右京大夫様江右御残被進候、今朝御膳過御出駕、阿部豊後守様、酒井雅楽頭様、被遊御見廻、御下屋敷江被成御座、従其、伊織様江被遊御越、夕御膳被召上、夜入御帰駕、今朝御出駕、今度御馬乗役被仰付之被召出候、橋本弥曽次郎、頃日村上〓到着、今日初而御礼申上披露、竹尾主馬勤候、今晩土屋相模守様より御奉書到来、則御請有、是は今朝御肴献上付而也
十日辛巳
天晴 地震折々動、少風有、昼時火事有之由ニ而、神田橋御門之外江御出被遊、早速御人数御引取、今夕土屋相模守様〓御留守居御呼、今度之火事地震ニ付御倹約之御書出一通御渡被遊
十一日
天晴 巳中刻 御前、御下屋敷御小屋懸江御移被遊、 御奥様申刻前御移被遊、依之諸士御祝儀申上、且村上久兵衛儀 御目見被 仰付、御暇被下置発足、新田又八郎、今日到着、是は地震ニ付伺御機嫌也
（中略）
十六日丁亥
陰晴 朝風有、亀山加左衛門、石原弥次兵衛、昨日従村上到着付而、 御目見被 仰付候、是日昼夜度々地震動
（中略）
十九日庚寅
陰晴不定、昨夜地震動、
（後略）
注、本史料は越後国村上藩榊原氏の江戸屋敷の日記である。日記の表紙には、八月から十一月二十六日までの日記が十一月二十九日の火事で焼失したと記されている。