[未校訂]64 ((一八五五)安政二年)十月 地震災につき関東取締出役より触
書
今般地震災ニ而御(1)府内始近在所々潰家焼失等混雑ニ乗
し、悪もの共可立廻も難斗、一同申合昼夜見廻リ心附若
怪敷もの見掛候ハヽ捕置最寄廻リ先ヘ可訴出候事
一諸(2)色直(値)段引上候もの有之候ハヽ、可申出候事
一諸職人作(3)料引上ケ申間敷候事
右之趣相心得最寄江可及通達、尤此廻状早々順達刻付を
以園十郎方ヘ可相返候、以上
卯十月十二日 関東御取締御出役
品川宿ゟ
箱根宿迄
右宿々役人中
別紙之通関東御取締御出役様方ゟ御(4)触書至来仕候間、小
前末々心得違無之様情(精)々御申渡可被成候、尤此写書弁を
以御返脚可被成候、以上
関(問)屋(5)次郎左衛門
年(6)寄市右衛門
惣代太兵衛
源右衛門
(中里 関山正二氏所蔵)
1[御府内|ごふない] 江戸城を中心としたその四方。品川・四谷
各大木戸、板橋・千住・本所・深川以内の地で、江戸
図ではその境界線を朱書きした 2[諸色|しょしき] 物価の意
3[作料|さくりょう] 材料費を含む製作の代価=賃金 4[御触書|おふれがき]
江戸時代の成文法比較的広く一般に触れるものをいっ
た 5[問屋|とんや] 宿役人の長 6[年寄|としより] 宿役人の一つ。問
屋を補佐する
解説 マグニチュード
六・九といわれる二月の江戸直下型地震によ
り物価や職人賃金の高騰を招いた。そこで関東取締出役
が品川宿から箱根宿までの各宿場に対して本文書の触書
を出す。