地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（注、記録者は津軽から江戸へ上ったばかりで地名の誤
記や訛り表記が多く見られる）
（表紙貼紙）「 安政二乙卯年
秘日記 」
（中表紙）「 安政二乙卯年
二月廿三日御国出立
三月十日着滞府中
秘日記
（欠損）日 」
珍事聞取日記
安政二乙卯年三月十日、江戸馬喰町三丁目幸手屋治
郎兵衛方江罷越候得者、同朔日小網町より之出火ニ
而同人類焼、深川熊井町仮宅ニ罷有候ニ付同所ニ止
宿、
（中略）
一、十月朔日御用ニ而御屋敷江罷出候事、
一、同二日之夜四ッ半時過と覚へし頃、寝刻未タ不眠内
震動いたし否哉、起上り帯締メ大小を引提迯去候す
る内、不一通相動き、二階之障子襖一時に倒れ、一
足歩行不叶、合役大森勝治郎両人ニ而覚悟極メ居留
リ候処、近所屋根瓦并土蔵壁落る音大山を崩ル如く、
其内少し動止二階を下り外江出候得者、止宿所西ノ
方江悉ク相曲リ候、然共怪我壱人も無之、咄合之内
出火之半鐘打夫より着替取仕舞、同宿江戸町湯屋斉
藤勇吉・青森米町勝島藤五郎四人連ニ而、大川端御
屋鋪勤番目付和田六郎兵衛方迄心差、横山町薬研堀
江出夫より米澤町罷通候処、往来江倒家有之、軒下
漸通抜、此年両国橋普請ニ而、仮橋江出候処、欄干
六七間落、橋板三四寸位開候場所弐ヶ所、東方橋た
もと寛く、其時早哉出火数拾ヶ所ニ而、天をこかし
白昼の如く、駒止橋・大川端通町家二軒往来江倒れ
漸通抜、藤堂和泉守様中屋敷裏辻番潰、同所地面四
五寸位所々割、内長屋潰夫より六郎兵衛方江参着替
相頼、勇吉・藤五郎附置、御蔵見廻之処、屋根瓦并
壁落、御長屋別状無御座、直様両人御上屋敷駆付、
横網通潰家ニ而往来不相成、先道江通懸り候得と、
藤堂様通用門并辻番所潰れ、亀澤町通御籏本町家共
所々潰有之、御上屋鋪表辻番所潰番人旁出罷有、夫
より西御門江入見候候（ママ）得者、同所・南江通御長屋潰、
御仲口・■所（ママ）御用所御臺所迄、夫より御休息長屋門
潰、奥者御三階下・御請座辺不残潰、南北之往来塞
り潰、木柄之上歩行、図書様江参候処、御玄関前御
固メ御逢之処、上々様御別状無御座段被仰承り、先
一安堵仕候処、其方とも無事ニ而、早速駆付大慶之
旨、御意難有、御禮申上、夫より三ッ目御屋鋪見聞
被仰付候ニ付、右序而兄久吉様迄参候処、御長屋無
事、
御立抜退御供番ニ而、御庭口ニおゐて御目ニ懸り、御
同意御無事之段一礼申述、三ッ目江参候処、同所御
門・西方御長屋残り、余者内外惣潰、所々ニ而家内
穿出居候得共、焼火無之、何れも夢中ニ而家内之下
ニ聞立罷有候得共、手不足之様子、右之段否哉駆付、
大夫様江申上、然ニ御向屋敷裏通并石原町前町表御
門通西方一丁先、御籏本屋敷右四ヶ所之出火ニ而、
御上屋敷危見廻候得者、御向屋敷板塀江早や燃移ル
計ニ付、又々申上候処、直様御供待中、防方被 仰
付候得共、一同之変事ニ付、潰込之人々穿出ニ取懸、
火事場ニ防之者壱人も無之、御徒七八人并両目付三
人御屋鋪守、鳶壱人・上総小人壱人・掃除小人壱人・
掃除小人壱・拙者とも都合拾六人ニ而防消、夫より
太夫江出候処、濱町御屋鋪見廻参候段被仰付、拙者
駆付、両国橋・矢倉山伏井戸通罷通候処、此辺潰家
并土蔵壁大半落、同所杉田玄瑞熟（ママ）潰居候ニ付、蘭学
稽古登（ママ）佐々木元弟、如何と心得通懸、声掛ケ候得者、
被穿出助命之由ニ而、潰家之上ニ罷有濱町御屋鋪御
門前参候処往来三四寸位地割御屋鋪江入勤番目付相
尋様子承候処御隣屋敷水野出羽守様中屋敷内少々焼
如何ニも危御座候処早速鎮火之由然ニ空腹ニ及奈良
與惣平・賄受夫より段々奥通江相廻候処御玄関前并
御壺所御休息口御住居潰御長屋壱棟残余者潰、
御隠居様御庭江御立退潰込之面々即死之外何れも被
穿出罷有候夫より大川添御門出罷帰候処一橋様下屋
敷敷（ママ）物見長屋往来江倒れ屋根這上り通抜両国江出亀
澤町ニ而太夫并兼松伴太夫殿行逢右之段申上御上屋
敷江罷帰候得者早御飛脚被差立候由ニ付御玄関御白
砂ニおゐて小頭江一通書面認差出其頃御臺所・[焼|タキ]出
一統江被下罷有候、夫より御屋鋪内相廻見候処（不、欠カ）潰御
長屋迚も悉く相痛住居不相成東御長屋別而相曲り同
四日夜何となく■御住居脇・拾四五間相潰先ッ差当
り可也住居相成候御長屋者御徒部屋通壱棟右向并西
御門・北ノ方楠庄司殿御長屋計随而同所後江御家老
津軽図書殿引続御用所と召付申候右見廻り中早や夜
明太夫御用多ニ而御逢不相成候ニ付其内鳥渡止宿江
罷帰取残置品片付又々御屋鋪江出朝五ッ時頃、
一、同三日潰御長屋之怪我人取調被 仰付両人同道取調
之処
一、壱人 ○ 御近習坊主 大高寿孝
一、壱人 ○ 勘定人 瓜田弁次郎
一、壱人 ○ 楠殿用達 西村末吉
一、壱人 ○ 釜萢福次郎家来 孫吉
一、壱人 後死 御坊主 近藤茂徳
一、壱人 ○ 右同 福士寿三
一、壱人 当番 御医者 渡邊昌盈
一、壱人 ○ 勘定所小人 勇七
一、壱人 表辻番
右者御上屋敷潰死之面々、○是者勤番、
一、壱人 ○ 御臺所受拂 平沢菊治
一、壱人 ○ 御馬屋 藤村林太郎
一、壱人 ○ 杖突加勢 清野鉄太郎
一、壱人 ○ 御休息小使 友三郎
一、壱人 ○ 同 吉蔵
一、壱人 ○ 同 清吉郎
一、弐人 山澄清蔵并母
一、■壱人 菱川祐蔵 母
一、壱人 武原龍弥 妻
一、壱人 ○ 板之間小姓 石戸谷萬蔵
一、壱人 ○ 右 同 和徳村治三郎
一、壱人 ○ 御陸尺 元助
一、壱人 ○ 同 元吉
一、壱人 ○ 同 繁三郎
一、壱人 ○ 同下小使 久吉
一、壱人 須川龍伯 下女
一、壱人 井崎清寿 弟
一、壱人 浅野良蔵 娘
右者濱町御屋鋪潰死、
一、弐人 石橋鑚吉郎母并祖母
一、三人 藍原勝次郎倅之妻、次男小児
一、弐人 安藤寅太郎并嫡子
一、弐人 白井才兵衛并娘
一、壱人 吉川鉄次郎 忰
一、弐人 桜井市蔵母并二男
一、弐人 井上宗水妻ニ子供
一、弐人 平野金吾召使子供弐人
一、壱人 坂本幸七 姉
一、三人 伊藤銀三郎妻、娘弐人
一、壱人 小田切周助 母
一、四人 嶋田左吉 祖母ニ母、娘、孫
一、壱人 伊藤濱右衛門
一、弐人 渡辺新之丞娘ニ忰
一、四人 飯田勇馬妻ニ弟、子供弐人
一、四人 衣笠俊蔵子供三人、下女
一、弐人 秋山傳之助妻ニ二男
一、弐人 田中六之助娘弐人
一、三人 坂巻並衛妻ニ子供弐人
一、壱人 和田清吾 子供
一、壱人 青山藤治郎 娘
一、壱人 大内忠之進 祖母
一、弐人 木村栄吉妻、伜
一、壱人 吉沢小三郎 子供
一、壱人 前田善次郎 妻
一、壱人 向屋敷 北川六左衛門 娘
右者、三ッ目御屋鋪潰死、
右潰死外之面々者、則夜八ッ時頃迄ニ、互ひニ相救、
穿出候得とも、怪我人不少有之、御側役石川藏次郎
諸御屋鋪見廻、
御薬頂戴并則夜
屋形様御上屋鋪被為遊、御廻濱町、
御隠居様より同所御屋鋪中江順気散壱服・手拭壱筋
宛頂戴被仰付、潰死之面々者四日迄ニ不残穿出、御
上屋敷御物見脇明長屋江取賦、自葬兼候面々者御物
入ニ而、本所法恩寺脇寺善行院江相葬申候、猶亦右
変事ニ付一統江則夜より同十三日迄御賄被下置候
処、大数四万三千三百弐拾三人一日七合五夕入用米
百八石三斗七合余御入用、
一、翌日両御屋鋪共御庭之内江御役所仮小屋相建、御同
所江御住居御家中潰御長屋之面々家財穿出ニ取懸、
尚亦数拾人人足入込仮小屋相建候得共、作事方手合
兼候ニ付、銘々右木柄を以取建候族多分有之、然ニ
同五日材木并柾積入御廻船必着至極御都合格別御買
入品無御鉎仮小屋早敢取十日頃迄ニ大体仮住居出来
申候得共、同廿日頃迄、諸御屋敷共往来片付不申、
潰所之上通路の事ゆへ、御出入町人共、御手伝人足
差出、塵芥取片付、其上潰所入札之上、取片付ニ相
成、十一月十日頃迄ニ而、漸々手広に相成、穿建長
屋御手配ニ相成、尚又残御長屋曲り直し取建罷有候
処同廿一日より作事役并鳶職人共七拾人位追々罷登
御上屋敷御殿廻大破ニ而柱折損迚御手入相成兼御居
間并御休息御台所・御玄関口之外御座敷廻御取毀し
ニ相成御三階弐ヶ所共平家仮御手入ニ相成申候、濱
町御屋鋪御殿廻長屋共二階家切下り平家ニ相成申
候、
一、同三日之夜より仮小屋出来不申内者、往来并手広之
所江露凌廻り者戸障子屋根江風呂鋪淕紙之ものを
張、夜々相凌尤潰不申族共当分町々ニ至迄右様之躰
ニ而相凌候ニ付、夜分往来之内殊之外賑々敷何方も
戸〆無之候得共、無用心なる事無御座候、
一、地震ニ付、公儀御城之内大破殊ニ諸大名不一通相痛
候処より三日并玄猪其外登城共出仕ニ不及旨被仰出
猶亦御暇年ニ無御座共、勝手ニ在所暇願差出候段被
仰出、南部美濃守様抔者焼失ニ付御住居無之十一月
九日御下向被成候、其外公辺御届事寒気御見舞者御
老中御仮宅迄使者を以相届候様被仰出候事、
（中略）
十月二日、地震ニ付、御府内痛所并即死左ニ、
一、御本丸御玄関前并奥向所々大破之由、内外土塀崩、
御門之壁落、石垣寛き、堀添石垣所々崩れ、［和田倉
（抹消線アリ）］桜田御門落、西御丸矢倉壱ヶ所崩候、
其外御矢倉大体壁落申候、夫より常盤橋御門内より
寅ノ御門迄、丸之内大名衆屋敷之殊之外相震出火
所々有之、
一、表長屋角少し潰、 神田橋内 酒井左衛門尉
一、脇長屋潰余残、死亡三四人位、
神田橋内 小笠原左京太夫
一、表門并物見残、余者向屋敷共惣焼、死亡百弐三拾人、
女中三拾三人、後ニ男女共千人余許有之、
大手向 酒井雅楽頭
一、惣焼、死亡弐拾七八人位、
辰ノ口北角 森川出羽守
一、外長屋少々ツゝ弐ヶ所潰、 清水様
一、表長屋三ヶ所潰、 一ツ橋様
一、表長屋少々潰、 鍛冶橋内 鳥井丹波守
一、 大名小路 久世大和守
一、表長屋少々残り余ハ惣焼、死亡拾弐三人、大書院残
る、 辰ノ口北角 阿部伊勢守
一、表長屋潰、死亡五六人、
大名小路 松平内蔵頭
一、内少々、表長屋潰、 大名小路 織田兵部少輔
一、表通潰、 大名小路 小笠原左衛門佐
一、惣焼、死亡六七拾人、
大名小路 遠藤但馬守
一、御殿之方残、半焼半潰、
八代州かシ 松平相模守
一、表長屋残、余ハ潰、死亡七八拾人、
ヒゝヤ御門内 牧野備後守
一、惣焼、 ヒゝヤ御門内 本多中務太夫
一、半潰、 八代シカシ 土井大炊頭
一、惣焼、 スキヤバシ内 永井遠江守
一、表門潰、 スキヤバシ内 松平右京亮
一、東西角長屋少々潰、内大破、死亡仲間弐人、
西ノ丸下 本多安芸守
一、惣潰同様、死亡五六人位、
西ノ御丸下 牧野備前守
一、惣潰、死亡五六人、
西御丸下 本多越中守
一、半潰、死亡拾人位、 右同 酒井右京亮
一、半焼、半潰、死亡弐拾人位、
西御丸下 内藤紀伊守
一、惣焼、死亡百三十人位、後ニ千人余許、
馬場先 松平下総守
一、表通少々残、余ハ惣焼、死亡百七十人位、又ハ三百
人と申唱、車ニ而、寺江三荷相送、後千弐三十人位
有之、評説、 和田倉御門内 松平肥後守
一、内少々潰、 永田バゝ 京極備中守
一、土壁潰、 トラノ門内 松平伯耆守
一、表通少々焼、 外桜田 亀井隠岐守
一、惣焼、 外桜田 伊藤修理太夫
一、御殿少々潰、裏過焼、桜田 北條相模守
一、長屋少々残り、余ハ焼潰、
外桜田 朽木近江守
一、惣焼、表門并長屋少々残、女中并中ニ而弐百人位、
馬拾弐匹、 幸橋内 松平時之助
一、惣焼、死亡三拾人位、
外桜田 南部美濃守
一、惣焼、死亡拾弐三人、 右同 有馬備後守
一、半焼、 外桜田 丹羽若狭守
一、長屋少々潰、内無事、 蔭州 装束屋敷
一、内不残潰、外長屋少々残、
幸橋内 鍋嶋紀伊守
一、南長屋少々潰、裏過并内所々潰、
カシミガセキ 松平安藝守
一、表門過、北之方不残潰、裏少々潰、
カスミガセキ 松平美濃守
一、表通少々潰、内所々痛、
外桜田 大岡越前守
一、北長屋より東江少々潰、余ハ残り、
外桜田 板倉周防守
一、長屋少々潰、内無事、御住居裏之方少々焼、火元ニ
而鍋嶋へ移る、 ヒゝヤ御門外 松平大膳太夫
一、惣焼、死亡八十人位、
山下御門内 松平肥前守
一、御殿并長屋少々残、余ハ惣焼、死亡四五十人位、
山下御門内 阿部播磨守
右屋鋪之外、屋根瓦、土塀崩候得、外堺廻宜、尚又
何方茂不潰共、内外大痛、
一、浅草見附内より筋違見附日本橋迄、夫より江戸橋境
町通塩町石町辺石町辺町々、相應震ひ強、土蔵屋根
瓦落候得とも、多分者昨年之焼ニ而新家勝ニ付、潰
家不（ママ）足、尤神田少々震弱く様子見得候得共、古家裏
店相潰、其外何方茂大破曲り家多し
一、台所廻少々痛、外土堀崩、
元誓願寺前 細川玄蕃守
一、表門土堀崩、奥向痛、
右同 市橋下総守
一、筋違内神田橋御門外小川町・飯田町・小石川御門内
迄者、震き強く籏本屋鋪惣潰同様夫より番町江出、
糀町辺迄軽く屋根瓦も格別落不申、駿河台とても家
蔵壁落候得共、潰屋敷不足、
一、表門并長屋少し潰、土蔵不残崩、死亡三人、
筋違内 酒井修理太夫
一、外廻無事、内所々痛、
筋違内 青山下野守
一、土塀崩、内長屋大破、
スチかいバシ内 土井能登守
一、土塀崩、長屋所々痛、
筋違内 松平左衛門尉
一、外廻宣、内大破之由、
スルガタイ 松平備中守
一、内長屋少々潰れ、 小川丁 稲葉丹後守
一、表通長屋大破、土塀崩、
小川丁 土屋釆女正
一、表通并脇長屋残り、壁新ニ而潰不申ニ惣焼、
小川丁 戸田大炊頭
一、表門潰、前通長屋玄関前残、半焼、
小川丁 本多豊後守
一、玄関前潰、内長屋所々潰、
一ツ橋外 板倉伊豫守
一、表長屋半分通残、半焼、玄関・大書院潰、奥向大破、
死亡三人、 一ツ橋外 榊原式部少輔
一、表通残り、余ハ不潰ニ類焼、
小川丁 内藤駿河守
一、潰、惣焼、死亡五六十人、馬拾弐疋、
一ツ橋外 松平豊前守
一、表門通長屋并書院・玄関残り、余ハ惣潰、死亡弐三
拾人、 雉子橋外 小出信濃守
一、惣潰、丸焼、死亡八九拾人位、
小川丁 堀田備中守
一、玄関并長屋少々潰、
牛込御門内 米倉丹後守
一、表門脇土蔵・長屋潰、向屋敷・表通長屋潰、死亡七
八人、 小石川御門内 松平讃岐守
一、表長屋少々潰、 小石川御門内 岩城伊豫守
一、脇長屋残り、表門并土手通長屋潰れ、余ハ惣焼、死
亡女中并家中不少、夜分之内、弐拾人余なく不掛候
得共、退出候ニ付、人数不相分、
右同 松平駿河守
一、番町辺井糀町辺、大名屋敷格別痛無之、
一、小石川辺より市ケ谷・牛込辺迄大破潰家多し、
一、表門脇下馬潰、外廻土塀崩、内長屋所々潰、表門潰、
死亡五六拾人、 小石川御門内 水戸中納言
一、土塀崩、内半潰、 水道バシ外 青山大膳亮
一、内台一ケ所潰、裏通長屋大破死亡弐三人、
市谷御門外 尾張中納言
一、内長屋所々潰、 四ツ谷イガ丁 松平攝津守
一、玄関前門潰、青山通表長屋壱ケ所潰、死亡五六人、
赤坂筋違 紀伊中将
一、長屋下石垣土塀崩、
赤坂ヤゲン坂 松平左兵衛□
一、右之外、籏本屋鋪右近辺不少御座候得共、四ッ谷并
青山殊之外震き弱く、松平左京太夫同近江守殿屋鋪
辺、町屋共痛所格別無之、四ッ谷・伝馬町通并紀州
様表門前井戸流留り、水道痛損、往来ハ井戸之如く
所々江穴明き、糀町より四ツ谷御門内江流無之、否
哉、穿立普請最中ニ而有之、
一、霊岸島より築地迄八丁堀元材木町弐三町焼拾軒町松
平淡路守様火元ニ而壱丁余類焼町家格別潰不申大破
本願寺無事脇寺弐三寺潰、
一、玄関潰外長屋不残曲り、門大破、
北八丁堀 九鬼式部少輔
一、外長屋大破、土蔵五六ヶ所潰、
北八丁堀 松平越中守
一、表通土塀并門痛、
南八丁堀 本多隠岐守
一、表通土塀崩、門玄関潰、
南八丁堀 伊達若狭守
一、土塀崩、 木挽丁 加納備中守
一、北通長屋少々痛、 築地 稲葉兵部少輔
一、土塀并土蔵痛、 木挽丁塩留橋 奥平大膳大夫
一、惣潰惣焼、死亡小人弐人、
鉄砲洲十間丁 松平淡路守
一、内外長屋三棟潰、死亡三十人位、
鉄砲洲 中川修理大夫
一、東長屋潰、死亡壱人、
鉄砲洲 松平周防守
一、表長屋一ヶ所土蔵五六ヶ所潰、
鉄砲洲 松平遠江守
一、門大痛、 南八丁堀 堀長門守
一、寅御門外より愛宕下幸橋外より増上寺表門前近辺丸
の内より震き弱く、大長屋鋪町家共潰所不足拾ヶ一
位ニ而長屋外廻何方も宜、然共多分内者相痛増上寺
境内土塀屋根瓦落候計、
一、玄関潰、土塀崩 愛宕丁藪小路 相良志摩守
一、玄関潰、内所々大破、
愛宕下藪小路 木下飛驒守
一、外廻土塀崩、内所々大痛、
新シ橋外 京極佐渡守
一、内長屋壱棟潰、死亡三人、
藪小路 加藤越中守
一、門脇土塀崩、 愛宕下 片桐助作
一、門長屋少々痛、 愛宕下 池田中務少輔
一、長屋曲リ玄関潰、 右同 秋田安房守
一、玄関曲り門大破、 右同 米津相模守
一、表通宜、表門前大痛、内長屋三棟潰、死亡五人位、
芝宇田川丁 有馬日向守
一、外廻無事、内大痛、
増上寺表門前 柳生対馬守
一、屋根瓦落、内大破、
愛宕丁二番丁 分部若狭守
一、表門潰、奥向内長屋大破、
愛宕下 毛利讃岐守
一、内長屋弐三棟潰、 アタゴ下 田村右京亮
一、脇長屋弐棟潰、 愛宕下 井上遠江守
一、内所々痛、 アタゴ下 酒井下野守
一、玄関潰、内三棟残り、余ハ潰、死亡三十人位、
幸橋外 溝口主膳正
一、日本橋より高輪通ハ芝口弐三丁目迄往来之内格別潰
家無之裏店小路々不少相潰、南伝馬町京橋岸迄西者堀
端より東ハ材木町迄四町位焼失死亡三拾人位夫より金
杉辺迄者不少相痛日影丁神明前抔者半分通潰家ニ而往
来差留り同所より芝舟町壱町四方焼失死亡三四拾人夫
より高輪迄震弱く屋根瓦土蔵壁落候迄ニ有之、薩州様
屋敷より赤羽根白銀台町辺ハ震き弱く町家者格別潰無
之大名屋鋪ハ外廻生子壁大半落候、
一、内外格別痛無之、表土塀崩、
芝口一丁目 脇坂淡路守
一、百間蔵潰、内長屋大体大曲り、
芝口三丁目 松平陸奥守
一、表門潰、内長屋四棟潰、外廻土塀崩、死亡五十人位、
芝明神海手 森越中守
一、外廻土塀崩、内大痛、
増上寺海手 関但馬守
一、土塀崩、 増上寺海手 大久保加賀守
一、外廻無事、内所々痛、
芝新ハヾ 遠山美濃守
一、内所々潰、 芝新堀 織田安芸守
一、外廻土塀崩、上中下屋敷ニ而死亡五人、
芝新ハヾ 松平薩摩守
一、内外長屋弐ヶ所潰、余ハ大破、死亡三人、
三田新堀端 松平祐之進
一、内長屋弐ヶ所潰、余ハ大破、死亡三四人、
芝三田 水野大監物
一、土蔵壁屋根瓦落、
三田四国丁 内藤山城守
一、内長屋弐三棟外長屋弐ヶ所潰、余ハ大破死亡四五人、
三田通右角 有馬中務大夫
一、内所々痛、 芝新堀 黒田甲斐守
一、表門前土塀崩、 三田小山 織田舒丸
一、長屋生子壁落、内所々痛、
三田小山 嶋津淡路守
一、屋根瓦落、内所々痛、
三田本川橋 青木甲斐守
一、屋根瓦落、内所々痛、
白銀台 織田豊後守
一、品川御台場弐番目御固メ松平肥後守様陣家土中江埋、
同十日頃迄大煙立上り死亡四拾人位、其外御台場別条
無之、品川宿潰家拾八軒、死亡六人有之、
一、赤坂溜池近辺より同今井谷夫より麻布・龍土・南部
坂・六本木・芝新堀・同切通し・西窪近辺殊之外動き
弱く町家者常体屋根瓦土蔵壁少々落候迄ニ而大名屋
鋪々之内、
一、屋根瓦大半落、内大破、
赤坂今井谷 毛利淡路守
一、表門落物置長屋少々潰、表通土塀不残崩、
西ノ□□ 松平右近将監
右之外大名屋鋪者外廻土塀崩、又者屋根瓦・土蔵壁・
生子壁抔者落、格別之儀無之、尤右長屋等ハ大痛之屋
敷も有之、
一、浅草見附より千住迄之内、花川戸辺[迄|ニテ]往来之内、格
別潰家無之、裏店多分潰、同所より新鳥越出口迄表裏
共大半相潰、浅草黒船町より駒形迄焼失、花川戸より
猿若町之芝居焼る、夫より馬道・田町・吉原迄一圓焼
失、死亡不少、尤吉原郭内ニ而、遊人之外千七百人位
死亡之様子、同所田甫六郷筑前様表長屋残り内惣潰、
夫より簑輪通三ヶ一潰、坂本壱弐丁焼ル、小塚原入口
壱丁四方焼失、同所并千住宿往来左右ハ稀ニ潰家有之、
裏通朽家之分者大半相潰、死亡弐百人余有之、同所御
本陣大破、定宿伊勢屋甚兵衛表通不残潰召使壱人死亡、
同所右変事に付、馬継立不相成、同十二日迄下り之外、
往来差留ニ相成、
一、浅草諏訪町より裏通下谷阿部川辺并本願寺高徳寺表
坂本迄町々七歩通潰家、寺々者大寺之外大半相潰本願
寺筋向東屋橋岸一丁四方焼、夫より下谷三味線堀近辺
御徒町和泉橋浅草寺越辺堀出潰家無之候得共、大概ニ
痛損右場所大名衆ニ者、
一、表門潰、内長屋所々潰、死亡五六人、
浅草鳥越 松浦壱岐守
一、外長屋壁落大破、 浅草鳥越 池田内匠頭
一、外廻宜内所々痛、 向柳原 堀石見守
一、脇長屋不残潰、死亡拾四五人、
向柳原 藤堂佐渡守
一、門長屋所々潰、 右同 宗対馬守
一、外廻長屋壁落、 向柳原 藤堂和泉守
一、外廻土塀土蔵壁落、
下谷御徒丁 加藤於菟三郎
一、外廻大破、 下谷三味線堀 柳沢弾正少弼
一、脇長屋少々潰、余ハ無事、
下谷三味線堀 大久保佐渡守
一、玄関潰、内長屋少々潰、死亡五六人、
下谷御徒丁 立花飛驒守
一、外土塀崩内痛、 浅草新寺丁 戸田因幡守
一、外廻土塀土蔵壁崩、
下谷七軒丁 佐竹右京太夫
一、内外惣潰死亡拾弐三人、
浅草新堀末 加藤大蔵少輔
一、外廻宜、内長屋庇所々落、
向柳原 井伊兵部少輔
一、同断、 浅草鳥越 佐竹左近将監
一、同断、 浅草寺町 松前志摩守
焼失故仮住居
一、同断、 浅草諏訪町 大岡兵庫頭
一、上野下御成街道より池之端本郷牛込辺者上野三枚橋
より下谷中御徒町長者町迄七八丁位一円焼ル、筋違外
町々者大痛潰家不足、池之端より根津迄ハ惣潰同様下
谷茅町三四丁焼失、上野境内鐘楼堂石垣寛き土塀崩候
迄ニ而格別痛無之谷中天王寺辺弱く夫より本郷并傳通
院通音羽牛込辺殊之外弱く土蔵壁落候而已、潰家稀ニ
有之、右之場所大名衆之内、
一、外廻宜、内惣潰、死亡七八人、
下谷大小路 堀丹後守
一、表通土塀崩、打ち所々痛、
下谷御成小路 酒井安芸守
一、半潰余、死亡百人位、
下谷大名小路 黒田豊前守
一、御殿少々残り惣潰、裏奥少々焼ル、死亡弐十人
下谷広小路 井上飛後守
一、惣潰半焼表門残り死亡百五十人、
下谷大名路 石川主殿頭
一、表門脇長屋少々潰、死亡三四人、
下谷池端 板倉摂津守
一、半潰、死亡拾八九人、
湯嶋天神下 大関信濃守
一、表長屋半分通潰、内少々潰、死亡弐拾人、
神田明神下 建部内匠頭
一、表通長屋壱棟潰、内大破、
神田明神下 内藤豊後守
一、惣潰同様、 下谷池ノ端 喜連川左馬頭
一、内長屋所々潰、余ハ大破、
池ノ端 松平大蔵少輔
一、内所々大痛、 下谷池ノ端 松平備後守
一、裏長屋弐ヶ所潰、内所々痛、死亡三人、
本郷五丁目 松平加賀守
一、表長屋残り、余ハ惣潰死亡六七人、
小石川トミ坂 松平丹後守
一、表長屋残、余ハ潰、死亡三四人、
小石川ヒ田坂 小笠原信濃守
一、表廻大破、内大痛、
小石川ヒ田坂 松平豊後守
右之外松平播磨守様、同大学頭様、同大炊頭様、柳沢
民部少輔様辺震弱く別而破損之場所無之町家も同様潰
所無之、
一、浜町辺屋鋪々並町家共大痛川添地面三寸位ツヽ割候
場所有之、
一、玄関潰、内所々痛、
カキカラ丁 堀出雲守
一、表通土塀崩、玄関潰、内脇長屋潰、死亡三四人、
元矢倉 永井肥前守
一、表門玄関潰内所々痛、死亡七八人、家老壱人、
濱丁 安藤長門守
一、表通長屋并内三ノ一潰、死亡七八人、
カキカラ丁 林肥後守
一、表通長七八拾間潰、死亡三人位、
ハマ丁 牧野遠江守
一、玄関并御殿半潰、死亡壱人
濱丁 新庄亀次郎
一、裏通残、御殿潰、死亡三人、
濱丁 井上河内守
一、本所深川辺者御籏本・御家人屋鋪小住居屋根瓦無之
家者潰不申、然共大体大痛町家者何方も七分通潰家残
所迚も住居不相成程之大破、出火者本所緑町壱丁目よ
り花町迄外ニ花町向側御籏本屋鋪壱ケ所、石原并法恩
寺橋岸天神橋岸焼失、深川者六間堀より森下町高橋岸
迄焼失、永代橋川岸相川町より八幡宮社脇迄弐丁拾丁
位焼失、其外少々宛焼跡間々有之、寺々者大寺之外大
半相潰御府内中之大痛、
一、表長屋潰、内大破、死亡四五人、
大川端 松浦豊後守
一、表長屋計残、余ハ取潰、死亡六七人、
深川高橋 立花出雲守
一、御殿潰、所々大破、
三ツ目 津軽本次郎
一、船長屋潰、御殿大破、
石原 奈須与一
右之外、書加江無之大名衆者、格別痛無之、然共何方
茂屋根瓦土塀様々痛有之、前書大痛之場所辺ニ有之候
中・下屋敷者別而多潰、其外旗本屋鋪夥敷潰候得共相
略、常ニ出火無之古家場所者、町家たりとも潰家多、
土蔵者何方与而□モ壁震落大破、随而出火之場所者残土
蔵一切無之焼失、尚又潰不申共、御府内中家ハ大体曲
り候
ゆへニ、後往来左右□□はり・柱ニ而、夜分往来甚難
渋いたし、尤田舎江出、東海道金川宿・奥州道中者栗
橋土居所々崩候得共潰家無之、下総者中川辺迄少々震
き、岩槻城下者土蔵壁落ち、甲州道中者板橋辺迄少々
震き候事之由、
一、御救小屋、浅草雷門前・幸橋御門外・上野山下・深
川海辺大工町・同八幡宮境内外・東叡山御救小屋共、
都合六ヶ所江六棟位ツヽ相建候、
一、御大名之内、立花出雲守様隠居・酒井雅楽守様奥方
潰死、其外怪我之御方茂有之、水戸臈中御用人藤田清
之丞・戸田忠大夫潰死、［松平下総守様御嫡子・民部大
輔様、三日迄逝去（抹消線アリ）］、小笠原信濃守様奥
方潰死、其外色々風聞有之候得とも、実説無之ニ付相
略、前書屋敷之死亡茂大体取包置、聊ニ申唱公辺江御
達茂、千人有之候得者七八拾人より書出不申候ニ付実
意不相分、小川町辺大名衆并御旗本屋鋪ニ而壱万人程
茂有之由、別而焼失之屋敷者死亡多、俵詰ニいたし取
賦候処より、寺ニ而茂員数不相分由、大名衆者中・下
屋鋪所々ニ有之処、上屋鋪ニ死亡無之共中・下屋敷ニ
不少御座候、
一、向嶋辺萢地之処より地面割、泥吹出候所も有之由、
土蔵大半崩、
一、御府内町々死亡之者、番組町内より御達之表左ニ、
壱番組、本石丁三丁目・本銀丁・鎌倉町・新革丁・
本両替丁・品川丁・室町・本船丁・按針丁・岩附丁・
鉄砲丁・大伝馬丁・小網丁・箱崎丁・新材木丁ニ而、
〆変死八拾壱人、内男四拾壱人、女四拾人、
潰家百三拾三軒、潰土蔵弐拾三ヶ所、
一、弐番組、葺屋丁・堺丁・新乗物丁・橘丁・久松丁・
田所丁・神田紺屋丁・紺屋丁三丁目・横山丁弐丁目・
米沢丁・高砂丁・小伝馬丁・馬喰丁・神田松枝丁、
〆変死八拾九人、内男参拾壱人、女五拾八人、
潰家壱百八拾五軒与六拾壱棟、潰土蔵五拾七ヶ
所、
一、三番組、浅草平左衛門丁・同所草丁壱丁目弐丁目・
同福富丁・黒船丁・阿部川丁・諏訪丁・駒形丁・並
木丁・三軒丁・浅草田原丁・東仲丁・同所材木丁・
花川戸丁・聖天丁・浅草田町・南馬屋丁・誓願寺門
前門後表門脇・山宿六軒丁・浅草丁・新鳥越丁・橋
場丁附支配今戸丁、
〆変死五百六拾六人、内男弐百六拾三人、女三百
三人、
潰家千四拾七軒、潰土蔵四拾壱ヶ所、
一、四番組、西川岸丁・呉服丁・日本橋音羽丁・坂本丁
三丁目・桶丁・箱屋丁・佐内丁・檜物丁、
〆変死拾五人、内男七人、女八人、
潰家四拾弐軒と三棟、潰土蔵七ヶ所、
一、五番組、大鋸丁・中橋広小路丁・同二丁目三丁目・
桶丁・五郎兵衛丁・畳丁・北紺屋丁・本材木丁・鈴
木丁、
〆変死弐拾七人、内男拾人、女拾七人、
潰家六拾六軒、潰土蔵八ヶ所、
一、六番組、銀座丁・尾張丁・与作屋敷・弓丁・西紺屋
丁・新肴丁・南端丁・惣十郎丁・加賀丁・木挽丁、
〆変死八人、内男六人、女弐人、
潰家六棟、潰土蔵五ヶ所、
一、七番組、南茅場丁・同新堀・同濱丁・本陸丁・南小
田原丁・霊岸島浜丁・本八丁堀・永沢丁・佃嶋丁・
南八丁堀壱丁目・築地上柳原丁・幸丁、
〆変死六拾七人、内男拾九人、女四拾八人、
潰家百五拾六軒、潰土蔵弐拾六ヶ所、
一、八番組、芝口壱丁目三丁目・露月丁・芝井丁・宇田
川丁・神明丁・芝浜松丁・増上寺中門前・兼房丁・
備前丁・桜田和泉丁・同曽右衛門丁・同久保丁・西
久保・萱手丁、
〆変死七拾九人、内男四拾弐人、女三拾七人、
潰家四百九拾四軒、潰土蔵六拾三ヶ所、
一、九番組、芝森元丁・同金杉・本芝・芝西應寺町・同
松本丁・飯倉丁・麻布長坂丁・同本日ヶ窪丁・同本
村丁・同田嶋丁・三田同網町・三田壱丁目・芝田丁・
同東町、
〆変死拾八人、内男五人、女拾三人、
潰家百拾五軒、潰土蔵拾四ヶ所、
一、拾番組、麻布市兵衛丁・同谷丁・今井丁・白銀台丁・
永峯丁・品川台丁・高輪丁・渋谷広尾丁・宮益丁・
道玄坂丁・龍土町・桜田丁・青山久保丁、
〆変死拾壱人、内男五人、女六人、
潰家弐拾九軒、潰土蔵無之、
一、拾壱番組、神田蠟燭丁・同雉子丁・同多丁壱丁目・
永富丁・多丁弐丁目通・新石丁・平永丁・小柳町・
佐駒木丁・宿山丁、
〆変死七拾三人、内男弐拾八人、女四拾五人、
潰家百五拾四軒、潰土蔵三拾弐ヶ所、
一、拾弐番組、神田佐久間丁・同三丁目・内駒籠丁・湯
嶋壱丁目・本郷壱丁目弐丁目三丁目四丁目五丁目、
〆変死拾壱人、内男五人、女六人、
潰家六拾七棟、潰土蔵六ヶ所、
一、拾三番組、湯嶋同朋丁・下谷山嶋（ママ）丁・御切手丁・池
端七軒丁・天神門前丁・下谷上野丁・上野仁王門前
丁・同所大門前丁・池端仲丁・下谷茅丁壱丁目・同
坂本丁・同金杉上丁・同数寄屋丁・谷中丁・下谷過
新丁・同龍泉寺丁、
〆変死三百七拾弐人、内男百六拾壱人、女弐百拾
壱人、
潰家千五百弐拾五棟、潰土蔵百三拾八ヶ所、
一、拾四番組、小石川春日丁・上富坂丁・傳通院表門前
丁・小石川金杉水屋丁・同戸嶋丁・本郷菊坂丁・駒
込片丁・同所浅賀丁・巣鴨仲丁・同所原丁壱丁目・
小石川大塚上丁・同御簞笥丁・大坂丁・小日向清水
谷丁・小石川傳通院前今別院門前・小石川原丁蓮花
寺門前・駒込吉祥寺門前・同所骨丁・巣鴨丁祥雲寺
門前・谷中威應寺門前・同所中門前・同王林寺門前・
同所威（ママ）應寺古門前丁・音羽町・谷中九ヶ寺門前、
〆変死三拾壱人、内男拾壱人、女拾九人、
潰家七百四拾壱軒、潰土蔵拾九ヶ所、
一、拾五番組、市ケ谷田丁・同所谷丁元鮫ヶ橋丁・牛込
御簞笥丁・同所御納戸丁・牛込肴丁・同所水屋丁・
小日向水屋丁・牛込附代丁・関口水屋丁・赤坂表伝
馬丁・同所新丁・元赤坂丁・赤坂一ツ木丁、
〆変死六拾弐人、内男弐拾五人、女三拾七人、
潰家三百三拾七人（ママ）、潰土蔵三拾九ヶ所、
一、拾六番組、本所緑丁壱丁目・同林丁弐丁目・同四丁
目・本所茅場丁三丁目・徳右衛門丁・吉田町・本所
清水丁・吉岡丁、
〆変死三百八拾七人、内男百六十九人、女百拾六
人、
潰家弐千三百七軒、潰土蔵百拾六ヶ所、
一、拾七番組、深川元丁・同海辺大工丁・浅賀丁・相川
丁・熊井丁・黒江丁・猿江丁・中嶋丁・深川材木丁・
平野丁・露歩丁・三拾三間堂丁・永代寺門前丁・同
所仲丁・霊岸寺門前丁・八右衛門新田・源左衛門屋
敷、
〆変死八百六拾八人、内男四百五拾三人、女四百
拾五人、
潰家四千九百三軒、潰土蔵七百八拾五ヶ所、
一、拾八番組、南本所石原丁・本所表丁・中ノ郷八軒丁・
表丁・柳嶋丁・本所松倉丁・亀井戸丁、
〆変死四百拾八人、内男百八拾九人、女弐百弐拾
八人、
潰家三千四百拾五軒、潰土蔵弐拾弐ヶ所、
一、拾九番組、麻布六軒丁・不動院門前・麻布善福寺門
前・中目黒丁・下目黒丁・同所南光寺門前・三田蟹
坂切運寺門前・同所随應寺門前・同所泉福寺門前・
弐本柳広岳院門前・二本柳承教寺門前・同所上行寺
門前・白銀村之内法恩寺門前・同所神明社地・芝泉
岳寺門前、
〆変死無之、
潰家五軒、潰土蔵無之、
一、弐拾番組、牛込・早稲田・高田・四ッ谷・追分・雑
司谷・千駄谷・此辺町々名主支配所、
〆変死五人、内男三人、女弐人、
潰家四軒、潰土蔵壱ヶ所、
一、弐拾壱番組、浅草阿部川丁・同所日輪寺門前・誓願
寺門前・新寺町・新宝寺門前、
〆変死七拾弐人、内男三拾六人、女三拾六人、
潰家五軒、潰土蔵壱ヶ所、
一、番外新吉原
〆変死六百三拾人、内男百三人、女五百弐拾七人、
潰家五軒、潰土蔵壱ヶ所、
一、番外品川宿
〆変死六人、内男三人、女三人、
潰家拾八軒、潰土蔵無之、
組々番外
惣〆変死三千八百九拾五人
内、男千六百拾六人
女弐千弐百七拾九人
潰家壱万四千三百四拾六軒と長家作千七百弐拾
四棟、潰土蔵千四百四ヶ所、
焼失場所、凡長弐里拾九町余、巾平均弐丁程、
右之通、町役共より申出之由ニ候得共、人別帳
江書入之分計ニ而、其外奉公人并当座出府之も
の人別ニ無之ニ付不少殊ニ多分者取包、吉原抔
不部内ニ而千七百人余死亡有之候得共、前書之
通申出同所遊人之もの何程即死ニ有之哉大小者
弐百六拾腰位、鉄炮者八拾挺焼残有之、随而雑
人之変死も不少迚も取トモ付六ヶ敷故ニ火煙之
中江入焼捨候由、後ニ寺社御奉行ニ而寺院取調
方被仰付候処、浄土宗計ニ而六万四千四百四拾
壱人之申出有之由ニ付、□宗右準不少左候得ハ
評判之通弐拾万余も変死可有之と存候、即夜者
出火三拾九ヶ所ニ而[誰|タレ]壱人□之もの無之潰人穿
出シ取然候得とも一同之事故手伝可致ものなく
未タ声あるものも悲かな眼前ニ焼殺哀なる事言
語ニ絶、乍去風無之ゆへに格別大火ニも不相成、
翌朝より薬研堀丁骨継高名之名倉弥次兵衛方江
之療治人門前市をなし日ニ五六百人宛詰居、御
府内中之怪我人幾万有之哉難計然シ屋鋪方者勿
論町内迚も焼場所死人□□□相成心通之ものお
逸々相葬差当入甕困り酒樽又者用水桶子供者醬
油樽之類多有之候、
（中略）
一、十月三日、天気、地震少々宛五六度震き、朝五ツ時
頃御屋鋪より罷帰り直様罷出終日諸御屋鋪御用ニ而
同役同道ニ而相廻り暮頃罷帰り、宿四ツ角江屛風建
廻し家内中一所ニ野宿ニ而夜を明し即夜両三度震
き、
一、同四日、天気、認物いたし夫より同役藤次郎濱町御
屋鋪出、拙者御上屋鋪江出、御用書都合三封差出し
同日昼夜五六度相震、
一、同五日、天気、即夜弐度相応に強くき退候位、同日
御側役衆より御呼出ニ付罷出ニ付罷出候処御用被仰
付同日飛脚立ニ付御用書ならひ宿状差出し同日御用
書上ル、
一、十月六日、天気、御屋鋪出御徒長屋参江戸絵図借用
兄様ニ而、同役并勇吉共壱飯給、夫より本郷并小川
町辺江跡見、暮六ツ時頃罷帰り、即夜より外江仮宅
拵拙者共計夜分同所ニ十四五日頃迄住居、即夜相応
強く両度相震き、諸人外江立退候、
一、同七日、天気、早朝より小川町より青山□□跡見、
暮六ツ時頃途中茶屋遣之処地震ニ而外江逃出屋根瓦
去り候位相震き、同日同役霊岸島辺江手分ニ而出ル、
一、同八日、曇り夜分より雨降り、認物ニ而在宿、即夜
少々宛三度相震き、
一、同九日、天気、御用書三封上ル、昼度々相震き、藤
次郎同道愛宕下跡見、
一、同十日、天気、早朝より麻布より三田・白銀・高輪
辺迄藤次郎同道ニ而跡見、暮頃罷帰り翌日勇吉・藤
五郎出立ニ付壱盃呑候、昼夜折々相震き、
一、同十一日、天気、勇吉藤五郎出立ニ付千住迄見送、
夫より三之輪・吉原・浅草辺跡見、昼八ツ時頃相応
ニ相震暮頃罷帰り、
一、同十二日、天気、御用書弐封上ル、夫より本所・柳
原より深川大嶋丁・扇橋辺跡見、暮六ツ時過罷帰り
同日黒石様御名代ニ而御下向ニ相成御道中廿三日振
之由、
（中略）
一、同十五日、天気、手分之上本所・深川相廻り、藤次
郎上野下江出、昼八ツ時頃罷帰り、即夜七ツ時頃相
応ニ相震き、
（中略）
一、同十七日、天気、大夫江両人共御礼ニ罷出、昼九ツ
頃過地震、相応ニ相震き候事、
（中略）
一、同（十一月）三日、暮頃より雨降り、昼過□屋鋪罷
越所々相廻、即夜九ツ時頃本所辺出火有之否哉、地
震相応ニ震き、
（中略）
一、同十五日、天気、朝六ツ時半并四ツ時過両度地震大
之動き、書状但在宿同役御屋敷参候事朝兄様被申候、
（中略）
一、同十七日、天気、朝足軽目付阿□□□と村山慶吉参
同役同道ニ而四人連伊勢町橋した旅人宿迄買物ニ罷
出、又暮方鉄屋藤兵衛方江用向ニ而参候処、作事受
払白戸得弥・佐々木玄俊居合藤兵衛同道ニ而両国ニ
おゐて地走ニ相成罷帰り即夜八ツ時頃地震相応ニ相
動き外両度少々ツヽ、
（後略）