[未校訂](注、「武者」第四巻426頁以下と同文のところ省略)
地震津波
もちづくし
地しんで人よりおどろく おごろもち
ゆるたびにおとす しやくもち
船大工ハあいた口へ ぼたもち
屋[根|ね]から屋根へ[材木|ざいもく]でたすけ合ふ あいもち
ないてゐる 船もち
にげるによハる 子もち
[普請|ふしん]かたハいそがしい てんてこもち
ずつしり[腹|はら]へ[巻|まひ]てにげる [金子|かね]もち
[地|ぢ]しんで 志りもち
こけた[燈籠|とうろう]をなをす [力|ちから]もち
ぢしん[最中|さいちゅう]にさんさいしている 不身もち
くづれかけた家ハ [菱|ひし]のもち
びく〳〵してゐる 家もち
津なミで船がとまつて おかもち
つまらんしばゐの ぶもち
津なミでからだハ あんころもち
あんじてゐる 身もち
つなミであれた新田ハ すなもち
ねあやまちハはよふ けしもち
しゆんてゐる たいこもち
せがきのせ[話|わ]方ハ[施主|せしゅ]人と和尚を とりもち
よわつてゐる 新田もち
まんそくにねられん かしわもち
ゆるたびにかり小家へ おかゞみ
大地震大津浪
安達原三段目
秡文句
[年寄|としより]たかり
だハいつ何
時の
丸太でもつ
古家
はつとおど
ろきまたば
つたり
つなミと聞て
ミね打する人
ううなりは
てた身の上
穴堀て埋で
ゐる瀬戸物
や
テモ扨も扨
も〳〵おも
ひがけない
座敷へ船のみ
よし入られた
の
一度におど
ろき転びお
り□[押破|おしやぶ]り
ろうじうら
[露地|ろうち]へ逃出
る人
是ハまたあ
んまりきつ
い
十一月五日の
夕かた
跡の談義ハ
[某|それがし]がよき
やように
門にのこる
番頭
今名ひ知り
おハたり
爪の長い家主
ゆんでめで
へはつたと
けとバし
川内へ[押込|おしこん]
で来た大船
わが身なが
らあれその
つかさ
[釣台|つりだい]で逃して
もらふ病人
天昭通ハ得
ざれども
いつの何時
にゆると知
た㒵する人
聞て心もこ
ころならず
いせから奉公
ニ来てゐる人
はしらんと
すれとも
途中で地し
んニあふた
人
追立られか
しこの橋で
ハ
津波に出合て
乘舟
[皮|かハ]もやぶれ
し三味せん
の
さんざん中
へゆさ〳〵
八幡殿の北
の方
しづかに有た
都
[浜|はま]ゆふがと
びたつバか
り
[鳥羽|とば]浦大つ
なミ
おまへに問
たらしれる
であろ
江戸から戻つ
て来た人
[隙|ひま]入ほど為
にならぬ
[工|く]手間[増|ます]船
大工
われ〳〵が
[大|たい]望の[妨|さまた]げ
京の顔見せ
[歎|なげ]きハ[理|こと]ハ
り何かに付
て
芝居茶屋
かきがねに
[錠|ぢやう]しつかと
おろし
家門連て[在所|ざいしょ]
へ逃る人
[爰|ここ]迄くるハ
きたれど
ちか〴〵に
にげた人
[縄|なわ]引切て[逃|にげ]
出んと存ぜ
し所
つなミの[咄|はなし]す
る□□(虫損)
大津波末代噺種
○播州[伝法|でんぶ]酒造味淋蔵のこらず大浪にて崩れ候事[奇代|きたい]の
珍事なり
○西の宮[灘辺|なだへん]もつなミにて浜近き所乃人家少く流れそん
じあれども大坂よりハ餘程ゆるやかにて死人怪我人少
し
(図)味淋蔵崩れ倒るゝ図(注、省略)
大つなみ末代噺種
○紀州[田辺熊野等|たなべくまのなど]大つなミにて[海辺|うみべ]又ハ川口[抔|など]にかゝり
居候船山へ打上あるひハ[磯|いそ]に[突当|つきあて]打くだけ又ハ流失す
る事其数を知らずかくのことき水勢なれバ所により一
村残らずおし流し男女死人おびたゝし
○泉州堺つなミ[烈|はげ]しく橋八ッ[落|をち]る[湊|みなと]にかゝり居候船不残
破船に相成浜辺の人家多く流れ
○同佐野[大底|たいてい]右に同じ
江戸吉原おいらん調
ヲヤばからしいねイ 車の音でびつくりする人
もつときつくおしよ 大道の置炬燵
ほんとうかへ 志州のうわさ
ヲヤはいつたよ 内川へ大船
むねがどき〳〵するよ 津なミのうわさ
モウおよしよ ふねうるさうだん
しんにうれしいね [無難|ぶなん]な借家
はづかしいねイ はだかで風呂飛で出る人
おほきいねイ 此たひのつなミ
はやくお出よ [破損|はそん]ン大工
かわいゝねイ ちんだいて逃る人
はやくおしよ 軒へつつはり
しづかにおしよ 大道のやけ酒
しんに待てゐたよ 此たびのおすくひ
ありがたいよ 鹿嶋の守り
ぬしや命とりだよ 津なミ
びつくりしたよ 薩摩の新造
おかミんすごしゆうだんす 助けふねをよぶ人
はやくふいておくれよ かり家のやね
もふよしてくんな いつの何時ニゆるといふし
らせ
たんとおだしたね 此度の板行屋
ヲやたんと出ましたよ 西辺のそうれい
はやくしておくれよ 破船のなをし
たいそうおのほりたよ [金相場|きんさうば]
地震津浪
精進料理献立
津浪で子を死なしうらめし くハしいことハ手紙で汁
いつ何時にゆるといふ順才 気にかかる是よりと小いも
道頓堀川ハ死人のあへまぜなますなん船を助けた香物
借家のふたんハましが出ぬ平門のいがんだごぼう
大黒はしへ船のよせ栗
逃る用意をしいたけ
船で[逃|にげ]た人ハえらい坪 つなミで海ハうず巻麩
酒のんでもわに入て松露
よいはるをまつたけ
[裏|うら]の[広地|ひろち]を人に おきばんハ夜の長いも
[菓子|かし]椀 金子をはらへまきゆバ
安治川辺ハ一めんに水善寺
のり
常水に成てつなミも□引 いがんだ天王寺のとがらし
はそんした船を急になおし
ぐわへ
小家片付て先一ぷく吸物 地しんで逃る人がせり
たすけ船で人をあげ麩
はそんした家を早ふなをしたし新田ハえらい水菜
大地震大津波
一口ばなし
つなミと聞てどこもみづににげた
材木がこけてきてにげたそうか
今夜も西ヶ嶋によつて[寝|ね]られんおきばん
船に乘て殆どげいこおやまもながれの身じや
みりん蔵がこけたときあたまを打たでんぼ
清水のふたいにゐたら地震でくだけたとんだ事ナア
鉄げん寺の釣ヶねが落ちて何にもならん
[西辺|にしへん]のはしハ無事なり[十|ト]ヲおちた
[荷物|にもつ]がしれんのでせんどさがした
紙屋の家が崩れて亭主ハはんし
[乾物|かんぶつ]屋ハにげるのになんぎした[数|かず]の[子|こ]
東海道の馬こも地しんにあふてまご〳〵
地しんでにげる娘はゑらゆすり
新造さんハ身上しられてわれた
野宿のあいだ此ふすまをちよつとかりや
あつたの中□ハ地しんがゆりなんだソレみや
鳥居も絵馬堂もこけたざまのわるい
大地しんの時こんな家にゐるのハゑらいこけじや
にげしなにかまぼこ屋の門でこけてアヽいた
[象頭山|ぞうづさん]ハあれなんだ[鼻高|はなたか]じや
寺〳〵の門へつゝはりかふた丸太
地しんで米が安ふなる世直し
かるかやかへうた
大津ゑぶし
□いしさにはる〴〵と[地|ぢ]しん[見舞|ミまい]に。こんざつ中への
ぼり来れバ。まれな事なり。半時あまりに一面つなミ
打て。それを見るより子供ハしがミ付。この大坂にゐ
られんが。ほう〴〵くだけて[押|お]うたれ。きのふゆつた
も今頃か。ぞく〳〵と。かどふへ[早|はや]うつれ[行|ゆき]たまへ。
ゆるよりからだハあるくにあるけずさぶさながらもわ
が[家|や]をあハてゝにげては入る
笑福亭
勢楽作