地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（伊東家文書）
二（十二月）日
夕当所播摩屋治三郎下着、是は小間物仕込ニ九月江戸
へ罷登り候処今夕相下り申候、尤弘前御勘定奉行浅利七
郎治様より書状誂り参申候、其御状の中ニ左ニ
一、去四日昼四ツ時大地震ニて御殿向並御長屋共無別状
奉恐悦候、江戸の内ニも丸ノ内抔は所々強ク、南部様の
御長屋二棟とやら潰れ死人も八九人有之由噂御座候、其
外所々ニて破損御座候、追々可申上候
一、駿河沼津並遠州掛川御城並家中在町共惣潰れ出火に
相成由、其上海岸付村町共津波ニて沖へ引込れ、大半の
死傷の由両家飛脚の者噂ニ御座候由
一、豆州下田も同様大半死亡ニ及候由、其余は于今風説
も無御座候
一、同五日昼四ツ時浅草猿若町より出火、西北の風烈大
凡五六町四方位焼失候旨、近年の大火と噂御座候、御屋
敷は風下ニて大に心配仕候へ共、早速鎮火ニて大慶仕候、
其外異事無御座候
十一月七日付
十二月九日夕
上弘紋蔵書状参り左ニ抜
今朝も申上候大阪津浪追々評判高く、今朝御勝手方へ罷
上り承り候処、画図ニて御上へ相下候様、西は尼ケ崎、
西宮、兵庫其外堺、岸和田、貝塚津浪の由、画図拝借仕
度色々詮義仕候処、脇方へ御廻し候由、江戸近辺東海道
此間丸善様申参候通、其外甲府大半痛極地震強キ処八ケ
国の由申唱候、返々も気懸り兵庫間懸り御客船首尾御別
条無之様祈念罷在候由
十二月八日夕付
八日夕上弘紋蔵書状其中抜左に、但此状前後となる
一、西浜塩屋、菊屋も御呼出、治定十日出府之積りニ御
座候、竹屋明日方一先相帰リ直様出弘之積りニ御座候
一、去月四日大阪地震ニて大家中家の者共茶船へ乗込相
凌居候処、則刻津浪ニて大小船数千艘覆り夥敷死亡の由
其外竹屋越前府中ニて地震ニ逢、三夜野宿致候由、其外
大地近辺並東海道辺地震等色々の義申来候得共、余り長
文ニ付文略仕候是状は
十二月七日夕付
十日夕
米百黒石より帰り当年御年賦米其外諸用大躰相調申
候、尚又弘前上納之御頼談は弐百五十両の所、百五十両
に御願申上御受仕候、其外唐牛、境等よりも御土産参申
候、今日彦太郎米百へ参り申候、米百黒石より上方地震
の書付持参仕候、一見候処大阪兵庫境其外伊勢東海道の
国々一円大地震ニ津浪ニ而、誠ニ噺よりも大変事ニ御座
候、右は長文故店ノ諸用帳に控へ申候
十四日夕同断相達其抜に
一、日光地震ニて焼失の旨今夕書付写取居申候、明日ニ
も御廻奉申上候
一、大阪十一月四日大地震ニて家々潰れ死人在之、又々
震ひ可申と旦那大家の亭主達船に居候へば宜旨ニて、家
は手代抔に預ケ妻子ヲ引連家財道具ヲ船ニ運び居候処、
思ひの外大津浪ニ相成不残覆り死亡数知らずと云、其中
大体金持の人々のよし也
一、私方客船丸屋本別、木谷本別、川端屋等の船々少々
破損は御座候へ共無難の由、船中ニは一統怪我等無御座
候由也、先々安心仕候
一、此度の大変ニて破船の船々大小合而三千五百八拾人
の由、死人は壱万人余之由也、但大阪斗りニ哉
一、兵庫は以の外弱く人家潰れ等無御座候由也
右の外色々承り候へ共此方へ相廻り候大阪並諸国地震の
書付店の諸用留ニ相控へ、夫々相同じけれハ爰に文略仕
候