地震史料集テキストデータベース

[未校訂]文政十三年庚刁七月二日より五日迠地震ニて京都御奉
行松平伊勢守殿ゟ来書写
一翰令啓上候御揃愈無御障珍重存候自分義茂無異ニ（カ）て在
京候扨又去二日書状差出候後左之通大地震ニ候得共御
役宅一同怪我人等無之大安心いたし候心易可被存（カ）候
一二日七ツ時過軽キ地震二つ引続丑刁ノ方と覚へ申し震
とも不□（致、カ）唯一度ニ突倒し候様ニて鴨居抔はつれ壁を落
棚の物ハ不残落し損し申候庭江出候処一寸位地ひきわ
れ泥を吹出し昔噺ニ承候得共誠ニ此度右躰之仕合ニ□
一御役所脇ニ当番所と唱へ申与力用心詰處張番所有之右
之天井落壁も倒れ唯潰れ不申斗の躰ニなり申候
一白洲者障子破れ七寸程ゆかみ潰れかヽり申候
一同役之方白洲者震潰し家内蔵々天井落其外両所共土蔵
ハ不残大破いたし候夫ゟ少々宛震詰ニて二日今以止不
申候昨日者昼夜も百度余茂震申也一昨日夜抔ハ泊りのも
の暮六ツより書付致候処四十九度斗と存□大ニ間
遠ニ相成候まヽ追々治り可申先者安心いたし申候
一今日者雷気有之候得共発兼殊之外空も地震と入交り雷
鳴有之此上ハ大風雨之義可相成とそんし申候
一愛宕山ならひに嵯峨之山なり候而今以地震の如く土砂
□ころけ落候よし今朝角倉帯刀忰鍋次郎地震之安否
承りニ参右之趣噺申候　右之様子ニて若や右之山ゟ焼
出し泥ニても吹出し可申哉と致心痛候
一二條御城四方之御土居裾通壁落東御門石垣一ツ五十人
持位之大石皆震出し口明き御門もゆかみ西御門者御屋
根落北之御土居五間南之方三十間斗御城内へ倒れ御石
垣二拾間斗御濠江くへ込右ニ準御城内殊之外御破損有
之誠ニ大造之御修覆所々ニ而御入用何萬と申事ニもなり
可申候
一市中抔損家夥敷死人怪我人者存之外少く夜中抔者怪我
人茂可有候得共昼□とミへ申候昼夜震詰候故町家ニて
ハ家を出大道へ一同と罷出夜分を外ニて凌申仕合火事
同様之事ニ御座候
一御所ニて御築地抔大造之御破損之由御修覆申立も可有
之候誠ニあきれる（カ）斗事ニ御座候種々申遣度候得共日々
御修覆所江（カ）八ツ時過ニ帰宅夫より御役所向取調子
草（クタビレ）臥荒々申遣候以上
七月五日
尚々折角秋暑御凌可被成候前文地震大坂抔ハ常躰の地
震弐度ニて済候よし先日其地へ下り候組同心草刈吉左
衛門去ル二日石部宿へ泊り候処少し斗の地震と申候此
節勢田の橋御修覆ニて組之者ゟハ格別之義も無之損所
も無候旨申越南都ニても同やう之由先当地而己の事と
も相覚へ申候
一唯今目付方ゟ風聞書差出候処若狭も国名所小分十八ケ
村程津波ニて海と相成候由書上候得共誠ニ風聞斗之義ニ
て差当り事無申候□十八里へたヽり候事故今明日
ニ者実否相分可申候其地ハ定而別条無申義と存候
追啓去二日御修覆所小屋場為見廻直ニ罷出可申存
候処門口ゆかみ一向ニ明不申かけやニて打あけ漸
出候仕合誠ニ前代未聞之次第ニて右之通御損し有
之ニ付伯耆守殿御見分有之六ツのり大鼓ニて四過
まで打廻申候　二日も晩者一向ニ□不申候余程之
珍事と被存候