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[未校訂]六七　十一月五日駿河國沼津城主水野出羽守忠良屆　老
中へ　下田表警固人數の件
十一月七日届、去ル四日、豆州下田表地震其上津浪ニ而、人家流失仕候
處、固人數者山手江引揚無別條旨申越候付、此段御屆申
上候以上、
十一月五日在所日付
水野出羽守
（加川勝敏筆記）
六八　十一月六日露西亞應接掛幷下田奉行評議書　老
中へ　露船修復塲の件
○村垣淡路守公務日記ニ據レバ、此評議書ハ、六日ニ成リ
十日ニ老中へ呈セシモノナリ、
評定所一座
林大學頭
海防掛江
大目付
御目付
魯西亞應接一條之儀、いまた相决不申候内、當月四日、
大津浪ニ而、下田町悉流失いたし、其節魯西亞船揖折、
マキリカハラよほと痛候ニ付、五十里計之船路可成に
走參候儀出來可申候得とも、大洋航海者難相成候間、
修復いたし度、然ル處、下田表之儀、日々今以津浪少々
ツヽ者有之、右躰ニ而者、いつ大變可有之も難計、片
時も安心いたし兼候ニ付、いつ方ニ而も塲所者差圖ニ
隨ひ可申候間、湊一个所拜借船修復いたし度、尤異變
ニ臨ミ候間、當月六日午刻迄ニ、是非共挨拶有之度旨、
同五日、申出申候、右者實ニ無余儀次第ニ而、既ニ魯
人之内即死人怪我人も有之、申立之次第無相違相聞申
候處、貸遣し候湊之儀、浦賀歟清水湊歟遠州掛塚歟ニ
可有之、浦賀者成丈相斷申度、清水湊者、駿府　御城
近之塲所ニ付不相成、然ル上者、懸塚ニ限候様ニ候得
とも、同所之儀、御取締者勿論、詰合之役人も無之塲
所ニ候處、船修復いたし方之儀、陸江上ケ横さまにい
たし修復いたし不申候而者、マキリカハラ修復不相成
与之事ニ而、荷物悉陸上ケ之上、五百人餘之異人上陸
いたし不申候而者不相成、右躰御取締も無之塲所、必
可然とは難申、さりなから浦賀者江戸近之儀ニ付相决
不申、然ル處、懸塚之方若宜湊ニ候ハヽ、魯人右塲所
開港之儀可申立も難計、其次第ニ寄候而者、奉行所ニ
不相成候而者必差支可申哉、然ル時者御取締向其外と
も、浦賀之方可然与之衆議ニ有之、乍去いかにも江戸
近ニ付、懸塚之方可宜哉、御取締向之論ニ至候而は、
懸塚何分懸念仕候、右は、伺之上ニ無之候而は不相决
候ニ付、役々惣名代ニ與三郎參着いたし候儀ニ御座候、
下田之儀以後港之儀は如何可有之哉、差當り及飢渇人
民之住居も無之候ニ付、中々以數年之後ニ無之候而は、
如以前港と可相成見込も無之候間、厚御熟慮之御沙汰
御座候様仕度候事、
一豆州之内、船繫塲所網代村長津呂村稻取村ニ而、船修
復爲致候積申試候處、彼方ニ而長津呂等之様子は相辨
居、しはしの船繫塲ニ而は、船修復は難相成候ニ付、
下田湊より可相成は大なる塲所ニいたし度旨申之候、
右ニ而は、とても懸塚湊或は浦賀之外無御坐候事、
中村爲彌應接塲江差遣、魯西亞通辯官江應接爲致
候肝要之个條、
一右三个所湊之内者一見之上、可然塲所ニ而、修復可致
旨申談候處、夫々塲所大サ等承り、魯人申聞候者、長
津呂者當湊江入津之節一見いたし候處、至而之小湊ニ
而、假ニも異國大船船繫等いたしかたく、外貳个所と
ても、下田湊同様之大さに候得者、可也ニ修復も出來
いたし可申候とも、談之趣ニ而者、一見いたし候も無
益之旨申之候、
一右申聞候趣無余儀次第ニ者候得とも、此程之地震ニ而、
海道筋人家其外破損いたし候塲所も有之得与取調之上
ニ無之候而者挨拶難及候間右等之處厚勘辨いたし、日
合十日程相待居候ハヽ、取調之上否可及挨拶旨申聞候
處魯人承伏、右日限相待可罷在旨申聞候事、
但、申立候日數ゟも早く彼方江挨拶不致候而者、
人氣を失ひ可申候間、早速御下知御座候様仕度候
事、
一、一躰此程之津浪ニ而彼船余程相損、殊ニマキリカハ
ラ九丈程之物打放レ、船中淦入相成居、此上若大風波
等有之候而者、迚も難凌躰ニ付、全當座之凌之爲、船
中重キ荷物陸上いたし度旨申聞候間、當所此程之災害
ニ付荷物陸上いたし候与も、番人等差出候義者難相成
候間、右之處承知ニ候ハヽ、海岸江上置候義者不苦旨
申聞候處、大炮其外陸上いたし候儀ニ付、番人等ニ者
不及旨申聞候事、
一魯船痛所出來候以來、甚窮迫之躰ニ而申聞候者、是迄
者魯西亞使節之規格者立居候處、此程之躰全漂流人同
様ニ付、厚御憐愍被下度旨申聞、右ニ付何卒船修復出
來之上者、歸國迄之食料として、麥米其外御送被下度
旨申聞候事、（町奉行書類所收外國事件書）
六九　十一月六日露西亞應接掛川路左衛門尉聖謨達　下
田地方鄕村へ　御用書物諸道具類拾得屆出の件
下田地方郷村江達書
今般大津浪ニ而、下田町過半流失致し、此度出役之面々
旅宿ニ差置候御用書物幷武器類諸道具等流失いたし候
間、海岸有之村々江流寄候ハヽ、取集置下田御役所江早々
可申出候、
寅十一月六日　川路左衛門尉
（坤儀革正録）
七一　十一月七日老中達　露西亞應接掛幷下田奉行へ
下田に於て應接の件
○七日達ノコトハ、第七二號書翰ニ據ル、
（朱書）「寅十一月十日、蓮　寺へ到、」
魯西亞應接掛
下田奉行
面々へ
下田表地震之上津浪等ニ而、在町共多分之流失も有之候
ニ付、魯西亞船應接之儀、萬々不都合之筋ニ者可有之候
得共、今更浦賀表等へ相廻候ハヽ、餘之國之渡來之節取
計方ニも差支候儀ニ付、此度之儀ハ全く天災之事故、彼
船へ聊取繕無之有體ニ申諭し、寺院手入又者假建物等如
何様ニも手輕く取建、何れニも其地ニおゐて應接致し候
様可被取計候、右ニ付御固等之儀も一同申談、差支無之
様勘辨致し可被取計候事、
（外交紀事本末底本所引中臺氏下田在職中留記）
七四　十一月八日老中達第七三號の別紙　露西亞應接掛幷下
田奉行へ　露船修復其他取計方の件
（朱書）「十一月八日曉到來、」
魯西亞應接掛之衆下田奉行江　伊勢守
一魯船此度之地震津浪ニ懲候而、下田港滯帆者迷惑ニ候
間、浦賀又ハ其外江相移度申候とも、應接ハ下田与取
極、彼之申立者不承屆候而、精々申諭候儀、昨日相達
候通之事、
一夷船破損所有之修復致度、右修復塲所借用致度、修復
出來まてハ、船中之もの上陸致し居度段、達而相願可
申も難計、其節ハ其危難を撫恤いたし遣候儀故、相斷
候儀ハ不相成、無據被差許可申、尤實々修復中丈之儀
ニ而、修復出來之上ハ、早速一同船江立歸可申儀与堅
申達、彼承知之上ニ而其通り可被取計候、上陸爲致候
塲所ハ、寺院にても農家にても、不取締無之塲所江、
壹个所ニ而も貳个所ニ而も取極、勿論其塲を彼江明ケ
渡与申様ニ無之、與力同心相詰居候而、夫江引請、精々
取締方被盡候而、自然与彼之商舘ニ似寄候ものニ陷り
不申様可被致候事、
但、病人多にて、療治之爲に上陸致居度申出候も本
文ニ凖し、此度非常之危難有之ニ付而之儀、後日定
例ニ者不相成、全く此度限り之譯を以能々申達し、
彼承知之上にて、本文之通り上陸被差許可申事、
一彼船修復と申候ハヽ、何れ海濱ニ於而其塲所を借用申
出候儀も可有之、是ハ申迄も無之、本邦人幷本邦之船
与混乱致し不申様有之度、定而彼小屋懸等色々の事差
繕（絡カ）候も難計、取締之爲ニ者、和歌浦と申處なと宜歟と
も被考候、猶其地ニ而之衆評承度事、
一薪水食料欠乏之品差遣候儀ハ不及是非、此節迚も是迄
之通りニ被取扱候方ニ可有之、尤當分之内不手廻しニ
而、何角少々隙取候義者、彼へ可被申諭置候事、
但、申迄も無之、此混雑ニ付、迚も容易ニ者難差遣
趣ニ懸合候而ハ、彼然らハ、浦賀江江戸へと可申間、
此程合品能可被盡候事、
一應接所定而不自由ニ可有之与遠察いたし候、乍去何分
下田を他江轉し候而ハ、是より因循終ニ難取返候間、
是非とも其土地ニ而可然塲所可被取極候、下田寺院等
ニ而事足不申候ハヽ、假小屋取繕、各方旅宿下々之旅
宿近邊之村へ跨り候而も可然候事、
一亞墨利加人江七里四方游歩差許有之候間、其處ハ無餘
義被差許候へとも、追々下田町普請等取懸候ハヽ、當
分之内是より是迄者通行致間敷と、彼船より上陸之道
筋幷遊歩勝手次第之内ニ仕切を付ケ、普請混雑之間江
入交申間敷様工夫可被致事、
一柹崎玉泉寺ハ、津浪之禍者如何様ニ候哉、亞墨利加人
江埋葬を差許有之候間、魯西亞へも同様之譯ニ候、如
何様損所等有之候とも、早々取繕致候而、異人之葬地
者玉泉寺之外へ者廣り不申様可被心得候事、
一武ケ濱造船塲等之儀、地形定而相變候事与被察候、市
中七八分も流失之由ニ候へ者、要害之爲ニ、改而之普
請ハ他江引移、塲所取替ニ而、夷人取締宜敷様ニも致
度、且奉行所其外之役所向、幷諸家固之地、砲臺築立
之地勢打込吟味評議有之度事、
但、江川太郎左衛門救助筋ニ而差遣し候ニ付、序ニ
本文之地勢見當歸候様申付遣候間、可被申合候事、
（町奉行書類所收外國事件書　外交紀事本末底本所引中臺氏下田在職中留記）
七五　十一月八日江戸詰浦賀奉行支配向屆　勘定奉行
へ（？）　露人應接所移轉の件
江戸詰浦賀奉行支配向屆書
去ル四日、豆州下田表大地震ニ而、人家震潰れ、跡大津
波、町家七八分通押流し、同湊ニ相掛り居候廻船五艘破
船仕、其上魯西亞船滯留中ニ付、湊外江罷出居候番船之
内二艘、何れ歟流れ破船いたし候哉、乘組幷船主共相見
不申由、右ニ付、彼地ニ而、魯西亞人江應接御差支ニ付、
浦賀江御廻しニ相成候ニ付、其段昨七日未之刻、下田ゟ
同所江早御注進御座候趣、只今彼の地より申越候間、不
取敢此段申上候、以上、
十一月八日　（加川勝敏筆記）