地震史料集テキストデータベース
[未校訂]一五六一六（布告留）
一今十一月四日快晴之処、五半時過近来稀成地震、諸人
恐怖大方ならす、尤潰家怪我人等無之、同日ゟ引続十
日頃迄少々ツヽ地震折々有之、且堀井戸之水溜（濁）り候処、
早速溜りハ相止候得共、右水追々相増、廿日斗之間平
水ゟ六七尺も相増、尤処ニ寄候而は減水之場所も稀ニ
は有之候事
但、右同刻ゟ五日夕刻迄、東海道筋箱根ゟ先海道は
勿論、いせ路大坂四国九州辺迄稀成大地震ニ而、豆州
下田始其外所々へ津浪打入、死人怪我人夥敷由、尤
阿波淡路尤強大之由ニ候
一五六一八（布告留）
火之元取締之義ニ付而は、去ル子年以来厚御世話被為
在候ニ付、厳重ニ町役人共番致、見廻り方等も行届候
故、市中ゟ之火事沙汰無数、右ハ全火之元守方、裏々
小前之もの共迄厚心得候故之義と一段之事ニ候、然ル
処去ル五日浅草聖天町ゟ之出火は、大火とも可申、右
火元ハひとりすみのやもめ女ニ而、留守中故怪火之趣
ニは候得共、此上吟味之上ならでハ決かたく、追々寒
気ニ向ひ候処、独身又ハ病者ニ而裏家住居之もの、湯屋
鍛冶屋等大火を焚候もの抔ハ別而之義、自然火之元麁
末ニいたし、壱人之あやまちゟ諸人之難渋かゝり候義
は不便之至りニ付、此上聊無油断火之元之一途を情々
可相守、殊ニ去ル四日東海道筋地震強く、右ひゝき合
御当地ニもおよぼし損所等出来、江戸表は地震薄キ土
地柄之段は銘々弁居候事ニ而、此うへのうれいハ有之
間敷とは乍申、既ニ此度武家方心得方被仰出候義ニ付、
市中之ものも其用意無之、万一地震之節火事有之候而
は以之外之事ニ候、譬は平常火所等ニ心構致置候得は、
火災之難をまぬかれ候事故、常々之用心、兎角火之元
之取締専要ニ有之間、名主は勿論家主共組合毎申合、
小前之者共江尚又御主意之趣厚申諭置、尤人気ニ不抱
様勘弁いたし可申含候
右ハ南御番所ニ而東条八太夫様ゟ御演説、拙者共書取
候趣、御組合限町々不時俄之節も、店々裏々迄火所過
無之様、兼而心得方格別行渡候様御打合申候、以上
十一月十日 小口 世話掛
一五六二〇
諸色直段無謂高直ニ致間敷旨は兼々触置候得とも、此
度近国を始上方筋其外、地震又は津浪ニ而荒損候場所
数多有之候ニ付、自然海陸とも諸荷物運送差支、御当
地不品（フ）払底可相成と見込、猥ニ商物直段引上ケ、或は一
己之利徳を以買〆等致候儀決而不相成間、右之趣問屋
は勿論、小売商人共ニ至迄急度相心得、正路ニ渡世可
致候
右之通町中不洩様可触知者也
寅十一月
右之通従町御奉行所被仰渡候間、町中家持は不及申借
屋店借裏々迄不洩様入念早々可相触候
但、番屋々江は大筆ニ認張出置可申候
十一月十九日 町年寄役所
一五六二二（布告留）
市中火之元守之儀は行届居可申候得共、国中大地震大
津浪等も有之候間、尚市中火之元守方之義ニ付御沙汰
有之、非常御懸り様ニも市中は勿論、端々迄深更暁迄
御見廻り有之候処、 一昨年迄は、組々名主三四人四五
人ツヽ申合夜中見廻り候節、時々非常御掛り様御見留
も有之候処、近頃は名主見廻り方等閑ニは有之間敷候
得共、深更名主見廻り候義御見留方少く候間、万一此
節柄、等閑之町々有之候而は以之外儀ニ付、町々自身番
屋家主共并店番之もの共勤方之義は、兼而申渡置候通、
聊無油断夜中時半小半時、其外共無懈怠町内限見廻り
方仕、名主共ニも組合限申合有之候通、弐手三手四手
位ニも組合候而、弥以深夜暁迄町々火之元見廻り方、再
応早々可被仰合候、此段御達申候、以上
寅十一月廿二日 小口 世話掛