[未校訂]一文政十三庚寅年七月二日昼七ツ時京都大地震ニ而家居倒
るゝ斗にて皆地に伏し疂に伏し柱をいだきなどするも
有大道へてるもあり扨古家古土蔵ハ皆倒れ其外神社佛
閣石鳥居石燈籠或ハ築地高塀の倒るゝ事夥々(ママ)敷たとへ
丈武の土蔵たりともひヾりの入らぬハなし棚ノ諸道具
落損し[竃|かまど]倒れ襖戸障子ハいふこともさらなり家居た
わミて戸の志まり悪敷ハ皆一統なり引続
昼夜共廿度程ゆり候故怪我人等有之候而心もそヾろに魂をとられ肝を冷し
別而二三日ハゆり強く大道に疂を敷□燈をとり京洛中
皆夜□明し大道ニ茶をわ(カ)り飯をものし酒を汲漸々食物の
んとを通るといへとも心はそヾろなり地震
七月二日ゟ引続き九月中旬迠震動ス
いつまても永くゆり恐ろしき事なり当所ハ京地程ニハ
無之候得共内ニ居かたく夜分ハ舩を借り家内皆々船ニ而
夜明しいたし候二夜也
文政二乙夘年六月十二日之大地震も余程強候得共暫
時ニ而中々此度之様成事無之尤其節之義ハ八幡大溝辺
ハ巌敷承候得とも当津は格別之事も無御座乍去古家倒
れしも有土蔵も多々ひヾり入石燈篭ハかやり余程ゆり
強事ニ候
京地二三夜露宿して
ひのもとの用心もよし京中か(カ)
皆出て昼夜地しん□る□で
兎角ゆりやまさりけれハ
地も母のやくも□(忘カ)れす家蔵を
寝さ□(めカ)て猶もゆふりこそすれ
漸々治りぬる様子にて
秋さふ成行まゝふとん〳〵も
きぬた□打てかハる静さ
一七月二日申ノ上刻大地震之節御宮本社之減金(ママ)樋ゆり落
拝社之前石燈篭一方屋根之火袋落ル石之鳥居無恙石玉
垣不残落ル神輿蔵壁少々落其外格別之破損無之候地震
其節日々ゆり候又候九月廿六(カ)日朝五ツ半時ゟ四ツ半時
迠大地震有之候