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項目 内容
ID J2400735
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1694/06/19
和暦 元禄七年五月二十七日
綱文 元禄七年五月二十七日(一六九四・六・一九)〔羽後・津軽〕
書名 〔能代市史稿 第四輯近世―下編 (一)〕能代市編 S34・5・30東洋書院
本文
[未校訂]元禄地震による死者の供養碑
 死者三百名内男百二十七人女百七十二(三カ)人の死者を出し
た元禄七年の大地震被害者の中には一家全滅という惨鼻
の極を見た一族もあったろう。それから間もない七回忌
元禄十四年に佛教徒により無縁者の供養が営まれた墓碑
が遺されている。
石碑は地下から三尺三寸三分で大方風化して、文字の読
めるのは表面の『南無阿彌陀佛』六字の名號だけで、僅
かに年號元禄十年と、一千日惣廻向の文字を判読できる
程度である。
 西福寺にある貞享の文字ある村木新三郎家の墓石を除
いては能代最古の金石文である。
これはもと現浄徳寺当時浄土宗浄國寺の東側の土手下、
現在の泉松藏氏の敷地の右側にあつたものを、土地所有
権移動により浄徳寺南端共同墓地域に移され、更に昭和
三十一年の区画整理により萩の台新墓地なる共同墓地区
域に移され、心ある人の供養を受けている。
 この地震について、地震学者である理学博士今村明恒
氏が数度に亘つて能代に來り調査され、この記事の原本
代邑聞見録の読みについても前後五回研究され、校訂し
たといわれている。前に掲げた地震記はこの校訂を経た
ものである。
 氏曰く、回顧すれば、余が始めて能代を訪ひ、同所の
旧家たる渟城氏(八幡神社の神職の家と聞いた)所藏で、
著者自筆たる代邑聞見録を供覧して、元禄及び宝永地震
の記事を写取つて來たのは、二十三年前のことである。
該記事は震災予防調査会報告第九五に採録され、拙者元
禄宝永の能代地震論の根據となつたものである。として
いる。
 また元禄地震に伴ひ、該地方に陸地隆起の現象らしい
ものがあつたといふ事である。凡そ奥羽西海岸に起る大
地震に於て、陸地隆起が必然的な随伴現象であることは
余が屢々論じた所である。云うまでもなく此の隆起は基
盤が第三紀層である地方に起るのである。宝永の能代地
震、寛政の西津軽地震、文化の象潟地震何れもさうであ
つた。此等は当時の記事と、現在残つている汀線の痕跡
とに依つて確実に證明された所である。
 更に最近に至り男鹿大地震に伴つて、男鹿西海岸が隆
起したことが、先づ一昨年(昭和十七年から見て)の地
震に於て測地学的に計測され、尋いで文化地震について
證明された。更に遠く溯つて、嘉祥の莊内地震と天長の
秋田地震とに於て同様の現象のあつたらしいこと、余が
嘗て指摘した通りである。唯元禄の能代地震に於ては、
震源が海岸から離れて居り且つ其海岸も砂洲の地である
爲、隆起の證跡を摑むこと出來ずに今日に至つた次第で
ある。
 代邑聞見録元禄地震記には、『所により水湧出、地下
りしも有、川も沈て浅くなり、十日余は向へ歩行越にも
しけり』とあるが、これだけでも米代川の川床が隆起し
たらしいことが想像されないこともない。併し牽強に過
ぎる嫌がある。然るに同書の他の部に『元禄七年地震に
て川沈み水浅く、当座は向野代へ歩行越えしたり』とあ
り、想像の根據が強められた感がある。当に天長の秋田
地震に於ける雄物川の水涸れの現象に比較すべきもので
あらう。此の現象が水涸れ区域の隆起に起因したこと、
嘗て余が指摘した通りであるが、米代川の水涸れは最初
の十日間位で終つたやうであるから、米代川の下流十粁
位、卽ち激震区域全面に亘つて、一二米程度の上下変動
があつたとしても甚だしい誤差にはならないであらう。
此の陸地変形は、恐らく日本海側から進入する巨大な波
浪の如き形式のものであつて、能代・鶴形・駒形・小繫
の辺を貫く南北線は波の谷卽ち沈下地帯に当つたのであ
らう。
 と今村博士は地震学的見地からこの地震についての意
見を述べている。
 此の両度の震災は能代市民を恐怖のどん底に陷れたも
ので、恐らく流言蜚語も続出したものであろう。
 第三輯町名の変遷(六五頁)の項にある如く、野に代
るの不吉なるを忌み能く代る能代と改めたものである。
地震の外に大きい災害は火災である。
出典 新収日本地震史料 続補遺
ページ 137
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 秋田
市区町村 能代【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

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