地震史料集テキストデータベース
[未校訂]第百二十一代孝明天皇御字弘化四年三月廿四日夜大震災あ
りたり
水内郡西条村西組
家数五十八軒
内潰家二十五軒 外寺 一軒庵 一軒
半潰二十二軒 外寺 一軒
即死者八名内男 四人女 四人
御拝借金 二十三両
再御拝借金 十四両二分
御囲穀 拾九石
同村東組
皆潰二十二軒
半潰七軒
籾拾石五斗
同村徳間稲倉
皆潰二十軒
籾十二石
同村台ケ窪新田
皆潰五軒
半潰十三
籾七石五斗
坂中新田は西組条合を脱したる際故書類なし且つ坂中は両度
の火災にて書類焼失すと云ふ
老父斎藤豊作氏（当八十五才）の実話によれば坂中四十軒の
内観喜庵と笠原長左衛門二軒半潰其他全潰人十三人馬九疋死
救助状況詳ならず
弘化四年三月大震災に付浅川橋架替願書を差上ぐ
乍恐書付を以奉願上候 （徳永嘉門氏蔵）
水内郡伺去真光寺村役人一同申上候当村之内字浅川原橋今
般大地震にて右橋押払候ニ付先達而御役所に懸替の儀御願
申上候得共得と村方惣百姓え及示談候処此度押払候ニ付川
瀬甚以悪敷殊ニ川広ニ相成橋木等も素より寸間も長き木相
持候得ば猶以保方不宜敷と存是迄も年ニ寄一ケ年両三度満
水致押払候事も有之候今度の災難ニ而村方百姓一同労し自
力ニおよび兼候故殆当惑仕是迄自普請の処御願申上候段奉
恐入乍去御普請御願申上候而当年にも満水致し流失等有之
候而は難ケ敷儀ニ御座候間橋懸替の儀差止ニ而新規通御願
申上度候然所字横吹と申場所岩山ニ而自力におよび兼候間
何卒岩堀割の場所丈御普請仰付被下置候様奉願上岩前後の
場所を自普請仕候間格別の御勘弁を以右願の場所丈御普請
御聞済被下置候ハゞ惣百姓一同難有仕合ニ奉存候依之村役
人連印を以御願奉申上候 以上
水内郡伺去真光寺村
弘化四未年四月 小前惣代 文蔵
百姓代 彦兵衛
組頭 伴蔵
名主 嘉右衛門
高木清左衛門様
御役所
（此橋は真光寺と長原の間の橋なり）
弘化四未年大震災ニ付御林木払下願 （徳永嘉門氏蔵）
字尾名沢 但嶮岨
一御林一ケ所 但シ平均 長三百七十間横六十間
此反別七町四反歩
此木数七百三十本 松木立
右は今般伺去真光寺村両組役人奉願上候去月廿四日の夜大地
震に而居宅田畑山崩れ押抜亡所に相成候其上御林の内七ケ所
抜崩れ右木数の内百五十本程御林裾沢え押込四百本程の場所
は順々に下り送地に相成木の根浮上り其内にも根返りに相成
候分も有之全生立の木数百八十本程も有之様子に相見え且今
般御林抜所反畝歩木数寸間等相改早速御訴可申上儀には候得
共御林内地浮上り候故木元に参ること難相成先大方の処奉申
上候此上追々明細相改御届可奉申上候然処迚も根返り根浮木
の分相当の御冥加永を以御払被仰付被下置度奉願上候猶跡地
は地所落付候上は苗木植付可申候何卒格別の以御慈悲を右願
の通り御聞済被下置候はば惣百姓一同難有仕合に奉存候 以
上
水内郡伺去真光寺村
百姓代 嘉十郎
組頭 大蔵
名主 金左衛門
百姓代 彦兵衛
組頭 伴蔵
名主 嘉右衛門
高木清左衛門様
中野御役所
大地震に付道路橋大破に付急破普請願書 （徳永嘉門氏蔵）
乍恐以書付奉願上候
当村用水路字駒沢河揚口より田掛り迄
水内郡伺去真光寺村
金左衛門組
一長九百間程
善光寺往来農業道 同組
一長百二十間程
一土橋一ケ所 但長六間横九尺 嘉右衛門組
右用水路道橋共今般大地震に而大破におよび道橋共通路難
相成候得共人命危難を凌候追々には金銭米穀其外山崩土中
に埋或は振ちらし品少々に相成右用水路道橋共急破普請に
取掛り申度候得共大造の場所に而精身尽果殊に小村故中々
私共人力に及申ず一同相歎居候折柄一村限の人力に難叶場
所に而普請出来兼候はゝ目論見帳を以て可願出旨被仰付難
有村中打寄幾重相談仕候得共余り大造ニ而愚昧の私共目論
見出来兼候間何卒格別の御仁恩（恵ヵ）を以御見分被成下置道橋の
儀は早々普請不致候而は亡所残地切開き兼村方住居無覚束
用水地は途（迚カ）も一時に成就難斗奉存候尤亡所は精々相励鍬立
候場所見立粟稗成共蒔付申度心構に奉存候間願の通御聞済
被下置村方住居相成候様被仰被下置候はゞ大小御百姓莫大
の御救と難有仕合に奉存候依之乍恐以書付此段奉願候 以
上
弘化四未年四月 両組三役人
連印
高木清左衛門様
中野御役所
弘化四未年両組高反別仕訳書上被仰 （徳永嘉門氏蔵）
弘化四丁未年六月両組高反別仕訳帳
一高百十七石二斗八升二合
此反別十六町七反四畝廿七歩
内訳
高三十八石六斗三升三合三勺 伺去組
此反別五町四反七畝七歩
高三十六石二斗八升七合八勺 真光寺組
此反別五町二反二畝三歩
高四十二石三斗六升九勺 金左衛門組
此反別六町四畝廿七歩
此訳
田高十八石七斗五升六合
此反別二町五反七畝十四歩
内訳
高九石五斗六升九勺 伺去組
此反別三畝五歩
高三石一斗五升五合 真光寺組
此反別五反二畝廿三歩
此分不残亡地に相成申候
高十四石六斗四升四合一勺 金左衛門組
此反別二町一畝歩
三組合此取米四石六斗三合
畑高九十八石五斗二升六合
此反別十四町一反七畝十三歩
内訳
高三十七石六斗七升四合四勺 伺去組
此反別五町四反三畝十六歩
高一石三斗三升亡地に相成申候
此反別二反十五歩
高三十三石一斗三升真光寺組
此反別四町七畝歩
内高三十二石一斗七升三合亡地に相成申候
此反別四町五反四畝歩
高二十七石七斗一升六合八勺金左衛門組
此反別四町三畝廿七歩亡地同様に御座候
内高二十五石二斗三升六合八勺
此反別三町八反三畝七歩生地に御座候
此取米拾四石六斗八升
米五石六斗七升六合三才伺去組
内米四石九斗九升一合四勺真光寺組
米四石一升二合五勺金左衛門組
内訳
高九十八石三斗五升四合本免
此反別拾四町一反四畝一歩
内高三十七石四斗四合四勺伺去組
反別五町四反四歩
高三十三石一斗三升真光寺組
反別四町七反歩
高二拾七石七斗一升 金左衛門組
反別四町三畝歩
此取米十四石六斗三升一合 免一ツ四分八厘九毛余
一高二拾七石四斗二升 延享三寅改新田
此反別六町五反四畝二十四歩
内訳 高拾石五斗六升 真光寺組
同 高十六石八斗六升 金左衛門組
一畑高二十六石四斗四升九合
此反別六町二反四畝十八歩
内 高十石五斗六合二勺 真光寺組
此反別二町三反二畝九歩
内高七石六斗四升 亡地
内 高十五石八斗八升 金左衛門組
此反別九反二畝歩
内高九石九斗 亡地
此取米二石九斗七升三合 免一ツ一分二厘四毛余
一高拾一石三斗六升七合 安永九子高入新田
此反別二町二反七畝廿歩
内 高四石九斗 伺去組
内 高二石八斗 真光寺組
内 高四石三斗 金左衛門組
内田高一石六斗六升
反別三反十九歩
取米合二十三石八斗二升七合
内米六石四斗六升 伺去組
同 七石二斗八升 真光寺組
同 拾石七斗五升 金左衛門組
右は両組高反別仕訳仕候処書面の通り相違無御座候 以上
弘化四丁未年六月
信州水内郡伺去真光寺村
百姓代 彦兵衛
組頭 伴蔵
名主 嘉右衛門
百姓代 嘉十郎
組頭 大蔵
名主 金左衛門
長百姓 与市
高末清左衛門様
中野御役所
今般従御役所被仰付右之通り書上候に付両組には一帳づゝ扣
置候
弘化四年三月廿四日夜大地震に付諸職人手間賃諸色直段等無
謂引上せざる様各村へ御触に対し請書を徴せらる
差上申候御請書之事 （徳永嘉門氏蔵）
当御支配所高井郡水内郡村々大地震に付潰家破損家多分有
之追々普請修復に取掛り候処諸職人手間賃諸色直段等無謂
引上候に付不埓之取計仕間敷旨当四月中御触渡し有之候処
此度職人手間賃諸色鉄物等引上候様成之義有之候而は災害
を請候者共弥難渋の次第に付右様の義無之様厳重可申渡旨
御勘定所より御達御座候間猶精々村役人共心付当四月中御
触渡し之趣堅相守候様可仕不時御糺之上若不埓の取計致候
旨心得違仕間敷段不洩様可申聞旨被仰一同承知奉畏候依而
御請印形差上申候処如件
弘化四年三月廿四日夜震災に付真光寺被害者へ御救米被下各
人よりの請書
差上申御請証文之事 （徳永嘉門氏蔵）
家数十六軒 皆土中埋
内三軒 家内不残死絶候分
人数七十七人
内十八人 土中埋死候分
残五十九人
一米拾四石六斗二合 真光寺組窮民御救被下米
内男二十人 此米七石二升 但し一人に付米二合宛
内女三十九人 内九人六十歳以上 拾五歳以下男入
此米六石九斗四升二合 但し一人に付米一合宛
但し未七月より十二月晦日迄小を引日数百七十八日分
被下之
右は当御支配所信州水内郡伺去真光寺村之内真光寺組の義当
三月廿四日の夜大地震に而山崩落出道家居不残押埋皆土中埋
に相成格別に艱難に付来る正月迄取続のため書面之通り御救
米被下置候旨被仰渡一同難有承知仕候依之御請証文差上申処
如件
伺去真光寺村の内
真光寺組
弘化四未年八月
百姓 りめ
茂兵衛
彦左衛門
与兵衛
伴蔵
文蔵
吉左衛門
弥右衛門
市左衛門
民五郎
銀兵衛
友左衛門
五郎右衛門
長百姓 与市
名主 嘉右衛門
高木清左衛門様
御役所
弘化四未年震災に付伺去真光寺村之内真光寺組へ御救手当金
被下
差上申御請証文之事
（注、「史料一第三巻六九〇頁下六行以下と同文。省略）
弘化四未年十月御救金割渡し請取帳 真光寺組但し横帳
（徳永嘉門氏蔵）覚
一金高九十七両二分也
内三両二分 りめ遣し
残金九十四両也
金七両二朱六匁三分五厘づゝ 壱人前
右金子之儀は壱人に付七両二分宛の処りめ落に相成右金
高の内三両二分引候如斯也
七月廿五日
一金五両也渡ス 弥右衛門
十月廿五日
一金五両也渡す 民五郎
外三分二朱八分
十一月十三日与市相談の上民五郎に渡す又壱分渡す
十二月七日
十月廿五日
一金五両也渡す 与市
十月廿五日
一金七両也渡す 市左衛門
同
一金五両也渡す 茂兵衛
同
一金二両也 銀兵衛
外三両十二月七日渡す
〆五両
十月廿五日
一金壱両二分渡す 吉左衛門
外三両二分十一月十九日渡す
同
一金五両也渡す 五郎右衛門
十月廿五日
一金五両也渡す 伴蔵
十月廿五日
一金一両二分也 文蔵
二両二分也十二月廿日渡す
〆四両也
十一月十二日
一金五両也渡す 彦左衛門
外二両也十二月七日渡す
十月廿五日
一金一両也渡す 金右衛門
外二分十一月十二日渡
渡金〆金四十三両也
残り金五十四両二分也
惣〆金九十七両二分
一金十両也 預り主 与市
右之通り慥に御預り申候
一金十両也 預り主 伴蔵
内十二月十日二両二分預り取
一金二十四両二分 預り主 嘉右衛門
十二月十日五両預り
右之通り慥に御預り申候
内一両也十一月十二日 友左衛門渡
内二両也 同 金右衛門渡
内五両也 同 彦左衛門渡
内三両二百十一月十九日 善九郎渡
内三両二朱八分十一月十三日民五郎渡
内二両也十二月七日 彦左衛門渡
内金三両也 同 銀兵衛渡
内金一両也十一月七日 民五郎渡
内金一両也十二月八日五郎右衛門様に銀兵衛分渡
是迄渡分五十七両二朱八分
残金十二両一分二朱
内三両二分りめ分引
引残而金八両三分二朱
内二両二分十二月廿日文蔵へ渡
内三両也十二月文蔵へ渡
弘化未四年三月廿四日夜九ツ時善光寺平一円に渉り大震災は
空前の事にして中野代官高木清左衛門は幕府より高井水内二
郡御料所各村救助の為二千五百両拝借を願ひ各村被害者を救
助せられたり真光寺の外伺去・清水も此被害あり殊に清水に
は人畜の圧死せるものあるも文献なき故茲に記さざるを遺憾
とす
弘化四年三月廿四日夜大地震にて真光寺の被害は前述の如く
代官高木清左衛門は救恤を以て復興を計られ其恩徳を永久に
紀念するため同氏を真光寺の地をトし高木大明神と小祠を建
て毎年三月廿四日を祭日として祭祀す
弘化四未年三月二十四日夜大地震被害の状況は書類等なき故
記すべきものなきも北郷街道不通となり中曾根街道を開鑿す
今中曾根入口に道供養の石碑あり盛伝寺住職大耳導師を勤む
弘化四未年三月廿四日震災に罹り簑ケ谷地堤なぎ窪堤等破壊
して鳴子川沿ひ田畑反別二町六反拾三歩高二十八石二斗九升
五合荒地となれり
長野市