Logo地震史料集テキストデータベース

西暦、綱文、書名から同じものの一覧にリンクします。

前IDの記事 次IDの記事

項目 内容
ID J1900116
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1854/12/23
和暦 嘉永七年十一月四日
綱文 安政元年十一月四日・五日・七日(一八五四・一二・二三、二四、二六)〔関東以西の日本各地〕
書名 〔田辺町誌〕S5 雑賀貞次郎編・田辺町
本文
[未校訂] 安政元年冬の大地震、海嘯 嘉永七年冬十一月四日、五日
陽暦十二月二十二日、二十三日東海、東山、畿内、南海、西海、山陽、山陰
諸道に亘り大地震あり、瀕海の地は海嘯之れに伴ひ、諸国の
災害甚しく、家屋の潰滅六万、死者三千に上る。之れを安政
此の年十一月二十七日安政と改元の大地震といひ、我が田辺では明治二十二年
の水害と共に、地方の二大災厄として記臆せらるゝものであ
る。蓋し四日のものは東海道海底に震源を発し上総より紀州
に及び伊勢、志摩、尾張、三河、遠江、駿河、伊豆、相模、
武蔵、信濃、下野、山城、大和、河内、和泉、摂津、近江、
美濃、若狭、越前、播摩、備前、安芸、出雲、紀伊、阿波諸
国に大地震。尾張、三河、遠江、駿河、伊勢、志摩、伊豆諸
国に海嘯あり。五日のものは南海道の南方海底を震源とし、
前日の継続地震と見做すべきもので紀伊、淡路、阿波、讃岐、
伊予、土佐、豊前、豊後、筑前、筑後、肥前、肥後、壱岐、
出雲、石見、播摩、備前、備中、備後、安芸、周防、長門、
摂津、河内、和泉、若狭、越前、近江、美濃、伊勢、尾張、
伊豆諸国及び支那江南に大地震。紀伊、摂津、伊勢、播摩、
阿波、土佐、伊豆諸国に海嘯あり。震動区域の広かつたのは、
東海道南部の海底及び南海道南部の海底に平行せる両地震
帯は延長すれば相接続するが為めで、其度の甚しかつたこと
は此の海嘯の余波が遠く北米西岸に及んだといふのでも知る
べく、幕府が阿蘭陀甲比丹の来朝を一年延期せしむるの已む
なきに到つたに見ても察すべしだ。田辺では四日辰下刻午前八時
一大震動あり、前の六月の地震に数倍したもので、古家の倒
壊、塀、壁の崩るゝものが多く、海潮も亦多少の変調あつた
から、人々驚いて難を郊外に避けたが、同夜は小震動数回あ
つただけで過ぎ、翌五日は辰下刻小震あつたが、日和よく幸
ひ穏かとなつたので、住民多くは郊外の小屋掛等から帰り事
無かりしを互に相慶し安穏を祈り合ふてゐるうち、同日申刻
午後四時非常の大震動あり、家屋は大半忽ち倒壊し、次いて田辺
沖に当つて数回大音響あり、同時に海嘯起り洪波寄せ、会津
川口に碇泊の帆船を下秋津まで打ち上げ、会津橋を打ち破つ
たのは言ふまでもなく、稲成の下村、糸田、浄行寺後等に浸
水し、田辺市街では本町、紺屋町、下長町今の栄町江川、古町そ
の他に浸水し、本町横丁では水深五尺に至つた。この海嘯は
前後三回に来り第一回最も大に、第三回之れに亜ぐといふ。
その他会津川下流の川沿ひの地、附近村部沿岸に襲ひたるは
申すまでも無い。住民は江川、西ノ谷今の元町方面のものは上野
山へ避難し、会津川以東の人々は闘鶏神社の山及び松原今の宮路
通りの南側中央まで松原であった今の愛宕山等に数を乱して避難し、折抦間も
なく暗夜に入るとともに混乱のさま名状すべからず。酉刻
午後六時に至つて三栖口立花屋嘉兵衛、岡屋源助の両潰家から出
火したが、地震、洪水に怖れ殊に小震の絶え間がないので、
消防に駈付くる者極めて少く偶ま駈付けたものも震動のため
に、手を下さう様を知らず、斯かるうちに火は次第に大さを
加へ折抦の西南の風に煽られて北新町の東部、南新町に及
び、将に蟻通神社に及ばうとしたが、翌六日天漸く明けやう
とする頃、風急に東北に変つて火勢は西に転じ勝徳寺丁、孫
九郎丁以上今今福町袋町今の福路町上片町、上長町今の栄町下長町同上及び本
町横丁の全部を焼失し、火熄まざること三日、七日辰の刻に
至つて漸く鎮火した。損害大概左の如し。
焼失家屋三百五十五、倉庫二百六十六、部屋十四、寺院
三海蔵寺、本正寺、勝徳寺(
田辺沿革小史には焼失二百六十六、同土
蔵十四、同子舎百十、崩壊家屋二と記す

流失家屋二、辻番所一
死者九溺死五、圧死二焼死一
米麦の焼失及流失 約三千五百〇四石
以上の損害は田所氏の記せる統計なるが、別に別項所収干
鰯屋善助の手録には
焼失家屋四百六十、潰家十六、(ママ)失潰共蔵三百二十五、座
敷納屋雪隠等九百六十、寺三ケ所
死人 十三
穀物焼失 三千七百五十石
と記す。

注、以下は「史料」第四巻九一頁以下、及び三四九頁
などと同文につき省略
出典 新収日本地震史料 第5巻 別巻5-2
ページ 1594
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 和歌山
市区町村 田辺【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

IIIF Curation Viewerで開く
地震研究所特別資料データベースのコレクションで見る

検索時間: 0.002秒