地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（大地震之扣）
一大地震嘉永七寅十一月四日四ツ時ニ大ゆり始メ、其夜小六
ツ程ゆり明五日七ツ時ニ大地震其間数しれす、其夜四ツ時
ニ大地震、夫ゟ大小共八日ノ暮方迄ゆり、其間大小共数し
れす、夫ゟ十二月二三日迄ハ小昼夜七八ツ程ハゆり此事ハ
筆につくしかたし
一此度大地震ニ付高浪ニ而藤井表まで塩指込、親船抔野口村
小森又ハ岩内村宮崎江右船指込、夫ゟ郷中之人皆々丸山山
道成寺江人々皆々にけ込□々あわれしこくの事也
又塩屋浦人ハ皆々のろし山にけあがり
一浦方家抔之少々ハ流人死人数しれす
右人々ハ皆々野宿致し、夫ゟ皆々小屋ヲ住居致し候事ハ筆
ニつくしかたし
一熊野浦夫ゟ東海道筋浦々大損じ諸国共大損じ
一田辺ハ高浪ニ出火ニ而町家八分通り焼失并大橋抔も大損じ
覚
一別紙之通り□々江相触候様御勘定奉行衆ゟ被相達し候間、
御勘定吟味役中ゟ申来候ニ付直夫を以申遣候、宜取計候
以上
十一月五日丑刻 鈴木悌蔵
七組大庄屋
尚早々廻達可被申候
一昨日ゟ毎々地震ニ付火之元弥入念、夜中ハ申合打廻り候様
村役人共江相達候様
十一月五日
一右之通り被仰越候付、火之元用心増番等之儀無怠（カ）懊々取計
可被申候、且他所風来者等入込候ハヽ足留為致不申早々追
払可被申候ハ（カ）ゝ申遣候也
瀬見彦左衛門
右村々庄屋中
尚 急々廻達急留よりかへし可申候、且地震ニ付損失模
様怪我人等無之哉早々相達可被下候
口上覚
右は地震ニ付損失怪我人御調之もの御通書之趣承知仕、右
損失怪我人無御座候間、依之御達し申上候 以上
十一月八日 役人名前
瀬見彦左衛門殿
一別紙之通り御年寄衆被仰聞候段御勘定奉行衆被相達候付、
此段村々急々相達し可被申候間、申遣候 以上
鈴木悌蔵
十一月六日申上刻
七組大庄屋アテ
尚瀬戸又次郎も外ゟ直夫を以急々可被申合候
一船住居いたし高波之禍に逢候者も有之趣ニ付、船住居候者
共ハ早々陸へ上りにけ可申事
一給もの差支候者共ハ粥ニ而も焚せ差遣可申事
一老人子供等模寄（ママ）宜場所へ開置せ可申事
一此上日数もうつり候ハゝ雨露凌相成丈ケ取計可被申候
一右之通被仰越候付写し差遣候間、御書面之趣
相心得海辺等よりにけ参り之筋も有之候ハゝ、成丈ケ行届
世話致し遣し可申旨状着早々小前末々迄相触可被申候間申
遣候 以上
瀬見彦左衛門
十一月七日申刻
一別紙之通り御勘定奉行衆より被申越ニ付、右写し壱通差遣
候相通じ可被申候、以上以直夫申遣候 以上
鈴木悌蔵
十一月八日酉刻
七組大庄屋アテ
一此度地震ニ付早々穏ニ相成候様、左之神社ニ而御祈禱被
仰出、各御祓一組（カ）へ壱躰ツゝ下け遣候付、其段村々江急々
可被相達候 以上
水野藤兵衛
十一月八日
鈴木悌蔵殿
日前宮岡之宮伊太新曾社栗林八幡宮右之通り
一今晩八ツ時頃南谷組野嶋村弥助と申者之処胡乱ケ間敷もの
四人程不想（ママ）ニ入込候ニ付、追払候得共右等為取入同組之内
村毎ニ村端へ番小屋被立相固候筈ニ付、同組より申来候、
右ニ付悪党もの当組内へも入込候儀難計候付かねて相通じ
有之通り増番取計、且固メ小屋之儀取定候様致度候事
瀬見彦左衛門
十一月九日酉刻
右村々
一此度地震高浪之大変恐入之事候浦村流家・溺死等夥敷有之
趣、右ニ付郷方之内親類等有之筋ハいづれ扶助之儀如者（ママ）ハ
有之間敷候へ共、行届ケ候様、猶又無縁ニ而も郷方山寄等
へにけ参候筋等凌せ方世話振行届ケ候様小前末々迄行届ケ
相触可申候、尤右世話いたし候筋も農業差支無之様相互ニ
助け合被申候事
一此度之事ニ付無取留浮説申触らし候者有之、中ニは狂人躰
之者も徘徊致候趣ニ付、虚実不取違様心掛ケ可申旨可被相
触事
一御年貢積船破損ニ付俵物并積合木類其外流家散乱之金銀家
財道具等心掛盗賊立廻り之儀も難斗浦村ニハ御手代中打廻
り厳敷御取締有之事ニ付里方之者共浦方ハ要用ニ而参り候
而も不正ニ紛敷無之様可相心得自然拾ひ物等致候節ハ早速
届出可申段小前末々迄不洩様□□相触可被申候追而厳敷可
被仰付事
一火之元用心風来者取締り之儀無油断可被申事
瀬見彦左衛門
十一月九日
一此度地震高波一条ニ付兎角無□留雑話申ふらし候趣中ニは
胡乱ケ間敷相聞候筋有之趣ニ候間□□右等之儀申ふらし候
者有之候ハゝ其者名前・住所等を相糺候上不審ニ相聞候ハ
ゝ村方へ引留置其段早々届け出可被申候若逃去候躰ニも候
ハゝ弥胡乱者ニ候条無手抜取斗可被申候依而申遣候 以上
瀬見
十一月十日
右村々
一此度大地震ニ付高浪ニ而浦々人家流失破損等多及難儀候筋
茂有之処、諸物高直ニ売立候者も有之趣ニ相聞甚以如何之
事ニ候、右は成丈ケ下直ニ売渡し候様、若心得違候者も於
有之而ハ急度相糺候条、此段商人之者共江厳敷相触可被申
候、仍之急々申遣候 以上
十一月十三日 鈴木悌蔵
七組大庄屋
右は急々廻達可被下候 以上
右之通り被 仰越候付写指遣候、御書面之趣被相心得、諸
商内致候者共江不洩様急々相触可被申候、就中諸商人共金
高利之儀之趣相聞候間、成丈け下直ニ売立候様可被申聞
候、仍之急々申遣候
十一月十四日 瀬見彦左衛門
右村々