地震史料集テキストデータベース
[未校訂]一当月廿六日暁八時前地震御座候而、魚津役屋敷北之方土塀
五間斗より潰し申候
一同所古城跡ニ有之候武具土蔵二ツ之内、西之方御土蔵根駄
石ゆるき引込一寸斗透、且壁も数ケ所相損申候、因而右土
蔵江入居候御武具之義は東之方御土蔵江移替置申候
一御武具之義は二階裏ニ懸置候靱七甫ゆるき落、六甫御用立
不申程ニ損候由ニ御座候
一魚津町大工伝次郎と申者、家前通半分斗より（ママ）潰し申候、外
少々宛之損所御座候由ニ候へとも、敢而申立候程之義ニ而
も無之躰ニ御座候由、右ニ付人馬異変之儀ハ無御座様子ニ
御座候
一滑川駅御蔵之内二戸前破レ、御米崩出候躰御座候
一同所給人蔵之内武津屋和七郎并宮木屋源右衛門分一戸前宛
右同断之由ニ御座候
一同所之硫黄御蔵一戸前余程相損候様子ニ御座候
一同所水揚屋喜右衛門等家八軒相潰レ、右之外ニも家等少々
宛相損候分数軒有之候躰ニ御座候へ共、人馬異変之儀ハ聞
得受不申候由ニ御座候
一高月村辺往還半丁斗之間少々充地割レ、馬往来仕兼候由ニ
御座候
一右躰ニ付三御郡江月並廻兼帯ニ而同心小頭同横目等急発足
申渡候由ニ御座候、右支配与力共等より申越候趣ニ御座
候、猶委細之義追々申越次第可奉申上候
一遠方之義ニ而甚六ケ敷義ニ御座候へ共、右申越候趣共を以
相考ヘハ、魚津表之義ハ金沢表之震と大抵同様ニも可有御
座哉、滑川表之義ハ少分強き方歟と奉被存候義ニ御座候
一富山表之義ハ未何等も不申越候ニ付相知れ不申候へ共、余
程強き震ニ而御城石垣抔も崩れ候様ニ於金沢表風評仕候、
何れ相変候義ニ御座候故、富山御領境等惣而新川郡内為御
縮方支配与力之内急々相廻可申様魚津表江申遣候
一魚津表損所等之義迄荒増御用番村井又兵衛迄相達置申候
右謹而奉言上候 以上
戊午
二月廿八日 成――判
一今度地震ニ付即日出立仕候同心小頭立花源吾、平同心黒田
良右衛門・稲川喜三之助、同心横目荻野義右衛門、平同心
曾田甚太夫・村瀬銀三郎義、砺波・射水両郡振分り相廻申
候ニ付往来先ニ御座候故、上新川筋之様子承合候趣申越候
別紙一通、文筆等見苦敷奉恐入候へとも其儘奉入 御覧
候、右別紙之内右川と称名川と落合夫ゟ神通川と相唱候躰
と御座候義は、常願寺川と調可申を加様（ママ）書誤候と奉存候
一長門守様御立退之義ハ、右立花源吾等出役先より魚津役邸
江達候廿九日附之紙面てハ布目村長専寺と調御座候、初メ
布目村江御立退、夫より又小竹村江御立退ニ而も可有御座
哉、如何共相訳りかたく奉存候
一右山抜ニ而真川等塞り候儀猶更入念承合候処、別紙ニ申越
候ケ所ハ不存申、浄土山等数十ケ所ノ之（ママ）山抜ニ而大変之躰
ニ承合申候併塞り止り候真川等追々水洩出候躰ニ而、一時
ニ出水仕候様之儀ハ先は無之候ニも重而風評承合候旨右源
吾等ゟ申越候
一高原村役先□ゟ廿九日日附ニ而役屋敷江注進仕候趣は、
常願寺川縁原村より二里斗奥ニ有之候鬼ケ嶽と右向山と崩
合、右川水止り候躰ニ而、廿七日ニ芦峅寺村之者一人右溜
水之場所見ニ罷越候処、七谷余り海之様ニ相成大変之旨罷
帰申候躰、何時出水可仕も不被斗候ニ付、右川筋之村々山
々被立退心配仕相歎罷在候旨ニ御座候
一右等之趣ニ付、前月晦日急発足ニ而与力高畠九郎兵衛義ハ
春廻として富山近辺ゟ砺波・射水筋江出役仕、右二郡相仕
廻新川筋廻り候筈、同阿閇小右衛門義ハ為御縮方富山御領
境等新川筋江出役仕候段魚津表ゟ申越候
一右常願寺川々上水止り
長門守様御立退之義は荒増之趣御用番前田土佐守迄相達置
申候
一高岡反久寺
御廟之様子承合候趣申越候荻野義右衛門別紙文筆等見苦敷
奉恐入候得共、是又其儘奉入 御覧候
右謹而奉言上候 以上
戊午
三月三日 成――判
（都鄙の嵐三ノ抄 安政五年）
一左之通直吉ゟ書写差越之
地震後真川等至而減水仕、右川上山抜ニ而川留り居候段、
原村等ゟ為相知候段川筋村々ゟ及注進候付御達申上候、尚
聞合罷在候処、当廿八日小見・亀谷・下山・和田〆三ケ村
杣弐拾人相仕立、慥成所為見ニ鍬崎山之峯々指遣候処、右
之内七人登山仕見受候処浄土山続南平大抜仕居
一字松平と申山不残湯川迄抜出居申候
一湯ゟ（川脱）南かり込ケ池之東ニ当りと（カ）う烟り立候ケ所有之、如何
相成居候哉相知不申候
一かり込池御座候様ニ相見得申候
一大鳶・小鳶両山不残麓ゟ抜出だし、洞谷、新湯并小屋場、
松尾迄谷々不残埋込、熊倒江吹懸大橋向とり木尾と申山の
東平立木無之様ニ相成申候
一巣こうと申山大抜ニ而真川迄抜出、谷間々々不残埋込、其
丈ケ何程共難計大変之事ニ相見得申候
一鬼ケ城と申山同様ニ而其外小抜所数不知候右ニ而当時水の
まい居候所ハ一ケ所も相見不申、右谷々相埋り其辺ゆるき
候故、真川湯川共減水之義ハ右谷間々々江しめ込すどり出
可申と被相考候段、右村聞合候趣上瀧村役人ゟ及届申ニ付
御達申上候
一有岸村之義所々山抜等仕候得共、家作皆潰レ人馬異変之義
無御座候、損シ高之義未タ雪五六尺斗御座候故相知不申候
得共、雪委ク割居候旨右村ゟ注進水次村迄罷出申聞候付御
達申上候 以上
魚津表相替義無御座候
一前月廿八日
長門守様布目村江御立退ニ御座候処、同晦日夜丑時御 帰
城之御様子ニ付入念承候処御 帰城相違無御座由ニ御座
候、右ハ山々川々江崩レ水止り候ケ所奥入ニ而、最初之日
ハ雲霞ニ而[爾|しか]と難見分ケ処も御座候ニ付大形ニ申触シ候へ
共、最初ゟ全水留り候と申ニ而も無御座、少々宛水道付有
之候故追々溜り水押出候儀ニ而、外江水道付可申儀は無御
座由ニ而御 帰城有之候義と申事ニ御座候旨
一当時之処地震も鎮り水道も付、只今之処人気も鎮り候哉ニ
被察候旨、右新川筋江相廻候与力阿閇小右衛門より三月二
日附紙面ニ而廻先ゟ申越候趣ニ御座候
一右之趣を以考見候ヘハ、先便奉申上候常願寺川上江見ニ参
り候処七谷斗海之様ニ相成居候と申儀ハ軽き考之義、左程
ニも無御座義を見違大形ニ申触候義かとも奉被存、乍去如
何共[爾|しか]とハ難申上義ニ御座候
一同心横目原貞之丞等地震変死人等之様子相聞得候ニ付上新
川筋江廿八日出役仕、立山等之様子調理書一通指越候、文
筆等見苦敷奉恐入候得共其儘奉入 御覧候、且右ニ付立山
仮絵図一枚指越候、本紙余り見苦敷御座候故写取、是又奉
入 御覧候
一右調理書ニ調御座候与力阿閇小右衛門手合江加り可申と申
義ハ、元来与力御郡廻ニ罷出候節ハ同心小頭、同横目之内
一人外ニ平同心四人都合五人召連申候処、此度同心共一時
ニ御郡廻ニ罷出跡人少ニ相成候故、与力阿閇小右衛門義は
同心二人召連罷出、右貞之丞等於廻先相加り都合五人之人
数小右衛門召連相廻り候義ニ御座候
一砺波郡今石動、射水郡高岡潰家等多く御座候様子ニ候へと
も、彼筋江廻り罷在候同心共等ゟ未何等も不申越候故難相
分御座候、申越次第可奉申上候
一同心横目田中義六郎等、即前月廿六日出立仕候新川筋相
廻、当月四日罷帰申候と承合候義共相達候趣左之通ニ御座
候
一舟見村領下高エ（ママ）と申御普請橋北之方石羽取（ママ）二坪斗崩候躰、
且石田村・横山村・泊町御蔵所、曁境御関所并越後筋相替
義承不申旨ニ御座候（後略）
戊午
三月八日 成――判
魚津表相替義無御座候
一今度地震ニ付砺波筋江相廻シ置候同心小頭立花源吾、射水
筋江相廻シ置候同心横目荻野義右衛門より廻先損所等調理
書二通指越申候、文筆等見苦敷奉恐入候へ共其儘奉入御覧
候
右調理書之内高岡義百八十五軒之損家之様ニも相見へ、又
皆潰之様ニも相見得、少分訳り兼候様之調方ニ御座候へ
共、猶金沢表風評承候ヘハ百八十何軒之損家と申事に御座
候、左候ヘハ二階或ハ廊下抔潰候而本家皆潰ニ而は無御座
損家軒数之義候と奉被存候
一当十日昼九半時頃常願寺川川上大鳴仕候内出水仕、半時斗
も相立減水仕候に付、幸与力阿閇小右衛門義西番村ゟ藤木
村江罷越候途中之事故手合同心召連早々其筋見分仕候処、
用水川或ハ用水古川等所々水切込、御田地も少々損シ申躰
見聞仕候、右出水ハ不残泥ニ而二尺ゟ四五尺斗りも溜り居
申候、右ハ即十日昼四時前并四つ半時過両度少々之地震御
座候ニ付、常願寺川川上山々先達而ゟ所々損居候事故右地
震ニ而崩出シ申儀と奉存候旨
右ハ即小右衛門廻先より申越候趣ニ御座候、金沢表も即十
日朝之内刻限ハ覚無御座候へとも少々震申候
（中略）
右謹而奉言上候 以上
戊午
三月十三日 成――判
魚津表相替義無御座候
一与力阿閇小右衛門義新川筋廻方相仕廻、当十四日魚津江罷
帰申候ニ付、調理書一通指越候ニ付其儘奉入 御覧候
一立山之様子見聞之趣、富山之様子承合候趣同心横目原貞之
丞ゟ指越候一通、当十日常願寺川出水ニ付而之調理書同心
横目石川良之助より指越候一通文筆等見苦敷奉恐入候へ共
其儘奉入 御覧候
一立山劔ケ嶽之方地震後も遠方ゟ見請候而は矢張是迄之形之
通り相見へ申候旨、且常願寺川ハ地震後濁り強く澄不申
由、当十一日魚津より罷帰候御番頭津田平兵衛申聞候
（中略）
右謹而奉言上候 以上
戊午
三月十八日 成――判
魚津近在相替義無御座候
、一前月十日新川郡常願寺川供（ママ洪）水ニ而御田地損所聞合候趣前月
廿三日奉言上候後、御田地損所調理方同心横目田中儀六郎
より指越候一通文筆等見苦敷奉恐入候得共其儘奉入 御覧
候（中略）
一富山御領宿在且御家中共五万両之御見込を以上納金被御渡
置候へ共、前々之上納金ニ而一統難渋之趣願方仕居候へと
も御聞届無御座候処、同月廿五日之地震ニ而宿在共余程相
損候躰ニ付、今度格別之趣を以前件上納金百両ニ付四ケ一
御用捨被仰付候躰
一当十月迄百両ニ付三ノ二御取立御座候躰ニ候へ共、人々騒
々敷申立候程之義ハ無之躰併近年世上不融通之時節柄ニ而
何茂迷惑仕候得共、成限り才覚を以上納仕候躰相聞得申候
右同心横目田中義六郎より申越候
（中略）
右謹而奉言上候 以上
戊午
四月八日 成――判