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項目 内容
ID J1002459
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1830/08/19
和暦 文政十三年七月二日
綱文 天保元年七月二日(一八三〇・八・一九)〔京都〕
書名 〔地震日記〕東京都立大学附属図書館
本文
[未校訂]なゐの日那ミ
文政十三庚寅といふとしのふミ月二日朝より日晴て穏な
りしに申の時にいたりて戌亥の方とおほしきより[地震|ナヰ]ひ
と[震|フ]りふり来ぬ七ツの時なれは雨にやなりなんといひも
あへぬにいはゆるゆりなおしよとおもひのほかにおとろ
〳〵しう震り来るものか天地もくつかへるにやとおぼゆ
はかり鳴り動きて荒きなミ風ニうかへる小舟に乗り居た
らんこゝちして震ることおひたゝし[九|ク]あたりの障子ふす
まハゆりはつし棚なるものハゆりおとし石燈籠竹垣なと
は物にもあらす家居ぬりこめの蔵ついひちともの倒るゝ
音屋のうへの瓦の落る音皆ひとゝきにひゝきあひて都の
うちハ土けふり空をおほひ天つ日影もかくろひてしはし
ハ四方も見えわかすさて震る事数はおほし抔とはしめの
こときは五たひなゝたびにもおよひぬへしこれニつゝき
てなほ震りつゝ世の中たゝ鳴りになること風あらき日海
ちか(ママ)九てさゝ波の音に似ていつくともなくたゝ登(と)どと
ひゞきてたそかれニいたりぬ人皆は初より何ごともおも
ひわかす(王)神を祈り仏をたのみつゝ辛うして門べにのかれ
出ちまたに畳抔やうのもの敷ならへかの上に家人こそり
てわなゝき居ることおしなへてかくのことし又[病人老|ヤミヒトオイ]
人なとを野へに河原にたすけ出すとて乗りもの夜るのも
のなにやかやともてさわき行かふさまいとうたてし此さ
わきの中にてたれかれかたらひあはすとハなけれと男も
女ももとと里に[剣祓|ケンハライ]とゝなふ那る伊勢の大神のぬさを
さし又何くれの御符ゆひつけたる事都のうちみなひとつ
心に物したるもいとあやし日[九連|くれ]ゆけとも鳴りも震りも
やミもやらねは只管の心ちして志はしもやすき心なきを
いか那るものゝいひ出しけむこよひもはしめのこと幾震
りあるやまた何時には火おこりて都のまちのこらすやけ
ぬべしまたぬす人いまたゝいまかしこの屋の上をつたひ
たりなとやうのくさ〳〵の事いひふらせはこれにも人々
おちおそれて調度ともを西に東にもちはこひさわく事
おゝかたならすさる中にも今宵ハ空よく晴たれはちまた
のかり寝に雨のうれへのなきのミをせめての幸ひと皆人
いひあひたりきかくて此夜のあけ行まゝ震りもやゝおた
しくおほゆれは人の心もすこしハをさまりて門の外なる
は皆うちにいりぬ三日井の水を九むに皆にこれり世の中
の鳴ること昨日にはやゝおたやかなり震りも大なるもち
ひさきもありて大小をいふはすへて尋常の震りにたくらへていへるなり[八十百|ヤソモ、]たひはかり
にやありけむすへてたひことにむねつふれて人のおもゝ
ちかはりやゝ大きなるにいたりてハやかて外に逃けいて
つゝかくしてけふひと日は何わさもせすしてやくと(ママ)ハに
くるかまへのミなりきすべてきのふよりこなたハもの喰
へともいさごをふくめらんやうにて味ひさらに[出来|イデコ]すは
らこはりむねふたかれるもおしなへてのことなめりかし
今宵もちまたに夜をあかしつうきたる事ニもいひふらす
もまへにかはらず四日卯の時夕立したりたへて此ほと雨
なけれは火のあやまちをおほつかなみて家なミに桶に水
をたゝへそのあらましにそなへたりしに此雨日々よろし
きうるほひなれと人もわれもよろこひあひぬれと[震|フリ]あ
らしたる瓦ふき又おもひもかけぬひま〳〵よりもりつた
ふしたゝりに家のうちなる調度ともぬれひつれば物とり
のけものおほひなといとはしたなき事ともおほかりきけ
ふも夜をかけて[四十五|ヨソイ]十[度|タビ]や震りぬらむ此夜もちまたの
旅寝よべにおなし此ほとこゝかしこに火のあやまちあり
て物さわかしく猶うきたるいひふらしこともやます五日
の震ること廿三十たひこよひもすへてさき〳〵の夜にか
はらす六日夜をかけて十あまりふたつミつはかりやあり
けむ此頃にいたりて世の中のなることもをさ〳〵きこへ
すなりぬこよひハちまたにものする人やゝすくなし八日
の夜寅ひとつといふほと尋常に大きなりといふはかりの
ものミつよつと震るほとこそあれ又しもいたしや震り来
んとて人々おきさわきつゝさいつるの如くちまたに出て
夜の明るを待しにそののちはさせることもなかりきさて
のちハ日数の震り十ウ五つ七つまた十[四|ヨツ][五|イツツ][廿|ハタ]ばかり
つ(ママ)ゝ[天気|テイキ]の(ママ)晴くもりにやよるらん数定まらすてをり〳〵
はおとろかるゝはかりなるもありきまことや九日の夜は
火のあやまち五とこそありしか申にも町々の東正親町の
北に火の事ありとて朱雀なる鐘いたくつきおとろかした
り大うち近きあたりなるになお此ほとハ内侍所の[御造営|ミツクリカヘ]
ありとて(ママ)かねておほやけよりのおほせこともありけれは
町々のさわき大かたならすされとぬりこめのくらひとつ
焼うせて外はことなくありつれはいたりてしつまりきか
くて中元になりぬれはくつれそこなはれをつくろふとて
其ことにまきれいきほひおとろへたるなとハともかくも
うせすてうちこふめれはそのかゝつらはぬか(カ)りな住ミの
人まても人のうへをおもひやりてかたミにつゝ志しなと
するけにや例のよろこひいひあり(カ)に(カ)人もいくすくなく
てさら〳〵しか(カ)りきさて十七日の夜より雨ふり出て十
八日はいやましに降りそひつゝちかきとしうちにハおほ
しぬはかりの大雨ひと日のほとふりにふりぬ此雨もかの
なこりの何くれに倒れくつるゝ事おひたゝし九また賀茂
川桂川をはしめて都のうちにてハほり川小川の川へ水高
うなりほとりの[家|イヘ]の[床|ユカ]をひたせは畳をあけ橋をひきて
そのさわきたたならす東山なる清水寺は山きしの石垣か
ねて地震にやゆるひたりけルいにしへより名にしおひた
る車やとりもろともに下なる道に崩れおち音羽川の水に
伏見街道のほとり海をなし逢坂山くつれてゆききたえ近
江大津の景(カ)町といふまちの辺りは其うしろなる山川の
つゝミ切れて[湖|ウミ]におつる水かさ[六尺|ムサカ]はかりにひたり又
宇治はし落て川は大椋の池とひとつとなり其外よど八幡
はさらなり常あらぬ所もすへて水にひたれりとそ此ゆふ
へ東の空に[雷|カミ]はた〳〵鳴りし山科の辺りはいかつち[廿三|ハタミ]
[十|ソ]はかりおちしとそいふなりかくて日を経るまゝにやゝ
おたしくハなりゆくものからけふ八月廿日におよひぬれ
となほふたつみつは震りつこのゝちやいかにあるらん
此はしめに震り来しさまは戌亥よりはしめて辰巳の方に
いたれりとそいふなる戌亥の方にてあたこ高雄のあたり
ことにきひしく丹波の亀山もつよく震りしをそれよりあ
なたハやゝおだやかなりしとぞ北の方にてくらま山空穏
にて京の半にもあらす丑寅にて比えの山も同しさまなり
あふミにてハ坂本また穏なりそれより北つき〳〵穏にて
高嶋のあたりにてハ同しはしめの申時に[尋常|ヨノツネ]のひとつ
震りしのミと其里人の来てかたりき東にて大津膳所もみ
やこの半といふへし東南の方信楽のわたりはかの日の爾
時はかりより山鳴りたりしを是や地かミなりといふもの
にやあるらんと里人のいひあへりしに同し時頃やゝ大な
るひとつ震りつるのミなりきと其里なる何かしのもとよ
りふミしていひおこされき宇治のほとりハいと穏に震り
伏見六地蔵なとハみやこにひとしく南山城井堤の里の辺
りよりあなたハいと穏に又淀の東よりハ半にもいたらす
そのほかちかき国々も同し時に震りたれとも尋常におと
ろ九はかりの事なりしよしきこゆかゝれは都をもとにて
ほかはミなそのあまりとこそおもほるれかけまくもかし
こき御あたりはうかかひしるへきよしもあるとはるかに
あふき見る目にも御ついひちのめくりいたくそこなはれ
雲の上人の御殿あたりのミかさともゝなかはくつれたる
はかしこしともかしこし冷泉の[御城|ミキ]のめくりもいたくそ
こなはれ堀の石かきとも崩れたりき
神のみやしろハすへてそこなはれすされと石の鳥居をれ
玉垣くつれたるはおほかりき堂の倒れたるひとつふたつ
きこえたれとそのほかは大かたのそこなはれなり墓のし
るしの石ともはなへて倒れたり塔はミな障らす家のくつ
れて住かたきハひとまちニならしたらんにはふたつミつ
ともいふへしゆかみそこなは□(れカ)たるはいたきもさしも
あらぬもひとやとしてもれたるはなかりきぬりこめのく
らは百の中にていはゝ十はかりハそのをりに[九|く]つれ廿は
かりはなかは倒れたれはせんすへなくてやかてとりくつ
し六十はかりは四面のかへまたかたへなと落てうちあら
はなるもありあるは軒あるは裾のめくりの土落たるもあ
りはしらのくちたるなとハ折れゆかミてなゝめになれる
もありてさま〳〵なりのこれる十はかりもあしこやこゝ
やとそこなはれありていひもてゆけはすへて障らぬはあ
らさりき
此さわきに人のそこなはれたる事ハ数しらぬと大きみや
この中にて[死人|ウセタル]はたゝ[三百人|モモタリ]余りなりしとそいふなる
遠き国々より此とふらひのミふミわかり(ママ)おこせ給はり
てそのこともたつね給ふにまのあたり見しおもふき(ママ)つ
たへきゝしおもふき(ママ)をこたへやるとてかくはものしつ
るなりことのはのつたなきハもとよりなからなほこの
おとろきの心しはし(か)ましぬるものゆるし給ひねかし
志ミのころやの
あるし
千楯
出典 新収日本地震史料 第4巻
ページ 464
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
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