[未校訂]入野駅の南一帯にひろがる県立公園入野松原は、砂浜に幅
五五〇メートル、長さ四キロにわたって数万本の松がなら
び、樹姿が独特の景観をなすため、昭和三年高知県の名勝
に指定された。四〇〇年ほどむかし、長宗我部元親の老臣
で中村城監となった谷忠兵衛忠澄が囚人を使って松原に補
植し、さらに一七〇七(宝永四)年の大潮以後毎年一家族
ごとに野生の黒松六本ずつを植えさせたのがしげって今日
の美林となった。
下ノ加江の中心集落から国道三二一号線にわかれて、海岸
線を東へ四キロ、バスで約一〇分ゆくと布という小村落が
ある。この村落の北のはずれ、松ケ鼻というところに、天
文年間(一五三二~五四)一条氏の後見役として豪勇をう
たわれた立石右京進、口碑に立石摂津守といわれる布・立
石村の領主の墓がある。墓は宝永の大地震で流失したもの
を一七四四(延享元)年、村人の手で再建したものだ。村
人はその戒名から、“高岳さん”とよんでいる。