Logo地震史料集テキストデータベース

西暦、綱文、書名から同じものの一覧にリンクします。

前IDの記事 次IDの記事

項目 内容
ID J0601287
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1662/10/30
和暦 寛文二年九月十九日
綱文 寛文二年九月十九日(一六六二・一〇・三〇)〔日向・大隅〕⇨二十日、津波あり
書名 〔赤江郷土史〕○宮崎県
本文
[未校訂]第三項 寛文二年の大地震
 寛文二年九月十九日の地震は日向の史上空前の大地震で
あった。前項に掲げた町村沿革にあるごとく、田吉村はも
と福島村と田吉村の二村であったが、この地震で福島村は
海中に陥没してしまったので、その住民が今江に移って現
在の福島町を造ったと伝えられている。すなわち明治二十
一年調査の町村沿革調によれば
「一、福島町
旧延岡藩所属寛文二年九月赤江川南岸即チ北那珂郡田吉
村ノ内字福島ノ住民暴潮ノ侵入ヲ避ケ該町往古ハ太田村
ノ内字今江原ト唱へ一ノ曠原ヲ開墾シ屋処ヲ定メ福島町
ノ名称ヲ付ス」
とある。また郡司分村も、もと東郡司分村と西郡司分村と
に分れていたが、東郡司分村もこの地震で海中に没したと
伝えられている。また「日向地誌」の田吉村の部には赤江
町について、
「赤江町
山内ノ北ニ連ナル東西五十間南北三町三十二間人家七十
四戸○相伝フ此町古ハ今ノ城ケ崎ト比ヒ赤江川ノ南岸ニ
アリシカ寛文二年壬寅ノ大地震ニ[海溢|ツナミ]ノ害ヲ蒙リシヨリ
此地ニ移セリト」
と書いてある。これによれば赤江町も赤江川の南岸にあっ
たがこの時津波の害を受けて移転したという。この寛文二
年には全国的に地震があり幾内から関東、北陸、関西各地
に亘り京都なども被害が多かったが、特に日向の国は激し
かったわけで「宮崎県災異誌」によると、
「寛文二年九月十九日日向南岸沖潰家三、八〇〇、死傷多
し、津浪あり(以上理科年表)子刻地大に震う。日向に
ありて県城廓(延岡)の石垣五間余破損、津浪の為に荒
茫せし田畑五七町余、宮崎下別府の湊に泊せし船舶一〇
隻破損、汐入となりし麦二二〇俵余、米五〇〇俵余、堤
防破損一三ケ所六七〇間、其他道路橋の崩壊して通行な
り難き所また多し。倒家一、 三〇〇余軒、半倒五一〇
軒、死亡五人、佐土原(島津氏居城)城廓の石垣壊れ、
士庶の家破損せしもの一、八〇〇余戸」
とある。また旧幕領の記録「日向国御料発端其外旧記」に

「那珂郡之儀高橋右近太夫殿領分有馬左衛門佐殿領地之節
寛文二年寅年地震津波ニテ新別府村、吉村、下別府村ハ
田地海成、福島村ハ田畑皆無所ト相成候由ナリ」
とある。さらに大淀川の北岸においても、町村沿革調の上
野町について、
「上野町 元下別府町
寛文二年九月十九日大地震ノ際水底ト変ゼシヨリ現今ノ
地へ移転シタルモノニテ其以前ノ沿革ハ全ク不分明、尤
往昔ヨリ旧延岡藩所属」
と書いてある。それで上野町も、もとは下別府町と言った
のであった。このことは小戸神社の移転がこれを証明して
いる。「宮崎県史蹟調査」に小戸神社について、
「小戸神社は初め下別府の地に在り、寛文の震災により現
地に移れるものにして、小戸の社名は小門の古伝に在る
ことを伝うるものなり、云々」
とあり、ここに現地とあるのは橘通二丁目のミシロ食料品
店の南附近で、ここに遷座したのを、昭和七年に橘橋の架
替に伴い接続道路拡張のためさらに鶴の島町の現位置に移
転したのであった。このように各地に被害をもたらした
が、中でも大淀川の河口に近い沿岸が最も被害が大きかっ
たわけである。当時吉村の庄屋であった清水氏の系図に
は、ヅンブリ島について、
「一、ヅンブリ島寛文壬寅年大地震津波亡所後元禄五壬申
年御領所相成吉村預被仰付、其後元禄十四辛巳年清水清蔵
代請地願上被仰付候事」
とあり、ヅンブリ島の名はヅンブリ沈んだ島という意味
で、元禄五年に幕領となり吉村の預りとなったことは、町
村沿革調の記事とほぼ一致する。そして元禄十四年に庄屋
の清水清蔵の代に請地を願って許されたとあるが、[請地|うけち]と
は請すなわち一定の年貢を納めて開墾することである。日
向地誌の田吉村の部に、
「ヅンブリ島
姥ケ島ノ南ニアリ東西一町三四十間南北大約同ジ人家四
戸」
とあるが、ヅンブリ島といい姥ケ島といいこの地方が洪水
によってもたらされた土砂の堆積によってできた島であっ
たことを示す地名である。それにしてもこのように一村、
一町がヅンブリと水底に沈むというが如き大地震の被害を
思えば、自然の力の恐ろしさを感ぜざるを得ないのであ
る。
出典 新収日本地震史料 第2巻
ページ 298
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 宮崎
市区町村 赤江【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

IIIF Curation Viewerで開く
地震研究所特別資料データベースのコレクションで見る

検索時間: 0.001秒