地震史料集テキストデータベース

[未校訂]此大地震は二十六日午前一時頃西方より大音響と共に大震動
を起し、連續的震動し、搖返しの差別なく、暗夜のことゝて
其狀況目撃し難く、只一家の倒れる音響、山崩れる音、石垣
等の種々の音を聞きつゝ暁に至る。其後四五日は時々震動し
時日を經るに隨て遠く弱くなりて震動止む。
大字角川戸數約九十戸の内倒れざりし家は二戸（修繕を要せざ
るもの）半潰十一二戸、其他は全潰、寺院も倒れる、死者十
名位にて一家四人死亡の家あり。部落の中央に徑二間もある
大穴を生じ、土石を吹上げ其附近は土色と變ず。川は山崩の
爲め水止まり、所々大池となる。其區域は西方大字元田にて
二里小鳥、川に沿ふ。東方坂上村大字三川原附近迄にて、角川
より約三里、宮川に沿ふ、此五里程の間の部落散在しある
も、大字角川の被害と同じく、又其發震時は皆火を消して寢
に就きたる時とて火災を發したるものなし。
右の事柄は昔話に殘りたりしことゝ及び現在の老人の言葉に
つきて書きたりしものにして、尚其他の詳細は至難なりと、
云々。