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[未校訂]越後國ゟ夫食買入米之儀に付、申上候書付、
覚
越後國
一米千八拾石、
此俵貮千七百俵、 但四斗入
御付箋
┌──
│米千五百俵、
│千五百俵、 陣屋許着米之分、
朱書也│内
│四百五拾俵、 柏原預、
│米千貮百俵、 善光寺渡米
└──
右者、私支配所信濃國高井郡、水内郡村々、当三
月中之大地震、翌四月十三日之大洪水共、古来未
曽有之災变、村々共悉及難渋、地震後自然と米殻
払庭高値に相成居候処、洪水にて猶又引上げ、所
持罷在候もの共も、当秋之作柄を危踏、貯圍置候
様罷成、既に洪水之節、差懸り及飢候もの共救遣
し度、廻村先に而焚出米買入集候儀に而、本多豊
後守領分中者、殻留申付候程之儀に有之、諸向共
至而不融通に相成、何共気ケ敷亊に存候间、不取
敢身元箇之もの共申諭、柏原宿本陣問屋兼〓中
村六左衛門儀者、身元も宜、律儀成ものに付、得
と申含、当四月中、最寄越後国頚城郡小笠原信助
支配所、并榊原式部大輔御預り所村々に於て、書
面之通買入米致し、夫食に差支候もの共救方相成
候様、為賣渡候積、追々陣屋許江着米致し候间、
災害村々江其段触渡候処、右之響合候哉、諸伺向共追
々出米有之、相場も次第に下落致し、買入方差支無
之様罷成候趣申出候村々多、差支買受度旨申立候村
々江は差遣し、相残り候分は備置、当秋作柄を見定
候上は、勝手次第に為賣捌候積、差向不用の姿に相
成候は、却而宜、然触渡の他國ゟ入米の響に而、自
他地米の出方相進、相場も次第に下落致し候段、偏
買入米取計候故、融通立直候由、村々申立候儀に有
之、当接の様子に而者、暑中之照込、至極順季宜候
间、此上藤の憂無之候はゞ、無難植付出来候分者、
豊熟之年柄、夫食に差支無之取続可申哉に奉存候、
依之此段申上置候、以上、
弘化四未年七月 高木清左衛門印
御勘定所
御書状拜見仕候、然者当地地震に付、潰家、破損家
多分有之、夫々普請修覆等差加候に付而者、自然
俄（職ヵ）人手间賃、諸色鉄者䒭、引上候様成（儀脱ヵ）有之候而者、
災害を受候もの、彌難渋之次第に付、右様の儀無之
様、支配所之分江者、夫々触達致し置、最寄私領御
料所々振合を以、役場江通達致し、且災变に付而者、
支配所世話も行届候趣相聞候得共、此上手附手代共、
心得違無之様心附可申、右之趣奉行衆御沙汰に付
被仰聞候旨、御紙面の趣承知仕候、右者諸職人手
间賃、諸色直段䒭之儀、無謂引上候趣粗相聞候間、
当四月中、支配所村々江者、別紙写之通り触渡置
候得共、御料私領一体に無之候而者、示方も不行
届儀に付、今般御達之趣、別紙案之通、猶支配所
村々江巌敷申渡、災害難渋之儀者、御料私領一般
の儀に付、最寄私領役場江も打合、取締方可仕候、
且手附手代ども、心得違無之様申達、精々心附候
様可仕候、右為貴答如此御座候、以上
六月晦日 高木清左衛門印
増田金五郎様
竹内清太郎様
岡田利喜次郎様
今般之大地震、大洪水之儀者、前代未聞之儀、災
害村々極難に陥り、既に急難御救拜借䒭被仰付候、
然る処追々小屋懸け、潰家修覆に取懸り候に付、
身分に応じ、諸職人日雇稼之もの雇入候処、次第
に作料日雇賃糶上げ、其外諸材（木脱ヵ）諸色に至る迄、直
段引上げ候趣粗相聞、不埒之至に候、凶作飢饉等
之節と違、殻類に相響き候訳無之処、災害村々の
虚に乗じ、利欲に迷ひ、無謂直段引上げ候段、不届
至極、依之米殻䒭相当の直段を以賣買致し、下々難
渋不及様可致、作料日雇䒭、定之外余分の賃銭取申
間敷（候脱ヵ）、此上不埒の取計致もの於有之者、急度可蒙吟
味條、其旨可存、災害村々艱願汲訳、決而不実の取
計致間敷候、此廻状、早々順達留り村ゟ可相返候也、
未四月廿日 中野御役所 總廻状
差上申御請書之亊
当御支配所信州高井郡、水内郡村々、大地震に付、
潰家、破損屋多分有之、追々普請修覆に取懸り候処、
諸職人手間賃、諸色直段䒭無謂引上げ候に付、不
埒之取計仕間敷旨、当四月中御触渡有之候処、此
度職人手間賃、諸色鉄もの䒭、引上候様成儀有之候
而者、災害を受候もの共、彌難渋之次第に付、右様
之儀無之様厳重可申渡旨、御勘定所ゟ御達御座候間、
猶精々村役人共心得、当四月中御触渡の趣堅相守
候様可仕、尤不時御糺の上、不埒之取計致し候もの
有之候はゞ、急度被蒙御吟味候間、心得違仕間敷段、
不洩様可申聞旨、被仰渡之趣、一同承知奉畏候、依
御請印形差上申処、如件
信州高井水内郡村々
弘化四未年七月總連印
中野
御役所
以手紙致啓上候、彌御安全被成御勤、珍重奉存候、
然者当三月大地震、翌四月中之大洪水共、古今未
曾有之災害、村々極難に陥、追々小屋懸修覆に取
懸り候処、諸職人日雇之もの、作料日雇賃〓上げ、
其外諸材木諸色に至迄、直段引上げ候處相聞候間
当四月中、別紙写之通、支配所村々江触渡置候処、
猶又此度職人手間賃、諸色鉄物等、引上げ候様有
之候而者、災害を受候もの共。彌難渋之次第に付、
右様之儀無之様、厳重可申渡旨、江戸表御勘定所
ゟ御達有之候間、猶又其段村々江申渡候、災害難
渋之儀者、御料私領一般之儀、示方も一体に無之
候而者不行届に付、御打合取締致度、御意存も無
之候はゞ、其御料分之儀も、可然御触渡有之候様
致度存候、右之段可得御意清左衛門申聞如此御座
候、以上
七月四日荻野廣助小林甚右衛門
松代
岡島荘蔵様
竹村金吾様
山寺源太夫様
磯田音門様
飯山
廣田〓太夫様
中條次左衛門様
須坂
駒沢勇左衛門様
河野 連様
駒沢武左衛門様
大川
寺島善兵衛様
玉木 肇様
追而本文之趣、飯山、須坂、六川役場江も及打合、
此段御心得迄に御意（得カ）へ、且其御預り所之儀者、此
度御勘定所ゟ同様御違有之候哉、御違無之候はゞ、
其筋御懸り江も可然御打合可被下候、且又義光
寺町之儀者、御進退場の儀に付、是又可然御取
計御座候様致度奉存候、以上
口上覚
兼而御届申上候通、去る三月廿四日夜大地震之前、
寺領町方不残焼失仕、家財等も同様に而、差当露
命相続難相成候に付、救米買入、所々江頼入候得
共、一体善光寺之儀者、高不相応に人別も多御座
候間、右不残救米相調候儀、法中之手先に而行届
兼、難渋至極仕候処、当国中野当時御代官高木清
左衛門殿、支配所御救米之儀、殊之外骨折、越後
辺ゟ追々米被相調候由及承候処、隣端先前ゟ御用
頼仕置候間、御同人方江飛札を以相頼候処、寺領
人命救之儀故、早速承知、支配所救米之内米千貮
百俵相譲り被呉候に付、畢竟右世話故、寺領のも
の共救方行渡、不残忝大慶仕候、右之通格別之御
世話に相成候に付、此段御届申上候、以上、
未七月 佛頂院権僧正
信州大地震に付、牟礼宿外三ヶ宿御救拝借伺
書、
覚
金千七百四拾七両、 最初伺金高、
内金四百三拾両、 再調相減、候分
御代官所
信州水内郡牟礼宿外三ヶ宿
一金千三百拾七両 大地震相続拝借金
但当未ゟ酉迄三ヶ年延、翌戌ゟ来る巳迄貮ヶ年賦、
壱ヶ年金六拾五両三歩永百文宛、返納之積、
此訳
総家数百八拾九軒、内潰家百八拾貮軒、
七軒、 無難之分
内 百五軒、 平百姓身箇（元脱カ）成もの、除之
拾六軒、 御伝馬人足之内、除之、
残六拾壱軒、内拾軒焼失、
金三百六拾両貮、 牟礼宿
内訳
金四拾両、 本陣壱軒、
金貮拾五両、 脇本陣壱軒、
金百八両、 旅籠屋九軒、
但壱軒に付金拾貮両、
金七拾五両御傳馬人足相勤候もの之内廿五人、
但壱軒に付、金三両、
金百拾貮両貮歩、馬持廿五両、
但壱軒に付、金四両貮歩、
總家数百九軒、内潰家百七軒、
貮軒、無難之分、
内四拾八軒、前同断之分、除、
四軒、前同断之分、除、
残五拾五軒、
金貮百四拾七両貮歩、 大吉間宿、
内訳、
金六拾両、 旅籠屋五軒、但前同断、
金七拾五両、御伝馬人足前同断、廿五人分、但前同断、
金百貮両貮歩、馬持廿五軒但前同断、
總家数貮百七拾四軒、内潰家百五拾四軒、
百貮拾軒、無難之分
内九拾壱軒、前同断之分、除之、
六軒、前同断之分、
残潰家五拾七軒、
金三百拾貮両貮歩、 柏原宿、
内訳、
金四拾両、 本陣壱軒、
金貮拾五両、 脇本陣壱軒、
金六拾両、 旅籠屋五軒、但前同断、
金七拾五両、 御傳馬人足前同断、廿五人分、但前同断、
金百拾貮両貮歩、 馬持廿五軒、但前同断、
總家数貮百三拾三軒、内潰家百拾貮軒、
九拾壱軒、 無難之分、
内 七拾六軒、 前同断、除之、
貮軒、 前同断、
残六拾四軒、
金三百九拾六両貮歩、 野尻宿、
内訳
金四拾両、本陣壱軒
金貮拾五両、脇本陣壱軒
金百四拾両、旅籠屋拾貮軒、但前同断、
金七拾五両、御伝馬役人足前同断廿五人分但前同断、
金百拾貮両貮歩、馬持貮拾五軒、但前同断、
文段以前之通
信州大地震に付、牟礼宿外三ヶ宿御救拝借伺
書
覚
御代官所
一金千七百五拾四両、大地震に付、宿々御救拝借金、
但当未ゟ酉迄三ヶ年延、翌戌ゟ来る巳迄貮拾
ヶ年賦、壱ヶ年金八拾七両貮歩永貮百文づ〻
此訳
總家数百八拾九軒、内潰家百八拾貮軒、
内七軒、 無難之分、百五軒、 平百姓身元可成のもの、除之、
残潰家七拾七軒、内拾軒焼失
金五百貮拾両、 牟礼宿、
總家数貮百七拾四軒、内潰家九拾四軒、半潰家六拾四軒、
内百貮拾軒、無難之分、九拾壱軒、前同断之分、除之、
残潰家六拾三軒、
金四百四拾六両、 柏原宿
總家数百九軒、内潰家百四軒、半潰家三軒
内九拾軒、 無難之分、七拾五軒、 前同断之分、除之、
残六拾八軒、
金五百三拾両、 野尻宿、
右者、私御代官所信州水内郡北国往還牟礼宿、外
三ヶ宿之儀、当三月廿四日ゟ翌廿五日迄之大地震、
宿内家居皆潰に相成、桁、梁、并矧目、臍木等、
其外建具〓共打碎、諸道具悉打毀、銘々貯置候雑
穀之類、俵物者押崩し散乱致し、地中ゟ吹出候泥
水冠、家居、田畑、山林共、一時に覆候奇変之体、
絶言語恐怖仕、人馬即死怪我等多分有之、未曾有
之変事に付、艱難之次第申上、急難御救筋之儀相
伺候処、伺之通御救并用悪水路自普請等之為手当、
金貮千五百両拝借被仰付、右老良民共地方向々拝
借金、凡見積り金商に有之候処、当四月十三日夜
ゟ之大洪水にて、尚又災害之場所多、殊に急難御
救之儀者、当然之救方、何共相続出来兼候趣申立、
極難之次第無相違候間、此度再御救金相伺候処、
宿方之儀者、農事に不拘、御伝馬御用相勤、都而
別段之取扱、御出方も違候間、引分別段相伺候儀
に有之、右宿々之儀者、素ゟ貧窮に有之、宿相続
出来兼候趣、歎訴罷有候折柄之災害、何も捨置候
而者、宿方及退転、既に皆潰家に相成、銘々散々
に立退、非歎途方に暮罷在、跡片付も不致其侭差
置、御朱印御證文之継立に差支、助郷等も無之、
宿々一般之災害に付、助合候儀も出来兼、宿内及
亡所候上者、迚も宿相続出来不申旨届出候処、私
〓持宿場共建、御料所宿々、何廉之儀有之儀共、御
朱印御證文儀者、連々継立不申候而者、御威光御
取締にも拘り難捨置、支配所無難村々申諭、連方ゟ
助人足、右宿々江差遣、（差支カ）無着御用為相勤、且北国大
名江戸表勤番之家来、異変前出立之分、追々差向滞
罷在、是又私之旅行に無之、主人参勤に就而之往復、
等閑に致し置がたく、依之差懸り救方、夫々手当致
し遣、漸人馬継立仕候段、御届差出候儀に者御座候
得共、宿々之難渋難盡申上、当日暮方にも差支候程
之儀に付、今以宿内小屋懸けも不致、潰家其儘差置、
国中一体之災害に付、更に融通出来不申、迚も銘々
家作之手段無之、住居渡世を失ひ候而者、妻子略頭
（に脱カ）迷、無余儀及離散候様可罷成、左候而者御朱印御證
文者勿論、北国大名松平加賀守始、毎年参勤交代之
面々、并勤番之家来、往復之休泊、人馬継立、旁差
置（支カ）可申、何分此侭難差延置候間、得と御賢察被成下、
此度之災害者、前代未聞之儀に付、出格之思召を以、
宿方御救、御仁恵之御沙汰相侍候ゟ手段無御座候間、
書面宿々御伝馬御用相勤候もの共、行立相続出来候
哉（様カ）、為御救書面之金千三百拾七両、伺之通永年賦拝
借金被仰付候様仕度奉存候、依之此段奉伺候、以上、
弘化未年四月 高木清左衛門 印
御勘定所
北國往還牟礼宿外三ヶ宿、御救借拝差出候に
付申上候書付
私支配所北国往還信州水内郡牟礼宿外三ヶ宿、大地
震古今未曽有之大〓、宿々共〓亡所、宿場働候末々
之もの共者反飢渇、離散之もの追々出来、人馬継
立、御伝馬御用難相勤、宿内可及退転にも次第に付
急難救方夫々手当致し遣、御伝馬御用差支無之様、
傳馬人足、并本陣、脇本陣、旅籠屋共、相続方之儀
精々取調、御救拝借金、先達而伺書差出候処、宿々
金高、潰家応じ不同有之候間取調置、可成丈一体に
減方致し可差出旨御談に付、再調仕候処、潰家応じ
不同有之の儀者、宿宿借拝人共人数多分に寄候故之
儀にて、總潰家江引当候而者不同に相成、右之廉江
並合能様宿々金高取調候而者、事実を失ひ、右者宿
々拝借人共内訳之廉区々之儀無之於て者、（に脱カ）總潰家江
見合不同有之候共、不相当之訳には無御座、併此度
總体に減方致し候様、御談に就て者、精々勘辨致し候
得共、一体右御救伺之儀者、前代未聞之災害、類例
見合等も無之、尤右等に拘り取調候事柄に無御座、
極難に陥必至之場合、宿々潰家艱難之次第、不被目
も当不便至極、片時も難捨置、何様にも御手厚に御
救被成下度心得に候得共、御出方之儀をも勘辨仕、
精々省略極々之処、金高取調相伺候儀にて、此上減
方之儀、私心得に者不應候得共、御談之儀に付、本
陣、脇本陣等者身柄之もの有之候間、右之廉并馬
買代之儀者、当時雇馬にて継立罷在、余荷之儀者、
宿方重立之もの江為取計、伝馬人之内御定人数之外
者相除、右之廉々にて、金四百三拾両相減候得共、
事実に於て者、減候間相当とは難申上儀に付、可相
成者元通之金高借拝被仰付度、且旅籠屋伝馬人共、
馬持等之借拝金、壱軒当り之儀者、素ゟ見合等無之、
此度之災害江引当、手〓に見積取調候儀にて、右拝
借金而已にて者、中々旅人休泊相成候様之家作出来
不申者差知れ候儀、其餘者銘々手段、何れも家作者
渡世之元手、取建不申候而者、妻子扶持相成兼候間、
銘々何様にも足金才覚之心得に付、書面之通り拝借
相伺候、若此上減方被仰付候而者、迚も相続出来不
申に付、左様之思召に候はゞ、見分之もの被差遣、
得と窮迫之次第御糺、宿方相続、御伝馬御用無滞相
勤候様御仕法被成遣候はゞ、於私も如何許難有安堵
仕候、宿々極難に迫り罷在候間、今般相伺候御救拝
借金迄に而者、迚も不行届、其余之儀者、身元箇成
重立之もの江融通方厚く世話致し遣、箇成為相続
度心得に御座候、松平加賀守方之儀者、無類之変災
難渋に可有之、宿々相当之手当金願差出候様、其筋
役人共ゟ（江カ）相達候段申出候儀に有之候、御救伺書差出
候に付、此段申上候、以上
未八月 高木清左衛門 印
御勘定所
信州大地震に付、牟礼村宿外三ヶ村、相続拝借
伺書、
覚
御下知済金高、 御代官所 信州水内郡牟礼村外三ヶ村
一金四百七拾四両、大地震相続拝借金、
但当申ゟ巳迄拾ヶ年賦、壱ヶ年金四拾七両壱歩
永百五拾文づゞ、返納之積り、
内訳但伺金高千貳百八拾七両江割合、金百両に付、貳拾七両永百四拾九文八分内に当る、
金百四拾五両三歩、 牟礼村、
金八拾六両貳朱、 大古間村、
金九拾五両貳朱、 柏原村、
金百四拾七両 野尻村
右者、私御代官所信州水内郡牟礼村他三ヶ村外三ヶ村之儀、
北国往還人馬継立候村方に御座候処、当三月廿四
日夜ゟ翌廿五日迄之大地震に而、家並皆潰、又者
半潰等に相成、桁、梁、并矧目、〓木等、其外建
具類とも打砕、諸道具悉打毀、銘々貯置候雑穀之
類者致散乱、地中ゟ吹出候泥水を冠、家居、田畑、
山林とも、一時に覆、人馬即し怪我等多分有之、
右村々之儀者、近年訳而及貧窮候折柄に而、潰家
に相成候もの共者、銘々散々に立退、悲歎途方に
暮、人馬継立方に差交、素々助郷村々者一切無之、
平日迚も諸家中其外落合、何程人馬遣払候共、其
村限に而継立候儀、殊に此度者一般之災害に付、
相互に助合候儀も出来兼、迚も人馬継立方難相成
旨届出候間、御朱印證文之儀者、連々継立不申
候而者、御威光御取締にも拘り難捨置、支配所無
難村々江申諭、遠方ゟ助人馬差遣、漸継立候様罷
成候得共、右村々之難渋難盡申上、尤地震に付急
難御救之申申上、金貳千五百両、当夏中拝借被仰
付候処、右者、地方向之百姓共江夫々貸渡、人馬
継立に拘り候もの共者、別段拝借相伺候趣を以、
貸渡不申、当月元続（取カ）方致世話罷在候処、継場村々
助成御貸附年賦御下金之分、一時に御下戻の儀も
願出候に付、其段相伺候処、伺之通御下金御座候間、
人馬継立方に拘り候もの共者勿論、其餘世話方致し
候もの共迄、拝借金御下知迄之内、右御下金を以、
銘々仮小屋補理度旨申上候間、助成金之儀者、人馬
継立方第一之備に付、相続仕法立致し、追々相伺候
積りに付、万一下切等之心得に者、私方決而不相成、
此上拝借金御下知之上割渡候はゞ、一ト先可
下遣旨申諭候処、一同承伏仕候間、右四ヶ村のもの
共数百軒江夫々割渡、漸仮小屋出来候得共、今以潰
家其侭差置候もの共多、近郷一体之災害に付、金銀
融通更に出来不申、迚も銘々家作之手段無之、住居
渡世を失ひ候而者、妻子共路頭に迷ひ、無余儀及离
散候様可成行、左候而者、
御朱印御證文者勿論、北國大名松平加賀守始、参勤
交代之面面、并家來往復之休泊、人馬継立方に、〓
と差支可申、何分此侭難差置、追日差迫候もの共者、
被下切等之歎願申出候得共、容易に可相願筋に無之、
潰家に相成候者、一般之事にも有之、旁得と及理解、
被下切者不申上、乍去平日助郷等無之、何れも其村
方限人馬を以継立候義に付、人（傳カ）馬相勤候もの共、余
計に申付置候故、借拝金高も自然相嵩候得共、此度
之災害者、前代未聞之儀に付、出格之御沙汰を以、
一同相続出来候様、拝借被仰付廉、当五月中相伺
候砌、北國往還人馬継馬に付、本陣旅籠屋之類、
廉訳致し差出候処、金高減方、其外品々掛りゟ談
等有之、再々応取調直、当九月中、別紙写之通尚
又伺書差出置候処、牟礼宿外三ヶ宿之儀、脇往還
に付、五街道同様に拝借者難相成、併此度之災害
者、全非常之事に付、実に無據事に候はゞ、外村
々之振合を以相続方、別段取調可申立旨、御附紙
に而今般被仰渡候間、得と勘辨仕候処、外村々一
統御救拝借之分者、追々御下知相済候に付、継場
村々一統御救拝借之分者、追々御下知相済候に付、
継馬村々一統御救拝借之分者、追々御下知相済候
に付、継馬村々之もの共も、時々御下知之否伺に
罷出候故、最早近々御沙汰も可有之旨申諭置候折
柄にも有之、且者外村々之振合を以拝借相伺候而
者、実以参勤之大名休泊、并人馬継立方、差支可
申は顕然に付、右被仰渡之趣申渡候はゞ、継場村
々之名目に而者、迚も拝借不被仰付抔心得違仕、
如何様之儀仕出候哉も難計、安心仕兼候間、此度
被仰渡之趣者何分難申聞、於私も当惑之次第に付、
前書之金千貳百八拾七両者、別紙伺書写之通、廉
訳を取集候總金高辻に御座候間、右村々地震に付、
御救相続として拝借、書面年賦割合之通、返納被
仰付候様仕度奉存候、尤御勘定組之儀者、別紙を
（以脱カ）可申上候、依之奉伺候、以上、
弘化四年未年十一月 高木清左衛門印
御勘定書
御附紙
┍━━
┃書面相続拝借之儀、伺之通に者難申付條、金
┃百七拾四両、御金蔵ゟ請取之貸渡、当未一ヶ
┃延、來申年ゟ巳迄拾ヶ年賦返納之積、御勘定組
┃之儀者、別紙を以相伺、且軒別割合方之儀者、
┃難渋厚会等勘辨之上、相続方差支無之要、渡方
┃可被取計候、
┕━━
拂切
金五郎
大地震急難御救拝借金、取計方伺書、
覚
大地震急難御救拝借、
高金貳千五百両之内、
金貳百六拾九両三歩、自普請村々御手当賃之
内分
金貳千貳百三拾両壱歩、急難御救貸渡候分、
御代官所
当分御預り所
信州高井水内郡九拾壱ヶ村、
一金千三百八拾四両永百廿五文、急難御救拝借金年賦返納可被仰付候分、
内
金貳百六拾九両三歩、自普請為御手当貸渡候分、
高金貳千貳百三拾両壱歩、
金千四拾五両永百廿五文、急難為御救貸渡に可相成分、
是者拝借金之内、五分通年賦返納之積り、
但当未ゟ文迄五ヶ年延、翌子ゟ寅迄拾五ヶ年
賦、壱ヶ年金九拾貳両壱歩永七拾五文づ〻、
返納之積、
元金貳千貳百三拾両壱歩之内、右同断九拾壱ヶ村
一金千百拾五両永百廿五文、急難為御手当可被下分、
是者拝借金之内、五分通被下切之積、
右者、私御代官所、当分御預り所、信州高井郡、
水内郡村々、当三月廿四日夜、古今未曽有之大地
震災害之次第者、其砌ゟ追追申上候通、潰家夥救、
家財諸道具等悉打毀、即死怪我人等多く、〓中自他
一般之奇難、差当り当日夫食に差支及飢渇候間、相
汲候へ者救方手当致し遣、晝夜取調、急難御救拝借
金伺書差出候処、早速伺之通御下知被成下、御下金
に相成候間、不取敢村々江割賦貸渡、極難に陥、途
方暮罷在候折柄、不存寄速之御救金、偏に御仁恵御
慈悲之程、一同挙而難有奉存、人気静り精力を得、
右に而仮小屋補理、当然之凌方出来候処、銘々貯之
穀物者、潰家下に相成、殊に散乱致し、土砂水冠等
に相成、捨候分多、貧窮之もの共、味噌等も同様之儀、
及飢候もの共多有之候間、貯穀貸渡為取続候中、当
四月十三日夜、〓川上川崩押埋候場所、一時に切破
り、千曲川筋俄に大洪水、兼而村村覚悟者致し居候
得共、是又前代未聞之水害、川通村々、溺死怪我人
夥敷、家居諸道具夫食等迄、不残流し候分有之、災
変打重り候村々、其節之急難荒亡之次第、哀至極憂
苦仕水欠（〓〓カ）に而、就而者差当り夫食之救方致し遣、一
統差迫り候内にも、両災に逢候村々者、別而之儀、
取続方手段無御座、取縋り候ゟ外致し方無之趣申之
追々種々歎願申出、無余儀次第に付取調、再御救拝
借、此度別紙を以相伺候儀に有之、然る処他支配、
私領共、最初急難救方者、多少共遣し切の〓に候
処、前書急難御救金貸渡候得者、未他向之儀者、
更に救筋手当等無之処江拝借被仰付候間、御威光
格別に難有心得候処、追々諸向之様子承伝、水内
郡村々之内、川上金吾助支配所入交之村村有之、
同人方急難御救として米金被下切、水害村々者、
猶別段に御救被下金下げ渡有之候由、私支配所、
最初見分取調候頃者、地震向際之儀に而、潰家散
乱、小前老若男女泣喚、怪我人共者倒苦痛罷在、
村役人共者周章居、巨細之調方出来不申、見居（据）も
無之御失墜被下切等之儀は、更に不申出、神妙之心得方に付而
者、猶更難捨置、書面之通急難御救拝借金貸渡候
内、五分通り者被下切に被成下候様仕度、取束候
処に而者大金に及候得共、数千軒に割合候而者纔
之儀に相当り、此度良災之奇変者、古ゟ無之無類
之儀に而、不得止事猶再拝借相伺候程之儀に付、
被下切之分、文政度越後国地震之節下金、并此
度金吾助支配所被下方御見合被下、此度相伺候被
下切總体取束候金高、少分とも被思召候はゞ、極
難之儀に付御増被下候様仕度、何分厚御評議可被
下候、右被下切并年賦返納之金高、夫々御下知之次
第に寄、御勘定組之儀者、別紙を以相伺候様可仕奉
存候、之依一村限り貸渡仕訳帳壱冊相添、此段奉伺
候、以上、
弘化四未年八月 高木清左衛門
御勘定所
┍━━
┃本文可被下分、
┃一金千百拾五両余、
△┃一金百拾壱両余、是者土中（行カ）皆土中埋被下切、別紙を以相伺候分、
┃一金大百貳拾四両、是者此度再御救之内、被下切之分、
┃
┕━━
急難御救金貸渡一村預り仕訳書、
覚
一金貳千五百両、 急難御救拝借金、
内金貳千貳百三拾両壱歩、村々急難為御救拝借貸渡候分、
金貳百六拾九両三歩、同断普請所為手当拝借貸渡分、
此訳、
金三拾五両三歩、 上新田村
金五拾七両三歩、 安田村
金拾四両、 山根村
金拾四両貳歩貳朱、 山岸村
金拾三両貳歩貳朱、 吉村
金拾壱両、 其綿村、
金五拾七両、 七瀬村、
金七拾両、 片鹽村、
金四拾三両、 西江部村、
金四拾七両、 東江部村、
金百五拾両、 赤沼村、
金三拾七両、 赤沼河原新田、
金拾五両、 中尾新田、
金三拾七両、 内町、
金四拾五両、 坂中新田
金七拾両、 下駒沢村、
金貳拾両、 高山村、
金貳拾五両、 落合村、
金三拾四両壱貳朱 野村上村、
金五両 茶磨山村、
金貳拾五両、 袖之山村、
金拾壱両壱歩貳朱、 坂口村
金拾壱両、 夏川村
金拾三両貳歩、 地蔵窪新田、
金九拾両、 柏原村
金百貳拾両、 野尻村、
金九拾両、 大古間村、
金拾九両壱歩、 小古間村
金三拾両、 伺去眞光寺村、金左衛門組、
金三拾七両貳歩、 同村嘉右衛門組
金六拾両、 牟礼村東組、
金百両、 同西組、
金貳拾五両、 壹ヶ窪新田、
金六拾両三歩、 小玉村、
金六拾八両壱歩、 小沼村、
金三拾八両、 戸隠新田、
金貳拾両壱歩、 御新田村、
金三両三分、 芹沢村
金五両、 下木島村、
〆金千六百三拾壱両、
金拾両貳歩、 柳沢村、
金六両、 西間村、
金三両三歩、 岩船村、
金四両貳歩、 間長瀬村、
金九両三歩、 吉田村、
金八両壱歩、 田上村、
金拾六両貳歩、 璧田村、
金九両三歩、 間長瀬村新田、
金貳拾両壱歩、 田麥村、
金拾五両三歩、 安源寺村、新田共、
金貳拾七両、 赤岩村、
金拾五両、 厚貝村、
金拾九両、 天神堂村、
金四拾五両、 野坂田村、
金拾貳両、 西條村、
金拾貳両三歩、 上木島村之内大町
金壱両貳歩、 寒沢（村脱カ）、
金五両壱歩、 中町、
金九両、 西町、
金拾両、 坂井村、
金五両、 岩井村、
金拾五両、 矢島村、
金九両三歩、 原町
金三拾両、 三才村
金五両、 辻屋村、
金七両貳歩、 板橋村、
金六両、 稲附村、
金七両貳歩、 石橋村、
金六両、 横手村、
金貳拾三両壱歩、 徳間稲倉、
金八両壱歩、 上野村、
金拾貳両三歩、御料村、
金三両、 中島村、
金五両、 戸草村、
金拾九両貳歩、落影村、
金六両、 北川村、
金三両、 水沢村上組、
金拾七両、 同下組、
金五両、 大塚新田、
金八両、 上野新田、
金拾壱両壱歩、 大倉崎村、
金拾六両壱歩、 西條村東組、
金貳拾三両、 同西組、
金三拾三両、 高坂村、
〆金五百四拾七両三歩、
金貳両、 宮之腰村、
金七両貳歩、 栗林村、
金五両貳歩、 新保村、
金壱両、 若宮村、
金壱両、 金井村、
金六両貳歩、 押切村、
金壱両三歩、 北岡村、
金三両三歩、 下笠原村、
金四両、 立ヶ花村、
金三両、 岩井新田、
金三両貳歩、午（牛カ）出村、
金三両貳歩、 越村、
金八両貳歩、 深沢村、
〆金五拾壱両貳歩、
小以金貳千貳百三拾両壱歩、 急難為御救貸渡候分、
金三拾五両 山根村外五ヶ村、
用水路自普請手
当拝借、
金五両、 深草村、
右同断、
金拾五両、 赤岩村外二ヶ村、
右同断、
金貳拾五両、 田上村外貳ヶ村、
右同断、
金拾両、 岩井新田、
右同断、
金五両、 山岸村、
右同断、
金貳拾両、 水沢組合村々、
右同断、
金貳拾両、 釘田村、
右同断、
金貳両三歩、 新保村、
右同断、
金五両、 矢島村、
右同断、
金五両、 岩井村、
右同断、
金拾五両、 野坂田村、
右同断、
金七両壱歩貳朱、 安源寺村外壱ヶ村、
右同断、
金三両壱歩、 牟礼村、
右同断、
金拾貳両、 柏原村、
右同断、
金五両三歩、 野尻村、
右同断、
金九両貳朱、 赤沼村、
右同断、
金拾三両壱歩、 水沢村、
右同断、
金貳拾八両壱歩、 水沢村外六ヶ所、
右同断、
金貳拾八両、 赤沼村外壱ヶ村、
右同断、
小以金貳百六拾九両壱歩、自普請所為御手当貸渡之分、
右之通に御座候、以上、
未八月 高木清左衛門印
覚
一金拾両貳歩永百拾七文五分、高井郡安源寺
七分七両壱歩貳朱 外壱ヶ村、
一金四両壱歩永貳百拾九文四分 水内郡牟礼村、
七分金三両壱歩、
一金拾七両永七拾九文壱分 柏原村、
七分金拾貳両、
一金八両壱歩永百貳文、 野尻村、
七分金五両三分、
一金拾三両永六拾八文八分、 赤沼村、
七分金九両貳朱、
一金拾八両三歩永百八拾八文、 水沢村、
七分金拾三両壱歩、
高金四拾八両三歩永貳百貳拾貳文、
五分、 水沢村外六ヶ村、
一金四拾両壱歩永百貳拾六文、本多豊後守領分、
七分金貳拾八両壱歩、戸待村外壱ヶ村、
外金八両貳歩永九拾六文五分、
私領出金、
高金百貳拾両永百八文九分、 眞田信濃守領分、
七分金貳拾八両、 中尾村、
外金七拾九両三歩永貳百貳拾四文、
私領出金、本多豊後守預分、
南郷村外四ヶ村、
〆合金百五拾貳両三歩永百八拾七文七分、
七分金百両、
御代官所、当分御預り所、信州高井水内郡村々、大地
震御救被下方、再拝借伺書、
覚、
村高貳萬八千五百六拾石九廿四合壱勺、
家数四千七百六拾軒、
内三千四百八拾三軒、 此度御救方不相頼分、
御代官所、
当分御預り所
信州高井水内郡七拾ヶ村
一金貳千九百拾貳両、 御救再伺辻、
潰家千貳百六拾壱軒、
外拾六軒、土中埋之分、別段相伺候、
此訳、
金六百貳拾四両、 御救被下方相願候分、
潰家三百拾貳軒、 但壱軒に付、金貳両づゞ、
金貳千貳百八拾八両、 再拝借相願候分、
潰家九百四拾九軒、
但当未ゟ亥迄五ヶ年延、翌子ゟ寅迄拾五ヶ
年賦、壱ヶ年金百五拾貳両貳歩永三拾三文
三分宛、未年者金百五拾貳両貳歩永三拾三
文八分、返納之積、
内
金百拾壱両、 但壱軒に付、金三両づゞ、
潰流失家三拾七軒、
金千七百六拾五両、 但壱軒に付、金貳両貳歩づゞ
半潰家貳百六軒
右者、私御代官所、当分御預り所、信濃国高井郡、
水内郡村々、当三月廿四日夜、古今未曽有之大地震、
災害之次第者、其砌ゟ追々申上候通、潰家夥敷、家
財諸道具等悉打毀、即死、怪我人多く、國中自他一
般之奇難、差当り当日夫食に差支及飢渇候間、相及
候丈者救方手当致し遣、急難御救拝借金伺書差出候
処、伺之通御下知被成下、御下げ金に相成候間、不
取敢村々江割賦貸渡、極難に陥、途方に暮罷在候折
柄、不存寄速之御救金、偏に御慈悲之雇、一同挙而
難有奉存、人気静り精力を得、右に而仮小屋補理、
夫食之手当、当然之凌方出来候処、銘々貯之穀物者、
潰家之下に相成、殊に散乱致し、土砂水冠等に相成、
夫食乏貯無之もの共者、〓と差支、貯鹽噌等も同様
之儀、及飢候もの共多有之候間、貯穀貸渡為取続候
中、当四月十三日夜、犀川上土崩押埋候場所、一時
に切破り、千曲川筋俄之大洪水、兼而村々覚悟者致
し居候得共、是又前代未聞之水害、川通村々、溺死
怪我人夥敷、家居諸道具夫食等迄押流し、災害打重
り候村々、其節之危難荒亡之次第、哀至極憂苦仕、
水災に就ても当難夫食之救方致し遣、追々稲作植付
時節に向候処、苗代泥冠に相成不用立、麥作菜種共
実法最中、木綿大豆等者生立懸け候処、泥水冠候
分者、不熟致し、村々畑方引願出候得共、精々利解
申聞為相堪候儀に有之、差向田方苗代に差支、耕
作肝要之時節取外し、田方植付不相成候而者、明
年迄之夫食に差支候間、手後れに不相成候様、苗
籾再蒔、畑方毛替作、可成丈仕何方勧農厚世話致
し、銘々仮小屋出来候上者、先づ潰家取片付、修
覆等〓跡に致し、農業相励候様申諭候趣承仕、堅
相守、村々共気力を為励、用水絶之場所者、種々
手段致し、高下〓陸之田地者、 可相成丈用水懸り
工風、稲作出来候丈之分者植付 其余者毛替作致
し、手後に不相成様仕付、畑方木綿大豆水腐之跡
江者、大豆再蒔、粟稗蒔付、田畑共植付相片付候
上に而、潰家取片付〓候間、〓に相後れ、小屋
懸之侭に而者、迚も冬之凌相成兼、当時専ら銘々
もの共者、不慮之変災に逢、如何とも可致様無之、
今日露命緊兼候もの共者、迚も潰家取繕者勿論、
夫食にも差支、洪水にて潰家諸道具押流し候もの
共者、猶更之儀、自他親類身寄之者共も、同様難
渋致し、助力致し呉候ものも無之、取縋憐愍相
願候外可仕様無之旨、村々歎願致し、他支配他領
共、艱難之もの同様願出候由申立候間、相糺候処、
箇成に営もの共も未仮小屋に罷在候もの多く有之、
長々雨濕を受け、此節村々時疫癌煩候もの有之、難
渋之もの共見居もなく、仮小屋に罷在候而者、冬分
に至り、寒國風雪に被侵、飢凍身命癌拘り、且者
彌〻住居を失ひ候はゞ、無據他国稼等に离散致し候
ものも多く可有之、是迄相凌、折角為取続候詮も無
之、此上人別減少致し候はば、地震洪水之荒亡損地
之上、手餘荒地等出来候而者、村々相続仕兼、御収
納にも響可申、当時之養子に而者、暑中之照込、気
候之運も宜候間、此上天災之憂無之候はゞ、無難之
田方者、相応之作柄に至り、夫食之差支は有之間敷
哉に奉存候処、書面難渋之もの共、種々才覚仕候得
共、何分潰家取繕、并家財、農具等損失之分買求候
手段無之候間、不得止事再御救之儀相伺候儀に有之、
極難之もの共者拝借被仰付候共、迚も返納之手段無
御座、被下方相願候、右者文政之度越後国大地震と
は事変り、当国之儀者至而烈敷、数郡変之場所広く、
就中、水内郡、高井郡者大災、殊に洪水共両度之
災害、艱難之次第、古今無類之儀に者御座候得共、
西丸御炎上以来、引続御物入多御時節、深相辨、御
失墜不益之儀無之様、カ精々取調、可相成丈相減取繕
候得共、何分数拾ヶ村之儀に付、取束候而者金高嵩、
相減候際不相見、全災害村数数多故之儀無是非、此段（上カ）
減様無御座候間、越後國文政之度御救金被下方拝
借金等之御出方に割合御見競被下候はゞ、減方之
模様相分り可申哉に奉存候間、出格之訳を以、書
面伺金高無御減、伺之通被仰付、寒冷（にカ）之趣候間、
艱難之もの共相凌候様、早々御下知被成下度奉存
候、然る上者御勘定組之儀者、別紙を以相伺候様
仕可候、依之再拝借一村・限帳壱冊相添、此段奉伺
候、以上、
弘化四年未年八月 高木清左衛門 印
御勘定所
御代官所、当分御預り所、信州高井水内郡村々、大
地震再拝借伺書、
覚
村高三万六千六百三拾五石貳斗三升四合貳勺、
総家数五千八百五拾三軒、
潰家貳千九百四拾五軒、
内半潰七百八拾五軒、
潰家数百貳軒、是者急難御救拝借伺差（出脱カ）候後、潰家届出候分、
内半潰三拾壱軒、
三百五拾八軒、 身元箇成もの、除之、
貳百三拾七軒、 牟礼宿三ヶ宿本陣、其外宿場附、別伺之分、
拾三軒、 眞光寺組上中埋、別伺之分、
三軒、 右組土中埋死絶分、
千百九拾貳軒、 再拝借不相願分、
千貳百四拾四軒、 此度拝借相願候分、
御代官所
当分御預り所
信州高井水内郡八拾四ヶ村
一金五千貳百貳拾八両壱歩、 地震御救拝借金、
但未ゟ亥迄五ヶ年延、翌子ゟ未迄貳拾ヶ年賦、
壱ヶ年金貳百六拾壱両壱歩永百六拾貳文文五分づ
〻、返納之積り、
金貳千五百両、 急難御救拝借金当四月御下げ金之分、
内金貳百六拾六両三歩、再拝借之内江貸渡候分、
高金貳千九百九拾五両、再拝借願金高、
内金貳百六拾六両三歩 急難御救拝借金之内ゟ貸渡可申分、
金貳千七百貳拾八両壱歩、再拝借、此度御金蔵ゟ可請取分、
内訳、
金貳千五百三拾五両、 但壱軒に付、金貳両貳歩づゞ、
皆潰家千拾四軒、
金四百六拾両、 但壱軒に付、金貳両づゞ、
半潰家貳百三拾軒、
右者、私御代官所、当分御預り所、信濃国高井、水
内郡村々、当三月廿四日夜之大地震災害之次第者、
其砌ゟ追々申上候通、潰家夥敷、家財諸道具等悉
打毀、即死怪我人多、一般之奇難、差当り当日夫
食に差支及飢渇候間、夫々救方手当致し遣、急難
御救拝借金伺書差出候処、伺之通御下知被成下、
御下金に相成候間、不取敢村々江割賦貸渡、極難
に陥、途方に暮罷在候折柄、不存寄速之御救金、
偏に御慈悲之程、一同挙而難有奉存、人気静り精
力を得、右に而仮小屋補理、夫食之手当、当然之
凌方出来候処、銘々貯置候穀物者、潰家下に相成、
殊に散乱致し、土砂水冠等に而、〓と差支、貯鹽
噌等も同様之儀、及飢候もの共多有之候間、貯穀
貸渡為取続候内、当四月十三日夜、犀川上山崩押
埋候場所、一時に打破り、千曲川筋俄之大洪水、
兼而村々覚悟者致し居候得ども、是亦前代未聞之
水害、川通村々者、打重り候危難、荒亡之次第、哀
至極にて、右水害に就候而も、当難夫食之救方致し
遣、追々稲作植付時節に向ひ候処、苗代泥冠に相成
難用立、麥作菜種共実法最中、木綿大豆等者生立懸
け候処、根腐に相成、麥菜種共、数日泥水冠候分者
不熟致し、村々畑方引願出候得共、精々利解申聞為
相堪候得共、差向田方苗代に差支、耕作肝要の時節
取外し、田方植付不相成候て者、明年迄之夫食に差
支候間、手後れに不相成様、苗籾再蒔為致、且銘々
仮小屋出来候上者、先づ潰家取片付、修復等者跡に
致し、農業相励候様申諭、村々気力を為励、用水絶
之場所者、種々手段致し、高下不陸之田地者、可成
大け用水掛工風、稲作出来候大け之分者植付、其余
者毛替作致し、手後に不相成様取計、畑方木綿大
豆水腐之跡江者、大豆并粟稗等蒔附、田畑共植付相
片付候上に而、潰家取片付懸り候間大に後れ、小屋
懸け之侭にて者、迚も冬之凌相成兼、当時専ら銘々
不慮之変災に逢ひ、如何共可致様無之、露命繋兼候
もの共者、不慮之変災に逢、如何とも可致様無之、
露命繋兼候もの共者、迚も潰家取繕者勿論、夫食も
差支、其上水難に逢候もの共者、猶更之儀、自他親
類身寄之もの共も同様にて、助力致呉候ものも無之、
取縋憐愍候外（〓〓脱カ）無之旨、村〓歎願致、〓支配〓〓
共、艱難之もの共同様夫々願出候趣申立候間、相
糺候処、箇成に営候ものも仮小屋に罷在候もの共
多く、長々雨濕を請、此節村々にて時疫〓等〓候
ものも有之、右体見居もなく仮小屋に罷在候而者、
冬分に至り、寒国風雪に被侵、身命に拘り、且者
住居を失ひ候はゞ、無據他国〓等に离散致し候も
の多可有之、是迄相凌、折角為取続候詮も無之、
此上人別減少致し候はゞ、地震洪水之荒亡損地之
上、手余荒地等出来候而者、村々相續仕兼、御収
納にも響可申、書面難渋之もの共、種々才覚仕候
得共、何分潰家取繕、并家財農具等損失之分買求
候手段無之候間、不得止事再御救之儀歎願致し候
儀にて、先年越後国大地震と者事替り、信州の儀
者至而烈敷、数度変災之場所広、就中、水内、高
井両郡者大災、殊に洪水共両度之災害、艱難之次
第、古今未曽有之儀、越後国地震之節者、被下金
等御座候趣に候得共、此度者御時節柄等差含、厚
利解申聞被下切之儀者不申上、精々取調可成丈相
減取纏候得共、何分数拾ヶ村之儀に付、取束候而
者金高相嵩、減候際不相見、全災害村数多故之儀、
此上減様無御座候間、越後国文政度御救金被下方
拝借金等に御見競被下候はゞ、減方之模様相分り
可申哉に奉存候間、出格之御評議を以、書面伺高無
御減拝借被仰付、追々寒冷に趣候間、艱難之もの共
相凌候様、早々御下知被成下度奉存候、然る上者御
勘定組之儀者、別紙を以可申上候様可仕候、依之再
拝借一村限帳壱冊相添、此段奉伺候、以上、
弘化四未年四月（六カ） 高木清左衛門印
御勘定所
長印土佐、河内、修補、 無出座龍助、同岩太郎、同保右衛門
金五郎、無出座清太郎、 利喜次郎、
前書信州高井、水内郡村々、地震に付再拝借之儀、
伺之通に者難申付條、壱軒に付金壱両貳朱之当り
を以、合金千三百九拾九両貳歩之内、千百三拾貳
両三歩者、今般再拝借申付候間、御金蔵ゟ請取之、
先般拝借金之内貸渡残金貳百六拾六両三歩差加ひ、
村々難渋之もの共江貸渡、先般拝借之分共合金三
千六百三拾貳両三歩、当未壱ヶ年延、来申ゟ巳迄
拾ヶ年賦、壱ヶ年金三百六拾三両壱歩永廿五文づ
〻、返納之積取計、御勘定組之儀者、別紙を以
可被相伺候、断者本文有之候、以上、
未十月
押切
金五郎
信州中野村陣屋并外村々御圍籾之内、貸渡伺
書
村高六千貳百六拾貳石四斗九升七合、
家数七百八拾九軒、
人数三千三百五拾四人、
内人数千百六拾四人、自分才覚を以、箇成取続出来候もの共、再応相糺、除之、
私代官所
高井郡安田村外八ヶ村、
┲━━ ━━┓
┃安田村、上新田村、野坂田村 ┃
┃〓出村、栗林村、大俣村、 ┃
┃〓上村、岩井村、岩井新田 ┃
┗━━ ━━┙
小内郡内町外貳ヶ村、
┲━━ ━━┓
┃〓町赤沼村、赤沼河原 ┃
┃新田 ┃
┗━━ ━━┙
一飢人数貳千百八拾九人、
此籾六百貳拾壱石八斗、
但来申ゟ子迄五ヶ年賦 壱ヶ年籾百貳拾四
石三斗六升宛、返納之積、
男九百貳拾人、 但壱人に付、一日籾四合づ〻、日数百日分
此籾三百六拾八石、
女千貳百六拾九人、
内貳百五拾六人、六拾歳以上、十五才以下男入、
此籾貳百五拾三石八斗、但壱人に付、一日貳合づ〻、日数百日分、
右者、私御代官所信州高井、水内郡村々、当三月
廿四日夜之大地震、同四月十三日千曲川大洪水之始
銘々貯候雑穀、両度之災害にて多分之損失、国中一
般之儀、小前夫食手当無之もの多及飢候間、急難相
救御届之上、其節ゟ貯穀貸渡為取続候処、麥作菜種
実法最中之大洪水、家居水下に相成候程之儀に付、
田畑数日水冠、不熟蒔腐等に相成候、農民肝要之夫
食取失ひ、多分之損失、御年貢納に相成候間、畑方
引一同挙而相願、村村見分仕候処、不熟之段相違無
之候得共、畑方引之儀者不容易趣、厚利解申聞為相
堪候、然る処当稲作之儀も、両度之変災にて苗数再
度蒔付候間、大に旬遅れに相成候上、当七月中旬ゟ
之不時之冷気にて、中稲晩稲之分出穂無甲斐、青立
〓多、案外不熟致し、書面村々之儀者、何れも千曲
川緑続にて堤切入、就、大災之不作に而披（検カ）免相願、
多分之損毛、右之内皆畑場村々之分者、畑方引相保（頼カ）、
別而夫食乏、一同艱難相凌、是迄者村々申合、雑
穀所持之もの共融通、互に助合、断取続罷在候得
共、最早必至と差詰り、此上露命之〓方手段無之、
来春麥作取入時節迄二百日之間、御救夫食拝借相
願候旨申立候間、得と相糺候処、右村々之儀、災
害数拾ヶ村之内、訳而極難陥、是迄厚御救拝借等
被成下候得共、未住居も不整、夫食盡果候もの及
飢、捨置候得ば、不得止事離散退転、潰百姓出来
可申者、眼前に而、両度之天変、〓作打重候故、
艱難之次第難盡申上、難渋之段相違無御座、是迄
に御救被成下、取続候良民共、今一段之儀、依之
飢人共巨細相糺、右之内にも箇成取続候もの共相
除、日数之儀も理解之上、極々相縮候処、書面之
通拝借被仰付候様仕度奉存候、於然者右籾六百貳
拾壱石八斗貸渡、当未御勘定払に相立、来申ゟ子
迄五ヶ年賦、書面割合之通詰戻、其年々御勘定元
私に組仕上候様、御證文可被下候、依之此段奉伺
候、以上
弘化四未年十一月 高木清左衛門印
御勘定所
御附け印
┲━━
┃書面伺之通に者難申附、日数相減、書面一日
押切 ┃当りを以、五十日分貸渡、返納石数等之儀者
清太郎┃猶取調可被相伺候、以上
┃未十二月
┗━━
信濃國大地震に付、初発ゟ取計候始末、申上候
書付、
当四月以来、追々御届申上候、私御代官所、当分御
預り所、信濃国高井、水内郡村々大地震之儀、当三
月廿四日夜戌之中刻頃、俄に振動相始り、一と頻は
彳候事も成兼、次第に強く震立候内、所々出火之体
相見候得共、見分之ものも差出兼、心痛罷在候処、
翌廿五日卯中刻、漸〓らぎ候間、不取敢手当金用意、
手附手代差出、私儀も引続出張見分仕候処、地面割
裂、七八寸ゟ五六尺余 数拾間宛筋立開、右割目ゟ
黒赤色之泥水吹出し、歩行相成兼候場所多、其上所
々山崩、土砂は勿論、大石転び落、田畑共悉く麥地
致し、用水路は缺崩、床〓に相成候場所も有之、川
筋水行を塞候故、平一面に溢出、百姓家之儀は、軒
並に押潰し、桁、梁等打折、家財、諸道具は悉く打
毀、貯置候雑穀者、俵物震崩し散乱し、吹出し候
泥水を冠り、中には押埋候分も有之、貯穀は郷蔵
共押潰奇変之体、言語に絶、小前は勿論、村役人
共迄、本心取失ひ、更に跡取片付之心得も無之、
銘々潰家前に忙然と致し途方に暮、私を見請、頻
に落涙難止、尋候益も出来兼打臥居、老若之もの
共は泣喚、怪我人夥敷倒、苦痛罷在、即死之もの
取片付様も無之有様、難盡申上、不便至極艱難仕、
何れ之村々も同様之次第に而、一般之奇難、助合
候事も難成、差当り助命之もの飢渇に及び候故、不
得止事を陣屋許中野村、松川村江小屋懸取建、私
手元入用を以焚出し致し、其外遠方之分は、最寄
に夫食米差遣し候得共、数ヶ村之儀、中々以難行
届、身元箇成之もの共も潰家に相成、奇特之取計
筋も出来兼候間、村々貯穀貸渡、当分為相凌、且
村々潰家、怪我人等、追々取調候処、潰家并半潰
家とも三千軒余、男女即死五百七拾八人、怪我千
四百六拾人、右之内五拾九人、追々相果、其余片
輪に可相成もの多分有之、斃牛貳疋、斃馬百五拾
六疋、右之外善光寺江参詣致し、同所にて即死之
もの、男女貳百四人有之、多分之人絶に相成、支
配所之内、無難之分三分一ならでは相残不申、其
余は災害村々にて、差向用水路手入不仕候ては、
呑水に差支、殊に田方用水肝要之時節、何れも難捨
置、併場広大破之儀、中々以村々難及自力、且又其
砌眞田信濃守領分平林村地内にて山抜崩、犀川押埋、
流水を堰留水堪候に付、川上村々、一円水開に相成、
右場所満切候へば、何様之洪水可相成哉気遣敷旨、
信濃守家来ゟ懸け合候間、猶又千曲川縁村々江、私
廻村仕、万一押切、同川通水嵩凡三文余にて、潰家
之分は其侭押流、上郷村々ゟは、家居諸道具、材木
等流木、右等江取縋り、老若男女泣喚ぶ、前代未聞
之大洪水に有之、右水災に付、赤沼村にて四人溺死
致し候哉、行衛不相知旨申出、両度之災害、私儀も
千曲川縁内町に止宿罷在、急難之程難計、用意人足
呼寄置候内、最早丹波島辺江水鼻参り候趣、村々呼
継声高に為知候に付、打驚、其侭可立退処、兼而呼
寄置候人足共は勿論、村役人も立去り、無余儀御用
書物其外共、家来に為持、手代一同漸立退、凡貳拾
町程隔り候三才村江罷越候得共、一町余水中を歩行
候程にて、既に水災難逢（〓カ）程危機に御座候、右之次第
に付、不取敢材木木類取集、過急に筏拾三組仕立させ、
渡し舟雇上、其内賣米買上、握飯等披拵、飢人共江
差遣、并水難村々江救米差送、最寄本多豊後守領分
神代宿江申談、寺院境内借受、日数十日之間、夫食
手当致し遣置、村々相続方、并自普請所為手当金貳
十五百両急拝借之儀申上候処、伺之達砌下げ金被
成下候間、早速村々江割渡候に付、良民共御仁恵
之程難有打祝（挽カ）一統力を得、直様農業に取懸り、
中にも水内郡伺去眞光寺組之儀、百姓家拾六軒、
并寺壱ヶ寺は、飯縄山入谷間に一纒に住居罷在候
処、右大地震に而、家居田畑共總体平押に、低場
は凡壱町半も震下げ、寺院共都合拾七軒、一時に
押潰、引続後ろ之高山夥敷崩落、潰家之上江如山
覆冠せ、一同〓去候得共、土中埋死候男女拾八人、
右之内家内死絶候分三軒、其余家別に〓免難助命
致し候得共、男女五拾九人有之、彳方も無之に付、
早速仮小屋補理遣し、离散を止め、為御救御手当
金被下切相伺候処、一軒に付、金七両貳歩づ〻被
下、猶又冬春迄之夫食として、御圍穀之内米拾四
石六升貳合被下置候に付、精力を尽出郷（精カ）一村取
立候積、精々申付置候、扨亦川通変地仕候大破之
場所は、早速御勘定方、御普請役等被差遣、保方
専一に御普請被成下、用水路自普請所等者、夫々
拝借金被仰付候間、当作方之儀旬後れに者候得共、
丹誠致し植付方精々教諭仕、前書御手当筋之冥加
を厚相辨、銘々潰家取片付等之儀は捨置、農業為
相励、実に用水乗兼候場所は、毛替作申付、苗不
足之村方は、無難村々江申触、貰苗為致、無油断
手入致し候得共、七月以来不時之冷気曇天等にて、
出穏無甲斐不熱仕、破免捨（検カ）見入願出候得共、可成大
利解之上為相湛（堪カ）御取箇筋之儀は別段之事故、手強
吟味仕、損地茂一筆限巨細相改、明年可起返程之分
は、夫々見込を付、引方不相願積、精々取〓、実以
難起返分高貳百八拾七石余引方之積、其余は不残御
取箇附仕、併両災之奇変、隣郷一〓にて、相互
助合候儀難相成段相違無御座、依之小屋懸之侭に罷
在候もの、多分取続方出来兼候故、無據再拝借之儀
相伺候処、壱軒に付金壱両貳朱之当りを以、合金千
三百九拾九両貳歩拝借被仰付候間、是又無甲乙割渡、
一同挙而難有相心得、将亦北國往還牟礼宿、大古間
宿、柏原宿、野尻宿、右四ヶ宿之儀、多分之潰家并
焼失家も有之、即死、怪我人出来、殊に往還道橋及
大破、人馬継立方は勿論、往還通路差支候間、即刻
手代差遣し、急速為取繕候得共、参勤交代時節、人
馬継立差支罷在、第一 御威光にも拘り候間、支配
所内無難村々江申渡、当分助人馬為差出、本陣、旅
籠屋、人馬役之もの共相続方之儀は、追而相伺候様、
差向融通方差支候間、助成御貸付元利金年賦御下げ
戻之分、一時に御下げ奉伺候処、伺之通金八百貳拾
五両余御渡相成候間、右を以当分繰替、諸往来無差
支様、直に右四ヶ宿御救拝借取謂当、伺中に有之、
扨右両災にて、一体米穀佛底故、自然と直段引上
げ、困窮人も彌増及艱難候間、勘辨仕、実体成も
の相撰、越後國江差遣し、直安之米貳千七百俵為
買集、信州桑名川河岸迄引取、同所ゟ積替、陣屋
許中野村江為相運候に付、別段運賃駄賃相掛り、
総体米値段江割合候而は、直安にも不相成候間、
右河岸ゟ引取候入用は、私手許ゟ償遣、直安に為
賣渡候故、近郷ゟ追々賣米相殖、穀直段も下落仕、
一統安心仕候儀に御座候、勿論地震之儀、三月廿
日以来、不絶震立申候、信濃国は都而雪深之土地故、例年
冬春之内、御当地始め諸国江奉公稼に罷出候仕来
之処、当年之儀は人別も相減、荒地は相増候処、
他国出差留、来春迄は余業為相稼、雪解次第、田
畑起返方、精々為取計候様（〓カ）に御座候、前代未聞之
奇変には御座候得共、御仁恵を以御救筋被成下、
良民共安堵に営候段、於私難有仕合に奉存候、尤
手附手代も〓食打忘れ、救方并相続等之儀、格別
骨折、私儀も手許ゟ入用差遣〓候儀に付、別紙仕
訳諸相添、大地震最初より取計候始末、一と通申
上置候、以上、
未十一月 高木清左衛門印
覚
一金三拾四両貳歩、
是は、大地震翌日、為見分差遣候手附手代江相
渡、村々之内、難渋致し居候もの共江、手当可
致旨申付遣、潰家之内壱軒江、金壱歩亦は貳朱
宛、差遣候分、
一金拾九両貳歩余、
是は、犀川通山崩にて水湛之場所押切、千曲川
洪水之節、三才村にて焚出し申付、水難村々江
船筏を以施遣候米代、并地震水災両災にて、村
々之内夫食に差支候もの共江、救米差遣候代金
之分、
一金壱両壱歩貳朱、
是は、右同断之節、三才村にて筏拾三組拵、人
足賃、其外船三艘借受賃、并船渡手当分、
一金三拾壱両余、
是は、地震水難両災にて、越後国ゟ夫食米買入、
千曲川通積登り候節、同川通字桑名川河岸迄は、
運賃之分、買入米直段之内に籠有之候得共、同
所ゟ字立ヶ花河岸迄、川路凡拾里程引上げ、夫
ゟ中野村迄陸地凡貳里許運賃之分は、直段外に
付、右之分直段江込候ては、格別高直に相成候
〓、〓両運賃は、私手元ゟ私遣候分、
一金九両貳歩貳朱、
是は、右同断夫食米買入之節、彼地江遣候名
主共手当、其外両災に付、格別骨折候名主并
百姓江、手当差遣候分、
合金九拾大両余、
外
金拾五両三歩余、
是は、両災に付、御救拝借金相伺御下知済に
付、両度御金差立候節、道中附添手附往還雑
用、其外私并手附手代、度々村々廻村雑用之
分、
右之通御座候、以上、
未十一月 高木清左衛門
越後國古志、蒲原郡村々、大地震に付、相続
御手当拝借伺書、
覚
越後國古志蒲原郡五拾五ヶ村
御手当相願候分、
〓〓〓〓五千貳百五拾八石九斗八升貳合六勺七才、
金三千九百四拾壱両貳歩、
内三千貳百四拾四両壱歩永百三拾七文八分、
此人数壱万貳千七百拾八人
此夫食四千六石壱斗七升、
但蒲原郡玉泉町、子十月下米直段、金壱両に付、米一石二斗三升二合八勺、
是は当子十二月二日ゟ来丑三月二日迄、日数九
十日、平均壱人に付、米三合五尺づ〻之積、夫
食御手当相願候分、
金五百八拾八両、
此潰家千百七拾六軒、
是は、家財、農具、鹽噌、悉損失致し候に付、
御手当相願候分、但壱軒に付、金貮歩づ〻、
金百九両壱歩、
此大破家四百三拾七軒、
是は、右同断に付、御手当相願候分、但壱軒に
付、金壱歩づ〻、
右は、松平越中守御預り所越後国古志郡、蒲原郡五
拾五ヶ村之儀、追々御届申上置候通、当十一月十二
日辰上刻大地震にて、民家夥敷震潰、地震割裂、熱
き泥土を吹出し、即死、怪我人、大勢有之、皆潰
又は大破に及び候家数、書面之通御座候間、家財
農具打毀、貯置候穀物、潰家之下に相成、郷蔵等
も打崩、貯夫食致散乱、其上大雨降出、穀物泥土
に相混難用立、差当大勢之百姓、夫食に差支、及
飢渇難用立、差当大勢之百姓、夫食之為手当米千
石余差遣、其外死失之もの取調（納カ）候手当、旁鳥目等
施行仕、当然（分）之処は為相凌候得共、一体困窮之者
共、不慮之災難に逢ひ、殊に当年之儀は、一統之
違作にて難渋之年柄にも御座候故、無難之ものと
申候ても、救合も出来仕兼、潰家并大破之分共、
小屋懸取繕、凌両露候事も仕兼、仮に板〓等致し
居、又は大破之軒下等に彳居候体に御座候故、風
雪に被侵、病難等出来之程も難計、又は住居難相
成、無據他国江离散致し候ものも可有之哉難計、
大勢之人数、追々減少致し候様にては、村方相続
仕兼、来開作之差支に相成候儀は、顕然之儀御座
候間、難儀仕候間、何卒公儀御役人様方、早速御
下向被成御見分之上、御手當筋被仰付度旨、頻
而申立候得共、御役人様方御下向等之儀は、容易
に難申上儀に付、猶又役人共罷出、悉吟味仕候処、
右は是迄不及承変事に御座候、大勢之百姓共、難
儀困窮仕候儀、目不被当儀に而、申立候通実に相違
も無御座、住所を失ひ、食物差支候故、人気不穏、
此上如何様之異変出来可仕哉も難計、殊に雪国之趣
にも御座候得ば、大雪等追々降積候而は、肌寒難凌、
病難又は身命にも相拘り候儀にて、無據他国江离散
致し候ものも有之候而は、地震荒亡之手当〓く罷成、
自然と荒地も多く相成、村方衰微可仕儀に付、仮に
も早速家作出来不仕候而は、何分凌方出来難仕候間、
何卒格別之御吟味を以、当時之凌方来開作迄之為
御手当、書面之通拝借被仰付、且は別紙之通、家作御
手当之儀は被下切に被仰付候様仕度奉存候、地震潰
家荒失之儀者、同国之内にも、越中守御預り所蒲原
郡村々山手之方ゟ 古志郡之方江懸、別而地震強く、
前件之通地裂、熱き土砂押出、往昔ゟ無之変事に而、
往（詮カ）方無御座候間、何卒伺之通被仰付被下置候様仕度
奉存、尤右拝借之分、年季短御座候而は、又々返納
に差支、困窮可仕候間、当子ゟ辰迄五ヶ年延、三拾
ヶ年賦返納被仰付被下度奉存候、右は急難差懸候儀
にも御座候間、早速御下知御座候様仕度、此段奉伺
候、以上、
文政十一子年十二月 松平越中守家来小菅仙左衛門印
御勘定所
表書之越後國古志、蒲原郡村々、地震に付、夫
食其外御手当拝借之儀、伺之通には難申付條、
金千三百拾三両拝借申付候間、御金蔵ゟ請取之
貸渡、当丑年御金蔵御金蔵御勘定元払に相立、
返納之儀は当丑年ゟ巳迄五ヶ年延、午ゟ申まで拾
五ヶ年賦、壱ヶ年金八拾七両貮歩づ〻、未年は
金八拾八両取立之相納、其年々御金蔵御勘定元
拂に相立、返納之儀は当丑年ゟ巳迄五ヶ年延、午
ゟ申まで拾五ヶ年賦、壱ヶ年金八拾 両貮歩づ
〻、未年は金八拾八両取立之相納、其年々御金
蔵御勘定元に組可仕上候、断者本文に有之候、
以上、
丑四月
越後國古志、蒲原郡村々、大地震に付、家作
御手当伺書、
覚
村高壱萬五千貮百五拾八石九斗八升貮合六勺七才、
潰家、
千八百貮拾壱軒、
大破家、
内貮百拾軒、御手当不申受、家作可致分、越後國古志、蒲原郡五拾五ヶ村、
一金五千五百七拾八両、 家作御手当相願候分、
此家数千六百拾三軒、
内
四千七百四両、
此潰家千百七拾六軒、
是は、極困難之者、壱軒江金四両づ〻、御手当
相願候分、
八百七拾四両、
大破家四百三拾七軒、
是は、大破に相成、住居難相成、新建同様修復
に相成、職人作料、壱軒江金貮両づ〻、御手当
相願候分、
右者、松平越中守御預り所越後国古志、蒲原郡
五ヶ村之儀、追々御届申上置候通、当十一月十二日
辰上刻大地震にて、民家夥敷震潰、地震割裂、熱き
泥土を吹出し、即死、怪我人、大勢有之、皆潰又は
大破に及び候家数、書面之通御座候間、家財農具打
毀、貯置候穀物、潰家之下に相成、郷蔵等も打崩れ、
貯夫食散乱致し、其上大雨降出し、穀物泥土に相混
難用立、差当り大勢之百姓、夫食に差支、及飢渇候
体に有之、右は急変之趣に付、早速御預り候手限
に取計、日数廿日之間、夫食之為手当、米千石余
差遣し、其外死失之もの取納候手当、旁鳥目等施
行仕、当然之処者為相凌候得共、一体困窮之もの
共、不慮之災難に逢ひ、殊に当年之儀者、一統違
作にて難渋之年柄にも御座候故、無難之ものと申
候ても、救合も出来兼、潰家并大破家之分とも、
小屋懸取繕、凌両露候事も仕兼、仮に板囲等致し
居、又は大破之軒下等に彳み居候体に御座候故、
風雪に被侵、病難等出来之程者難計、又は住居難
相成、無據他国江離散致し候ものも可有之哉も難
計、
、大勢之人数、追々減少致し候
様にては、村方相続仕兼、来開作之差支に相成候
儀は、顕然之儀に御座候間、難儀仕候間、何卒
御公儀御役人様方、早速御下向被成下、御見分之
上御手当筋被仰付度旨、頻而申立候得共、御役人
様方御下向之儀者、容易に難申立儀に付、猶又役
人共罷出、悉吟味仕候処、右者是迄不及承変事に
御座候間、大勢之百姓共、難儀困窮仕候儀、目も
不被当儀にて、申立候通実に相違も無御座、住所
を失ひ、食物に差支候故、人気も不穏、此上如何
様之異変出来可仕哉も難計、殊に雪国之儀にも御
座候得者、大雪等追々降積候而者、肌寒難凌、病難
又は身命にも相拘り候儀にて、無據他国江离散等致
し候ものも有之候而者、地震荒亡之手当、〓く相成、
自然と荒地も多相成、村方衰微可仕る儀に付、仮にも
早速家作出来不仕候而者、何分凌方出来難仕候間、
何卒格別之御吟味を以、潰家并大破家之分共家作料、
并家財農具等損失之分江、為御手当、書面之通被下
切に被仰付、且は別紙之通、夫食御手当拝借被仰付
候様仕度奉存候、地震潰家荒亡之儀者、同国カ之内に
も、越中守御預り所蒲原郡村々山手之方ゟ、古志郡
之方江懸候而者、別而地震強く、前件之通、地裂、
熱き土泥押出し、往昔ゟ無之変事にて、往（詮カ）方無御座
候間、右は急難差懸候儀にも御座候間、早速御下知御
座候様仕度、此段奉伺候、以上、
松平越中守家来
文政十一子年十二月 小菅仙左衛門印
御勘定所
表書之越後国古志、蒲原郡村々、地震に付、家作
料其外御手当之儀、伺之通には難申付條、金千八
百五拾九両、為御手当被下候間、御金蔵ゟ請取之
相渡、当丑年御金蔵御勘定元払に可被相立候、
断は本文有之候、以上、
丑四月
○以上ニ通ノ伺書ハ、救助比率ノ参證ニ充テ
シモノナルベケレバ、〓ク𦾔ニ仍リテ存録
セリ、文政十一年十一月十二日越後地震條
ト併セ着ルベシ、