其外ハむすひ壱つ宛あたへ申候、彼是致候内夜更候得共一宿致所も無御座候、夜の四ツ時頃裏館と申名主方へ尋候へ共二軒の名主壱軒ハ千両も家ニかゝり候趣、弐軒共潰此村ニ夜を明シ候所も無之、道場あしく、村役人ニおくらせ再々三条御坊の前ニ出申候、村の送り者ニ死人何程有哉と尋候に今日迄出候死人三拾七人と申候、又潰家よりハ将棋たをし同様其中に釘を家業ニ致候者も候よし、弐十二三才のおんな家のうへになく声有、其ゆへハ夫ハ身をいためうごけず、子供も多く有、米なく喰事不叶、御坊へ参り一舛の米の無心致十人余りニ而たへ候得とも明日〓如何可致哉と申候、其節むすひ三ツ残り候を妻ニあたへ申候、是ハ親父〓ハ別而歓申候、小子ハすいづゝに酒五合を入候得共呑しまひ酒を求めんとおもひ一の木戸に折々休候山城屋と申酒屋有、此家迄半道ニは参り候所家潰れ多く、たまニ人の居候所ハ家根の上の住居也や、わか此世の有様とハおもわれす夢のごとし(図略)
注、図の注に左の項あり
○家根ハ土間に附、(ママ)木障子ハはづれ、柱も外ニ有、家根つたいニむすひを遣す
○三条ハ出火故家なし
○朝より雪七ツ頃〓雨
○道ハ両かハ〓家崩れ家根の上を越道と歩行