古(歌)歌に
あす有とおもふ心のあた桜夜るハ嵐の吹ぬものかハ
霜月十一日の夜八頃迄酒のみ、十二日朝迄折臥居候所、みし/\と地震ゆり初め候へ共少しも驚不申、折臥候所二階の家根大風ニ而吹まくり雨降こミ、戸障子落五尺計まかり候故飛起二階〓おり候、隙も無はりをよけ念仏を申座し候而漸々地震鎮り、其間草煙弐ふくものミ候間に御座候、夫〓下ニおり候得共壁もぬけ、地は二三尺位われ皆々外ニ出て人の通なし、長く逗留故懇意の者も御座候故上の町下の町へと歩候ニ家の潰候所多く、殊に島町之大人とも中玉木七郎右衛門といふもの夫婦ともにはりにしかれて死ス、其外追々死人之しらせに此世の地こくを初に眼のあたりに見申候、長き(逗)逼留故二三里四角〓も多く頼当月の内に目出度帰府と心得候内如此壱里脇児の木と申所の市右衛門と申名主是も相応の大人故此方江寝巻のまゝ大小、着類を指置家も潰、まる腰にて壱里の□をにけ参り候、風流の道かわ酒井胞谷も丸腰ニ而歩行も被成候得共、夫ハ時ニとりての風流小子の身分武士の心を忘れ候様ニ候得共
十分此所ニ而ハ武家を勤候者不参所ニ候得共太小さし歩行致候へハ懇意の者も心を置候故大小を預町人のもちいもよき事也