地震史料集テキストデータベース
[未校訂] （頭註）
百七「九（ママ）月二日ノ夜江戸大地震之事」
（上覧追記）
「日輪寺江ハ御書御添被下置也、寮主へ御書相添也」
江戸中大地震ニ付為御見舞御使僧興徳院被仰付、十月五日未明出立ニ而供人壱人召連罷越候、品川長徳寺一泊茶代金弐朱出ス、品川御門中・善長・白銀壱分ツヽ御見舞被遣候、同所名付・相模屋・柳屋と三軒へ弐朱ツヽ品物罷遣候事○六日所々見舞い朝倉参り候所、極大変曲り候得共、本堂者不潰、其外ハ両院学寮并門前不残皆潰、土蔵ハ土震骨ハ残り居事、日輪寺江金三百疋、為学寮ヘ金百疋、両院へ弐朱ツヽ御見舞被下置候
（中略）
○一筆致啓上候、寒冷之節御座候得共、弥御安全被成御入珍重奉存候、然者此度地震ニ付早速為御見廻御使僧被成下御熟念之御状忝奉存候、拙宅儀者破損而已ニて怪我等も無之候間、乍憚御安意可被下候、御地者如何候哉、御様体伺度、右御報礼旁如斯御座候、恐惶謹（カ）言
十月五日 鈴木藤蔵
衆領軒様 重威（花押）
尚々時季折角御厭候様奉存候、已上
（中略）
（頭注）
百十一「三州大浜称名寺ゟ書状来ル」
一筆啓上候、寒冷之砌御座候処、尊躰益御機嫌能、相次而貴院様弥御勇健罷成御勤役珍重之御儀ニ奉賀候、然者当月二日夜江戸表大地震ニ而過半相潰候趣、追々風聞有之驚入御儀ニ奉存候、御地格別遠境ニも無之、御山内如何不安心心痛仕候、併道中飛脚通行有之事故、格別之儀茂有之間敷と推察仕候得共、世上一統箱根ゟ江戸迄大変之趣申触し候間、書中を以御伺申上候、御前表可然被仰上可被下候様奉願候、実以噂之通りニ候得者江戸表大変事、近来種々之天災度々有之、末々如何成事出来候哉難計、有為転変之世の中何卒此上者天下泰平国家安全祈願ゟ外無御座候、御山之義不安心奉存候間、不取敢御伺奉申上候、諸無かへ文通大取込、余ハ后便可申上候、如斯御座候、恐惶謹言
十月八日 大浜
称名寺
隠居
藤沢山
衆領軒様
御持者中
（頭注）
「御返書被成御指出候事」
誠ニ以其已来者御無音申訳も無之、深々御仁免可被下候、貴院様ニも長々御修行先御勤役被下、御苦身千万奉存候、能キ折柄西国筋御仕舞上御都合、遊尊様ニも御安心御在京御閑居被為在大慶至極奉賀候、此節藤沢表御勤役之由、一入御苦身千万ニ奉存候、
一当地も昨年大地震已来、月ニ四、五度位者ゆすり候得共格別之事無之、当月二日夜少々長ゆすり致し候迄之事ニて別条之事も無御座候、七八月両度之大風雨ニて近国之新田不残切れ込海面ニ相成、一同大心配之事ニ候御座候、本田向不残皆無同様ノ事ニ而、当山も凡五十両余之損毛ニ御座候、天災致し方無之旧年大地震ニ付、表門・本堂・仮御霊屋・書院・小座敷・玄関并裏通り物置小屋等不残破損、小屋二ケ処潰れ、当五月ゟ普請ニ取懸り漸々門并本堂・小座敷潰れ二ケ所九月迄ニ普請出来、今以書院玄関等者其侭捨置申候、皆出来迄百両余相懸り可申候、及老年又々心配御堅察可被下候、種々申上度候得共取込久々之御詫旁如此御座候、已上
△御十念ニ上ル
（頭注）
百十二「廿五日、関野小右衛門忰清兵衛改名」
△ 以書附御届申上候
△当月二日夜大地震ニ而本堂屋根瓦棟通り中程迄崩落、後側過半落西之方江余程曲、壁惣体震ひ候、門瓦東側不残落、南東之方へ四寸程寄曲り候、庫裏瓦少々落北之方へ弐尺程曲り、鎮守社・土蔵屋根不残震落し、壁同様、長屋東之方壱棟相潰れ申候、右之通り荒増御届申上候、以上
品川
卯十月 善福寺
藤沢山
衆領軒様
洞雲院様
一筆啓上仕候、追々寒冷相募候処、尊躰益御機嫌能、次ニ貴院様益御清栄可被成御勤仕珍重奉存候、当拙無事御休慮可被下候、然者先達者御見舞被成下、殊壱品被懸御心頭難有仕合奉謝候、何れ登山御礼可申上候得共、何様御見分之通りニ而差当り登山仕兼候ニ付、一通り御届申上、何卒宜朝奏可被下候、過兼之便故巨細不申述後音可申残、恐惶謹言
品川
十月廿四日 善福寺
洞雲院様
興徳院様
貴下
（中略）
（頭注）
百四十五（目次百十五）「伯州安養寺役人願書」
一当月二日夜殊外江戸表大地震之噂承り、御本山表ニ而者如何与心配罷在候、原宿辺者軽く安心仕候、乍恐御序之刻近侍者中様江宜御伝声奉願上候
註：本史料は、時宗総本山清浄光寺(遊行寺)の近侍者日鑑である。江戸表の地震被害の様子や、三河大浜称名寺からの地震見舞に対する返事、品川の善福寺からの地震被害報告などがある。