地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（表紙）
「　嘉永七年歳次甲寅
　　安政元年
　硯北日録　一
　　孟春之月元旦起毫　　」
甲寅日録　　　　温歳十八
　　正月小
（中略）
六日丙午、陰雨、晨起、地震頗大、董叔至、是夜節文(ママ)儺如例、滝川嘉衛疾、渡辺広次代勤
（中略）
十八日戊午、朝霰、午霽、新直　登営、申下牌地震、玆日、訪艮斎翁不逢、針瞽来、蛮説益囂
（中略）
（六月）
十四日辛巳、晴、青・大生来、月明、詩経会、如例、是日京師、大坂、江州、勢州等、大地震、連日不止
（中略）
（十月）
二日丁酉、晴、青生来、掃庫楼、晩、雨乍暖、伊生来、地震微動、夜、雷数轟、青山来
（中略）
（十一月）
四日己巳、霽、寒氷、朝辰牌後、地俄震、屋宇揺蕩、池水沸騰拍岸滾泥、暫而止、実未曾有之奇変也、青・大・伊生来、詩経会、小川佐左来、夜、青山子来話、終日時々小地動、入夜三(七)震、
五日庚午、晴、与三生拝粛公墓、談法事於寺僧、与金若干、過寒・菊・金三家、杉忠達来、三生糊障、秋月来、茲日地又数微震、夜二更、浅草金龍山陰火、風急聖天街、馬道三谷河岸花川戸多係災、奔唁坂上氏、到五更熄、
六日辛未、霽、山田要人来、贈大葍、不面、大生来、地尚微揺、青生晩到
（中略）
八日癸酉、陰、寒雨一点、又晴、直　営、内藤宮内、達令、地震荐臻避之、戒火云、至今日地尚両三動、伊・大生来、糊障、此日過実局、山口千太来謁
（中略）
十三日戊寅、晴、寒甚、直　営、過実紀局、遣弘治(京蔵)持来月俸券、使勢店、小普請支配小笠原順三郎、有書、問深見寿太郎及予転邸之事、大生来、近日、聞説、去四日大地震、小川町・赤坂・本所・芝等、尤甚、屋宇或覆、大城大手牆少壊、其余多奇話、又聞、駿・遠・三及伊賀・伊勢・相模亦甚、道路不通、箱根山壊、藤川涸云、下田港、怒涛高二丈余来、撲市陌、人馬尽帰烏有、諸官、僅以身免、蛮舶二、少毀損云、実大怪事矣、余未詳聞耳
（中略）
十五日、庚辰、晴、登　殿、拝賀如例、大生来、秋月来話、夜地震両三回
（中略）
（十二月）
五日、己亥、晴、昨日頭取、達今日奥向、服紗麻登営、余亦登　殿、頭取達改元安政、　董叔・春児来、供酒、桜井眷次到、夜如佐野氏、半夜地少震
（中略）
十一日乙巳、与青・伊二生拝粛公墓、過津田玉芝宅不逢、帰途、如池端仲街、夜、再度地震
（後略）


（表紙）
「　安政二年歳次乙卯
　硯北日録　　二
　　孟春之月元旦起毫　　」
乙卯日録　　　　温歳十九
（中略）
（正月）
十三日丁丑、陰寒、直　営、城微震、小雨、雪乍晴、晩来又雪、大生・前田善助到、夜月清朗、寒如厳冬
（中略）
廿七日辛卯、晴暖、本覚来、于東園談話移刻、伊生来、夜地震
（中略）
（二月）
朔日甲午、陰冷、無拝賀不朝、頭取達、明二日丹後殿通御詞云、伊沢生至、地微震
（中略）
十二日乙巳、雨霏、登　殿、謁甲州・備州・宮内少輔、述昨日之謝、地震又雷、夜半晴月
（中略）
（七月）
三日甲子、霽、登営、曝書如例、木村勝右来、此日地震
（中略）
廿一日壬午、雨、不朝、阪上玄丈始来面、小南鉉・田辺平到、地震夜中
（中略）
（九月）
廿八日戊子、霽、直　営、董叔来、夜地震
廿九日己丑、霽、左氏会、夜須田街火、地少震、頭取、達丑年拝借金有命不及奉返
（中略）
（十月）
二日壬辰、晴、是日二更、依案読書、忽聞轟然一声来、自西南屋宇掀動、走排戸而出庭、歩不可挙、疑万雷震地、暫而息、屋舎尽東傾垂覆、蔵庫土雨下剥大半、家族幸無恙等行、婢展少傷頂耳、幸甚々々、須臾天色紅、警鼓数声、火烟四起凡三十箇所、王父君臥病、仍輿而避火於東台凌雲院、北堂及細君・婢等皆従、余及竹内・高玉及一奴留焉、火益熾則運什器、余亦提竹生登　殿、大君已避吹上苑、因面田村・柳沢両頭取而返
三日癸巳、晴、火未滅、益迫邸、余一飯、美可言哉、巳牌火至佐叔邸後而止、是日直日、先如東台而尋家族不逢、乃帰、朝営、大君已返宮辞而帰、母君等亦帰、家屋不可住、什器乱雑事不足言、扶王父君移、不可抜斎、余造綿蕝于庫之西而居、庫北傾、泥皆剥落、庫前小舎摧挫、地動数次、是(前)夜之眚、死傷幾万人、有不忍聞見矣、是日弔林氏
（中略）
七日丁酉、夜酉牌、地震頗剛
（中略）
十一日辛丑、頃日、地動日数次、人心不安
十二日壬寅　地又震、少強
（中略）
十五日乙已、霽、地猶時震、松岡来宿
（中略）
十七日丁未、霽、地未震止
（中略）
十九日己酉、晴、与大和生訪古銭翁、翁尚矍鑠、浅草寺塔尖曲彎奇哉、是夜伊沢生来、十日帰於下田戸田村、告爺可十没、此二日之変可悼
廿日庚戌、霽、地未安、母君如林街
廿一日辛亥、晴、朝来、震三回、晩大風
（中略）
（十一月）
十一日庚午、晴、拝粛公墓、舟橋・井上・松岡従、過林街問祖君疾、此夜近江店佐兵衛、携古泉来謁、彼奇叟也、震漸断
十二日辛未、晴、松本・青山来、夜月明烟深、震少来
（中略）
十五日甲戌、晴、朝来、二回震
（中略）
十八日丁丑、晴、曙一震頗剛、直　営、西村左兵衛来
（中略）
（十二月）
四日癸巳、晴、此夜震頗剛、夜々電
（中略）
廿日己酉、大雪、霏、寒威甚、一震
（後略）


（表紙）
「　安政三年丙辰
　硯北日録　三
　孟春元旦起毫　　」
丙辰日録　　　　温歳二十
（中略）
（正月）
九日丁卯、晴、買銭五貫択之、小南鉉至、晴潭未談点、徒折腰之事、昨今地微動
（中略）
（三月）
廿九日丙戌、雨陰、会左氏、地震酉牌也
（中略）
（四月）
十一日丁酉、霽、曙時地頗震、佐虎来
（中略）
（六月）
十八日癸卯、朝来一震、直　営、今日午時暑時、拝訪一橋・田安府・番街・市衢・茗渓畢、晴晩少雨冷、
（中略）
（八月）
廿五巳酉、風雨、如長叔、遂赴林氏小集、夜大風雨雷、夜将二更訇然一声、封姨来、摧扉扄縦横飛舞、席及器什半混、愈甚愈暴、屋舎傾側、比諸震災僅一等之声、衆皆驚怖、四更而風歇而収、芝浦及両三所有火、実未曽有之変事也、夜中地震三次
廿六日庚戌、晴、又有熱似七月中旬、早起点検、牆垣尽仆、樹木半倒、月波亭散飛、奥痕屋宇亦破壊、可驚、登　営、唁林氏、山・長・佐三氏、又如杉氏、聞昨夜風雨変甚、於震災、永代橋断壊、築地門跡潰仆、舟艦在海者大半砕了、死者不知、幾許侯邸・吏舎・商店・農盧、或砕或傾、有水仆屋有、有風奪簷、噫亦甚矣、昨夜舟橋・秋月没矣、吾聞訃慟而巳、天何為者哉、且聞、砲洲深川辺風涛来、聖如本所・林街、従平地水五尺許云、其他奇事亦𡸩乱也
（中略）
（十月）
朔乙酉、晴風、地少震、登　殿、拝賀如例、書斎及諸室潔掃終
二日丙戌、晴寒、左氏会、昨歳大震一回也、人心悩々
（中略）
七日辛卯、晴、辰牌後地震頗剛、大震後之巨擘也、廩商報、明日俸米下乃命、以三五囷三十五為食資、此日甚煖、夜南風変西風甚暴
（中略）
（十二月）
三日丙戌、晴早朝登　営、従林栄陪講筵、地震少動
（後略）



（表紙）
「　　安政四年丁巳
　　硯北日録　四
　　孟春元旦起毫　　　」
丁巳日録　　　　温歳二十一
（閏五月）
廿三日癸卯、曇小雨、直　営、今日曙時地震、秋忠・茟婆来
（中略）
（八月）
四日壬子、晴陰、不斎有雨、論講如例、左氏会、此日与青・大二生検書、筐蔵干庫、今朝地震、蓋近日頻々少震
（後略）


（表紙）
「　安政五年戊午
　硯北日録　五
　孟春元旦起毫　　　　」
戊午日録　　　　温歳ニ十二
（中略）
（二月）
廿五日辛未、陰、疾未愈、夜地震
（中略）
（五月）
廿八日壬寅、晴、直　営、午後侍講、与吉田華芸・吉沢等、提華花・富岳・有田月券、観烟戯于二州橋、調作従焉、酌嘉波楼、有田月券来宿、地震
（中略）
（六月）
朔乙巳、晴、登殿、拝賀如例、如永井氏、主膳拝、羽林之過也、衆賓雑沓、茂登知陽両手来助奧、地震、直蔵出、婦至
（中略）
（八月）
十九日辛酉、雨、登　営、拝訪御機嫌、地震、晩訪襟島
（後略）


（表紙）
「　安政七年庚申
万延元年
　硯北日録　七
　孟春朔旦起毫　　　」
庚申日録　　　　弘歳ニ十四
（中略）
（二月）
十一日丙午、雨晴、社鼓啌闐、寿之・一壷来、夜訪柏原氏、夜地震
十二日丁未、雨午晴、直　営、無侍談、地震、書籍講及煎茶講発会、夜客来
（後略）


（表紙）
「　文久三年癸亥
　投閑日録
　　八月九日起毫、至
　　元治元年甲子　　　　」
投閑日録　　　　弘歳二十七
（中略）
（九月）
七日辛亥、晴、渡瀬来、福田正次来話、夜地震
（後略）



甲子日録　文久四年　　　弘歳二十八
（中略）
（五月）
三日戊寅、晴、晩地震、楠山来
（後略）


注：本史料は、成島柳北の日記で、柳北は天保十二年（一八四一）八月下谷練塀小路に居を移し、その後安政二年（一八八五）十一月和泉橋通りに転居している（前田愛著『成島柳北』）。安政元年、安政二年の句読点は、揖斐高ほか「『硯北日録』―翻刻・訓読・略注と人名索引（一）」（『成蹊人文研究』第二一号）、「『硯北日録』―翻刻・訓読・略注と人名索引（二）」（『成蹊人文研究』第二二号）を参照した。