地震史料集テキストデータベース

一、十一月廿二日、夜八過〓大地震、為御機嫌伺御登　城、翌廿三日、御見廻御使者、美濃守様・右京太夫様始、諸方様へ被差出候
右大地震、同廿八日迄不相止、諸国共ニ同断、百年已来無之由、依之廿八日晩立飛脚、十二月十四日到着、御家老中へ御書を以被仰下候ハ、江戸以之外騒動候条、急度人を被召寄候義可有之候条、其用意可罷在由、依之為御機嫌伺、御家中惣代今泉惣左衛門、江戸被差越候、　天山社、　江戸神明社、　同宝社へ御願
元武公・長寿院様始上下々迄別条無之様、今度惣左衛門ニ而願書被差上候、　江戸御屋敷以之外破損ニ付、秋山儀右衛門并足軽、大工五人被差越候
今度之大地震、諸大名の屋敷／＼ハ云に不及、町屋震ヒ倒れ、男女死傷多し、水戸様御門前二百間計り倒れ、泥出たり、浅草観音の塔、九輪折レテ地ニ落、其外神社・仏閣を始、　御城御櫓土台より倒れしも有、二重・三重め〓崩れたるも有、大手・桜田御門、大に傾き、鉄を以巻たる御門の柱さけ、二十間余の棟木震折レ、御堀の水、往還へ打上たり、惣して、江戸中の見付／＼、無残御多門崩れたり、此半に　桂昌院様にも御逝去被成しか共、外向御広めなく、宝永二年六月廿二日、世上にハ披露有ける
一七日之間、地震止事なく、昼夜十五・六度に及ふ、後にハ上下共ニ庭に仮屋を作り、本屋に不被居、就中大破に及ひしハ、小田原の城下也、本・二・三の郭・石垣、悉くゆり崩し、城主も空地に幕をしつらひ、野陣有し也、右地震の前表にや、帚星の如き火数夜出て消へす、人々不思義と申習し也、此時桜田御屋敷御玄関前切石の合セ目、クハタ／＼と打合、是より火出る程也、御城廻りの石垣のくきり、皆ねち切レし也、将軍家より禁中へ奉聞有、太平を御祝寿の御製を御願ひ有しに
国津神ちゑの岩ほをゆりすへて
動かぬ御代のためしにそ引
又、箱根山大石ぬけ出、往来をふさく、翌年、上杉弾正殿ヘ往還道作り、抜石取捨の御手伝被仰付けり
（中略）
一、十二月、先日之大地震付而、御屋敷破損、御修覆之間、虎御門御屋敷ヘ御引越被成度由、美濃守様・右京大夫様御届、御用番様ヘも御口上事ニ而御届有、御修理出来候上、桜田御屋敷ヘ御引移之後、御届最前之通りニ候事
一、浅布御屋敷御類焼付而、御修覆之内、虎之御門御屋敷内明キ小屋御借り被成度旨、　信州様〓被仰候付、表御門〓東之分被差出候、番人も溜池より被仰付、此方より御構不被成、間を仕切、互ニ下々之出入無之候
（後略） 注、本史料は、佐賀藩支藩の小城藩三代藩主鍋島元武の年譜である。