地震史料集テキストデータベース

州之浜、東海者上総也、海〓蜿蜒百里而、近世謂之九十九里之瀕、蛋戸漁荘相聚而為邑、邑之大者曰片貝・小関・新生、一望浩蕩、無畔無辺、狂涛怒浪、日夜拍天、颶風沓潮、発作無時、毎一作海運波嘯、巨浪山立、奔突崖岸、瀕海一帯呼吸間、変成蒼海、寸棟片瓦、皆化烏有、馬牛畜獣、無有孑類、従此幽魂泣黒夜、溺鬼嘯白日、頻年風怒浪激、漁艇海舶覆没無已、郷人之毎会聚、説患懐其慰怨鬼者久矣、師顕栄乃能指示其方、建石於崖岸、使溺鬼有所依帰焉、郷人歓欣踊躍、不命而献、不祈而薦貨、旬日之間、鉅石謹具、師以前問聖人之道於余之故、百里杖錫、訪吾廬、請文其事、鳴呼瀕海之民、罹沓潮之患飽鮫之腹、毎一話畢猶且毛竦膚悸、不惻然感愴者尠矣、況親聆其事面〓其跡乎、今師因郷人之所請、俾幽魂有所帰焉、余非其人、亦深喜斯挙之慰幽綏明、郷人飽魚蟹、歳無風災之、於是不敢作辞遜之詞、遂甄録其顛末、俾郷人鐫石繋之
天保十三年歳次壬▼寅秋七月孟蘭盆会之日
東都　　　　綾瀬　　亀田　梓　撰文
萩原永年　鐫 注、『九十九里町誌資料集　第十三輯』によると、「溺鬼供養塔之碑」は九十九里町片貝三六〇〇番地に所在し、碑石の大きさは、縦二四〇センチメートル、横一三七・五センチメートルである。碑の表面は、「八大竜王　南無妙法蓮華経（の髭題目）　四大天王　日蓮花押」で、裏面に溺鬼供養塔之記が刻まれる（一行三十字、十行）。また台座正面には、建碑者十一名の名前が刻まれ、「鈴木幸右衛門　平山佐吉郎　小安六郎左衛門　斎藤甚兵衛　鈴木九郎左衛門　小川嘉之七　古川新次郎　花沢元貞　小川荘兵衛　高橋長兵衛　高橋藤兵衛」とある。
この供養塔がいつの津波による溺死者を供養するために建立されたのかは、碑文からはわからないが、便宜的に掲載する。