地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（松浦武四郎書簡）
（2）「続地震雑纂四」収録足代弘訓宛書簡写
（○冊子）
（表紙）「続地震雑纂四」
（神宮文庫所蔵）
1 五日付下田地震情報写（嘉永七年十一月）
十一月五日認、松浦竹四郎豆州下田ゟ書状
但し同月十三日出之書状与一緒ニ来ル
昨四日下田大地震大津浪丸潰仕候、人死六百余人、幸ニ私
ハ死をのがれ申候、異国船半潰れニ相成申候、恐惶謹言
五日朝 松浦竹四郎
下田
（神宮文庫所蔵）
3 十二月七日付地震被害情報写（安政元年）
在江戸松浦竹四郎ゟ書状 十二月七日日附
霜月廿三日下田湊出立仕候、伊豆東海岸通り通り小田原
江出、廿八日江戸へ帰宅仕候
扨、此度之地震者日本半分と被存候、大坂并紀州・四国・
山陽道筋等実ニ以洪大之事ニ御座候、定而東海道筋の事并
甲斐・信濃松本辺之事等御聞及ひニも相成候哉、最早御聞
取ニ相成候と存候間、御しらせ不申上候
江戸者存外軽く御座候、霜月四日五つ半過
大手の石垣 三拾間計潰
南部様 玄関潰れ 凡五、六千両のいたミ
辰阿部様の口様 凡千両計のいたミ
會津様 凡五千両程のいたミ
松平紀伊守様 凡千五、六百両のいたミ
高松様 凡千両計のいたミ
等申候事、市中至而穏ニ有之候、只久保町ゟ丸の内・大
手小川町・小石川辺か荒ニ御座候、水戸様者凡一万両のい
たミと申候位の事ニ御座候
其日又江戸表者さして津浪の印も無御座候得とも、山谷
堀ニ而は凡三、四尺も常水ゟ高く有之候、屋根船・茶船
を少しいため申候位の事ニ御座候由
五日夜四つ前ゟ
聖天町ゟ出火、横町・花川戸・山の宿・馬道・猿若町三
丁皆焼、川東ニ飛火仕候、水戸様御下屋敷ニうつり、米
蔵少々并に炭弐万俵計を焼申候
扨、又下田表滞留の異人共、是非下田にては作事出来兼
候由ニ而外湊借用仕度由願出候
十二日網代湊を見分ニ参り候処、此処に十四日迄滞留致
し帰り、夫より又々十七日駿州清水湊へ行候処、此処も
狭く候間、伊豆の西海岸戸田と申候て、沼津ゟ五里計東
の方の湊を願候、廿五日ニ下田表ゟ同湊綿屋吉兵衛と申
船にて引かれ、下田出帆仕候、廿七日ニ相成右異船品々
吉原の浜手へ流れ候、其処にて右を引候船者碎け申候、異
船は水船ニ相成沈ミ、魯人も皆ハツテイラに漸々の事ニ
而乗移り上陸、其内助ケ船等参り申候、右之者を助け参
り候次第ニ御座候、漸々の事ニ而命を助り候由、実ニ此
度之珍事実ニ以目出度事ニ御座候、是にて如何計歟本邦
の人の気習を引しるかも知れ不申候、神風ハ吹ぬものと
存居候処、此度之事実ニ〳〵珍事ニ御座候
一扨、神地は至而地震うすきよし当方にて申候、定而左
も有へき事与奉存候、下田在本郷村の売布明神は田の中
ニ有之候、社地へ水一滴も参り不申、夫より上拾一町に
千弐百石の船打上居申候、実ニ不思義の事ニ御座候
此宮式内之由也
扨、米は百文ニ八合五勺ゟ九合五勺位ニ御座候、是にて
先人気は穏ニ相見へ候
一出羽奥州は地震無之候
一関八州至而穏ニ御座候
十二月七日 松浦竹四郎
（大西春海氏所蔵）
8 十一月二十九日付江川太郎左衛門より川路左衛門尉
宛書状控（安政元年）
以手紙啓上仕候、然ハ昨廿八日申上候魯西亜船之儀ニ付、
秋山主税・杉浦主殿知行駿州富士郡宮島村之内字三軒屋
浜ゟ五、六十軒間程沖の方へ掛留、追々入潤相増、漕出し
方不行届様子、海岸高波ニ而ハツテイラ着岸難相成候ニ
付、壱人つゝ胴縄ヲ掛ケ水中へ飛入、大勢大縄にて引揚
候儀ニ御座候、今日早朝ゟ夕方迄凡フーチヤチン初凡四
百人程右浜方江上陸いたし候ニ付、昨夜戸田浦一本松新
田江罷越候下田奉行手附出役并御普請役・御小人目附打
合手代共差遣、不取敢食料手当、小屋掛等取計、私義も
最寄内藤鍬之助知行所鮫しま村迄今夜中出張仕候、最早
寺院又者人家江差遣し寒気為相凌度候処、地震ニ而潰家多
く取計兼申候、且通詞堀達之助義も只今同村江差仕候ニ
附、戸田村差廻し方其外之儀明朝フーチヤチン江応接之
上委細可申上候得とも、先ハ不取敢此段申上度如此御座
候、已上
十一月廿九日
江川太郎左衛門
川 左衛門尉様
9 十二月二日付江川太郎左衛門より川路左衛門尉宛書
状控（安政元年）
秋山主殿・杉浦主税知行駿州富士郡宮しま村沖ニ懸留候
魯西亜船之儀、入潤弥増覆没可致躰ニ付異人共儀者右湊
江上陸仕、本船之儀者数十艘之引船差出、戸田浦江引入候
積り、今二日四つ半時頃三、四里程引出、沖合ニ於て高
浪相立引船相離れ候旨追々注進ニ付、浜辺江罷出及見候
内忽覆、漁船者乗組候使節并外三十人程之異人共者、水野
出羽守領分駿州江の浦江向漕寄候様子ニ有之、依而私儀
不取敢同所江罷越候上、尚可申上候得共急速御出張無御
座候而者諸事差支甚当惑仕候、依之申上候、已上
十二月二日
江川太郎左衛門
川 左衛門尉様
猶以浦触差出候儀ニ可有御座候得とも、差懸候儀ニ付私
ゟも最寄江者早速浦触差出し申候、已上
（大西春海氏所蔵）
10 十二月十五日付足代先生宛（安政元年）
甚寒之砌ニ御座候得共、愈御塾中御揃御安全珍重之儀ニ
奉存候、然者私共無事ニ罷在候、乍恐御放慮可被成下候
扨、先達而申上候魯西亜船、又々駿州沖ニ而三度目をやり
申候由、最早其船は沈ミ檣の先少し計見□得候計の事ニ相成候由、然
し人死はさして無之候得共、船は少しも間ニ逢不申候、
あまりの奇談ニ御座候間、右之届を二通写し差上申候、
其魯西亜人廿八日ニ覆没、二日の日にはハツテイラニ而諸
方へ上陸致し、百姓家等ニてやしなわれ候由、然し其百
姓家も地震にて潰れ多く候間、必死之めにあひ居と申事
ニ御座候
一下極月廿日田湊へ又々アアメリカ船一艘来りツタムス入津仕候ニ付、御目附鵜殿民
部少輔殿出張ニ相成候、事ニより候ハヽ、林・井戸御
両人共々出張ニ相成候と申評儀ニ御座候
扨、ヘルリはアメリカにて余程上官へ上り候由ニ御座
候、其へルリの跡役にアツタムス参り申候由ニ御座候
一凡年内か又は正月上旬早々、御勘定奉行石河土佐守
様・御目附大久保右近（ママ）少監様両人京都ゟ大坂并神領見
分ニ出立ニ相成候、御心得之為一寸申上候此大久保右
近様と申候は、御目附ニて当時きけものニ御座候、則
私共も極内ニ而少し世話ニ相成居候事有之候、御地滞
留ニ相成候ハヽ、先生御逢ニ相成様奉存事ニ御座候
一水戸浪人御存し宮本名日下部伊三次崎定太郎なる者も、極御懇命を蒙り
居申候御仁ニ御座（ママ）候、実ニ当時御目附中乙の人ニ御座
候
一土佐宇和しまは実ニ此度の地震日本第一の由、山口様
も嗟（嘸）御心配と奉存候、伊達様・土佐様は事ニより候ハヽ
御国え早々御立ニ相成かもしれ不申候、先者早々謹言
極月十五日 松浦弘
足代先生
玉案下
御著述の地震雑さん御写し一本頂戴仕度何卒奉願候
（大西春海氏所蔵）
13 十三日付足代大人宛（嘉永七年十一月）
御地等如何ニ御座候哉御しらせ奉願候
愈御安泰珍重御儀ニ奉存候、然者 拙子無異ニ罷在候、乍
恐御放慮可被成下候
扨、当月四日朝五つ弐分五り計の頃ニ、当下田湊大地震、
土蔵等は壁落、土地少し割れ申候、泥少し出候位の事ニ
御座候、市中大騒動仕居候処、一刻計も過候間ニ大勢又々
騒立候間、定而出家（火）と存候て表え出申候処、煙も不見候
間、是は定而異人共乱妨仕候事と存候、我も内へ脇差取
ニ入、出候処、早々市中ニ大波参り申候、大工町を岸ニ
大船の帆柱様（揺）動致し、あたまの上ニたをれ候計ニ相成候
間、漸々津波なる事をしりて、先山際元へ上り旅宿本覚
寺へ行んと存候ニ、早市町一面津波にて中々渡りかたく
候間、早々了仙寺と申寺の山え上り見申候処、早一の汐
は其節引去り申候ニ、其波の中を渡りて市人并諸役人等
皆山え上り申候
扨、然るニ又煙草二ふく計も呑候間ニ、二の汐来り候や
と人々さわき候得共、一向其様子も無之、大工町の辺り
ニ煙立上り、出火〳〵とさわき候て寺鐘を撞かけ候ニ、
又弥治川辺ニ又出火出燃立候間ニ、二の汐柿サキ濱えつ
きかけ、浪よけ土手を越て下田湊え参り候ニ、其浪にて
ニヶ所の出火消、九百軒の人家一時ニ将棊倒しニ相成候、
青海原と相成候、八百石已上の船十三艘程下田町を相越、
岡方村・本郷村の畑中また村中に上り、其時異国せんは
若の浦と申処ニ繫き有之候処、早纜切れて犬走しまの上
の方、鷗島の下の方ニ漂ひ来りしに、早三段にかけし檣
一段と致し、大ゆれになりて流れ来りしか、其二の汐の
引につけて元の辺りえもとりたり
扨、またしはし有て三の汐柿サキへつきかけ候ニ、此汐
ニ而百余軒の柿サキ村一時ニ砕かれ皆流れ、又其辺りニ
繫し大船凡十七、八艘此船皆五百石ゟ七、八百石迄也村中ニ打上り砕かれ
流れたり、其汐下田の方へ廻り来りたれとも、最早一軒
の家も無、青海原のこと故に其汐本郷・中村・岡方村の
辺一面ニさし込て山際迄打かけたり
扨其時、異国船は七分傾に成て又鷗島の方ニ来るや、最
早大半破れ候哉ニ相成候間、親を失ひ子を失ふ人民も、
一時にシタア〳〵〳〵と喜ひ、山の上畑の端に佇て大声
上て悦ひたり、其時此大変にて失ひし面色を改め拳をに
きりてツキタヲセ〳〵〳〵と皆いさミ立申候、其声しは
しはやまさりけり
扨、其二の汐・三の汐にて、子を抱て逃る女や親を負て
山に上るものも皆水底ニ沈ミ、或は樹の梢にかゝり、ま
た流れ行屋根峰に乗てさけふ声、実ニ目も当られるさま
也、然れとも其中ニも異国（船脱）の傾ふきて今にも相砕んとす
る時は、其者ともシタア〳〵と喜ひけり、四の汐・五の
汐・六の汐は最早追々干潟にも成候時節ニ附、追々軽く
相成候、又流し候家も無故ニ大ニ静まり候ニ付、其より
山に逃上り候ものも皆九つ頃ニ下ニ下る也
川路様・松本様等皆本覚寺山の山（上）に陣取、馬印・幕をお
し立候て其中ニこもり給ひ、彼処此処にて流れ候伊丹樽
の鏡をぬきて呑、また井戸は皆埋れ、川の水は一滴も無
様ニ成候、其辺り皆泥海と相成候間、呑水と云もの少し
も無之、私共等のとの渇し候ニは酒を呑、畑ニ出て大根
を引て喰、飲食少しも無、実ニ地獄餓鬼修羅の有様一時
ニ来り候計之次第ニ御座候
又其中ニ諸役人様の旅宿え、其さわきを見かけ候て盗人
ニ入候輩も有之候、実ニ我等ニ而筆状致さるへき事ニ御
座なく候
纔一時半計の間ニ千軒の下田、百五十軒の岡方村、漸々
残る処は坂下町と申て十八軒有之候計ニ御座候、其余山
の際に立候寺は半流れ位ニ相成候、其寺々に御止宿ニ相
成候
伊沢美作守様御宿寺稲田寺半流れニ相成候、床の上泥水
つき申候
古賀様旅宿不残流れ候、荷物皆流れ、鎗も失われ申候
都築様御旅宿寺皆流れ、荷物少しもなし
村垣様御旅宿長楽寺無難、少しのいたミ
応接所福泉寺流れ申候
筒井様御旅宿海禅寺皆流れ
川路様御宿泰平寺皆流れ
松本様御旅宿本覚寺皆流れ
其外魯西亜人休息所皆流れ
小普請所半流れ
黒川様新宅御役所皆流れ
同心屋敷十一軒新宅皆流れ
魯西亜人小休所了仙寺半流れ
其外御勘定衆・御徒目附・御普請役衆は皆町宿ニ御座候
間、着の身のまゝにて逃出され候計の事ニ御座候
尚、青山様用人・筒井様陸尺・日下部様家来其外諸役人
衆家来多く死去有之候
又、日本人三人内女壱人男弐人異国船ニ助られ候も有之候
又、異船ハツテイラ一艘柿サキ濱ニ打上ケ、七、八人乗
居候も余程痛ミ有之候、其外弐艘程打砕ケ申候右五、六
人の夷人は翌五日昼頃迄柿サキ村の畑ニ大根を喰て居申
候、五日漸々送り届ケニ相成候
又、楫は折れて柿サキ濱ニ打上ケ、船底の敷板砕て窓の
浜と申処に打上ケ、当時五、六十人計つゝ日々上陸仕候、
作事致し居申候
又、異船に水入候由ニ而日々水車弐挺つゝニ而かへ居候、
右水車少し油断致し候ハヽ、直ニ弐尺計つゝ深く相成候、
船中必死ニ相成りかへ居候由ニ御座候我々は泥中ゟ俵を
引上、玄米を鍋のわれにて煎て喰居申候、井戸は埋れ、
是をかへ候ても汐入候て少しも呑不申候、渇し候時は酒
を呑候計の事ニ御座候、其夜も三度程地震仕候、左候得
共さしたる事なし
五日、又九つ頃大津浪来り候由、誰云となく風聞致し候、
我々本覚寺山ゟ本郷村へ引移止宿仕候処、夕六つ半頃又
津浪来り申候、下田・岡方村え上り候得共、最早流し候
人家無故にさしてさわき不申候、二の汐も凡十丁計上の
方迄上り申候
六日、今日諸役人様方惣寄合ニ而、村垣与三郎様夕七つ
頃ゟ梨本村迄出立ニ相成候、江戸へ御越ニ相成候
今日ホーチヤチン ホスセツト チリレンケ リソシケ
等上陸仕候、中村為弥・横田新之丞・永持亨次郎等応接
有之候、乗船大破ニ相成候、引取兼候ニ付乗船作事之儀
願出候
七日、ホーチヤチンホスセツトリソツケ長楽寺へ等上陸、中
村・横田・永持応接有之候、今朝ゟ魯西亜人共鼻黒弁天
ニ大炮不残上ケ申候、追々普請ニ相懸り申候
左候ニ付下田湊ニて出来兼候間、兵庫か遠州濱松両所之
内、拝借仕度由願出申候由ニ御座候
八日、又中村・横田・永持等長楽寺へ出、船よりも上陸
仕候、応接有之候、左之通持上り申候
阿部伊勢守様へ
写真鏡道具 一式
ヱレキテル道具同
八畳敷の靼通花毛氈 一枚
猩々緋 一反
紫キヤマンの花生 一対
むしめかね 一箱
時計の置もの台にヲヽルコウル 一個
遠めかね 台仕懸 一箇
白銀の太刀 一振
筒井肥前守様
大鏡高一丈巾四尺一枚
本国焼花生 一対
白銀の太刀 一振
遠めかね 一
紺らしや 一反
川路左衛門様
大鏡如前 一
白銅の茶ひん高さ三尺計稀代のもの一
坤（渾）天儀 一
琉金地球の器 一
黒羅紗 一反
松本様
白銅の茶瓶 川路様同様 一
紺羅紗 一反
伊沢様
紺らしや
ヲヽルコウル
都築様
同
其外古賀・村垣・黒川等えも献上有之候、略ス
又此方ゟ被下候ものは未た遣しニ相成不申候得共、何れ
追々御廻しニ相成候由
銅大板 千枚
同大釘 千本
同ヒヤウ釘 一万本
其外俵物等も沢山御渡しニ相成候由
十日、江戸ゟ御廻ニ相成候被下候品もの
十一日
あひる 百羽 そうめん 五箱
いも十三貫目入十俵 ねき 弐俵
大こん 五百本 にんしん 五百本
玉子 千
其外米穀余程薪水は不申及被下ニ相成候、同日川路様ゟ
猪壱疋重組一荷被下ニ相成候、さま〳〵と夷人の御機嫌
を御取なされ申候、実ニ長大息之至ニ御座候
扨又、今日応接有之候処、船中最早飲食無之最早三日之
貯漸々之事之由ニ御座候、ホーチヤチンも蒸餅を喰て茶
を飲候計之由ニ御座候、実ニ轍底之至之由申出し候由ニ
御座候
扨然るニ、彼等え誰か内通致し候もの有之候哉、近頃又
志州鳥羽湊を拝借仕り度由、又々申出候由、実ニ獅子の
虫の多き世の中ニ御座候
同十一日、異人四人御小人目附山田八郎・普請役荻野才
助・下田同心服部建蔵等同道ニ而、網代ゟ熱海辺を巡見
ニ行れ申候、此網代湊宜敷候ハヽ此処にて作事ニ相成候
由ニ御座候
十二日、柿サキ村玉泉寺ニ而筒井・川路両奉行、御目附
等応接ニ相成候、同日 玉子千 そうめん五箱 鶏百羽
又々被下ニ相成候、如此夷人ニへつらゐ候世の有様故天
地の神祇も悪ミ給ふ事と歎息の外無御座候、先者あら
〳〵申上候、早々謹言
十三日 松浦弘
足代大人
下田湊潰流れ候家 八百十六軒
同 半潰 廿五軒
同 水かふり 十八軒
同 死人 八十四人
岡方村 百十一軒
柿サキ村 七十二軒
本郷村 二十七軒
中村 十弐軒
其外死人、諸家様人数・小普請方日雇のもの・船頭船方
凡五、六十人
大船 凡三十五、六艘
ニ御座候、其余松崎村不残流れ申候、何書しるし度事沢
山御座候得共丸はたか、紙さえも無御座候次第ニ御座候
間、何分例之乱筆御推察奉願候 謹言
御塾中様えよろしく奉願候、御返書奉待候