[未校訂]十三日
けふは正午よりまた烈しく雪降り出し、寒さ烈しく、家
の中に有る者皆氷る。近年に無きさむさなり。終日こた
つに居る。夜(る)風吹出し、地震有〈り〉て少々寒さ
ゆるむ。
※十三日(水)、前の雪未だ消えぬに又雲降り出づ。梨本
宮妃欧洲へ立せ給ひしかど送りにえ往かざりき。赤司
秘書官鷹一郎文士糾合の初度の集会につきて商議に来
ぬ。意見を陳べて大臣に復命せしむ。上田中将有沢新に
近衛に就任して挨拶に来ぬ。夕に上野に青楊会を催す。
上田敏、永井荷風等来ぬ。雪を冒して帰る。夜半地震あ
り。それより寒気少し和ぐ。
明治四十二年三月十三日