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項目 内容
ID J2901690
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1876/02/11
和暦 明治九年二月十一日
綱文 明治九年二月十一日(一八七六)
書名 〔クララの明治日記上〕○東京芝S51・5・20講談社発行
本文
[未校訂] 三階建て〈!〉の料亭に着き、洋風の食堂に入り食卓
についた。やがてウェートレスが小さな茶碗にお茶を、
それから豆菓子とカステラを持って来た。杉田さんは「日
本料理の最初はいつもこうですよ」と言った。その後で、
きれいな漆塗りの椀に入った吸い物と何かの魚と、しょ
う油、そのあとで生の魚と芽しょうがが出た。吸い物に
は、魚ときのこが入っていた。私はいつもきのこがきら
いで避けているのだが、この時はとてもおいしい魚が入
っていたので、吸い物に気を取られて、きのこを食べて
しまってから気がつき、強い味と「きのこっぽい」感じ
が後に残った。次に出たのはおいしい魚のフライと野菜
スープだった。杉田さんは、最初に魚のスープ、次に野
菜スープ、最後に鳥のスープが出るのが日本の習わしだ
と言われた。
 暫く、ご馳走について話し合っていた時、余興として
小さな地震があった。杉田さんは飛び上って私たちに出
るように言われたが、お母様は手を広げ、大丈夫、きっ
と大丈夫ですよ、と安心させるようにおっしゃって、み
んな興奮せずに、じっと坐っているよう身振りで合い図
された。庭の湖を型どった池の水はゴブレットの水と同
様揺れ動いた。杉田さんは明らかにこわがっておられた
が、あとで坐って、こんなことをお話された。「うちの母
はいつも地震というとびくびくするのですよ、何しろ二
十年前に屋根が母と赤ん坊の上に落ちて、家族が掘り出
さなくてはならなかったことがあったものですからね」
と。
 杉田さんは、なぜご自分がそんなに怖がったのかはお
っしゃらなかった。私の手はいつものように冷たくなっ
て、横の椅子の上の日本の小さな火鉢と、よし夫人と私
の間にある火鉢で、特別に暖めなくてはならなかった。
メニューには載っていないこの巧妙な座興が済むと、又
坐って新しいスープと、みんなが鳥だというものをいた
だいた。しかし、どの鳥にもついていたのだが、その爪
は鳥の爪のようには見えなかった。ショッキングなこと
かも知れないが、そのとき私の抱いた疑いを、今こっそ
り白状すると、実はそれは、ねずみの爪ではないかと思
ったのだ!ああ、何ということ!ディナーにねずみなん
て―もしそんなことがあり得たら―ああ、孔子の霊
よ、私たちをお守り下さい!
 さて、ねずみ、いやねずみではない、その黒ずんで筋
っぽくて、かぶらと栗の付け合わせが付いているものを
一口食べてみたら―おいしかったのである!私が料理
を眺めていたら、杉田さんが私をじっと見ておられるの
に気がついた。杉田さんは、「それは鳥ですよ」と言われ
た。「日本の鳥ですか?」「そうです」とお笑いになり、
部屋中に楽しい笑い声が響き渡った。ご飯とお茶でコー
スは終った。
出典 日本の歴史地震史料 拾遺 三
ページ 707
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 東京
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