[未校訂]一当三月十六日十七日之頃信濃川大雨并大地震ニ付、善
光寺東方ニ犀川・筑摩川二ツ之大川有、筑摩川ハ其源甲
州より出て浅間かだけの麓をめぐり流れ下る犀川ハ当
国鳥居峠の辺より出て長沼の辺りにて両川合流して越
後へ流れてハ信濃川と号す、右大地震故か、川の両方
の山一度ニ崩れ川へ落入り、川せかれ水溢れ一円の海
のことくになり、人家田畠埋り人死る事夥しきよし、
又善光寺御門前町家大地震ニて家崩れ込ミ、八方より火
もへ出、坊舎元四十八坊四十六区町家とも不残焼失之
よし、然る所善光寺ハ御門より内御無難ニ相残り候よ
し、先ツ〳〵目出度御事ニ候、右農家町家坊舎ニおゐて
人死何程与云数相知れ不申由風聞有之、右人々咄し之
趣書記し候也