地震史料集テキストデータベース

[未校訂]一肥後国熊本ノ地震、七月廿八日午後十一時四十分ヨリ
震動初リ、翌午前五時迄ニ震動都合五十三回ニ及ヒ、
為ニ倒家三十一戸、死者十五人、裂地十五ケ所有リ、
三十日迄家ニ[寝|ネ]ズ、尚少々ノ震動不止、此外近在相応
ニ災害ヲ受タリ、亦追々通知ニ震動ノ度数ニ多少軽重ア
レトモ九州一円
一熊本地震、毎度ナガラ亦々本月三日午前ノ地震ハ、去ル
廿八日地震ヨリ稍緩弱ニシテ、家屋ヲ倒ス程ニ至ラズ、
地[破|ワレ]又ハ屋壁落タルケ所有位ニテ止リシ、此ハ午前一時
過より微動始リ、二時十分頃[轟|カウ]然トシテ劇烈ナル震動
有リタレバ大騒トナリ、亦々九時頃ニ至リ一回ノ鳴動
アリシカ、他方ニ立退者モ有リシカ、然ルニ本日午後
四時頃金峯山破裂スヘシト言触ス者アリテ、現ニ鎮台
ニテハ已ニ荷物ヲ[梱|カラ]ケテ立退ノ準備ヲ整へ居レリトノ浮
説市中一般ニ流伝シケル程之折柄ナレハ、何カハ猶予ス
ベキ我先ニト家財ヲ取片付テ立退者引モ切ラズ、街路ハ
宛カラ車馬織カ如クニシテ、其混雑ハ[幾|ホトン]ト十年ノ兵乱
ノ時ニ於ルカ如キ有様ニテ、同四時頃ニハ市内ノ人民大
半立退タリト言、
亦第六師団ノ震災、去月廿八日大地震ノ暴行カヽル堅
固ナル城内へ損害ヲ与ヘタルハ（ガ）如シ、
基礎ノ揺動セシモノ百五十五坪、玄関及家（屋）根破損セシ
者十五軒、玄関及家（屋）根半壊シ基礎揺動セシ者二十棟、
煉化石造ニシテ前同断ニ係ル者二棟、[棚|サク]ノ転倒セシ者
百二十二間、土塀ノ傾倒シタル者百三十五間、築石ノ
崩壊セシ者百四坪、土[塁|ルイ]及ヒ[崖|キシ]ノ的阜ノ破損セシ者立
坪百八十五坪以下略ス、
但金峯山ハ熊本ノ西ニ位スル山ニテ破裂ナシ、譬破裂
スルモ熊本市内ニ害ヲ及ホス事ナカルベキ地位ナリ
ト調査セリト、
（中略）
一於熊本地震鳴動、去月廿八日ヨリ八月廿三日ニ至ル惣
計劇震二回、稍強三（震脱カ）十九回、軽震百三十二回、鳴動百
五十四也シト言、尚折々鳴動、微地震ハアレト最早異
変ハ無キ見込ナリト、
一肥後熊本再地震、如前記去月廿八日八月廿三日迄軽重
百数十回ニ及、最早異変無之見込ニナリシガ、亦々去
ル七日午後十一時過一回ノ強震（大震以来ノ第四番ニ
位スル程ノ震動）、[尋|ツイ]テ九日ノ午前四時頃ニモ眠ヲ破ル
程ノ地震アリテ、人心再ビ[洶|キョウ]々タリト言、
一「肥後熊本再地震、去月前記ノ如キハ廿八日より八月
廿三日迄ニ軽重百数十回ニ及、最早異変無之見込ナリ
シガ、亦々九月七日午後十一時過ニ一回ノ強震（大地
震以来ノ第四番ニ位スル程ノ震動）、[尋|ツイ]テ九日ノ四時頃
ニモ眼（眠）ヲ破ル程ノ地震アリテ、人心再ヒ[洶|キョウ]々タリト云」
十月ニ至リ折々震動有リシ