地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（温徳日記＝飯田家々系草稿）
（一八五四）安政元年申（甲）寅歳　十一土月朔日問屋役是迠之通、
年寄兼役被仰付。
注
巳刻＝午前九
時～十一時
注
松下四嘉右ヱ
門ハ今切関所
ノ番士、関所
デノ役名ハ普
請方、代官徒
目付格、当時
四十四歳勤続
十一年六人扶
持
十一月四日　巳刻大地震、津波。御殿向柱
折凡一尺斗地中江震込、勝手向、裏家、
土蔵大破、庇向不残落、物置一ケ所皆潰
ル。近辺潰家ヨリ火出シ候得共、早速鎮
ル。半時不過中、津波来ル由申觸、不
残新福寺山江逃登。忰亀太郎、文治郎北
屋敷松下四嘉右ヱ門殿へ手習ニ行キ居リ、
安否不分下男両人山通（リ）遣シ連
（レ）歸（ル）。家内不残新福寺山ニ而
相揃（ヒ）一ト先安堵ス。津波潮先御関
所ヲ囲ミ、裏門堀割ヨリ入廻リ、才兵衛
（関所役人山
本忠佐記録ヨ
リ）
五日申下刻乾
ノ方トモオボ
シキ辺ニ而空
中鳴動ス、地
震ハ中位ナリ
注がけ
帰り掛＝帰リ
シナニ
方小路ノ辺迠来（ル）。浜名新開、松本
新田、松山新田所悉潮入、濱手或ハ水門
御船小屋ノ辺迠ニ新居之者十四人溺死、
中屋敷ノ蕨山ニ而高ミへ上リ、或ハ松ニ
縋（リ）助命スル者凡拾弐人。新福寺山
畑ニ仮小屋建住居、問屋場茂巳（己カ）ガ小屋先
江仮ニ建（テ）、折節長崎奉行水野筑後
守様御下（リ）、赤坂御油ニ御逗留、当
渡海明（ケ）御待兼ネ、日々之催促、依
之宿役人両三度掛合へ遣ス、己ハ隣宿へ
御状箱、御用物請取兼候儀掛合旁々吉田
江罷越、差掛傳馬人為手当、米五拾俵
拝借仕度段、町郡御役所内願、御聞済ニ
付追而當町御役所ヨリ御廻シニ相成積、
歸リ掛二川ニ而長崎御奉行御先用ニ逢、
渡海路否哉申上候迠ハ御逼留被成候様堅
ク御引合申引取。
十二日　長崎御奉行御手元ヨリ御手附并御
普請役御越シ、御先用茂一同御乗込渡海
路ノ様子御糺ニ付、[遠|とお]海弐艘差出乗試ミ
候処、澪筋漕取兼危候間、弥々本坂通ト
一決被成其旨御手元江被　仰遣、直様御
引戻シニ相成。
注
太兵ヱ＝泉町
江戸屋太兵衛
ノ妻もとハ当
時二十三歳
　地震後小屋住居ノ面々、堀田攝津守様
御家中佐藤清之進殿、上下三人西宿端ニ
而地震ニ逢来ル。
　江戸小梅住、國学家鈴木勝左ヱ門重胤、
門人弐人供壱人都合四人、二川ヨリ当所
へ山道通被参、上ノ原ニ而地震ニ逢来ル。
家内五人、下男二人、下女四人、田町久
蔵老母やす吉田ヨリ来（テ）居リ、針仕
（事）女老人、太兵衛夫婦、総人数廿二
人、疊十二疊敷ノ小屋ニ十六日ノ間住居、
夫ヨリ裏物置之跡へ小屋建、十二月[半|なかば]頃
迠住。
地震ニ付潰家廿軒余、半潰。　大破
地震ニ而怪我有之ハ西町小右ヱ門女房母
ぬい、（深溝村池野與十郎老母）小右ヱ
門土蔵庇ノ下ニ成ル、足ヲ折ル、是壱人
ノ外ナシ。
地震大破ニ付御領主ヨリ御沙汰
金五拾両　十ケ年賦　八郎兵衛　金拾両
御出入ニ付被下。
金四拾弐両　十ケ年賦　弐兵衛
金三拾八両　十ケ年賦　弥五助
地震　潰家。
　泉町　（中野）與七、　半六、（伊
藤）安兵衛、
（高須）又右ヱ門、
（飯田）半七、（飯田）久四、（中野）喜
太郎、（杉浦）八太郎、（高須）伊平。
中町、（笹瀬）清助、（飯田）助八、（横
山）松五郎、
（原田）忠左ヱ門。
高見、（白井）鍋吉、（弐田）次五右ヱ門、
中田町、（白井）久助、（片山）源右ヱ門。
俵町（徳増）久蔵（夏目）甚裏五
船町、（高須）疊や傳七、
片町、（流潰斉藤）彦四郎、（田中）流潰八左ヱ門、
（兼流子）新五郎土蔵、南屋敷、長屋　流
潰。
橋本、教恩寺、潰。
松本、（新田村）平吉　流、
津浪ニ而溺死。
中町、（白井）茂平次、（田中）勘次郎。
中田町、三次郎、（白井）孫八忰、（疋田）
太郎兵衛（疋田）弥次郎。
源太山、（疋田）仁兵衛、（常川）吉川屋
吉右ヱ門、（竹本）裏金三、長吉、青沢小八伊
助
（鈴水）方町久三郎、（徳増）市蔵。
船町、（小池）伝十。
（一八五五）安政二乙卯歳　年来之願ニ付昨冬地震後、渡
海路荒所御見分之上御目論見、當御普請被
仰出、正月廿八日御普請役高津儀一郎様、
蓮見音次郎様御着。
二月四日　御勘定田辺彦十郎様、同出役関
根主水様、御普請役佐藤友次郎様、谷津
孫一郎様御着。
田辺様御宿　隣海院。関根様御宿　本果
寺。
高津様
谷津様
　佐藤様
蓮見様
御宿、新福寺。
六月　日　中泉御代官、林伊太郎様　御清
見。
同　十八日　御公役方御出立、見附御止宿
迠、弐兵衛、九郎次、小右衛門御見送ス。
中泉ニ而御普請金不残請取、禮向取斗帰
ル。
御普請御入用金、八千三拾壱両餘。
今般之御普請格別之御趣意ニ而定凌之者
ニ不拘、宿方ニ限ニ被　仰付、御入用請
拂諸色勘定済之上、金千百五拾両餘全銭。
注
嘉永七年
（一八五四）
十一年四日
（安政元年）
地震災害。
注
戌刻～亥刻＝
午後七時～十
一時。
南屋敷交代長
屋吹例。
八月廿日大風雨、高汐、渡海路御普請所大
破、東浜名新開、松本新田汐入、汐先去
十一月地震之時之通、戌刻ヨリ亥刻過頃
迠、海辺村々ニ而者地震之時ヨリ汐高ニ
而難澁致候向。
八月廿一日　御普請済御禮旁志願有之、太
兵衛弟吉次郎、中町安太郎同道江戸江出
立、秋葉江参詣掛川江出ル。