地震史料集テキストデータベース
[未校訂]以書付申遣候
此度地震ニ付御詮義有之宮本神明筑摩八幡宮保高明神右於神
前国家安全火難災難除御祈禱被仰付候間得其意組下村々并寺
社江も不洩様可申聞候追而此書付可相返也
未三月廿六日 郡所印
清水 上原 山崎 栗林 西沢
右池田同役ゟ三月廿七日昼時参り直様大町へ継組下同日□ル
地震一件書留所々之様子聞書
一三月廿四日夜四ツ時大地震ニ而所々家潰地破れ誠ニ言語難
申尽事ニ候尤大地震四半時程之内家鳴地動き舟ニ乗リ候心
地誠ニ言葉ニは申難事共ニ候其後も少々宛間有之候而大小
之地震止時無し家々ニ而は野辺ニ借り家ヲしつらへ是ニ住
す也
一廿四日四ツ時之地震ニ而家々之潰れ数多しと云へとも大町
村霊松寺不残諸堂潰れ之上火ニ相成隠居并僧弐人馬壱疋焼
死申候下男壱人是にて半死半生然りといへとも焼たゞれ今
にも一命難相知れ也
一右寺御朱印之儀は小僧壱人生残り平日和尚申付置候事故抜
ケ穴ゟ持出候由、其節生残り候者右小僧壱人外ニ旅僧壱人
是ハ右小僧抜穴ゟ連出候様下男壱人外ニ小僧壱人此小僧大
町ニ泊り居候由
一和尚之儀は当時能登へ[臨|リン]番ニ被参留主事也鑑主和尚は伊奈
江参り留主也
右寺焼失といへども何れも大変内様（ママ）之事故参り合せる人も
無之候、追々様（ママ）は当組之人足少々参り候位之事ニ候歎ケ敷
事共ニ候
一我等組之儀は家潰等一切無之壁等落候程之事而已至而軽く
候、此節苗間籾地震ニ而ゆり寄候程之届ケ有之候南辺西山
手組々ハ猶々少く軽き事之様承申候、勿論当組下之内ニ而
も西山手程少候、観勝院抔は位はい堂之位はい壱本転ひ候
程ニ而至而軽く様ニ承り申候仏崎観世音抔古石灯籠転ひ石
仏壱弐本も転ひ候程之事ニ候、清水村庄屋方抔少々土蔵之
壁へ割疵付候程之事之由ニ候
一扨高瀬川東之儀は至而強く大町へ参り候得は野辺石牌抔立
居候ハ少く大町村ニ而も曾根原庄左衛門酒蔵抔潰酒七本打
潰申候、高橋平兵衛酒蔵加田屋潰れ申候尤加田屋計也酒□
わけ壱人打潰され死申候土蔵壁等皆落候也
一宮本村庄屋一志弥惣次始潰之者拾七軒也 其外堀之内ゟ北
高瀬川東端村々家潰之者数軒也、池田町ニ而も日（ママ）さし落或
ハ壁等落候処ハ数多し酒屋〳〵ハ五尺之たがゆるミ酒等こ
ぼれ損失言わん方無し、中ニも押野村ニ而は潰十三軒有之
候由地所割家落入ル中ニも馬首計り出居候ニ付村方之者共
掘出し度いろ〳〵いたし候へ共中よりどろわき出掘事不相
成候よし風聞有之候、右様ニ候得は家潰は不及申怪我人等
有之由風聞有之候
一大町組家潰本潰千軒余也、尤水入共人之死亡六拾人余善光
寺行ニ而死失四拾人余都合百人余牛馬三拾七疋之様子承り
申候、山崩等は数限無之
一松本之様子川南ハ余程川北之儀ハ大きニ軽く一向土蔵壁等
も痛ミ無之、川南ハ土蔵壁等不残落わたや抔ハ土蔵潰申候
所ニ寄不痛所も有之候
一出川町之義は余程いたみ強く松本より痛多分之様ニ存候村
井辺ハ一向無之候由西山手同様ニ軽壁等落不申疵も不附候
由
一廿四日夜四ツ時地震ニ而新町下小市上安庭村分之山虚空蔵
山岩倉村と申山崩犀川筋留り水たゝゑ申候、尤新町之儀は
家不残潰其内ニ火出候得は人も多分焼死申候、四百軒余之
町暫時之内ニ焼失凡人之死失弐百人余何も出候事難出来夜
中之事故致方も無之内ニ水たゝゑ漸生残之ものハ命から
〳〵山江逃登り申候、山中三万石も不残家潰レ地割どろふ
き出し人之死候事夥敷事ニ候
一善光寺之儀は此節開帳ニ而諸国之旅人夥敷、然ニ家不残潰
れ其上火出申候、尤所々ゟ一同ニ火出候事故潰候家ゟ出ル
ニ間ニ不合不残焼死申候、生残り之者共たすけ度思へとも
打続地震殊ニ夜中故恐敷見合之内ニ火出候由尤家々之下ニ
てたすけてと言し事（カ）夥敷哀れなんと言限りなし、たま〳〵
家の下ゟ這出たすか（ママ）り候ものも焼たゞれ或ハまるはだかニ
て漸出候事ニゟ
一稲荷山宿同様ニて人之死亡夥敷事ニ候松本ゟ御内意有之岡
田宿浅間等ニ而も、引笠手拭鼻紙ごさ等之様之もの施行有
之候、町方ニても思ひ〳〵有之候会田宿辺ニても有之候よ
し
一善光寺ハ本堂山門経堂鐘堂ハ残ル大勧進外ニ寺三ケ寺半潰
ニて残ル別而本堂ハ何とも無之一向いたミ無之御こもりの
者ハ不残たすかり申候、庭に有之候屋たい店等迄不残焼申
候ぬれ仏銅仏焼失庭之石灯ろふ銅とふろふ等不残ころぶ本
願寺始町方不残焼ル焼次第之事故廿五日晩迄焼ル
一松代御家中始御城下町不残潰尤御城下町百廿七軒本潰之由
善光寺抔ゟ少々軽く御城無難
一飯山ハ大潰ニて御城ゆり込若殿様御国故御逝去被遊候由、
御家中之死亡夥敷町方も同様之由ニ候、尤地割どろ吹出し
御城も八尺余うまり候よし皆風聞ニも壱番飯山二番善光寺
三番新町と風聞有之候
一青柳辺ゟ南大キニ軽家潰等も無之由ニ候
一松代御領等之家潰いわん方無し上田須坂等ハ一切潰無之由
ニ候
一同廿九日之地震ニて越後高田今町辺余程潰有之由尤高田ニ
て潰三拾八九軒之由承申候
一犀川附うめ廿町余之内岩石ニて厳重ニつきうめ候事故追々
水留り水たゝへ家ハ不残うき上り忽ニ湖水出来其風坪（ママ評カ）いわ
ん方無し、丹波嶋ハ水一切無之川原ニ相成候当御領分江も
追々水たゝへ大町組内野平とち沢舟場池田組宇留賀枝郷等
追々水湛へ、御代官高橋土岐左衛門様御同心御手代不残大
日向村へ出張り日々之住（ママ）進十二日ニは山川寺迄水湛へ申
候、又山川寺も岩山割れひゞ口すさり三尺余も有之由是ニ
て堤候（ママ）得は先年通り此地湖水ニ罷成候様風聞申唱へ上ニお
ゐても御心配いわん方無し日々地震不相止いろ〳〵之取沙
汰ニ候
一松代御領山崩れニて村々つきうめ申候所夥敷よし中ニも虫
浦嶽（ママ）崩候而八ケ村壱人も牛馬共不相知よし噂有之候
一松代為御見舞四月十五日御出立ニて御物頭藤井甚助様御越
被成候、御同□（勢カ）四拾八人尤野陣之御用意ニ而小荷駄掛り御
賄方御両人本道ハ水ニて御通行出来かたくニ付上田通り御
越御道中人馬難出来ニ付倉品ゟ被相頼宿之為掛合と中条村
良助松代迄参候十八日帰村ニ付聞書左ニ記す
一十三日昼八ツ時頃川切レ夜九ツ時松代城土手二尺計り残る
程湛へ町入口迄水いかり十四日昼頃ニは五尺程水落ル
三百十弐石小市 百三十石荒木 四百三十石市村 松岡六十
三石苗田新田 川相 七百七十一石久保寺 七百十一石千田
八百八十二石栗田百八十四石大豆嶋 四百八十六石南長池
土屋坊 長沼 千百十四石赤沼 四百七十六石 山王嶋
〆右は川北
九百七石小松原 七百四十五石四ツ家 五百十七石青木島
弐千三百四十九石
三ケ村也日賀野 千五百八十三石小嶋田 水田町
五百七十石丹波島 六百八十五石牛島 千弐百廿四石川合
千廿一石大塚 九百九十三石綱島 千五百九十八石真島 南原
八百十九石 北原千三百余 是ハ家少々残ル
但し丹波島之義は家少々残ル、是ハ右之上ニて松木立有之
是へ木掛り水割成中島ニ成
弐百八十八石村山 吉野町 七百三十五石小島 牛島新田
弐千九百五十七石綿打 八百五十三石福島 四百八十一石中島
八百五十三石相野島〆右ハ川東
右は山崩ニて川留り候処ゟ下々鉄炮のろしを上候処山押抜
候音ニて相図一向不聞人々永々逃候故立帰り候もの多分ニ
有之、皆押流候よし其外小松原又ハ小市其外留り候所へ多
分人足ニ参り居候もの有之候得は定而逃去候事難出来候よ
し、地震ニ而松代いまた死失御調ハ無之よし候追々風聞ニ
は川抜ニて死人は四千人も有之候由申唱候
一飯山ハ御家中ニて足軽迄残り候もの廿七人外無之其余ハ不
残死亡被申候風聞有之候 此外取々噂ニて聢と不相分候
一板取村庄屋嘉平次実母此度大地震ニ而相果申候依之忌中組
頭庄助へ御用向被仰付被下置候様申出候
一大町村囲穀蔵入ニ振附置候分御沙汰次第早々附入ニ相成候
哉指支有之候哉有無早々御申聞可有之候 以上
高橋隆蔵
三月晦日
追而此間中大地震ニ付苗間損候場所も有之趣届出候村方も
有之不届出候分ハ損し指支等無之哉御急キ得と御詮儀之上
御申聞可有之候 以上
一囲穀附入之儀仕付後迄御延し被下候様尤来月五日六日頃ニ
ハ仕付終り可申候当時は誠ニ一日をも争候時節ニ御座候右
申出候村方西山清水須根松川古厩立足細野上ハ無之候□（草カ）深
冨田板取村新屋村
一善光寺参詣致死失人一切無之候村々
西山村 清水村 古厩村 細野村 下一本木村 平（草カ）深村
冨田新田 板取村 上一本木村 嵩下村 新屋村 松川村
須沼村ニて五左衛門と申者□候哉不相知候由申出候
一善光寺行候者須沼村五左衛門と申もの参居以今如何共不相
分候尤稼ニ参り居候得ハ宿等も一切不相分当時迎人は遣し
置申候、是亦尓今不相分候其外ハ参詣之者ハ有之候得共不
残帰り何れ之村方ニ而も死失人等一切無御座候
一苗之儀は地震ニ而ゆり寄候而交りニ相成候得共村々融通附
候ハゝ不足之義も有之間敷候様村々ゟ申出候
一囲穀大町入之儀は当時被仰付候而は誠ニ難渋仕候段最早あ
□くれ追々苅敷ニも取掛り候而一日を争そひ候日合ニ罷成
候間来月五日頃迄御日延申上度願出候
右之段四月三日同役頼遣候
一須沼村五左衛門一昨五日ニ帰村致し候趣同役相頼遣ス四月
七日ニ申し遣候
一細野村善左衛門と申者極難ものニ付如何共致方無之候ニ付
役人ゟ申出依之明後十日ニ役人より召連可罷出候趣申達ル
尤我等宅江可罷出候様達ニ及
一地震ニ付苗籾ゆり寄生立不宜不足村々可有之候、仍之当年
ハ別而養方念入候而余り苗不足村々江融通可致決而麁略ニ
致間敷御領内融通相届候上ニ而余分有之候へハ御預り所江
も御他領江も御融通ニ相成候尤御預所ニ余分有之候へハ御
領分へ融通有之候
右之通ニ候間養ひ方念入可申旨精々郷御目付ニ而御達ニ候
御承知可被成候右御通達申上度早々如斯ニ御座候 以上
等々力伝右衛門
四月十四日
清水 西沢 栗林
四月十五日参り直ニ大町へ罷（ママ）候
一此度地震火難水難ニ而飯山領善光寺辺松代領等夫喰家居も
無之者追々御領分江罷越候様右罷越候ハゝ懇ニ取扱ひ可申
候、其内逗留いたし度申候ハゝ篤と詮義之上身元慥成者候
ハゝ差置其旨可相願候追而受合証文取之可差出旨御達し一
御座候
一当年之儀は兼々上御案事被成（ママ）被下候通り春已来兎角不順之
気候も有之別而此度大地震ニ付猶此上之所も御心配被下置
候依之今日申談に候ハ御領分惣代として御一統之内ニ而伊
勢鹿嶋江参詣いたし御武運長久国家安全五穀成就御祈禱致
し御札献上も仕度村々江差遣度旨御窺申上候処寄特之至り
尤之由被仰聞近日出立可仕旨御達しニ御座候、依之壱ケ所
江両人ツゝ鬮取ニ仕候処左之通御引向ニ御座候間御承知可
被下候
伊勢江 折井伴右衛門
等々力伝右衛門
鹿嶋江 藤井佐左衛門
山崎参十郎