地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（前略）
此一帳松代用部屋日記書抜之由内々洩候事
（
注、（ ）は真田宝物館所蔵「御在所御用部や日記書抜」
による
）
○弘化四丁未年三月廿四日
一今夜大地震ニ付一席登城御機嫌相伺候
一殿様表御居間御庭江御立退
一夜中大地震相止兼桜之御馬場へ御用部屋相立候
一町方以之外潰家多死失夥敷、御救方之儀三奉行御勘定吟
味道橋奉行御目付等江申渡之
一御供番御番頭御番士非常御供番之者同断相詰居ニ付御番
頭御番士一両人相残其他御家中手分ニ而相廻り潰れ家怪
我人等之儀承糺且火之用心之儀心付候様可致候旨申渡候
一御城内所々破損有之
一右ニ付即尅江戸迄両人飛脚差出候、殿様御機嫌御障不被
成御座候哉相伺候旨申遣候
一善光寺大火御人数も可被指出候処一統之大地震故御人数
寄兼、其上御救方ニ追々罷出候儀ニ付、先公事方手附同
心途中村々人足相集取越火防為致候様申渡候
一追々為糺候処即死人等数多有之、潰家等早速難相知候旨
諸役人申聞候、委細被仰上候所ニ記之
一非常之大地震ニ付早速取懸致祈禱候様開善寺江御手紙申
渡候
一無役席御城代両御番頭御奏者表立候面々大役人御用部屋
江罷出御機嫌相伺候
一御玄関庇落通用難相成ニ付、御広間向之者惣而中之口通
用為致度旨御目付へ申渡
一明日御救之焚出し千人前程御用意致候様御役人江申渡之
一今夜御城江相詰候御役人并供向迄且外役所向之者江御賄
被下之
一村々大荒且出火も夥敷ニ付御勘定之者致手分村々江指出
候様郡奉行江申渡之
一吉光御長持桜之御馬場江御番士共厳重ニ附添罷在候旨御
番頭申聞候
○三月廿五日
一善光寺大火ニ付御見舞御吏者上人大勧進江被遣候山城右
馬允江申渡、奥村権之丞罷出候処市村留舟ニ付引取候旨
申聞候
一山中辺所々山抜覆有之水内橋辺ニて堰留候哉之旨追々注
進有之候旨郡奉行道橋奉行ゟ申聞候
一屋敷破損所改道筋相勤候様山本権平召呼申渡之
一同断心得候様御番頭鈴木内蔵殿江申渡ス
一大地震為御祈舞靏山御両宮江御代参御中老赤沢助之進
一昨夜ヨリ之地震ニ而町家数軒相潰候間暫之内御用人足伝
馬とも継立矢代・川田両宿ニ而附通候様可申渡旨道橋奉
行江申渡之
一昨夜ゟ之地震ニ而町家数軒立潰ニ相成候付、大井寺地中
穀屋丈右衛門白米拾俵致焚出度旨申立承済候段町奉行へ
申聞候
一善光寺両寺江御使者尚又申渡候、御使役奥村権之丞相勤
候段申聞候
一同断ニ付定火消役前嶋源蔵村人足召連善光寺江罷越致火
防候様申渡候
一堀長門守様ゟ御使者斉藤真五助ヲ以今般御城下大地震之
趣被成御承知御安全御立退被成候哉委細被成御承知度趣
を以更御肴一折食籠一荷竪（曁カ）御目録被進候御取次横田甚五
左衛門中町検断前迄出張御品受取指出候処御返答被仰出
候
一指立家督之者江御曲輪内臨時相廻り候様申渡候
○三月廿六日
一一昨夜中ゟ地震相止兼候ニ付今日も桜之馬場へ御用部屋
相立申候
一今日御城江相詰候御役人并外御役所向之者へ終日御賄被
下置候
一善光寺今以火気相見且潰家怪我人等取片付候儀も可有
間、村人足并手附共差出候様郡奉行道橋奉行申渡之
一同断為御救飯米弐百俵相送候様郡奉行江申渡之
道橋奉行助 御預所郡奉行
相勤候様 藤井喜内
岩倉山抜覆之場所
見定積罷越候様
御使役
御城詰
山城
（ママ、越カ）
嘉膳
上村瀬兵衛
小松原荒所并
御普請所見分
罷越候様
道橋奉行
宮崎守人
右召呼申渡之
一三水村辺高水ニ相成鐙坂江抜可申哉致鳴動候旨風聞有之
候ニ付、石川村辺迄罷越様子承糺罷帰候様藤井喜内へ申
渡之
一即尅之御供揃詰合御供ニ而御曲輪内可被遊御覧旨被仰出
心得御目付江申渡候
一昼九時三分御帰之段御側御納戸申聞候
一一昨廿四日夜大地震ニ付山里村々変死人并怪我人夥敷訴
出先々見分為仕候ニハ御人少ニ而は早速之儀不行届延日
ニ罷成候而は死人手当方ニ甚差支難渋之趣相聞、斯大変
ニ而一統不慮之及変死候儀紛も無之不便至極之儀ニ付、
此度ニ限別義を以雛形之通於村方書面相綴一同調印之上
取置之義早々取計候様触示シ、寺院江も不審無之分不及
伺ニ取置其段書面を以相届候様為仕度旨寺社奉行郡奉行
如伺以附札申渡之
一大地震ニ而犀川辺山々所々抜崩殊ニ山平林村地内大抜ニ
而水湛ニ相成其内ニ流つき川中嶋江押出候ハゝ何れへ押
出し可申も難計候迚村家前ニ諸道具取片付老若男女不残
南山手へ引移り候様子、跡居宅火盗之程気遣ケ敷儀ニ付
為廻村同心共差出度候処、諸御用ニ而行届兼候間増手附助
五人受取申含廻村為仕可申旨公事方郡奉行相伺候ニ付、伺
之通申渡之
（一右之趣申渡旨御普請奉行江申渡之）
一御玄関向地震ニ而損分御普請出来迄月次御礼不被為請候
間不及登城候御家中江演説御目付江申渡之
○三月廿七日
一今朝未明江府江両人飛脚差出候
一今日も地震相止兼ニ付桜之御馬場へ御用部屋相立申候
一今日御城江相詰候御役人并供向且外役所向之者へ終日御
賄被下之
白米三拾俵
椎茸五斤
干瓢五十把
善光寺
大仏頂院
色昆布御目録
右は今般大地震ニ而次
（ママ）
坊震潰し其上善光寺町及大火候ニ
付為御見舞被遣候、御吏者御使役長井主計江申渡表御用
人取計候
一本多豊後守様御城下町大地震ニ而人家押倒及大火候趣ニ
付、為御見舞御家老中迄飛脚差出候
一大地震ニ而山平林村之岩倉山抜落犀川堰留水一滴も不参
候ニ付、押払候節一時ニ大水可押来左候得は川中嶋一統
之大難と可相成ニ依而右備普請急務ニ付頼母御役人召連
小市村江罷越
一右危難を怖れ川中嶋之村々山手江逃登候者夥敷有之趣ニ
付、居残候者一同召連川辺江山寺源太夫岩下革罷出ル
一延齢丹四曲 梅肉四曲 犀川出役之向江差遣候様被 仰
出候ニ付、御勘定吟味ゟ指遣候様申渡之
一頼母小市村御普請所江罷越ニ付、為御尋今昼八半時過御
側御用人岩崎勝介罷越、夜四時過罷帰相勤候段申聞候
一町方盗賊等有之ニ付夜中出張可罷在哉之旨町奉行伺之通
申渡之
一御奏者江御曲輪昼夜一時壱人被致火之廻候様申渡之
一大地震ニ付臨時御祈禱今日開日之
（ママ）
旨開善寺仮御広間江罷
出申置候段御取次申聞候
一長国寺大鋒寺江御霊屋為御見廻御中老玉川左門罷越
○三月廿八日
一今日も地震相止兼ニ付桜之御馬場へ御用部屋相立申候
一右同断御城江相詰候面々外役所向并供向迄終日御賄被下
之
一右同断ニ付六日月並御礼無之
一右ニ付一席御側御納戸を以御機嫌相伺候
一頼母儀昨夜小松原村御普請所ニ止宿、甚御気遣ニ被思召
御尋として御取次横田甚五左衛門へ申渡差遣之
一右同断ニ付御手許ゟ人参五両分御側御納戸片岡十郎兵衛
を以被差遣候
一右人参之御用意御吟味役江申渡之
一御廻勤之者暫之内月番江御受申置候計ニ而不及廻勤候旨
寄々演説之程御目付へ申渡之
一岩倉山抜覆之場所様子如何相成候哉見積罷越候様御城詰
上村瀬兵衛御目付斉藤友衛江申渡ス
一此程江戸表之様子為穿鑿軽井沢辺迄差出候足軽両人今朝
罷帰廿五日江戸出立之者待受相尋罷帰候故遅着之旨、且
江府地震至而軽候破損等有之程之儀は無之旨申聞候
一昨夜水押出候旨ニ而騒立早鐘撞川中嶋一統并御城下迄為
致動揺、御根元は東福寺村元吉と申者御普請所江人足ニ
出居申出候事之由、公事ニ而召捕吟味可致所場所無之候
ニ付桜之馬場江仮番所取立御目付立合致吟味度旨公事方
郡奉行山寺源太夫申立候ニ付承済
一善光寺大仏頂院今般地震其上出火ニ付斉米御助成且又以
御使者早々拝領物仕難有旨
一右同寺不慮之大変ニ付伺御機嫌旨
一右同寺寺領三四ケ所ゟ出火山内山外共類焼本堂本場を
（ママ）
相
残り御朱印并本仏前立本尊御立退ニ相成旨届出、右何レ
も以使僧申聞候段郡奉行山寺源太夫申聞
一上田御家老中ゟ大地震ニ付御城内御別条無之哉承知伊賀
守様江申上度旨飛札到来ニ付、飛脚之者於町宿賄申付返
報遣候
一頼母犀川塞留ニ付水除為見分可相越今夜九半時被罷帰
一右同断人足召連罷越候御役人引取候旨申聞候
一御目付両人御徒士両人犀川水上致見分罷帰塞留候様子申
聞候
○三月廿九日
一今日も地震相止兼ニ付桜之馬場へ御用部屋相立申候
一右ニ付御城江相詰候面々外役所向并供向迄御賄被下候
一右同断ニ而一席以御側御納戸御機嫌相伺候
一右同断ニ付御家中諸士御機嫌相伺候
御役場方御番士
西村左脇
暫之内定火消 出浦総右衛門
役助相勤候様 原半七郎
申渡之 藤岡伊織
大瀬義八郎
菅越
（鉞カ）
太郎
八田競
富永治左衛門
里見勘左衛門
緑川茂馬
右召呼申渡之
右之趣得其旨候様御役場御番頭江以手紙申渡候
御番士
白川瀬太夫
同断
金井藤三郎
右之趣得其旨候様御番頭世話番江手紙を以申渡之
一右之趣心得定火消役へ申渡之
一諸向可成丈代り合御賄頂戴不相成候様心懸可申旨申通候
様御勘定吟味申渡候
地震相止候様臨時御祈禱被仰付候、御城下并近在之僧
院社家修験之面々奉備神仏可致祈念旨可被相触候
寺社奉行
右山寺源太夫召呼申渡之
真田信濃守再度届（注、A-
10
と同文につき省略）
貴簡被下拝見弥御揃御清栄御勤履之御儀奉賀候、然は今度地
震之儀ニ付而之御案事御尋向被仰下厚感謝奉存候、誠未曾有
之事ニ而城中破損ゟ城下町百余軒潰死失も廿人余家来にハ仕
合ト死亡怪我も無之候と出火無之候とハ誠ニ災中之幸ニ御座
候、領分ハ水災火災潰家無之村は僅に存し死亡も追々訴出候
分今日迄ニ而二千九百人余猶可有之、善光寺も支配所の処開
帳ニ而遠境ゟ之参詣日々幾千人ト申事、地震も城下ゟハ強ク
其上出火死亡之儀いまた土地のものゝ数さへ届無之候、参詣
之もの之儀ハ如何程ニ可在之焼払候三日ケ間火之元申付候僅
の丁家ニ而候得共建屋も皆相応風も無之焼次第故とミえ白骨
丘をなし是又無是非次第、右手宛も小子方ゟ米穀等之義せ話
仕候、犀川之大流水山崩出干揚候処右ニ付上流湛領分村々数
十ケ村水底ニ沈ミ其上山崩の場も押切候、噂ハ如何程ニ可有
之哉と土手等之普請も所々不構入用を不惜近日申付家老迄も
出張世話申付候処、出
（ママ、土）
尻川と申小川も同様水湛へ近日押切候
ニ而其普請之場又痛ミ損し猶又厳重ニ漸々普請申付候処開流
いたし、川中嶋自他領数十ケ村一円之押水城下迄も水参、夜
九ツ時ニ城の方ハ水引キ申候得とも飯山須坂等下流の分は別
而領分同様大損毛永荒の地所多く出来可申、地震ゟ水災種々
の儀ニ而如何損毛ニ可有之哉今度も流死人等可在之誠ニ当惑
仕候、乍去無事日々夜々心配周旋罷在誠ニ軽くハ相成候得共
地震もいまた止ミ不申候いつれ参勤も遅延罷成可申御察可被
下候、尊大人御初可然様希上申候余は近々可申上候 以上
四月十四日認 真田信濃守
武田左京大夫様 四月十七日到着
△信州千曲川通塩崎村国役普請見分并仕立御用大地震ニ
付及見分候趣荒増申上候書付 御普請役
西村覚内
（
注、この文書は「史料」第三巻四七七頁上左三行以下と
同文につき省略
）
榊原式部大輔家来武藤門蔵よりの届
（
注、「史料」第三巻五〇七頁上左十行以下と同文。但、
日付は四月二日。省略
）
○川上金吾助ゟ同人忰川上猪太郎江差越候書状之内抜書
一中之条は土蔵之ひさし酒蔵抔之壁多落申候、陣屋之練塀大
半崩落申候怪我人無之今日迄弐夜二日食事も不致居候百性（ママ）
も有之由、是は家の中ニて火を燈候事を嫌ひ候故しんほう
致し候由ニ而自分抔も食事は給候得共三度之処弐度も甘
（うまカ）
く
食不申候
一上田領稲荷山村
是は上方ゟ善光寺
江之往還ニ候
此村ニ而善光寺参之ヂゝイ
バゝア五百人泊り居一時ニ押ニ打レ死候上出火ニ成焼申
候、土地之者も三百人程と申事ニ而そら地震と申と直ニ家
を潰し候ゆへ逃出候間合も無之壁を破り又は家根を潜り出
候者も有之候得共、多くハ旅人共止候弁理ニ二階家ニ致し
立候ゆへ二階か落死人多有之由
一松代領八幡村篠井村ニ而も旅人夥敷死申候其外善光寺ハ誠
ニ大変ニ而旅人三千人余も泊り居候処町家将棋たをしニ相
成怪我人死人有之其上大火ニ相成本堂と山門計残り後ハ焼
ケ申候、陣屋門前之者も参詣ニ而泊合候処地震と申と直ニ
起上り候処弐足あるき候と二階落候間壱人少々の透間を潜
出裸ニ而帰申候、同様之者ニ追々逢ひ承候処一軒ニ三百人
又は五百人位ツゝも泊り有之群集いたし候処、右之訳故怪
我人焼死候者は員数知れ不申候由
一地震と申は出火何ケ所と申数不知北之方ハ赤く相見申候、
越国の方も地震同様
（ママ）
○地震ニ而出火と申候而ハ少しも
火を消候事出来不申只々銘々身を大事ニ致候迄ニ候間焼次
第ニ而一村潰と同様ニ候○自分支配所之内ニも三ケ村は届
有之毎村々惣潰ニ而一軒も家は無之由、怪我人百人余も可
有之未見極付不申由相届申候、是は善光寺之先之村ニ而候
其外日々同様之届有之恐敷事ニ而実ニ眼前ニ地獄を見候様
ニ有之候
一自分事十九日ニ中之条を出立御預出張陣屋江参り廿四日ニ
帰陣いたし申候、同日夜草臥候間四時前臥候処俄ニ大地震
之様子ニ而行焼（ママ燈カ）ゆり消し候間直様戸を蹴放し候内御母は小
児を抱庭へ出申候、潤三郎和吉を出し可申と存候処両度迄
ころひ申下女壱人ニ而潤三郎和吉とも一所ニ出可申ところ
け出し居を介抱いたし漸々三人とも出申候、跡之下女両人
は茶之間ニ明り消候而無（ママ）中ニなり最早死候事と泣居申外ゟ
大声ニ而早〳〵出よ〳〵と申候而も出不申泣声聞へ候間自
分飛込候得共真暗ニ而声計ニ而相分り不申漸々壱人之手を
取り外へなけ出し又壱人も同様ニいたし漸々安心いたし候
処、又々内ニ而声のいたし候間誰々と呼候ニ潤三郎儀ハ初
に出し候をねほけ候而せつかんニ逢候と存し又々内江飛込
漸々無（ママ）中ニ而出し庭中ニ戸板を敷皆々を置漸々大小を取ニ
内江入申候、其夜ハ八十度余も大きく震申候余程強き由ニ
候得共右之騒ニ而一向存不申、跡ニて承り候得共勝蔵抔は
表ニ而早々外江出見候処屋根之棟ゆら〳〵と大浪の打候様
ニ有之由危き事ニ而御座候、少々ッゝ地も破れ申候存外ニ
家は潰無之候土蔵之壁は多分落申候、しかし中条は一番軽
く相聞申候、今日迄二日二夜庭中ニ仮家致し居申先々ゆり
程遠ニ相成候間両三日も立候ハゝ止ミ可申候案事申間敷
候、一日に軽く成候ても大七八度小五・七十度震申候、猶
追々咄しを承り可申入候、善光寺之咄は余程之大変前代未
聞之由ニ御座候、かわいや百人又は五十人連之ばゝア悉く
押倒候上焼死いたしいやなる時節ニ逢候様ニ候得共又後学
ニ成候事共多く候、古昔は釣り行燈多有之由地震ニこり候
時節と見へ申候
御叔父様江も釣行燈御すゝめ可有之候いつ地震ニ逢候も難
計迚も大地震ニ而は早々外江出候ゟ外無之候得共弐尺三尺
ツゝ地か割候由ニ付
今度も善光寺之大地震は三尺程も割候所数ケ所有之又は一段高く一段低く戸
を早くなけ出し候由、火事とは大相違防方無之明り消暗く
成り候故怪我人多相成申候
日光本坊ニ有之廊下行燈
此形と存候
鉄ニ而
一越後新潟迄は六拾（ママ）里、中之条ゟ有之候得共北ニ当り候聞如
何と被存候、頻ニ北ニ震動有之震動山江響き候而直ニゆり
申候、江戸の地震とは大ニ相違いたし申候、去年冬の暖な
るか地震之兆と申事越後ニ而は申候由兼而及承り申候
一犀川と申大河丹波嶋ニ有之候、其川水止り申候、水上ニ而
山崩れ川をさゝへ申候、最早其水上は湖水之如く相成申候
由、今ニ川下村々も水ニ流され可申と食事を持山江上り候
由、支配所も其川筋下ニ有之心配致申候
真田信濃守ゟ嫡子江書状三月晦日到来
真田信濃守ゟ嫡子江書状（注、B-11と同じ。省略）
上田表ゟ相廻り候書付追々聞見之評判申上候、善光寺辺ゟ地震之壱番つよき所之よ
しごんど（ママ）町其外町家皆ゆり潰し其上出火にて死人怪我人多其
土地之人は生たものハ弐分死人八分と申さりなから四分六分
のよし、其外善光寺参りの同（ママ、道）者旅人は幾百人といふ数を知ら
す廿五・六日より未に御城下町々生残りの旅人よたつき参り
候、ある日老母壱人参り候処もゝ引きやはんもなくひとへも
の壱枚ニてもとハ拾五人つれニて大坂の者のよし、連之者ハ
死んだか生たかしらすたゝ壱人漸々生のこり国へもかへられ
すとてなきわめくよし、土橋町人寄合金壱両程こしらい出立
させ候由、其外生のこりの同しや日々六・七人ッゝ拾人の連
か四人に成たのと或ハ寝まきのまゝ帯も〆ぬなそとあわれ成
事ニ御座候、乍去ありかたき事にハその夜御堂へおこもりを
いたし人数ハ壱人も怪我無之御堂も損し不申大門之柱は半ゟ
おれ候由、石どふろうハ皆たおれ候へ共大門内におり候へは
少しも怪我無之誠に利益眼前ニ御座候、夫に引つゝきてハ飯
山御城下町家御家中御城共不残ゆりつふし出火にて怪我人其
数を不知、夫ゟハ松代領分地震にてゆり潰候処弐十弐ケ村、
又水内川筋地震にて両側の松の木山とか申をゆりくすし美の
ち川へつき出し候故御領分丹波嶋ハ水かわき皆歩行にて渡り
申由、然候処御領分川中嶋四ケ村不残ゆり潰し其上右之丹波
嶋川上若ゆり出シ山抜候へは川中嶋皆おし流すとて松代領分
の新町へ水あふれ候よし、外は両方山にて日々三分ツゝ水か
さ増り山へ登り見候へは水海之よふに存候よし、右ニ付おし
候山は今九尺ニて水越し河中嶋江あふれ候とて百姓も難儀之
由さりなから右之九尺を越へさるうちに外の山をつき抜き可
申哉松代領ニてハ家老恩田を初メ自身乗廻し差図をいたし昼
夜百姓救の手当大さわき申候、又松代領分江此事（ママ）百姓逃登り
居候処松代役人共参り右つき出し山を掘切可申候様若又掘切
不申におゐてハ切捨に致す迚おとしせめ候よし、乍去百姓共
そこを掘切候へ共自分村家共押流し候は必定事故誠に難儀の
よし、松代にても右之処掘切不申候てハ殊ニ寄松代領皆水海
に成事歟入替り立替りせめのゝしるに戸部村名主壱人去月廿
九日朝早かこニ而追手へ乗付そこニて気繩（ママ）いたし送（医カ）者をよひ
薬をあたへよふ〳〵心付夫より右之事故委敷右之趣申立候事
故夕方ゟ郡奉行三村伝左衛門山林方山廻り御医師弐人御先手
拾人即刻川中嶋江参りたとへ千人弐千人とても参り次第召連
参候様御沙汰ニて右戸部村百姓案内にて被参不残此地江御引
取に相成候よし、夫ニ付秋和村へ御救小屋相掛り夫々百姓男
女共入置候由、御領分稲荷山茂不残ゆり潰し出□
（ムシ）
にて廿五
日ゟ御出役御座候、其仁之御咄シには只壱軒残り跡は皆焼失
いたし出役致し候而も寝所もなく焼場にも死人之臭気にて食
事抔も不進難儀のよし、只御無難ハ松本・小諸・須坂と申候小
諸・須坂ハ平生之地震位のよし、塩崎康楽寺ニてハ廿四日夜
御法礼にて百人余りも参り居候処一度にゆりくつし壱人もの
こらすおし潰され申候よし、八幡も皆焼失其中ニ而八まん様
ハ御無難のよし房山金子娘下女下男丸山忠右衛門の母抔は行
方不知先日仮弔出し申候、御家中ニ而以下ニて老母よめ善光
寺参りニ行候処其夜老母ハはりにて押潰されよめハあやうき
所供に行候男引出し助ケ申候、是は助けぬ所か死骸は尋出し
申候先日弔ひ出し申候、夫故初手之内は御家中ニても三四軒
小屋掛抔致置候処此節ハ町御屋敷共門並ニ皆庭或ハ畑抔へ小
屋詰掛男女子供老人抔は夜分夫江引こもり居申候、いかなる
天変に候や廿四日ゟ朔日迄ニ五十余度も地震いたし候、尤最
初の程大ゆれは無之候得共一時弐時ツゝ之内少々ゆり誠ニ安
き心地もなく此国の人ハ別而おじけ青菜に塩にて日々地震之
咄しのミ御座候、余り珍ら敷事ゆへ聞儘見儘書しるし差上
候、右之通見聞之事申越候へ共聊心用ひ不相成候、此書付見
る人其心得ニ而御推覧可被下候 以上
一筆申上候然は三月廿四日夜四時大地震ニ而善光寺九分通り
不残潰て焼払残所下後町ゟ下方焼不申候桜小路西之端十間計
残申候、御本堂山門残り其外不残蔵迄焼申候、其外松代様御
城迄地震ニ而潰申候様相聞申候、須坂同稲荷山同其外しの（ママ）根
追分潰者（ママ）近辺潰候所も有之候、丹波島之上水内郡の上方大山
崩れ落水一向ニ参り不申候故今日星・小森両家無難ニ御座候
得共此辺不残家を明けて人々不残山居住居仕候間今日水内の
水留等水押出し可申と心得而川中島迄不残山方へ住居いたし
今夕水きれ不申候故水内郡ゟ上方は五里の余も大水ニ御座候
而此辺ハ不残山方江上り住居を致し居申候、右ニ付人死六万
人之由申候様承り申何れニいたし大変之事ニ御座候、下拙親
類方は一向に怪我ハ無御座候、此段一寸御知らせ申上候、私
儀三月廿七日立ニ而善光寺参り申候而一ト晩泊りニ而早々逃
て参り申候、何卒御親類之御方江御咄し可被下様奉願上候、
何れも尊家様御出向之程奉願上候 以上
四月七日 山屋平助
江戸京橋松村丁
家主勘左衛門様
大久保喜十郎様
余人〻御中