地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（書状津浪にょる廻船の状況）
嘉永七寅年十一月五日当来
一筆啓上仕候、追々寒冷相募候処先以其御地御家内様御揃益
御勇健ニ可被遊御座珍重之御儀ニ奉賀上候
然は、小子共無事ニ罷在候間御案心思召被遊可申候、扨去ル
四日巳ノ刻ニ大地震ニ而誠ニ驚入申候、尼ケ崎大損じ、当地
川面辺所々凡五拾軒斗崩家、其外痛所多分、其後昼夜度々ゆ
り通、又候翌五日申ノ刻大地震ニ而、沖合雷の如く鳴出不思
儀ニ存居候処、酉ノ刻頃ゟ大津浪ニ而諸廻船浮囲り不及 〓
候、難波嶋登セ船拾艘斗引出し、一時ニ道頓堀・堀江・長堀・
立売堀・大川筋・江のか嶋辺迄其儘ニ九丁斗押流れ、八重十
重ニ相重り候へ共、浅瀬へ押上ケ候故人力ニ而は大川筋へ相
廻し可申事能はす、何分右地震ニ而老人・子供・家女共茶船
又ハ上荷船へ乗移り居候処、右津浪ニ而一時ニ押流れ、直様
破船ニ而死人数不知、□□□右骸詮義川浚最中追々取上ケ、
誠ニ目も不被当有様ニ御座候、右大変大混雑之事故御上様御
裁許可有之哉ニ奉存候、右仕合大小船堀々江押込、川岸之住
家多分破損申候、道頓堀ハ西横堀迄大川筋ハ亀井橋迄橋々押
落し、日吉橋・後（汐）見橋・幸橋・住吉橋・唐金橋・水分橋・黒
金橋・瓶橋・高橋・亀井橋・安倍川橋不残押落し、船数何百
艘共数不知共難船・破船又ハ難波嶋ゟ寺嶋まで登せ船不残み
よし押落し、怪我無之船ハ壱艘ニ而も無御座候、皆〳〵多少
損じ、誠ニ前代見聞（ママ）之事ニ而、何とも筆紙ニ尽かたく御事ニ
御座候、右ニ付此後に火ノ用心専一ニ相心得、静ニ為有度頼
申御事ニ御座候、御地ハ如何之事ニ御座候哉、格別之事も無
御座候事と御案事奉申上候、右大変ニ付態飛脚ヲ以御案内奉
申上候間、否哉御案否之程被仰聞奉拝上候、先は取急キ荒増
奉申上度如此御座候、早々 以上
嘉永七寅年十一月七日 野田屋伝兵衛
伊藤助右衛門様
小林与右衛門様
佐藤権右衛門様
参人御中
尚々御一統衆中様へ
よろしく御披露被下度御頼奉申上候 以上
（書状 摂津大地震に関するもの）
嘉永七寅年十一月十五日当来
態飛脚便り
一筆啓上仕候、向寒之節、先以御家内様御揃、益御壮健ニ可
被遊御座珎重之御儀奉賀上候、然は当月六日暮早々ニ大津波
而、木津川口ゟ前だれ島・寺嶋迄浮船ハ不残、なんは嶋登セ
囲ひ船数艘皆々道頓堀西口渡し場両所へ突被登、前代不見聞
之変事ニ而恐怖仕居候処、御手船仁左衛門様御船玉御流船之
由、誠ニ以奉驚入候、併御船主居所も相分り格別之御怪俄も
無之趣ニ候得共誠ニ御気毒千万ニ奉存候、委細は別紙並ニ仁
左衛門様ゟ之御状ニ而御知り被遊可申候、先ハ右御見舞旁申
上度如此御座候 恐惶謹言
十一月七日
越後屋
常右衛門
伊藤助右衛門様
（書状 摂津大地震に関するもの）
嘉永七寅年十一月
尚々米之儀当月入候へは、人気も立直り可申義奉存候所、矢
張不人気、去ル二日♠三宝丸分内蔵米七十七ゟ外升三斗八升
八合両替六八匁誠ニ残念之義御坐候得共、御売払ニ相成申
候、其後取様無之処右地震ニ而猶々陰気望人無之、殊更堂嶋
も休日故誠に当島にも何分右騒キ故如何相成可申哉、此分ニ
而は当時売物ニ可相成哉ニ奉存候、重々不事出来、実ニ十分
之三相戻申候、何分ニも此上は御差図被仰聞合此段御頼奉申
上候、且又風間三郎右衛門殿揚置米之義は御一統様御執成被
下候ニ付、右直段ニ売払申上候処、米痛あしく候ニ付段々取
引右直段ゟ壱匁引、跡は当外刎なしニ而相渡申候、無印三斗
八升八合五夕金取内九斗八升引、同弐百六十匁四升三斗九升
三合同々取、内四斗五升慥引、右之趣風間氏へ宜敷御通達被
下度御願奉申上候、一、片□第四郎殿分も売払度ト相談仕居
候処、右地震ニて仲買も引退き、其後立会可申無様（ママ）其儘ニ相
成居申候何れ入庭候へは早々取斗仕度奉存候間、何分ニも御
地ゟ御様子被仰付度御願（カ）奉申上候、余ハ□便ゟ万々御案内奉
申上候、先ハ其段奉申上書 早々 以上
十一月七日
仁左衛門
万左衛門
伊藤助右衛門様
助三郎様
（書状 摂津大地震に関するもの）
嘉永七寅年十一月十五日当来
追啓奉申上候、下拙共当事ニ入候得は、多少商内ニも相成可
申哉と堺表罷在候処、地震ニ而去ル五日ニ帰坂致候所、本文
之通其夜大変出来、何と致方無之、翌六日少し相慎り候ニ付
早速□□仕候処、伊栄丸船玉之義ハ道頓堀大黒橋迄流込、漸
々押留り申候、痛義ハ取梶三ノ間びん掛り雨おさへ共友垣雨
おさへ垣の子三本斗痛候様相見へ申候、其外一切別条無之御
案心可申候、乍併浅瀬へ押上ケ候故樽浮セニ而も人力ニ而も
大川筋へ相廻し申度ト相心得奉存候へ共、何分ニも死人御□
□最中故中々船玉急速仕末取掛りニ相成不申哉ニ存居候、然
而は御方便ならてハ船玉相廻し方出来がたく儀ニ奉存候、扨
又伊宝丸之義ハ登セ船別而繩取かけ候故八間斗上へ流れ押留
り、痛所一切無之、此段御案心被遊可申候、柱橋船共無事ニ
有之申候、乍去右梶未タ不相分、伊栄丸分梶ハ有之候得とも
橋船は未タ不相分候故、双方手配□□最中ニ御座候、何れ尋
遣尽重便ゟ御案内奉申上候
一当地米之儀も両三日之地震ニ而休日諸商人惣休同様ニ而取
人も無之候、何れは内之義ハ重便ゟ万々御注進奉申上候、
尚又万左衛門病気之義も追々全快いたし、大野屋弥一郎殿
同道ニ而帰国可仕候積り之故、右大変出来申候ニ付、今暫
時相見合申候、何れ早々取片付次第帰国仕度奉存候間、余
は得御拝顔万々御物語奉申上候、先は取急キ此之段何分何
分奉申上度如此御座候、早々 以上
十一月七日
仁左衛門
万左衛門㊞
伊藤助右衛門様
助三郎様
（書状摂津大地震に関するもの）
嘉永七寅年十一月廿五日当来
―△様
よろし兵ごハ別格之事は無之
よし之相聞申候
以幸便
一筆啓上仕候、向寒之節ニ御座候ニ、御揃益御勇剛ニ被遊御
座奉賀度奉存候然は当月四日朝五ツ時過近国大地震、其後小
働キ、夕方大地震、所ニ寄人家土蔵等も大ク潰れ、翌五日暮
前迄無事、七ツ時過又々大地震、夫ゟ津波ニ相成候、誠以前
代未聞之大変ニ御座候、当地は別格之事無之、御預米台所等
無事ニ御座候故安心仕候、大坂表殊之外大変ニ而、浮囲御船
々不残、登セ囲の御船も余程流込、道頓堀大黒橋ノ下手迄・
大船小船流寄□破舟痛等ニ相成候、何分大混雑ニ御座候、御
客船御無難之程奉祈念候、且御米相場之義、右ニ付此中休日
剛□区々被□不取敢此由申上度、猶後之便有之可申上候、先
は右申上度如此御座候、早々 以上
十一月七日
斗し屋
甚助
伊藤助右衛門様
尚々申上候、仁左衛門様義、此中難波嶌へ御出ニ御座候ニ
付、御見舞旁便差出候処、何分前書申上候訳柄ノ向、難波嶌
へ渡候事出来不申、夫ゟ越常殿御宅へ参じ様子承候辺、仁左
衛門様ニは御□ニ御座被成候、此段御安気被遊候、併仁左衛
門様御船玉浮囲被相成候処、津波打奥川へ流候よし無事候
哉、如何と御安内いたし被上、何卒〳〵御無事之段祈上候義
ニ御座候 以上
（書状 摂津大地震に関するもの）
嘉永七寅年十一月廿日当来
態々申上候、向寒益御安弥奉賀候、然は大阪（ママ）米義不人気、
則昨日左ニ
一筑前正米 七拾七匁壱分
一同帳合 八拾弐匁四分
一加々正米 八拾三匁
右相聞候、此元今以北国建数艘御滞船眼前物沢山、殊ニ南
大番之通り大陰気、米肥もの共まつはり取組無之、併今日
穏之姿取組ニ相懸り可申旨奉存候
一御地如何候哉、当地去四・五両日不怪大地震度々鳴動、殊
ニ津波噂ニ而市中恐怖いたし、銘々逃支度、野辺又ハ藪抔
ニ仮住居仕候位之大混雑ニ候得とも、潰れ家且乍海岸洪波
之難も無之、依而御滞船御船ニ聊無御別条、尚近浦海陸并
拙家も無難ニ相遁候間、乍憚御安心可被遊候、已ニ大阪（ママ）表
は同日同刻大地震、五日暮方ヨリ大洪波ニ相成、大小船共
両川口十四・五丁も上手へ押重り、川岸之人々は地震ニ恐
れ、小船ニ乗込相凌候処、右大船ニ押破られ、溺死人等夥
敷、前代未聞之大騒動、右ニ付御浮囲之御船玉不残相損し
候趣驚入申候、併御船人之御怪我は相聞へ不申、先以安心
仕居候、尚阿州・紀州・勢州路抔も大津波大変之風聞驚怖
仕候、何卒此後静謐之程奉祈念候、先は不取敢右申上致、
如此御座候 恐々謹言
十一月十一日
北風庄右衛門
伊藤四郎右衛門様
（書翰 東海道大地震ニ而大荒）
（注、諸国被害書上、省略）
（歳々記録控記）
（注、大阪地震、津波のしらせ。類書多いため省略）