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項目 内容
ID J1800191
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1854/12/23
和暦 嘉永七年十一月四日
綱文 安政元年十一月四日・五日・七日(一八五四・一二・二三、二四、二六)〔関東以西の日本各地〕
書名 〔信濃(第一次)三―四〕S9
本文
[未校訂](松本大地震の記)
左記の文書は、返魂紙原料として、ある製紙問屋の買ひ求
めた反故中から、偶然探し出したものですが、其時代の町
人としては筆路暢達能く当時の状況を尽してゐますゆゑ、
茲に転写して諸賢の一粲に供へます。但此文書の筆者は朧
気ながら松本町博労町の丈右衛門なるものなる事だけは記
事中の文句でわかりますが、果して何屋の丈右衛門か確と
わからないのは残念です。
昭和甲戌年正月 大熊権平
× × ×
松本地方大地震記
嘉永七甲寅年十一月四日昼四ツ時大地震にて、中町・新小路
辺より東江神明小路辺まで両側ゆりつぶし、其上、新小路ゟ
出火いたし、東は紙屋与惣兵衛殿に而とまり、北側・神明小
路迄、西は・檜物屋藤兵衛殿、南側・加賀屋平助殿に而とま
る。[魚|サカナ]小路不残焼失、且又・生安寺小路北側・大方つぶれ、
飯田町・小池町にも少々つぶれ家有。いせ町にも五六軒・本
町二丁目・生安寺・南角二軒・生安寺小路・北角・檜皮屋は
半つぶれ、一丁目と中町の南角の家・往来へのめり、四丁
目・鍋屋小路・北角・紙屋金左衛門殿・持家・其節・十一屋
久兵衛殿・住宅に而壁不残落ち・家大よろび、遠州屋平助
殿・宅つぶれ・其外家蔵之いたみ者、中町・本町・飯田町・
裏小路・別而つよく、少々のいたみは[川南中|カワミナミヂウ]。[川北|カハキタ]は大きに
軽く、東町の[下町|シモマチ]・正行寺小路・南角・一軒つぶれ、又御馬
出しの北角・油屋与七殿つぶれ、かぢ町・茶屋喜七殿・半つ
ぶれ、佐野屋彦兵衛殿・大いたみ、其外は川北は無事。御城
内も少々いたみ候へ共かるく、大手之高塀・余程たをれ候。
かゝる大地震に博労町は以の外軽く、只かぢ小路・北角・亀
甲屋与助殿・持家・一軒・半つぶれ[是斗|コレバカリ]。平野屋之家・北
へ・(傾きて)我家江帰着(寄りかゝり)致候。東町ゟ段々・横
町のいたみ・中町之焼跡・本町筋の大いたみを見てきもをつ
ぶし、あきれはてゝ我内へ(家へ)帰り候処、町内は以の外か
るく、我家なぞは少之いたみもなく誠難有。早速神仏へ御と
ふみよふをさし上げ、家内中大悦にて機嫌よく夕飯を食し、
夜四ツ時に安堵して寝たる処、其夜九ツ時・町内五番組・味
噌屋文五郎殿・持家にて、当時借宅之浜松屋源助宅より出火
いたし、たちまち両側・大火と相成り、北の方は東側・鍛冶
小路にて留り、西側は山城屋又兵衛殿にてとまり、南は東
側・土田屋喜助殿にて留り、西側・三浦屋喜八殿にてとまり
申候。稀成大火にてあきれはて候。六十九年ぶりにて町内出
火なり。乍去六十九年前之出火は、一年に両度有之・両方ゟ
焼来り候得共、北は東側・よねやに而とまり、我家はのがれ
申候よし、又鉄屋藤吉殿・物置より出火いたし、当人は申に
不及、北隣・鶴屋政右衛門殿・家・六軒間口を焼候得共、其
時も運つよく我家にてとまり、其中に我家の南の方之大は
り、余程こぞ入有之候。右一年之内に両度両方より出火・焼
来り候得共、我家はのがれ候間・目出度家也と諸人のほめに
相成候由、丈右衛門両親より承候。如斯のがれ〳〵候家なれ
ども、時節到来・是非なく今年焼失致候、ぜひもなき次第
也。夫より亀甲屋近重殿方へ同居いたし此年を暮し、明れば
安政二乙卯年かんなんしんくして、目出度・家普請致、漸に
安堵・大悦致候
× × ×
安政二乙卯年三月十五日・地がため、四月廿二日鳥渡・吉方
之柱建致、同廿八日・首尾(ヨク)能建前致申候
木曾・福島・住人、当時松本清水村に住す
大工 棟梁 常蔵
脇棟梁 武八
屋根師 飯田町、松屋 喜七
左官 笹部村 三弥
× × ×
普請入用控
大工常蔵殿へ。卯二月八日一金五両也、手金渡。同三月六
日一金壱両弐分也、渡。同十日一金参両弐分也、渡。同四
月六日一金壱両壱分也、渡。同四月十九日一金壱両也、
渡。同七月廿九日一金五両弐分也、渡(終)
(附言)
材木其他一切の材料代は勿論此計算外ならんも、当時之大
工作料が今日に比して、如何に低額なりしか、おもひやら
るゝことになむ。(大熊)
出典 新収日本地震史料 第5巻 別巻5-1
ページ 539
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
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版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

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