地震史料集テキストデータベース
[未校訂]六四四 地震被害ニ付普請金増加願（扣）（杉山達雄氏）
乍恐以書付奉顧上候
当御支配所川附村々惣代奉申上候。定式御普請御遣方ニ相成
候諸色代永割増之義、当八月中奉歎願置候得共、于今御下知
済之被 仰渡も無御座一同心配罷在候。然ル処当月四日之大
地震ニ而郡中村々居宅土蔵皆潰、又は半潰ニ相成少難之村々
迚も隣国迄も震動いたし候由ニ付、土蔵其外囲或は戸障子破
損所数多有之、其上野中田畑耕地之内滅所下り地割目等ニ相
成、青泥水吹出し候次第ニ而、釜無川・笛吹川通・谷川沢々
御普請所数筋大割目出来、川床又は田畑江吹出し是亦滅所夥
敷用悪水路押埋り伏越マチ樋戸水門等銘々破却ニおよひ、往
還道筋之義も震下りニ而水中之場所も所々通路差支候始末ニ
御座候間、来卯春定式御普請仕立方被 仰付候而も、前条之
始末ニ付竹木其外御普請御遣方ニ相成候諸色共、右潰家数千
軒之もの共小家懸其外等ニ竹木買入いたし候は、歴然之儀ニ
付諸色弥増払底高直ニ相成ニ実以当惑至極ニ付不顧恐再願奉
申上候。何卒前件御賢察被成下置格別厚以御勘弁、先般奉願
候諸色代永増之儀願之通御聞済、早速御下知被 仰付被下置
候様、乍恐此段以書付奉願上候 以上
嘉永七寅年十一月
当御支配所
定式御普請所川附村々惣代
山之神村長百姓 八之丞
曲輪田村 同 重兵衛
上今諏訪村 同 平助
市川御役所
六四五 地震再興資金拝借願（写）（下市区有）
乍恐以書付奉願上候
巨摩郡鮎沢村古市場村・加賀美村・十日市場村・小林村・清
水村・江原村・寺部村・下宮地村・下一ノ瀬村右拾ケ村一同
奉申上候。当月四日朝五ツ半時頃ヨリ俄ニ当国稀成大地震ニ
而、村々皆潰半潰出来何連も惣百姓一統途方ニ暮住居は、勿
論夫食等迄必至ト差支候得共、往古ヨリ言伝ニも無之、不容
易成変事出来之儀ニ付、不取敢早速御注進奉申上候処、則御
見分之上巨細取調奉差上候儀ニ御座候。然処前書始末ニ付村
々役人共ニおいて、再興取立方種々及相談候得共、存外之儀
ニ付同（何如様手カ）夜工入仕候而も、迚も村々自力ニ難及捨置候而は、銘
々退転いたす外無御座実ニ歎ケ敷奉存候。猶又今般大地震ニ
而御田地多分動割順（ママ）涌出悉地味相劣既ニ仕付置候麦作等実登
之程難無覚束奉存候間、来春ニ相成自普請不仕候而は、迚も
元形ニは相成不申旁々以、必至ト難渋之年柄御堅察被成下、
何卒出格之以御憐愍再興取立方并自普請為手番、鮎沢村江御
金四百両、加賀美村江御金五百両、寺部村江御金百五拾両、
江原村御金三百両、十日市場村江御金三百両、下宮地村江百
五拾両、下一ノ瀬村江御金百五拾両、小林村江御金四百五拾
両、清水村へ御金百五拾両、古市場村江御金四百両、合弐千
九百五拾両無利息拾ケ年賦御返納積ヲ以御救拝借被仰付被下
置度奉願上候
右願之通被仰付被下置候ハハ、広太之御慈悲ト村々惣百姓挙
而難有仕合奉存候 以上
嘉永七寅年十一月
田中御役所
六四六 下市之瀬村大地震大破書上 （下市区有）
嘉永七寅年十一月
大地震ニ而大破書上帳
巨摩郡下一瀬村
覚
一居宅
張間拾間
桁行四間
持高拾弐石余
七兵衛
家内拾壱人
一並土蔵
張間五間
桁行弐間半
一水車壱ケ所
一居宅
張間九間
桁行三間
持高拾石余
忠兵衛
家内七人
並土蔵
五間
三間
同断
三間
弐間
一居宅
張間六間
桁行三間
持高壱斗三升
卯兵衛
家内五人
一居宅
桁行六間
張間三間
持高七升余
唯吉
家内五人
一居宅
桁行六間
張間弐間
高六升余
太良吉
家内五人
右は当月四日大地震ニ而潰候家数
書面之通其外小破之所多分御座候而何分ニも御見分被成下候
様偏ニ奉願上候 以上
嘉永七寅年十一月
下一ノ瀬村名主 友八印
長百姓 七兵衛印
百姓代 万兵衛印
田中御役所
六四七 下市之瀬村大地震追報（下）（下市区有）
嘉永七寅年十一月
大地震潰家数書上帳
巨摩郡下一之瀬村
一居宅 高八升余 佐右衛門 家内弐人
一居宅 高三斗五升 奥右衛門 家内六人
一居宅 高弐斗弐升 又右衛門 家内六人
一居宅 高三斗八升 政兵衛 家内五人
一居宅 高三斗余 源七 家内六人
一居宅 高壱石五斗余 角平 家内八人
一居宅 高六斗余 源兵衛 家内四人
一居宅 高八升余 新之丞 家内弐人
一居宅 高三斗余 作之丞 家内三人
一居宅 高弐斗余 重右衛門 家内四人
右は当月四日大地震後追々動候ニ付書面之通り大破ニ相成候
間取調奉書上候何とも御慈悲之御沙汰奉願上候 以上
寅十一月
下一瀬村名主 友八印
長百姓 七兵衛印
百姓代 万兵衛印
六四八 大震災報告（扣）（平岡区有）
乍恐以書付御届奉申上候
巨摩郡平岡村之義当月四日稀成大地震ニ而小物成山之内、字
上野壱ケ所、同野荒壱ケ所、平井壱ケ所、同坂額壱ケ所右四
ケ所之内凡三町歩余も生立木之儘沢道江こけ崩落り、又は小
物成并奥先丈入会道路、字本城同笹城弐ケ所ニ而長五十間余
之掛渡橋及大破ニ、当時人馬通路差支殊ニ人前持小物成毛生
土ゆ連こけ落り之義故、此末容易ニ毛生相立不申、惣百姓一
統当惑難義仕相歎罷在候。依之此段御書付御届奉申上候 以
上
嘉永七寅年十一月
巨摩郡平岡村名主 重郎右衛門印
長百姓 伝右衛門印
百姓代 八郎右衛門印
田中御役所
六四九 下市之瀬大地震貸下金 （下市区有）
安政元寅年十二月
御救拝借金小前貸付帳
巨摩郡下一之瀬村
覚
一金六両弐分 但
金弐分ト永百五拾文
当寅ヨリ子迄無利足
拾年賦御返納之積り
一金弐分 作右衛門印
一〃弐分 奥右衛門印
一〃弐分 五右衛門印
一〃弐分 政兵衛印
一〃弐分 源七印
一〃弐分 角平印
一〃弐分 源兵衛印
一〃弐分 新之丞印
一〃弐分 作之丞印
一〃弐分 重右衛門印
一〃弐分 多郎吉印
一〃弐分 唯吉印
一〃弐分 卯兵衛印
〆六両弐分
右は当寅十一月中稀成大地震ニ付右名前之もの共難渋之次第
奉歎願候処御願通り御聞済ニ相成金弐分つつ御割紙被成下難
有奉受取前書名前之もの江貸附候処相違無御座候 以上
安政元寅年十二月
巨摩郡下一ノ瀬村名主 友八印
長百姓 七兵衛印 同常右衛門印
六五〇 地震災害ニ付拝借金証文（写）（下市区有）
拝借金証文之事
一金三拾両也
但
来辰ヨリ丑迄無利拾ケ年賦
壱ケ年ヨリ三両つつ御返納之積
右は甲州巨摩郡下一ノ瀬村之儀、去寅十一月中稀成大地震ニ
付家居其外震潰道橋木は勿論、堰筋崩往来并用水引取差支御
田地相続は勿論小百姓共必至ト難渋仕候、御田地其外自普請
并困窮之者共、相続為手当御救拝借之儀奉願上候処、格別之
以御慈悲為御救ト、今般書面之御金無利足拾ケ年賦拝借被仰
付、難有奉請取拝借仕候処実正ニ御座候。然ル上は来辰ヨリ
丑迄拾ケ年賦割合之通、年々十二月十日限一村ヨリ奉引請、
無遅滞急度皆御返上納可仕候。為後日連印証文奉差上候処如
件
甲州巨摩郡下市之瀬村連印
安政二卯年二月
田安御勘定所
清右衛門印 五兵衛印
助右衛門印 忠兵衛印
百姓代 万兵衛印
田中御役所
六五二 地震災害ニ付拝借金対談書 （下市区有）
安政二卯年七月
御拝借金取定帳
巨摩郡下一之瀬村
対談書之事
○○○○○○○○○○
一金六両也
○○○○弐分
是は去寅十二月中御下ニ相成候分、別紙之通り小前名
前人江貸渡候処相違無御座候
一金三拾両也
内
金弐両ハ諸入用掛り惣代江渡し
○○○○○○○○○○
残金弐拾八両也
○○○○
内
金拾両ハ 預り主 名主 五兵衛印
内四両ト三匁九分小前貸出候節返金
同拾両ハ 同 預り主 助右衛印
同八両ハ 同 友八印
是ハ七月ヨリ六ケ月分拾五匁六分利足添卯暮ニ元利共
ニ返金仕候
此金子之義は村方入用之節ハ出金可致事
右は寅十一月中大地震ニ付、御拝借奉願上候処、以 御憐愍
ヲ今般御下被成下難有奉請取候。然ル処右金子之義は、難渋
年柄亦は道橋等大破出来之時ニは相談ヲ以取斗可申、且当卯
ヨリ拾ケ年御役所様江御返納皆済仕候上は、残金之分一村
相談ヲ以、割合方可仕候、為後日一村連印仕候処如件
前書御拝借金一村為合ト心掛ケ、私共組下江申聞候処、彼是
ト埓明不申今般御下金之分如何様御取斗可被成候共、聊組下
之義は申分無御座候。為念連印依而如件
安政二卯年七月
下一之瀬村組頭 友右衛門印 吉兵衛印
万兵衛印 瀬平印
栄助印 柳助印
伝左衛門印
御名主所
名主 五兵衛印
長百姓 七兵衛印 友八印
恒右衛門印 清右衛門印
助右衛門印 忠兵衛印