地震史料集テキストデータベース
[未校訂]一十一月六日町奉行山本源左衛門ゟ相達処左之通
地震之儀只今問屋共ゟ申達候は、今日越後高岡之旅人申
聞候は、一昨日四日之地震小松表ニ而出逢候処、同所は
為指様子ニも無之、夫ゟ大聖寺を罷通候処、通筋多分損
所相見請、御城下ゟは格別強候趣致風聞候
一同月七日同人ゟ相達問屋申達書付左之通
大聖寺中町三十六・七軒肩なかしニ潰レ候、其外かたき
候家々数多く御座候、角屋敷也、土蔵なと壁落諸方ニ御
座候、
右之趣金沢之人咄ニ御座候
一金沢表ハ今地震ニ而候と申位之事ニ御座候
一小松辺も左様成事無之候由
一十一月九日金津奉行渥美直紀ゟ相達趣左之通り
十一月四日地震之節、北方浦四郎兵衛家右竈之脇より清
家又兵衛と申者之小屋へ掛け長五六間斗幅五六寸斗地破
れ、其中ゟ水沸出、四寸斗沸上り、砂なと持運候得共、
水勢ノ強埋り不申、右穴へ七八尺斗の物差込候ても送入
候由、右ニ付四郎兵衛住居出来不申、外家へ引移申候、
右穴のかたわく踏ミ付見候得はぼか〳〵と致候由
一同村惣次郎と申者家居之下タ地面ゆり込ミ候哉、壱尺斗
低く相成候由、湖水端の事故湖水へ土ヲゆり出シニ而も
致し候事哉、其外五六寸斗低く相成候屋鋪ハ右之余ニも
儘有之との沙汰ニ御座候
一右様地破、水沸出致し候義、御預所伊井村とかニも有之
と申事ニ候得共、虚実不相分候
一同日同人ゟ相達書付之内
加州大野丸屋飛脚之者兵庫表ゟ罷帰、今晩当所へ泊り兵
庫表ハ地震格別之御事ハ無之由、大（ママ阪表ハ強く百軒斗潰
家有之由、且亦尾張津波ニ而過分損じ有之候由、併是ハ
遠方承義ニ而見受候事ニも無之候得共、尾州之者之咄を
承り候由、其刻限ニ当り大坂安倍川過分之汐込候、前代
未聞と申程之事のよし、さ候ヘハ尾州表之事無之事ニも
有之間敷哉と申事ニ御座候、右今晩承り候ニ付奉申上候
以上
十一月八日 飯塚市助
追而今日吉崎之役人罷出相咄候ハ、塩屋・瀬越辺ニ而ハ
此揚句ニ津波可有之も知れ不申と申而、吉崎縁（ママ）之有之者
ハ女子供なと塩屋浦なとゟ吉崎へ出候由、左候得ハ何か
海辺之模様ニ而知れ候事ニ候哉、又ハ地震之果ニハ津波
等有之事ニ候哉、但尾州表なとの咄し承り候而之事ニも
候哉難斗、何卒此上変事無御座候様奉祈候 以上
一同相達書付之内
覚
一土蔵幷小屋共拾ケ所潰申候
内土蔵二ケ所 （
越前町
右問屋
同 壱ケ所 油善
同 壱ケ所 紙屋五兵衛
右之外名前相分り不申
一家土蔵壁落、或ハ屋根大破、柱折レ損等之分百軒斗
一御曲輪内ニ而御建物之内弐拾三ケ所損所出来候由
一家中之内耳木山と申候所ニ而潰家三軒・潰土蔵壱ケ所
右之外大聖寺領塩屋村・瀬越村・山代・山中等少々御損
所有之迄ニ而別儀無之由
一右何れも人損無之
右ハ連日地震ニ付、大聖寺表潰家等為相調申候処、右之
通ニ御座候 已上
十一月
一十一月九日夕、大井佐十郎ゟ申達候趣
一支配下村々調組之者追々引取候処、格別之痛所無之、今
庄・四ケ谷辺調組之者ハ未た引取不申ニ付相分不申候得
れ（ママ、共カ）ハ多分格別之事ハ無之ト存候由、何分近在之村々之内
ニハ倒家有之村方も有之候得共、遠在ニ而ハ左様之義も
無之、遠在程弱く有之候趣、且又三日村長門家来大垣表
ゟ被罷帰、此者之咄ニ大垣余程之大地震ニ有之、倒れ家
等も有之、近辺同様成様子、尾州名古屋も余程大地震ニ
有之段沙汰承候旨申仰（カ）之由
一同十日朝田代萬関ゟ申越趣
一鍵丁之者去月晦日京地出立、四日彦根ニ罷在候処、同所
大地震ニ家中町方ニ而家数三拾軒斗動倒し、其内出火も
有之候由、夫ゟ罷帰候途中ニ而承候処、大須辺余程成大
地震ニ而、倒れ家二三百軒も有之、名古屋も余程之大地
震ニ有之候段沙汰ゟ承候由、併是ハ沙汰ヲ承候迄の事之
由、且中ノ河内辺積雪七尺斗之由
十一月十日
一十一月七日京都森賢次郎ゟ御奉行共江之書状之内
一去ル四日朝四時前ゟ大地震、今七日迄ニ大小弐拾度斗、
其内四日朝四時大地震、半時不足震申候、同日八時過一
度是は昼前ゟは少し弱く、間も短く御座候、五日夕五時
過又々一度強く震申候、右四日八時過之位之震ニ御座
候、同日晩四時頃ニ又々大震候得共、始之程とは間短く
候得共、誠ニ毎度之大地震ニ付、人々肝を消大驚、此後
は如何相成候哉と四条河原江幕張等仕出居候者有之、町
往来江畳敷屛風抔立廻し出居候者も間々御座候
一六日朝ニ而は追々相鎮り、昼前之内ハ相止申候、昼過ゟ
今七日迄ニ三四度少々震候、大概只今ニ而は薄く相成候
間、最早格別之事も無御座候哉と奉存候
一右大地震ニ而古キ小家等潰家拾四五軒斗、其外塀倒れ、
石燈籠等之分ハ数多倒れ申候、併京都は格別之大損は無
御座候
一此度之大地震ハ伊勢・津・四日市・白子・宮辺強く、人
家も多数倒れ、死人・怪我等も夥敷、白子抔は大津波ニ
而人家も取行候由、夫ゟ泉州も右同様、紀州も同様之
由、大和河内辺も大地震之趣誠ニ以大変之取沙汰ニ御座
候、右ニ付大坂表も強、大津波ニ而人家幷死人・怪我人
も御座候趣、岩井七郎兵衛ゟ申達候由
一大坂表地震幷大津波ニ而損所其余共評判書付壱綴指上申
候、御覧可被成下候、御蔵屋敷之儀は為指儀も無御座候
趣御座候得共、御土蔵等大損申候由七郎兵衛ゟ相達候由
嘉永七寅年十一月四日五半時
摂津大地震
四天王寺・清水寺舞台崩れ、本堂聊も不損
舟場稲荷西鳥居損シ
同 御霊社内井戸家形崩
同 狐小じ本町とふ池南東角屋敷同
堀江阿弥陀池裏門西之辻同
南堀江四丁目亀橋西之辻角同
幸栄橋西詰南江入同
白髪町観音前線香台
横町高塀
薩摩堀願教寺対面所
阿波座戸屋町西行当り此辺多シ
永代□（ムシ）大土蔵
新中嶋大損し
さこ場石津町南
北江戸堀壱町目高塀十軒斗
犬をい橋東江入土蔵崩れ
常安橋南角
浄心橋土蔵壱ケ所
汐津橋南土蔵同北壱ケ所
上福嶋天神門同水戸家形土蔵
坂本社同下絵馬堂其外五六ケ所
羅漢本堂小門同野中町拾軒斗
佐野屋橋筋塩町北江入高塀崩
舟場
北久太郎町当地北江入西側東三軒
本町心斎橋東江入裏長屋
天満天神井戸家形
安倍川順正寺茶之間本堂大損し、同三丁目棚（ママ）
弐三軒斗
国津橋東西一ケ所ツゝ、道修町せんたんの木高塀、淡路町
西土蔵
町々瀬戸物店又はかわらや大損、材木屋こと〳〵くたをれる
西城（ママ）郡惣社座摩宮石鳥居崩レ落ル
中寺町当摩寺掛所門・同隣本堂損、同源正寺門・同寺町浄
国寺・高津志正院高塀御蔵跡家四五軒
はこ板橋北詰角
難波鉄源寺釣鐘落、其外諸堂大損し
堺・平野・八尾・久宝寺其外近辺悉損
同 祇園石燈籠倒
大仁村セハ寺本堂崩
尼ケ崎城下大損
右之外数多有之候得共、繁多故篤と相調へ後編ニ差出し候
事
（同十一月五日
七ツ半時二度目
大坂震
又々半時斗ゆり出し、市中近在所々崩レ、東在三ツ嶋辺家
たをれ出火と相成、早速火鎮り、其外同寺大坂川口天保山
ゟ安倍川壱丁目迄津なみニ而、辺りの舟あまた逆登シ、帆
柱ニ而安倍川橋落る
其外濱がハ家大ニそんじ申候
猶くわしき義ハ後編ニ記
（中略）
大坂岩井七郎兵衛ゟ横山直助江之書状之内
一去ル四日之地震ニ而津浪出て、天保山は大崩ニ相成申ニ
付、川口御番所も余程損し候由、亀井橋安倍川橋とも大
船逆登ニ入込、帆柱ニ而両橋とも落し切候由、其余色々
申沙汰も有之候得共、区々付、達上かたく略いたし申ニ
付、則絵図弐枚指上候、御披見可被下候
大小船 難船 百八拾艘斗
天保山江打あけ
候舟にてか
溺死人 五百人余り之由
右之通あら増御達申上候、扨昨日之地震殊之外大変ニ付、
世上一統大驚キにて相騒キ申候、近所屋敷町人共皆々岸（雁木）岐
際陣取其所江かたまり居申候、或は船ニ而遁れ居候分も多
分御座候、唐津川越屋敷抔も上荷船弐艘ツゝ借切、浜先キ
繫キ置候、是等ニ准し御察可被下候、御屋敷内ハ夜前夕方
ゟ私役宅前ニ幕一張はり、其処江私家内一統・藤松・近所
之男女子供等迄集り、土間ニ莚敷夜明し仕候、何之御門先
御門内とも高張燈シ、挑燈番附置申候、最初之地震之後ハ
少々宛ハゆり候得共、為指事ハ無御座候由
「（貼紙）此川江数千艘舟入込有之よし
道頓堀川西ゟ幸橋迄不残橋ハ落申候凡橋数ハ
四橋ニ御座候
右は私見ニ参り申候」
「（貼紙）尼ケ崎城下八九十軒斗潰家御座候由」
一服部惣太郎ゟ田代萬姉方へ来状之内
当月四日京都大地震、当夏よりは聊軽クハ御座候哉、大
躰同様程之事ニ而、動揺ハ緩候得共、長震ニ而一同大路
或ハ庭前ニ逃出申候、暫ハ落付居候者も、余り長く震動
仕候付、追々強震ニも可相成哉と案思候ニ付而如何成丈
夫もまづ建家外ニ逃出候事ニ而御座候、天保元年度之事
を相考候得は、至而軽き大地震ニ御座候、乍併此度之地
震動之程は為差事も（ママ）
追々強甚長震相済跡、大物ニ而も三
四里□隔打放候哉と申様成鳴動不申候、其後四日昼夜時
々余震有之人気落付専一罷在候処、五日朝ニ至り候而は
前夜も為差事無之候故、何レも粗安心仕居候処、五日申
半刻又候前日朝ゟは聊は軽候得共、再大地震何レも逃出
申候、婦女子之類ハ地上ニ強（カ）立居位御座候、四日朝大震
ニ而堂上地下
禁裡御附へ参勤、近衛殿江 御開キ之御廊下急速御出
来、大御混雑日雇手伝躰之者共大勢、修理職右御役人指
図ニ而諸事御出来御座候由、乍去
渡御ニて不相成、御拵而已ニ而被為済、其節所司代脇坂
淡路守殿急速参内御座候由、五日ハ淡路守殿出馬在之、
五日夜又出有之由、五日震後も雷鳴之様ニ相聞、四日朝
ゟ厳敷、近国山崩レと□哉と申合候、五日夜戌刻過震後
も有鳴動、其夜時々余動、六日ニも余動不相止、同夜も
同断、且又伏見ハ京地ゟは甚敷由、尤潰レ家も多ニ付
（趣）大坂ゟ来状写
大坂西□（ムシ）願教寺前建家拾四五軒、尤古家ニ候得共倒家・
怪我人御座候由、扨又天満天神社地井戸屋形幷御霊宮井
戸屋形幷座摩宮鳥居其外石燈籠抔倒申候、安堂寺町西之
塀倒レ、四人即死通り掛り候子供壱人怪我仕候由、又八
半時頃ニも震動致、其後先ツ鎮り居申事ニ御座候、委敷
事ハ相記専（カ）一候得共、不取敢如此云々
十一月四日七時誌
十一月十四日
一地震ニ付破損所之儀御届左之通、今晩立飛脚ニ申越之
拙者領分越前国去ル四日巳ノ刻前、古来ゟ未曾有之大地
震有之、翌五日申ノ刻過又々強相震レ、前日ゟは短く候
得共、右両度之地震ニ而城廻り・住居向・其外家中・
町・在共及大破、其後引続大小数拾ケ度之地震候処、追々
間遠ニ相成候得共未落付不申、只今之処損所左之通ニ御
座候、尤ケ条之外ニも建物等多分不及破損候は無御座候
得共、大破之分斗御届申候
一本城建物瓦幷壁落其外所々大損シ
一三重二重櫓々大破
一多門幷渡矢倉所々大破
一城内建内幷番所々々等所々大破
一城廻り塀倒レ三拾三間余
一二ノ丸内厩瓦落大破
一太鼓門渡矢倉大損シ
一武具土蔵大損シ二ケ所
但其余数ケ所大破
一内廻り塀倒レ、其外傾壁落大破数拾間
一三ノ丸内
東照宮 御宮幷御霊屋向所々大破
但御燈籠震倒レ 六基
一三ノ丸住居向幷火ノ見大傾、其外所々傾壁落大破
一同所表門傾大破
一櫓傾極大破一ケ所
一下馬門渡矢倉大損シ
一米蔵大損シ一ケ所
但其余数ケ所大破
一米蔵（ママ）所門倒レ一ケ所
一焰硝蔵大破一ケ所
但其余所々損シ
一勘定所向建物幷土蔵数ケ所大破
一所々並木倒レ
城 下
一侍屋敷半潰幷大破五拾軒余
但其余損所夥敷
一侍以下屋敷半潰幷大破五拾軒余
但其余損所夥敷
焼失跡
一西本願寺掛所小屋潰レ二ケ所
同
一東本願寺掛所小屋潰レ同断
一寺大破 二拾ケ寺余
一山伏家潰レ 一軒
一町家潰レ 三拾軒
但其余半潰大破等夥敷
一土蔵潰レ 六ケ所
一同大破 数拾ケ所
一死人 壱人
一斃牛馬無之
在 方
一潰家 百拾二軒
但其余半潰大破等夥敷
一土蔵潰レ 五ケ所
但其余半潰大破等夥敷
一小屋潰レ 三拾三軒
但其余大破所々
一宮潰レ 壱ケ所
一鳥居倒レ 二ケ所
一死人 三人
一斃牛馬無之
一北瀉浦百姓家下江幅五寸斗、長サ六間斗割レ穴明、泥
水出申候処、只今ニ而は出不申候
一同浦村中江幅弐寸斗、長サ一丁斗、深サ一尺斗割レ穴
明申候
右之通御座候 以上
十一月九日
御名
一十一月十五日町奉行ゟ相達、石場問屋届書左之通
覚
伊勢山田御師井坂三左衛門咄ニ御座候
十一月四日地震、其節大垣ニ逗留仕居候、大垣御城之壁
方々落申シ、町家余程損し候、
但家傾キ損候家も余程有之候得共惣（カ）へてつふれ候家ハ
無之様ニ存候事
一大垣ゟ桑名へ之川筋ニ〔舟（加筆）が〕今尾と申所大垣ゟ南ノ方三
里津波ニ而大ニ損候由
一宮津波ニ而大ニさわり候由
但人馬継立難義ニ付、宮ゟ大垣へ申越候ハ東海道を相
止、中仙道之方を通行致候様之廻文を見受而達候
右之通伊勢山田三左衛門と申人之伝咄ニ御座候
一十一月十六日町奉行ゟ相達、問屋共申達左之通
志州鳥羽城主
稲垣摂津守様
右昨十四日勢州神職西田左右馬と申者ゟ承り申候処、先
達而突浪御座候而御城廻り海中へ崩レ候由ニ御座候事
一十一月十八日御奉行雨森儀右衛門ゟ差出書付
三国与兵衛大坂江下り候、於途中御油宿之者ニ出合候
処、東海道宿々大変之趣書付為（拝カ）見候写之由、左之通
東海道地震津浪之覚
半潰 吉田
同断 二川
同断 白須賀
（
舟壱艘も
無之
新居
（
津浪打込
家無之
舞坂
大地震 浜松
半潰 見附
丸焼 袋井
同断 掛川
無事 日坂
大焼 金屋
少々潰 嶋田
同断 藤枝
同断 岡部
半焼 丸子
（
江川町ゟ出火
三歩通焼
府中
丸焼 江尻
津浪打込 奥津
無事 油井
（
半潰
問屋ゟ東焼
神原
（
半損
半焼
岩淵
（
水無之
歩行渡
冨士川
丸焼 吉原
右之通御油宿ゟ申来ル
外ニ四国紀州も大地震大津浪のよし
伊賀伊勢同断
三州矢矧の橋落申候
十一月十八日夕
一月番御目付海福猪兵衛ゟ差出書付
今十八日夕七半時着 定府荒子
新蔵
右之者江戸表去ル朔日立、吉原宿ニ而地震ニ逢申候処、
同宿壱軒も不残潰、壱丁斗焼失、沼津宿焼失之由、蒲原
宿同断、冨士川留り、吉原宿ゟ御国方高嶋村ニ野宿、三
日逗留、猟師船ニ而由井宿へ上り、右宿半潰、夫ゟ御国
かた宿々通半潰、江尻宿丸焼、府中宿御城ゟ江戸方不残
焼失、其余不残潰申候、御城廻り不残御建物倒、手習子
家壱軒ニ四拾人斗も即死之由、丸子宿潰家少く、掛川
宿・袋井宿焼失、少々ハ相残候哉見附宿半潰、浜松宿少々
いたみ、浜松ゟ本坂越裏道御油迄罷越、五六ケ宿相ぬけ、
其辺承知不仕、新井御番所津浪ニ而なくなり候段沙汰仕
候、御油宿ゟ御国かた継立有之、岡崎辺ハ致商売、潰家
少々、矢矧橋少々狂ひ、宮宿半分斗潰、尤不残ゆかミ、
名古屋無別条、夫ゟ御国かた少々ハ潰家有之
一江戸表四日立上野坊主衆と荻原宿辺ニ而道連レニ相成、
御国府中町迄同道仕、右坊主川崎宿ニ而地震ニあひ、右
宿辺ハ潰家無之、為指儀無之段相咄申候
一小田原ゟ江戸方宿々継立御座候由
十一月廿日
一御勘定所ゟ之達左之通
合月村大庄屋
戸枝太郎左衛門
一右之者、十一月四日江戸致見物、半蔵御門を通り過候
処、巳上刻頃大地震、一丈斗も有之御堀之水往還江上り
候程之事、夫ゟ常盤橋
御上屋敷江罷越候処、何も御別条無之、江戸内ニ而外御
屋敷二軒斗損し、怪我人一両人も有之沙汰
一翌五日
御成有之候由、太郎左衛門儀は新吉原辺見物ニ罷越候
処、花川戸辺ニ候哉、出火二千（ママ）斗焼失之由
一浦賀御台場損所有之、御役人も少々怪我有之哉之沙汰
一品川御台場ハ御別条無之由
一異国船一艘浦賀辺ニ罷在、地震之節は沖江乗出し相済候
ヘハ、又々元へ来候由
一道中筋箱根ゟ京方大地震、見受候所ニ而ハ沼津宿別而損
所強く、死亡も五拾人斗も有之哉之沙汰
但地割も所々有之、其外道中筋も地割有之由
一駿府も大痛
一道中筋三ケ所斗も御城覆り候由
一矢矧橋無別条
一浜松宿ゟ廻り道致し御油宿江出候由
〆
十一月廿日
一去る十日晩立通飛脚、今戌ノ中刻到着
十一月六日
一阿部伊勢守様御渡候御覚書写一通大目付柳生播磨守殿ゟ
来ル、左之通
覚
此節度々地震有之候ニ付而は、此後之儀も難斗、銘々立
退方之儀心得も可有之候得共、兼々火之元之儀厳重ニ手
当致し置、早速立退候様向々江可被達置候事
十一月
一御留守居大道寺七右衛門・有賀清右衛門ゟ御側御用人江書
状之内
当月四日辰下刻、文化度以来之地震品川辺ゟ外桜田之辺
御城内江掛、小川丁辺・小石川辺右之筋強く南部様御上
屋敷南之方表長屋十五間程潰弐人即死、怪我人ハ余程有
之、下総守殿御上屋敷表長屋少々大破、肥後守殿内長屋
一棟潰、森川出羽守殿内長屋同断ニ而出火有之候得共、
内々ニ而相済、御城内大手内腰掛後石垣上ニ有之候御塀
十四五間程御堀江落申候、白壁而已損所は所々ニ御座
候、小川丁辺ニ而も長屋潰所々ニ有之、水戸様御屋敷廻
り堀後之方多分損、怪我人等は外ニ承り不申、町方ニ而
ハ八丁堀辺ニ子供弐人即死、同所名主娘石燈籠ニ打れ即
死致し、芝辺ハ裏屋等所々損候由御座候、先々常盤橋内
御別条無御座奉恐悦候、追々承り候処、駿・遠・三・相
州・甲州辺・冨士之近辺は別而強く、豆州下田ハ四日朝
未曾有之大風、俄ニ相止候而地震ニ相成、潰家等多分有
之候処江大津波ニ而番船等行衛相知レ不申、異船ハ別条
無之、少々沖之方江流れ候位ニ而無難、応接場は流失、
何歟風聞ニ掛川侯人数も同所ニ固居候処、内一人山江上
り助り、跡は無残行衛知不申との事ニ御座候、沼津侯固
人数ハ地震ニ而早速ニ山江引上候故、津波之難無之候得
共、具足類ハ多分流失之由御座候、異船ニ付出張之役ニ
ハ何も別条無御座、下人之所ニ至り候而は少々怪我人も
有之由御座候、今日ニ至り候而も矢張両三度ツゝ小地震
有之、物騒なる事ニ御座候、別紙手ニ入候分奉差上候、
尚々別紙之外三州吉田左之通ニ御座候
大書院 潰
三ノ丸不残同
櫓不残 同
門不残 同
其外多分 大破
右昨日三州ゟ飛脚着承り候儘奉申上候、御関所ハ別条無
之、西番所同下家等大破、怪我人ハ家中ニ無之、町在ハ
有之由ニ候得共、未タ相分り不申、吉田橋は無難之由御
座候
一豆三日州表応接ハ未タ初リ不申由風聞ニ御座候
私在所駿州沼津今辰下刻地震甚敷、二ノ丸住居向悉潰、
本丸・三ノ丸構向初、侍屋敷・長屋向幷領分在・町共潰
家破損所夥敷、其上城外足軽長屋ゟ右潰ニ而出火仕、無
程鎮火ニ候得共、引続折々震動相止不申候、人馬怪我も
未相分兼申候、委細之儀ハ追而可申上候得共、先此段御
届申上候 以上
十一月四日 水野出羽守
今巳ノ上刻頃当所稀成大地震ニ而御座候而、其後数度大
地震御座候内、御供所其外坊中八ケ院共不残相潰申候、
扨又右供所潰候場所ゟ出火仕候ニ付、私儀早速登 山
仕、種々消防手当等申付候得共、折節西風御座候間、御
宮之方江風並不宜、何分御場所近ニ付、早々鎮火之程難
斗、其上地震も相止不申、御坂通欠落候而ハ
御迁座申上候御道筋も無御座候、誠以心配仕候ニ付、徳
希院出府中之儀御座候間、御宮附之者江も申談、御坂通
通御御出来候内も乍恐
御迁座申上候方御安全之御儀と奉存候、御別当所山手之
方江暫時
御迁座申上候処、夕八半時頃漸下火相成候間、私幷 御
宮附之者守護仕、無滞
御宮 御迁座相済申候、何分火急之儀不一通、非常之儀
ニも御座候間、右之通取斗申候、且又 御宮口御宝塔幷
私御領一之御門御別条無御座候、尤未地震も相止不申候
間、此処猶又無油断手当等申付置申候、且御山中破損所
等之儀ハ追て取調可申上候得共、先不取敢此段御届申上
候 以上
十一月四日 榊原越中守
私在所遠州掛川去ル四日辰ノ下刻大地震ニ而、天守櫓始
其外城内外所々潰家破損等数多有之、且城下町不残潰家
相成、右場所ゟ出火有之候段在所表ゟ申越候、委細之儀
は追而取調可申上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月七日 太田摂津守
私在所駿州田中昨四日朝五半時過頃ゟ大地震ニ而、城内
住居向幷囲場等破損、家中屋敷・城下町・領分村々潰家
数多ニ而、死失人等も有之、其上右潰家ゟ出火有之、東
海道往還通兎嶋村地内八幡橋震落申候、且今以折々相震
申候、委細之儀ハ追而可申上候得共、先此段御届申上候
以上
十一月五日 本多豊前守
昨四日巳ノ上刻頃駿州久能稀成大地震ニ御座候処、私陣
屋内損所幷領中潰家等も有之、其上津波ニ而波押入候郷
家も御座候間、委細之儀は取調候上追而可申上候得共、
先此段御届申上候 以上
十一月五日 榊原越中守
昨四日辰下刻豆州下田表地震、其上津波ニ而人家等流失
仕候処、兼而差出置候囲人数山手江引揚無別条、野陣罷
在警衛向差支無之趣申越候、固場異変ニ付、此段御届申
上候以上
十一月五日 水野出羽守
地震ニ付
御尋被下置左之通
八丈合糸織三反ツゝ筒井
羽折壱川路
伊沢
都筑
松本
同断二反ツゝ村垣
羽折壱古賀
右之通被下候由
右之外日光山大雷大雪と申風聞ニ御座候
去ル四日下田表地震強、其上洪波ニ而出水夥敷、御役所
向を始在・町人家・湊船々数多悉流失、怪我死人等も可
有之候得共、未聢と相分りかたく、筒井侯始其外旅宿等
も流失致し候由、応接御懸り御役人衆ニは御別条も不被
為在一先御安堵、乍去末々ニ至候而ハ生死之程も難斗、
右ニ付而ハ応接所も相替り可申哉、今六日不取敢為御手
当金弐千両彼地江御差立ニ相成申候由ニ御座候、彼異船
之方如何相成候哉、多分響も可有之候得共是又相分りか
たく、大嶋抔ハ如何変化仕候哉、是又同様之由、駿州は
猶更地震強
御城中所々震崩、其上市中大火ニ而数多之怪我死人も可
有之由、飛脚之者彼地出立之砌鎮火之様子無之趣、東海
道筋は余程之事、箱根山往来不相叶由風説仕候、
此度之儀は
公儀ニおゐても莫太之御入用相掛り恐入候儀ニ御座候、
不差留儀ニ候得共承り込候故極密申上宜候、決而御他見
は、御用捨可被下候 以上
十一月六日
此書面いつ方ゟ出候哉難斗、多分此表ニ残り居候下田浦
賀掛り与力ゟ出候歟と奉存候
（中略）
（注、御城御沙汰書の内地震に関係ある右の一件のみ掲載する）
土方備中守
名代 土方大次郎
領分地震ニ而陣屋向破損、其外山堤崩、潰家等も不少可
為難儀と被 思召候、当時御事多ニは候得共、出格之訳
合を以金千両拝借被仰付之
右於波之間、老中列座、伊賀守申渡之
一御国表ゟ東海道筋地震之模様為承調遣候御旗之者椿井駅ニ
而江戸表ゟ来候飛脚之者ニ引合罷帰相達候書付左之通
箱根山新屋少々損し、同宿御本陣三軒共丸崩、宿家数八
歩斗崩
明神宮ゟ東之方
（
焼失跡ハ丸潰
其上道筋大損し
三嶋宿
（
御城始宿家七歩潰家其上
出火少々有之
沼津宿
家弐歩通損し 原宿
（
九歩通焼失
御本陣も潰レ焼ル
吉原宿
不残潰家 岩淵
（
中程ゟ東ハ潰レ
西ハ焼失
蒲原宿
少々損し （
油井宿
興津宿
（
東方少々残り
跡ハ不残焼失
江尻宿
潰家焼失共九歩通 府中
少々損し 丸子宿
半潰 岡部宿
（
東之方二三歩通
焼失
藤枝宿
少々損し 嶋田宿
御本陣幷宿潰 金谷宿
但小屋五ケ所相立御救有之
少々損し 日坂宿
（
御城崩宿不残
焼失
掛川宿
一掛川ゟ袋井迄之間之宿不残潰焼失
丸焼 袋井宿
少々損し 見附宿
同 浜松宿
同 舞坂宿
（
御関所津波ニ而
流レ御門斗残り
宿家少々損し
今切
但此所迄箱根ゟ橋々不残落る
右新居宿ゟ大垣宿迄ハ少々ツゝハ宿家・間イ（ママ）之宿家共
損し有之、橋々も落所有之
一江戸ゟ小田原迄ハ人馬共継立仕候、当月十五日ゟ舞坂
宿も継立仕候、箱根宿ゟ舞坂迄之間ハ当廿日頃ゟ段々
継立も有之由
右宿々死人之儀ハ未相知レ不申、牛馬之儀も相知レ不
申候
一道筋川堤共大損し
一板取村寺田三郎左衛門ゟ御勘定所江相達候書付、月番御奉
行雨森儀右衛門差出之、左之通
東海道
江戸ゟ箱根迄ハ未タ慥成事不知
一箱根山御関所少々いたみ
一三嶋宿 丸崩ニ而半焼
一沼津宿 丸崩、御城いたみ
一原宿 丸崩ニ而半焼
一吉原宿 右同断
一蒲原宿 丸崩 丸焼
岩淵 丸崩
一油井宿 半崩
一沖津宿 丸崩、半焼
一江尻宿 丸崩、丸焼
清水湊 右同断
一府中 （丸崩ニ而
江川町ゟ出火横田町江焼抜
一丸子 丸崩
一岡部 同断
一藤枝 （八歩崩ニ而
左平町焼御城いたミ
一嶋田 半崩
大井川未越しなし壱人ツゝ相対を以頼越なり
一金谷 丸崩
一日坂 同断
一掛川 （丸崩ニ而半焼
御城いたミ人馬多分死ス
一袋井 （丸崩ニ而丸焼
人馬多分死ス
一見附 八歩崩
横須賀 城いたみ町内丸崩壱町焼
相良城下 同断
川崎 津波ニ而皆流
山なし 丸崩
一濱松 七歩崩
一舞坂 丸崩ニ而、片側津波ニ而流
一白須賀 丸崩
一新居 （御関所始皆々
津波ニ而流
一二川 七歩通
一吉田 御城いたミ、町七歩崩
奥都 津波ニ而流
一御油 少々
一赤坂 少々
一藤川 少々
一岡崎 少々
西尾御城下少々之事
一池鯉鮒 半崩
一鳴海 同断
一宮 崩少々、津波少々
一大垣 崩少々
一名古屋 同断
伊勢路
一桑名 崩少々
一四日市 半崩
一神部 同断
一白子 同断
一上野 同断
一津 （御城下津波
町へ弐三尺上ル
一松坂 同断
一山田 崩少々
一川崎 津波ニ而余程流
一志州鳥羽 津波ニ而皆流
一信州松本城下家三百斗崩
内百五拾軒焼
一甲府未慥成事不知色々沙汰有之、先半いたみ位之事
右之外駿・遠・三、三ケ国内在々所々間之宿有之候得共書
記不申
十二月朔日
一去月廿日晩立通飛脚、道中六日振之処、人馬指支ニ而所々
手間取、今巳ノ中刻到着
御城御沙汰書之内
十一月十日
金五枚
時服弐
羽折 御目付
大久保右近将監
駿府表地震ニ付、御城内外久能山御宮其外近国取締り見
分為御用罷越候ニ付被下之、御席無之ニ付 御目見不被
仰付候
右於御右筆部屋縁頰、老中列座、伊賀守申渡之、若年寄中
侍座
金三枚
時服弐 御勘定組頭
吉川幸七郎
金弐枚
時服弐
御勘定
（直井倉之助
猪俣英次郎
駿府表地震ニ付御城内外久能山御宮其外近国取締見
分為御用罷越候ニ付被下之
右於御右筆部屋縁頰、伊勢守申渡之、遠藤但馬守侍座
金十両 御目見侍格
御徒目付
太田子之助
右同断ニ付被下之
右於躑躅之間、若年寄中出座、本庄安芸守申渡之
同 御徒目付
伊庭保五郎
右同断ニ付被下之
右於焼火之間遠藤但馬守申渡之
十一月十一日
金弐枚
時服弐
御勘定
田辺彦十郎
東海道筋宿々地震ニ付、場所見分之上旅人休泊・人馬継
立方、其外御救筋取調為御用罷越候間、被下之
右於御右筆部屋縁頰、伊勢守申渡之、遠藤但馬守侍座
十一月十六日
常紫衣 深川霊巌寺
右被 仰付旨、於御白書院縁頰、老中列座、伊賀守申渡之
十一月九日
一諏訪因幡守殿ゟ為御知
因幡守領分信州諏訪郡去四日巳上刻致地震、城内破損所左
之通
一本丸冠木門幷番所大破
一本丸玄関前大腰掛潰
一武器溜土塀損
一東ノ方櫓大ゆかミ壁損
一巽之方櫓大ゆかミ壁損
一同所櫓続両隅開
一玄関左右壁大破
一本丸住居向破損所多分有之
一西之方多門半潰
一同所続塀大破
一南ミ方門幷番所損
一同所続多門壁損
一同所高土塀十間潰
一厩大破大ゆかミ片側潰
一天守壁大破
一二之門台ゆかミ
一文武稽古場大損
一作事屋所々破損
一城詰米蔵所々破損
一三之丸門ゆかミ幷同所塀損
一同所玄関大破
一同所中之口板塀潰
一同所住居向大破、潰場所も有之
一同所舛形塀潰
一同所多門三ケ所潰
一同所役所大破
一三之門大ゆかミ大破
一同所番所大ゆかミ
一同所続塀潰
一大手門台大破
一同所舛形塀十二間潰
一同所番所後塀五間潰
一同所門続高塀折廻シ、十間潰幷所々損
一同所櫓壁落大破
一城内土蔵五ケ所庇大破
一同所長屋四ケ所大破損候場所も有之
一城内石垣崩候場所も有之
一城内外侍屋敷委（悉カ）大破、潰家も有之
右之通御座候、人馬怪我無御座候、領分民家潰家破損所等
未相知候間、追而御届可被差出旨先御届書今朝御用番様江
被差出候、右為御知
（中略）
十一月十二日
一阿部播磨守様ゟ為御知
遠州御領分去四日巳刻大地震ニ而御陳屋向不残震倒、其
外長屋向幷村々潰家破損所等夥敷有之、人馬怪我等之儀
ハ何分取調出来兼候付、委細之儀ハ取調之上追而可被仰
上候得共、播磨守様御在邑ニ付先此段御家来之者ゟ御
届、御用番様江指出申候、右為御知
十一月十四日
一御同人様ゟ為御知
信州御領分去四日辰下刻地震強、御陣屋幷御長屋向且村
村潰家破損等数ケ所有之人馬怪我等之儀は何分未取調出
来兼候間、委細之儀追而御届可申上候段、今朝御用番様
江御在邑中ニ付御家来之者ゟ先御届申上候、右為御知
十一月十四日
一松平備後守殿ゟ為御知
備後守在所加州大聖寺、去ル四日辰中刻地震強、其後度
々相震、居所向所々破損、侍屋敷幷領分在・町共破損所
夥敷、潰家等も有之、人馬怪我等之儀ハ未相知不申候、
委細之儀は追而御届可被申上候得共、先御届書今夕御用
番様江被差出候、右為御知
十一月十七日
一藤堂和泉守殿ゟ為御知
領分伊賀・伊勢・山城・大和、当四日・五日両日亦候大
地震有之、城内外ヲ始、侍屋敷大半損し、町郷とも潰家
或ハ半潰等数多、死人・怪我人も有之、其上四日ニハ高
汐ニ而伊勢之方田畑汐入ニ相成、猶内分佐渡守領分いせ
城和も同様ニ而、侍屋敷町郷共所々崩損し、鳴動相止不
申、毎々相震候趣ニ御座候、尚委細之儀は追而御届可
申上旨、昨夕御用番様江御届被致候、右為御知
十一月十八日
一松平阿波守様ゟ為御知
去ル四日辰中刻過・同六日申刻頃、阿波国・淡路国共稀
成地震ニ而、御城下・諸士屋敷・市・郷共潰家不少、海
部郡浦々江南海ゟ洪波打掛、同郡人家流失夥敷、溺死
人・怪我人数多有之、且其外洪浪地震ニ付、処々殊之外
破損、其上処々出火ニ相成、同六日暁ニ至致鎮火候、尤
御城内御別条無御座候段御用番様江先御届被成候、右為
御知
一下田表
公辺ゟ出張之御役人身一ツにて山上江逃上候由、漸助り
候旨具足等も不残流失之由、異国船ゟ変事可有之候旨前
以為知候由、異船ハ俄ニ五里斗も沖之方江出候由、異国
船も少々破損有之趣、番船不残破船ニ相成、異国船ゟハ
ツテラ船を出し、助ケ候由之処、右助ケニ出候異船も破
損候由
飛脚問屋張出シ
一見附大半震潰
中泉辺往来割れ、竪横われ之由、われ目一尺余も
有之趣
一浜松震崩
但浜松ゟ仕立飛脚、十一月九日朝飛脚問屋京屋弥兵衛
方へ到着、同人方張出有之、尤東海道宿次荷物往還不
相成、一人立通行丈ケ成候旨
十一月十四日
藤堂和泉守殿江飛脚着候由沙汰有之、御留守居ゟ問合候処、
去ル四日立侍飛脚、道中四日振ニ而十二日到着
一津城内地震ニ而大破相成候由、津波のあふれ水城下江三
尺斗押入候由
一桑名城内破損有之趣、城下ハ格別之儀も無之由
一神戸格別之痛も無之趣
一宮余程潰家も有之、津波も強候趣
十一月十五日
一御国表去ル二日出立、新中間之者今日到着承調候処
小谷ニ而地震有之、余程強家居三尺斗もふれ候由、其日
雪四尺斗降り候由、彦根・長浜辺潰家等有之趣沙汰之由、
大垣御城内破損、御城下潰家等も夥敷、名古屋格別痛も
無之趣、起川河原割レ、渡船留り、下之方へ相廻り越
立、宮辺ゟ北方（カ）潰家多荒井御関所津波ニ而痛、往来留
り、本坂越罷越、道中痛夥敷、尾張海辺ハ津波、死亡人
夥敷と申事、道中橋々悉落、矢はき橋弐ケ所めり込候
由、往来われ、水吹出しわたり候所も有之由、箱根迄ハ
悉く大破之由
同日
一今日本多八十郎殿御出江戸
御城内御破損御入用積弐万両と申事之由、御勘定奉行被
申候由御咄有之、大坂天満橋も落候由
一長崎辺も津波有之趣沙汰有之申候
一去ル四日巳上刻頃大地震ニ而、役所・本陣其外宿内七分通
倒家ニ相成、即死・怪我人等余程御座候由、只今ニ而は得
と相分兼申候、右ニ付上下一円通路無御座、休泊継立方差
支申候、猶委敷儀は追而御達可申上候
十一月六日 金谷詰
七里之者
一昨五日御達申上候、小田原ゟ三嶋越之儀行届人馬継送候
処、三嶋入口之河原ケ谷大橋落候ニ付、馬荷物等は越方不
行届、橋手前ニ荷物預置候由、依之箱根ゟ三嶋宿・沼津
宿・吉原宿其余西ハ焼失多分之由、休泊之儀は難出来、歩
行越之儀ハ故障無御座、昨夕も駿府状箱下り申候、依之人
馬継送り之儀当分差支申候、此段申上候
一駿府ゟ飛脚今日辰下刻小田原江罷越、今般大地震ニ付、御
城内不残焼失致候由、火未納不申、内々早速飛脚出立、江
戸表江注進之由承申候
一掛川太田摂津守殿人数、今般異国船渡来ニ付豆州下田湊江
出張相成候処、去ル四日巳上刻頃ゟ申刻頃迄之内大洪波打
返し、右太田殿人数之儀は山江登り申候、町中千軒程之町
家ニ候処、多分海江住居家引込申候、大変之趣右飛脚ゟ今
朝承知仕候
但大洪波之儀は九度程も打上候由ニ御座候
十一月六日 小田原宿
七里之者
一十一月四日辰中刻頃大地震ニ而、潰家破損有之、夫ゟ数度
今以震止不申候
一由比宿本陣初、宿中損家出来候得共、人馬怪我も無御座、
右ニ付宿中之者由井川河原江戸障子囲ひニ而野宿仕居候、
私共儀も同様ニ御座候、詰所之儀為指破損無御座候
一由井宿より蒲原宿迄之間、村々潰家破損等御座候
一蒲原宿之儀不残潰家、其上問屋場ゟ西江両側弐町程焼失
仕、即死・怪我人馬等も御座候由
一蒲原宿ゟ冨士川端迄村々不残潰家、山崩ニ而埋り、即死人
馬等も御座候由、右ニ付冨士川渡り船不仕候、尤流失破損
船御座候由
公辺御状箱之儀ハ居合候商船ニ而御越立可仕旨名主共申聞
候ニ付、御家御状箱之儀も御同様取斗候様申談置候
一由井宿西興津宿迄之間、村々潰家損家所々御座候
一興津宿之儀潰家凡百軒程、其外大破ニ御座（ママ）、清見寺内潰本
堂半潰、江尻宿迄之間村々潰家損家所々御座候
右之通ニ付、一円往来無御座候、委細之儀は追而御達可申
上候得共、先不取敢此段御達申上候以上
十一月七日 由井宿
七里之者
一今般当所地震ニ付、不取敢御達申上置候得共、巨細吟味仕
候ニ付、御達申上候
当所之儀東西拾八町、家数千三百軒斗御座候処、九分五厘
斗倒家ニ相成、残之分皆々及大破候ニ付、住居仕候家ハ壱
軒も無御座候
一怪我人之儀数多御座候ニ付、難相分候
一明神前市ケ原と申所ゟ出火致、伝馬町と申処長サ弐町斗横
幅壱町斗も焼失仕候
一米・麦・酒・溜・油・紙・蠟燭・炭等少々も売不申候、付而
は貯御座候者ハ宜敷候得共、其外下々之者ハ致方無御座、
薩摩芋又ハ大根等を喰物ニ致候、尤米・油等少々ツゝ御座
候は致方なく、少しツゝ施行致候、私共儀ハ昨日宿中を尋、
米五升・油弐合程懇意合ニ而先々取賄申候、蠟燭之儀ハ定
日宰領庄吉へ相頼五挺譲受候仕合ニ御座候得共、是（ママ）先之儀
は誠以心細く相勤申候
一沼津宿之儀ハ八分通りも家倒申候、其外及大破申候
一即死之儀は拾三・四人之様子ニ御座候
一怪我人之儀ハ数多御座候、右地震ニ付船ニ而逃候処又々洪
波ニ而即死人御座候得共、人数之儀は不相分候
右之通相違無御座候、依之御達申上候
十一月七日 三嶋宿詰
七里之者
一去ル四日辰下刻地震ニ付、冨士川留り候間、登り方之儀一
向相分不申、依之御達申上候儀延引仕候
一元吉原村潰家無御座、役所別条無御座候
一右村登り方潤（本ノママ）井川往還橋崩落通路差留申候
一吉原宿九分九厘之震潰、右宿伝馬町弐町程焼失、依之人馬
継立も当分出来不申候
一岩淵村之儀家之上江石かけ段々崩落、死人数不相知候
一蒲原宿是又震潰、出火之様子ニ御座候
一由井宿之儀ハ潰家も無御座由ニ御座候
右之通抜道等通り来り候旅人等ニ承候間、不取敢御達申上
候
十一月七日 元吉原
七里之者
風説承候趣御達申上候
一去ル四日大地震之儀は先般御達申上候儀ニ御座候得共、追
々諸向ゟ急飛脚通路仕候ニ付右飛脚ニ承候次第荒増御達申
上候
一豆州下田詰大久保加賀守殿人数之内より領主江注進ニ相越
候飛脚之者承り候処、下田辺之儀は去ル四日辰下刻頃大地
震ニ付、老若男女を助出し、皆々船ニ打乗逃出候処、俄ニ
洪波打上ケ、右之船共悉く波に引込れ、其余湊ニ掛り船致
居候大船抔も不残洪波ニ引込れ、且海岸向ニ人家千軒余も
御座候処、一統ニ押流れ、纔七八軒程も残り候由、右之通
ニ候故、死たる者何程共相分不申との事、併
公辺初沼津小田原ゟ被相詰候御役人幷御固人数之儀ハ、武
器類を初、諸色等は不残押流れ、身之儘ニ而逃出、漸命斗
助り、模（ママ）寄〳〵の山手江逃退候由
一下田湊ニ懸船致居候異国船之儀は両三度程覆り候様ニ相見
候処、彼船ハ帆ケタ数多御座候故、右帆ケタを左右ニ（ママ）詰
付、湊之内を無左右廻り居候所、纜等丈夫ニ御座候故哉覆
りハ不仕候得共、船は大破ニ及候間、右之様子ニ而は帰帆
之儀難成相見申候由、右船ニ而も死人・怪我人廿人余も有
之候由、其余ハ半死半生ニ而御座候由、右之趣下田ゟ小田
原領主へ注進之者ゟ承申候
一駿府御城内ゟ江戸表江注進ニ相越候飛脚之者ゟ承候儀ハ府
中宿之儀も大地震ニ而皆々押潰レ、其上出火ニ而焼失致候
ケ所数多ニ而、家数ハ未何程と申儀不相分候由承申候
一掛川領主ゟ江戸表江注進ニ相越候飛脚之者ゟ承候儀ハ、懸
川宿之儀も大地震ニ而不残押潰レ、御城内迄も過半押なが
れ、其上出火ニ而焼失之ケ所も多分ニ御座候由、併其内ニ
も格別大損等無之駅村も御座候由、右之通夫々之飛脚之者
ゟ承候付、此段御達申上候
但箱根宿之儀は今以地震節々有之候付、先般御達申上候
通、宿内一統野宿致居候仕合、私共も右之通野宿仕居候
一箱根宿之儀ハ半途ハ小田原之支配、半途ハ江川太郎左衛門
殿支配ニ而御座候処、右江川殿支配之方壱軒ニ付、米半俵
ツゝ御救米として御代官ゟ被下置候由、小田原殿支配之方
ハ今以何等之御沙汰無之候得共、追々領主ゟ見分として諸
役人之面々被相越候、是等之儀も書添御達申上候
十一月七日 箱根宿詰
七里之者
（中略）
（注、松平阿波守よりの届出は〔藤岡屋日記〕一二七頁にあるため省略）
在所三州田原今四日辰中刻過大地震ニ而、城内住居向不残
大破、櫓壁落所塀・石垣・土蔵等崩幷家中屋敷・在・町共
一同大破潰家有之、其上高汐打入、橋堤等損所も有之、海
岸欠込漁猟船道具共多分流失候、人馬怪我等之儀は未相知
兼申候、委細之儀は追而申上候得共、先此段御届申上候
以上
十一月四日 三宅対馬守
在所志摩国鳥羽、去ル四日辰中刻大地震ニ而本城其外共所
々破損有之、引続大洪浪ニ而城内櫓・塀・門・侍屋敷・長
屋向潰破損流失幷町・在共潰家流失夥敷、溺死人・怪我人
等之儀未相分り不申候、委細之儀は取調追而可申上候得共
先此段御届申上候以上
十一日 稲垣摂津守
私在所三州刈谷、昨四日辰中刻大地震、本丸多門・二ノ丸・
住居其外構向・堀・石垣所々惣躰破損幷家中屋敷・町・在
共潰家有之、東海道往還筋泉田村地内尾張三河境橋震落申
候、人馬怪我等委細之儀は追而御届可申上候得共、先此段
御届申上候以上
十一月五日 土井大隅守
私在所駿州小嶋居（カ）当三月中焼失仕候ニ付、焼残候長屋内仮
住居罷在候処、去ル四日辰下刻大地震ニ而所々及大破候、
尤焼失後住居向未出来不仕候得共、右場所石垣等崩幷土蔵
半潰、其外家中長屋等も大破ニ相成、且領分村々潰家多分
有之、即死・怪我人等も有之候段届候間、早速見届之者差
出し候処、山附村々之分元山崩多分有之、道橋損往来通路
難相成場所も出来、百姓家数多皆潰ニ而出火有之、怪我人
等出来申候、且川々堤平地同様押埋、田畑土砂吹出、亡所
相成、浜附村々之分は津波ニ而堤切所数ケ所出来、漁船等
数多打砕申候、前文之次第ニ付、甚以心痛当惑仕候、猶委
細之儀は追而可申上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月九日 松平丹後守
昨四日巳刻・翌五日申下刻地震強く、私城内二丸住居向幷
櫓少々ツゝ破損、且又家中屋敷破損数ケ所、領分郷・町潰
家・半潰家・破損等御座候、未穏候ニ付委細之儀は追而可
申上候得共、先此段御届申上候 以上
岡部美濃守
和州郡山、当四日朝五半時頃甚敷地震強く、翌五日夕七ツ
時過右同様ニ付、城中住居向幷所々破損所等有之、怪我・
死人・牛馬損等之儀は追而御届之旨在所表ゟ申越候間、此
段御届ケ申上候 以上
松平時之助
私在所美濃国大垣、去ル四日巳刻地震ニ而城中石垣数ケ所
崩、天守櫓多門住居向其外曲輪門破損夥敷、翌五日酉上刻
頃又々甚敷地震ニ而、弥以損所家中屋敷・町方・領分潰家
怪我人等は相分不申、今以折々震動相止不申候、委細之儀
は追而可申上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月十七日 戸田采女正
私領分信州岩村田陣屋幷宿内在町共、去四日辰中刻地震甚
敷、潰家破損所多分有之、引続震動相止不申候、人馬怪我
等未相分兼候段申越候、委細之儀は追而取調可申上候得共
宿場之儀ニ付此段御届申上候以上
十一月五日 内藤豊後守
遠州気賀御関所、去ル四日辰中刻頃大地震ニ而、西番所傾
所々破損、東御門地形落入傾、矢来倒、石垣崩其外ニ而も
大破、家中・在・町共潰幷破損所橋落、石垣崩、堤破損、
人馬怪我等相分兼候段在所表ゟ申越候、委細之儀は追而御
届可申上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月十五日 近藤縫殿助
私領分濃州高須、去ル四日辰中刻過ゟ強地震ニ而、居所幷
侍屋敷在所破損所潰家有之、其外川々堤通所々震裂出来之
処、其後も引続折々相震、翌五日申刻過又々余程之地震ニ而、居所始メ小破之分追々弥大破ニ相成、其後も震止不申
旨申越候、人馬怪我等は無御座趣ニ候得共、未委細之儀は
難相分、此段申達候、猶追而取調之上可申達候 以上
十一月十六日 松平摂津守
私在所駿州沼津城下上ケ土町ゟ昨夜戌上刻出火、去ル四日
地震ニ而之潰家破損所打交六十五軒焼失、同子上刻火鎮り
申候、尤人馬怪我等無御座候、往還筋之儀ニ付此段御届申
上候以上
十一月十四日 水野出羽守
私在所摂州尼ケ崎、去ル四日辰中刻大地震ニ而、櫓・住居
向・其外城内所々潰家破損等多分有之、且翌五日申中刻又
々大地震ニ而、其上津浪ニ而城下市郷共数ケ所潰家御座
候、尤人馬怪我等未相分不申候段、在所家来之者ゟ申越
候、猶委細御届可申上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月十六日 松平遠江守
私在所勢州桑名郡長嶋・新田共去ル四日辰中刻大地震ニ
而、城内住居向幷囲塀共破損、櫓潰其外士屋敷・在・町共
潰家損所有之、且領分惣堤引割引下ケ之場所数多有之、今
以度々相震申候、尤人馬怪我無御座候、委細之儀は追而可
申上候得共先此段御届ケ申上候 以上
十一月十五日 増山河内守
（中略）
在所信州高遠、去々四日辰刻過ゟ大地震、城内住居破損数
ケ所、櫓破損、塀・門・侍屋敷・長屋向破損所夥敷、潰家
幷人馬怪我等も無御座候、在所其外村々之様子未相分候得
共、先不取敢此段申上候 以上
十一月九日 内藤駿河守
私領分駿州志太郡横内村、去ル四日辰下刻大地震ニ而、役
場幷長屋等不残、同村民家惣潰ニ相成申候、外村々之様子
幷人馬怪我等之儀は未難相分候旨同所役場詰家来之者ゟ申
越候、委細之儀は取調之上可申上候得共、此段御届申上候
以上
十一月十一日 松平能登守
拙者在所信州飯田郡（ママ）去ル四日大地震ニ而櫓・塀破損、石垣
崩落、家中屋敷幷領分在・町潰家御座候段在所表ゟ申越
候、委細之儀は追而可申上候得共、先此段御届申上候 以
上
十一月十一日 堀石見守
私領分遠江国山名郡之内村々、去ル四日辰下刻頃ゟ地震ニ
而役場向大破、百姓家其外大半潰破損所有之、且同郡柴村
之内潰家ゟ出火仕候得共、外類焼は無御座候、尤人馬怪我
も有之趣候得共、未相分、猶委細之儀は追而取調之上可申
上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月十一日 遠藤但馬守
河内守領分遠州榛原郡村々、去ル四日辰下刻大地震ニ而潰
家倒家破損等夥敷有之、浜手之方別而強く、人家惣潰申
候、役場之儀は損所御座候得共、別条無御座候、尤人馬怪
我等之儀は未相分り不申候旨同所役場詰家来之者ゟ申越
候、委細之儀は追而取調之上可申上候、河内守在邑中ニ
付、先此段御届申上候 以上
十一月八日 増山河内守内
鈴木旗三郎
玄蕃頭領分遠州榛原郡・城東郡、去ル四日辰中刻大地震ニ
而陣屋破損仕、其上引続同所平田村江は津浪同様之波打
込、村々山崩有之、且又相良町・福岡町等引続出火仕、只
今以地震之儀は昼夜無限有之候趣、彼地差置候家来之者ゟ
申越候ニ付、御届申上候、委細之儀は追而取調、猶又可申
上候得共、先此段御届申上候 以上
十一月五日 田沼玄蕃頭内
篠原昌左衛門
十一月五日 富永孫六郎よりのお届書
（注 〔嘉永七寅年地震記〕三一四頁と同文につき省略）
御留守居ゟ藤堂和泉守殿留守居方江問合左之通申来る
越州様
御留守居方 津
同所
書役
御書役中様
尊翰奉拝誦候、如来命向寒之砌、弥御安泰被成御座奉恐賀
候、然は去ル四日地震ニ付国許幷道中筋之模様御内々御問
合ニ付、有増左ニ申上候
一勢州津表、当方城内外・在・町共地震之破損強く、其上城
下江は津浪余水押出し、三尺程致出水候旨注進有之候
一同神辺御城幷町方共格別御障無之由
一桑名駅御城内は御損強く、外廻りは町家共格別之事ニは無
之、何レも壁を震落候位之事ニ而、潰家等は無之、猶津浪
之障も無之由
一宮之駅は地震之痛ミ殊之外強く、潰家多分ニ而怪我人も有
之由、都而人気騒立居候様子ニ通行之節見受候由、猶又海
辺最寄ハ津浪之難事も強との事ニ御座候
右は津表ゟ四日限之侍飛脚十二日朝到来いたし、是江問合
伺承申上候得共、何レも途中過急之通行ニ付、巨細之気配
り届兼、有増及見聞候丈之由ニ御座候、尤道中筋往還通路
幷人馬次立等之儀は何レも差支無御座、乍去休泊中食等之
ケ所は至而不手当之由申候
右御報迄如此御座候、猶御再問之義も候ハゝ無御遠慮被仰
越候様仕度、分り候分ハ申上候様可仕候、早々 以上
十一月十四日
十一月六日夜到来
一今辰下刻稀成地震ニ而宿内人家幷寺院迄不残相潰、其内焼
失も有之、尤家数未相分、人馬怪我等之儀も今以取調不
申、且又往還東ノ方新町橋・東西橋台めり込、通路無覚束
奉存候、依之此段不取敢奉御注進候 以上
江川太郎左衛門御代官所
十一月四日東海通
三嶋宿
役人惣代
問屋見習
佐左衛門
本多加賀守様
御役所
十一月六日夜九時到来
一今四日辰下刻天気快晴ニ而俄ニ致地震、即座ニ当府中類焼
残り候家居潰家多分、仮問屋場幷御秤掛所等ハ既ニ潰可申
処、半潰同様相助候処、本陣・脇本陣家作等皆潰ニ而、其
外人家潰家等ニ而被打敷、即死等有之内、出火等ニ相成候
趣ニ付、駈付相防先差静申候、勿論市中一同多く潰家ニ
而、右同様死亡人幷人家被相毀等聢と御届申上候迄、先不
取敢宿継を以奉申上候 以上
十一月四日夜戌中刻過出
甲州道中
府中町
問屋
加藤源六郎
本多加賀守様
御役所
十一月七日到来
大井川出水、今四日辰下刻地震ニ而同所ゟ人馬越共無御座
候ニ付御注進申上候 以上
十一月四日巳ノ上刻出
大草太郎左衛門手代
藤沢政蔵
今四日出水、常水ニ弐尺余之増水ニ御座候、去々四日辰下
刻ゟ地震ニ而人家不残相潰候、往還通・石垣・石橋等不残
相潰候、往来不相成候ニ付、冨士川渡船不仕、尤流失破損
仕候得共、御継立急御用状御用物之儀は、居合候商船を以
御太切御越送仕候ニ付、此段奉申上候 以上
十一月四日巳上刻出
東海通冨士川
渡船役人岩淵村
役人惣代
名主
八十八
新右衛門
孫右衛門
右は此度地震ニ而宿御継立も行届兼候ニ付、嶋田宿伝蔵当
宿迄持参仕候ニ付、召連□奉指上候 以上
十一月四日 品川宿
帳付孫兵衛
東海道宿々地震
一小田原 人家少々損し宿内無難之由
一箱 根 人家潰候所も有之怪我人無之由
一三 嶋 人家打潰、神町橋際ゟ出火ニ相成、明神前ゟ伝馬
町久保町方江三町程焼失
一沼 津 御城内潰レ過半押潰、怪我人数多有之由
一原・吉原・蒲原・由井・沖津・江尻
此六ケ宿不残潰レ通路難相成由
一駿 府 人家不残打潰、出火ニ相成、御城内大崩、怪我人
数多有之
一鞠子・岡部
人家少々ツゝ損し
一藤 枝 田中御城内平一面崩人家不残潰れ出火ニ相成宿内
過半焼失死人怪我人数多有之
一金 谷 人家潰レ怪我人数多有之相良表同様其上津浪ニ而
大損
一掛 川 人家押潰レ出火ニ相成横須賀御城内大損之由
一袋 井 人家押潰レ是も出火ニ相成
一見 附 浜松
人家押潰レ怪我人有之
一荒 井 人家潰レ出火ニ相成其上御関所津浪ニ而大損怪我
人有之
一白須賀 二川
人家潰れ
一吉 田 御城内大損町家潰レ出火ニ相成
東海道筋吉田宿承り夫ゟ先上方筋未タ相分り不申
候
一甲州街道
小仏峠ゟ先は宿内野陣張甲州表少々相潰レ候由
一信州松本
御城外大崩レ出火ニ相成候由
〆
新川酒問屋之由
尼屋甚四郎様 飛脚問屋之由
同 甚蔵様江戸屋
仁三郎
同 利兵衛様
（十二月八日）
御城御沙汰書之内
十一月廿四日
（注、他出あるため省略）
大坂表ゟ文通之写、今般大地震幷高浪之次第見聞之儘
荒増左ニ申上候
六月十三日大地震有之、以後打続小震大小打交り、折々震、
既十月廿日後にも少々厳敷震候事も有之候得共、都而六月之
発動ト而已相心得居候処、当月四日朝五半時頃不存寄大震
動、六月之度ゟハ一際烈敷相覚、尤夏之節ハ始メ厳敷次第ニ
細り候様覚申候へ共、此度は始メゆる〳〵尻張ニ至而長く震
候、市中古家或は土塀崩候処数しれす、右潰家ゟ出火所々夥
敷有之候得共、幸と暫時ニ鎮リ候、寺方本堂廻り大破数多、
社地・井戸屋形・絵馬堂悉く崩れ、其内天満天神は井戸屋形
斗潰れ、其外ハ無難、外方社地石鳥居打崩候処も数多有之、
市中即死之者も不少、怪我人数不知、堂附ニ而は悉く家宅破
損、全く潰家は三軒、誠ニ画ニ書ク如く潰れ、其後時々大小
震動数度ニおよび、昼夜之分かちなく騒動いわん方なし、皆
々明地江戸障子むしろなとニ而囲ひ逃れ居、又々船江逃退候
者も数多有之候処、又々翌五日夕七時頃、前日に増（ママ）り候震動、
是も尻張りニ長く手強く震ひ、又々寺社方・蔵屋敷向・市中
小屋等大破損所夥敷、其折柄沖手ニ大雷の如く鳴音相響き、
何事やらんと存居候処、堂嶋川私方向玉江橋ゟ三ツ目西手思
恋（ママ）橋下ノ方迄凡高サ三尺斗浪一時ニ鳴音高く込入、夫ゟ上手
ヘハ壱丈斗水増、全く津浪と心附候処、下辺ゟ追々逃来候者
数多有之、其中ニも震動度々有之、皆々生た心地更ニ無御座
候、海口ニハ凡三丈余り之高サ泥浪五度打上ケ、三度目ゟ至
而高く強く打掛ケ、天保山辺新田之向々小家引込候事夥敷、
木津川口・安治川口又は沖手ニ碇泊之船大小悉く陸地江打上
ケ、川口辺之嶋々船ならぬ所もなく、小船ハ皆々押潰れ、大
船上江ハ又大船八重ニ打重り、北は則御案内之明石屋与兵衛
向湊橋ゟ二ツ目、西安治川橋迄込上ケ、南ニ而は道頓堀筑後
芝居ゟ二町西手大黒橋迄込上ケ、三四石之小船ハ皆々大船ニ
潰れ、川筋南側之家蔵皆々船之先ニ而過半突崩しめ（ママ）
たゝく内
之事ニて、船頭ハ勿論、地震ニ而小船江遁れ居候人々道頓堀
幸町女芸者・女郎等ニ至迄即死・溺死之者夥敷、追々船は引
おろし又は解おろし抔日々之事ニ而、今日迄も相片付不申、
右大船引のけ候得ハ、諸荷物幷男女死人又ハ潰れ小船等下ゟ
段々出、今ニ以て日々同様誠ニあわれなる有様ニ御座候、昨
日迄之処届済之溺死凡三千余人、其余如何様共相分不申、其
中ニは不思議ニ命助り候者も有之、生死ニ付而ハ様々あわれ
の咄しも有之候得共、くた〳〵しく、相略候、破損之船大小
打交り、八百八十艘と申事ニ而、橋落候分拾五ケ所、先荒増
如斯ニ御座候
地震は其後も今日迄も少々つゝ昼夜折々震申候、今ニ明地江
遁れ居候者も有之、又はおそれながらニ住所江戻り商売いた
し候ものも有之候而も、皆々逃支度而已ニ而油断ハ不致候、
大坂震動之内ニも少々ツゝ甲乙有之、此度ハ都而未申ノ方ゟ
震出し候様ニ相覚、西辺ゟ船場へかけ至而厳敷、次ニ堂嶋ゟ
天満江かけ少シなるき方ニ而、上町辺・御城近辺ハ又々少シ
なるき方ニ承り申候
西辺尼ケ崎・西之宮ハ大坂同様、播州路ハ定而御国元ゟ御し
らせも可被為在、四国路ハ同様高浪も有之由ニ御座候
東海道筋は追々御聞と奉存候
寅十一月
拙者在所一昨四日朝五ツ時頃地震有之、其後も折々相震
申候、然ル処昨五日夕七ツ半時頃、猶又地震強、所々破
損所御座候幷領分在・町共同様破損、潰家等御座候、尤
人馬怪我等之義ハ未相知不申候、委細之儀ハ追而可申上
候得共、先此段御届申上候 以上
十一月六日 京極佐渡守
拙者在所備中国庭瀬、去ル五日申刻・同六日午刻大地震
ニ而、住居向破損所有之、内囲・土塀・石垣・外堀廻り
土塀・石垣崩れ、家中長屋潰家半潰有之、土蔵崩れ、領
内村々幷町家等破損所多分有之、尤人馬怪我等未相分不
申候段在所表ゟ申越候、追而取調可申上候得共、大坂加
番中ニ付、家来之者ゟ先御届申上候 以上
十一月廿四日板倉摂津守家来
福目与市
［大久保右近将監江
覚
大坂近海幷勢州海岸見分被 仰付候付、駿州其外見分相済
次第直ニ勢州江被相越、夫ゟ大坂表へ罷越見分候積り相達
置候得共、東海道筋地震津波ニ而往還道橋等大破ニおよ
ひ、宿駅難儀いたし候趣相聞候間、駿州表其外見分御用相
済候ハゝ、一先帰府候様可被致候事
右書附於新番所前謁越中守殿御目付浅野一学ゟ御渡、右近
将監在勤中ニ付、如右
十一月廿五日
領分去ル四日巳刻頃地震ニ而同夜相震候処、五日申刻厳敷
震動いたし、櫓等崩損、其外城内外幷侍屋敷等破損所数多
有之、人馬怪我等無之、在町其外之儀ハ未相分不申候、委
細之儀ハ追而御届ケ可致候得共、先此段致御届候 以上
十一月廿四日 松平安芸守
阿州領分八上郡外弐郡之内村々去ル四日辰下刻・翌五日申
刻地震ニ而潰所左之通
一鎮守拝殿 壱ケ所
一寺 壱軒
一百姓家 十六軒
一納屋 五軒
一門 壱ケ所
人馬怪我無之
右之外破損所数多有之旨、嶋村陣屋・大坂御蔵も大破相成
候段、彼地ゟ申越候、此段御届ケ申上候 以上
十一月廿四日 秋元但馬守
領内比（ママ）後国・豊後国去ル五日申下刻、同七日辰ノ下刻近く
無之大地震有之、潰家倒家其外破損所等夥敷、人畜之死亡
も有之、其後も追々震申候、委細之儀は未相分不申段国許
ゟ申越候、此段御届ケ申達候
十一月廿四日 細川越中守
私領分豊後国臼杵去ル四日辰刻地震度々有之、同五日申半
刻大地震、城内外破損所強く、無程洪浪差起、大手其外海
辺之住居ハ汐込ニ相成、地低之場所は通路難出来、其後度
々相震、同七日辰刻過又々大地震ニ而、城中住居向・櫓大
破、塀・石垣崩等数ケ所有之、侍屋敷損所夥敷、右之外在
町転家破損所、別而人馬怪我等も御座候段申越候、委細之
儀ハ追而取調可申上候、先此段御届申上候 以上
十一月廿五日 稲葉伊予守
十一月廿六日 加藤於莵三郎よりの届
（注、〔藤岡屋日記〕一二七頁と同文につき省略）
領分出雲国当月四日辰下刻・同五日申下刻・同夜戌刻地震
強、其内五日申下刻別而強相震、其後七日迄度々相震候由
之処、城内外は別条なく、領分之内別而強震候ケ所は倒家
損所数多有之、怪我人等は無之、依之追而委細書付を以御
届ケ可申上候得共、急速取調行届兼候ニ付、先此段御届申
上候 以上
十一月廿七日 松平出羽守
十一月廿三日
一松平土佐守殿ゟ為御知
土佐国去ル四日巳刻頃古来稀成地震之処、同五日申中刻
一段甚敷大地震ニ而、城下諸士屋敷・市・郷共破損幷潰
家等夥敷、市中所々出火、追々及大火、同六日酉刻頃及
鎮火申候、尚其後も時々相震、東西浦々高汐ニ而人家流
失不少趣候へ共、未相分、尤城内先別条無之、人馬怪我
等其外委細之趣は当追々可被及御届候へ共、先御届今朝
御用番様江被指出候、右為御知
十一月
一森越中守殿ゟ為御知
越中守領分去四日・五日地震強、城内外侍屋敷・在・町
共所々破損幷場所寄暫時水冠相成趣、尤人馬怪我等之儀
ハ未相知不申候段御用番様江先御届被申上候、右為御知
（中略）
十二月
一宝永四年亥十月四日昼八ツ時頃大地震、当福井町家三拾
八・九軒潰れ、其余家損し、土蔵壁落し所多ク有之、大
馬出し小馬出し大橋御門御櫓其外御門々々傾損し申候、
翌五日之夜ニ入何ものゝ申出ルとなく今日大ゆり又ハ火
事可有との風聞可有とて、夜中ニ町中大きニ騒き、野辺
江立のき申候、多分道具等取置、夜中大騒動いたし、其
後毎日少々つゝゆり止ミ不申候、十五日斗之内昼夜ニ五
七度ツゝもゆり申候よし、其後一日々々とな（ママ）やすく相成
候、凡十一月迄もゆり候由、翌春壬子年正月二月迄もゆ
り候也、且又加州大聖寺迄も大ゆり申、金沢より下ハ少
々之事と申候、上は浅水より先ヘハ家損し申候程ニハ無
之候との事、摂州大坂大地震、家損し多分、死人も多く
有之、其上大動り可有と申立騒き、諸人小舟ニ乗り川々
へ出申候処、津波ニ而大船の類ひ町筋の川江駈込ミ、小
舟々々ハ沈ミ、死人凡大坂中ニ而弐万人斗と申候事、同
新地蛤川辺町家不残潰れ申候由、紀州大ゆり、熊野浦津
波、死人多し、東海道筋も大ゆり、西国の内土佐大ゆ
り、津波死人多し、今切り大損し、御番所・町共ニ山手
江上ル、箱根より江戸の方少し、京都も少し、翌年子正
月廿二日昼、同廿七日夜明前大地震也、右諸国共併此国
は少々ゆれ申候
宝永四亥年より嘉永七寅年迄百四十八年也、宝永四年
以前元禄十六年未十一月江戸大地震ニ而関東筋同断、
殊ニ江戸表は地震ニ而火事アリ、津波アリ、死人何万
人とも不知、年を越へても少々ツゝゆり候と申
御城損し候故、御普請諸侯方江被仰付候、小田原も江
府同事也と申也
右此年数も当年迄百五拾弐年ニ当ル、此度之地震ニ依
而、旧記見出書記し申者也
十二月十六日
一去ル七日晩立、通飛脚道中常振之処、山ノ中雪荒ニ而二日
逗留、今未上刻到着
十一月廿七日
一水野出羽守殿ゟ為御知
出羽守在所沼津去四日地震甚敷、二之丸住居向悉潰、本
丸・三之丸構向初侍屋敷・長屋向・領分在・町共潰家破
損所等夥敷、城内住居初家来共差置候場所ニも差支被致
当惑、依之夫々手当向取締は勿論海防之御備等迄も厚家
来共江被申付置、来月中ニも被致参府度段御用番様江御
先手様を以願書被致進達候処、御附札を以願之通被仰出
候旨
（中略）
十二月晦日
一去ル廿二日晩立通中六日振之処、今切浪荒ニ付、舞坂ニ而
一日、山之内雪荒ニ而一日逗留、今晦日到着
十二月十八日
一阿部伊勢守殿御渡候御書付写一通、大目付柳生播磨守殿
ゟ来左之通
大目付江
去年
御代替ニ付而は諸国巡見之面々御先格之通可被差遣筈之
処、当時海岸御備御手当向片時も難被差延御時節、諸家
おいても防禦手当向専務之折柄、入費も不少、就而は去
丑年より五ケ年之間厳鋪御倹約被 仰出、諸家之失費を
も御厭被遊、且又万石以下之面々軽きもの迄も厚被 仰
出之趣有之、夫々武備調練等一図ニ相励候儀ニ候、然る
処諸国巡見御先例之通近々被差遣候而ハ、諸家一般莫太
之失費も弥相増、当時専務之防禦御警衛向自然と御手薄
ニ成行候而ハ以之外之事ニ有之、其上不時之変災ニ而、
諸国地震或は津波等ニ而居城・其外住居向幷在町等迄及
大破候向も不少哉ニ相聞、是又莫太之失費ニ而、銘々可
為難儀と被思召候付、諸国巡見之儀ハ来ル巳年迄も御猶
予被遊、午年より被 仰出ニ而可有之候、就夫而は諸家
之面々も一際質素節倹を相守、自国海岸防禦筋ニ至迄愈
手厚ニ行厚（ママ）候様心得、尤今年は度々地震等ニ付、多分之
破損所有之向も取繕方手当向銘々厚く相心得、聊も等閑
ニ不相成様可被致候、尤追而巡見之面々被差遣候節は、
自国海岸手当向は厚薄幷地震津波等ニ而夫々破損所取補
理出来栄方迄も見分為致、其品ニ寄候而は追而御沙汰之
次第も可有之哉ニ付、前条之趣厚く心掛取斗候様可被致
候
但巡見之面々旅宿等之儀は諸事手軽ニ取斗可申との儀
は前々より被 仰出も有之候得共、当時格別諸家之失
費を御厭被遊候折柄ニ付、右巡見ニ付而国々ニ図新規
ニ旅宿小屋掛等取建、或ハ道橋等取繕候先格之向も有
之候ハゝ、今般之儀ハ先格ニ不抱省略方専一ニ相心
得、小屋掛等も全く雨露を凌候迄之心得ニ而、如何様
見苦鋪相見へ候とも少しも不苦候、其外諸事一際手軽
ニ取斗候積ニ相心得、省略方別段申聞候ニも不及候、
銘々勝手宜様取斗可申候
右之趣向々江可被達候
十二月
御城御沙汰書之内
十二月七日
石川主殿頭
領分地震ニ而居城内外・櫓・多門・其外家中・町・郷共
悉大破ニ付、拝借之儀被相願、可被為難儀と被 思召候、
当時御事多ニて候得共出格之訳を以金三千両拝借被仰
付之
加藤越中守
同文言、居城其外家中・町・郷共悉破損ニ付、金弐千両
本多伊予守
名代中野監物
同文言、居城所々破損、其外家中・町・郷共悉大破ニ
付、金千五百両
右於波之間、老中列座、和泉守申渡之
（中略）
十六日
太田摂津守
領分地震ニ付居城所々破損、其外家中・町郷・共悉大破
之趣可為難儀と被 思召候、当時御事多ニは候得共、出
格之訳を以金六千両拝借被仰付之
右於芙蓉之間列座、同前同人申渡之
（中略）
十二月十七日
一阿部播磨守様ゟ為御知来ル、左之通
遠州豊田郡・山名郡・引佐郡・麁玉郡幷信州伊那郡之
内、去月四日大地震ニ而陣屋向長屋向不残震倒、地面震
裂、泥水吹出、潰家破損所即死怪我人等左之通御座候
一陣屋役所向其外共不残潰
（注、〔青窓紀聞〕には左の一条あり）
一同所表門続長屋一棟潰
一裏門非常口共半潰大破 三ケ所
一土蔵潰 壱棟
一門半潰大破 壱ケ所
一稲荷社半潰 壱ケ所
一長屋潰 壱棟
一火薬所小屋半潰 壱ケ所
一郷中潰家 九百六拾五軒
一同半潰家 百四拾弐軒
一寺院潰 三拾壱ケ寺
内壱ケ寺焼失
一同半潰 三ケ寺
一宮潰 拾壱ケ所
一同半潰 八ケ所
一堂潰 九ケ所
内壱ケ所焼失
一同半潰 三ケ所
一高札破損 弐枚
一高札場破損 三ケ所
一大小圦樋破損 弐拾壱艘
一郷蔵潰 弐ケ所
一土蔵潰 六拾壱棟
一同半潰 六拾弐棟
一堤震崩 弐百弐拾間
一同破損 三千五百九十四間余
一倒木 弐百四拾弐本
但壱尺亘ゟ五尺亘迄
一道破損 八百八拾九間
一橋破損 七ケ所
一田畑破損 八拾町歩余
一即死人 拾七人
内
男七人
女拾人
一怪我人 六人
内
男弐人
女四人
信州伊那郡之内
一陣屋役所向其外共破損所々
一同所長屋潰 壱棟
一同所長屋破損 三棟
（同所土蔵壁割（ムシ）損其外
胴壁腰瓦海鼠（ムシ）壁破損
所々
天竜川
一大石積崩 五間
一用水口崩 壱ケ所
一郷中潰家 三軒
一同半潰家 九軒
右之通御座候段、昨夕御用番松平和泉守様江御届被仰上
候、右為御知
十二月
一増山河内守殿ゟ為御知来ル、左之通
河内守在所勢州桑名郡長嶋幷新田共去月四日辰下刻大地
震ニ而城内外破損所、且領分遠州榛原郡村々去月四日同
刻右同断ニ而、役場幷在町共破損所左之通
一櫓潰 壱ケ所
（
住居向幷櫓多門
塀門々等傾屋根
壁破損
数ケ所
一惣曲輪堤引割引下り汰崩根欠
内
引割 千四百弐拾壱間
汰崩引下り 延長千七百壱間半
根欠 弐百四拾壱間
一猿尾引割引下り 四拾六ケ所
一片枠枠崩 五拾八組
一長嶋幷新田共田畑汰込川成
内
汰込 高四百九拾四石六斗七升五合
汰込川成 高拾六石弐斗
一米蔵破損 三ケ所
一寺院半潰大破 三拾六ケ寺
一本堂半潰幷傾大破三拾軒
（
庫裏幷□（ムシ）家添家
傾半潰大傾
三拾壱軒
一門傾大破 六ケ所
一茶所潰 一軒
一士屋敷居家潰 三軒
一同半潰 三軒
一同添家潰 弐軒
一同半潰 四軒
（
同居家傾引下り
屋根壁大損鴨居
庇等引放
百拾一軒
一同添家右同断 拾四軒
一足軽小屋潰 壱軒
一同半潰 六軒
（
足軽小人小屋添家共
傾屋根壁破損
数ケ所
一長嶋幷新田在町破損
内
居家潰 五軒
添家潰 五軒
居家半潰 百三拾六軒
添家半潰 五拾八軒
土蔵半潰 拾五ケ所
門半潰 弐ケ所
一人馬怪我無御座候
遠州榛原郡破損所左之通
一役場向破損
一同所門傾幷続長屋・中長屋共大損
一同所囲塀倒
一同所石垣大傾
一同所土蔵大破 壱棟
一米蔵潰 壱棟
一高札倒 九ケ所
一堂潰 四ケ所
一同半潰 八ケ所
一寺院門潰 四ケ所
一庫裏潰 壱ケ所
一同半潰 五ケ所
一宮潰 壱ケ所
一同半潰 壱ケ所
一拝殿潰 弐ケ所
一籠家潰 壱ケ所
一社家居宅半潰 壱軒
一百姓家潰 弐百三拾七軒
一同半潰 弐百五拾六軒
一郷蔵潰 弐棟
一同半潰 壱棟
一土蔵潰 三棟
一同半潰 拾三棟
一堤引割引下 千百三拾間余
一山崩 壱ケ所
但右ニ付田方潰地三畝弐拾弐歩余
（
往還幷田畑共笑之割
震上震下し場所
数ケ所
一即死女 弐人
内小女壱人
一怪我人 三人
内
男壱人
女弐人
一馬斃 壱疋
右之外小破損之分ハ相除申候
右之通在□（ムシ）表且遠州役場詰家来之者ゟ申越候之段、御用
番様江御届被申上候、右為御知
一芸州広嶋ゟ十二月朔日相届候書状写
地震之儀荒々左之通り
一当月四日晴天、朝五半時頃地震、但シ、平日毎度ユリ候
分ゟハ少シ強く長し、凡ソ四五秒時位之間、尤器物之水
溢レコホレハ不仕、其後五日夕迄之内ニ少々の分ユリ候
哉否予ハ不知
一五日晴天夕七半時大地震、此分前代未聞、凡ソ二分時
位、但し別シテ甚敷間凡七八秒（ママ）時位
一栗林上の分櫓一ツ崩レ倒レ申候、其外損シ櫓ハ甚多シ
一同夜の注進ニ町中ニ而倒レ家八軒と申事ニ御座候
一御城内ハ文蔵ヲ始メ其外所々少シツゝの損しハ至て多シ
一御厩之馬一疋落命之由
一人死は存不申候、東辺ニ翌六日倒レ家壁の下ゟ老婆ヲ一
人掘リ出シ候と申説有之
一同夜五時頃一度大分強シ、又四ツ時過一度同頃其外暁天
迄ニ八・九度ユル
一同六日曇天、昼後時々微雨、昼夜ニ而廿度余ユル、尤格
別強分ハ無之
一七日晴天、朝四時頃大ユリ一度、五日夕の分ゟ少々軽ク
且短シ、八秒時位、昼夜十五度位
一右二度の分ハ器ニ七・八分目位有之水ハ悉クユリコボレ
ル
一八日昼夜七・八度位、皆軽シ
今日は火事を恐れ家毎ニ門前へ用水ヲ出ス
右ニ付五日之夜は何れも裏之空地へ畳など敷候而、夫へ
逃出て夜ヲ明ス、裏ニ空地無キ家ハ、途中へ莚等を敷、
屛風ニ而四方を囲ひ夜を明ス
一六日は雨天ニ付何も小屋掛ヲシテ夫ニ而夜ヲ明ス
一七日八日両夜共右同断
一小子宅門前ゟ西ニ神保弥太郎宅迄ニ途中之小屋掛八ケ所
有之
一今九日は暮頃迄ニ四五度、尤至て軽シ、先ツ居合候様子
ニ付相考、諸人少々安心スル
一若殿様ニは御庭へ御陣小屋建テ、強キ節は御立退之由、
御側を相勤候人は夜昼詰切ニ御座候
今晩は何方ニも小屋へ出不申、銘々家の内ニ而寝候様子
ニ御座候以上
十一月九日夜五ツ時認 市川文昌
（中略）
十二月廿八日
御城御沙汰書之内
（中略）
十二月廿六日
松平丹後守
名代 本多 大膳
領分地震ニ而陣屋向幷家中・町・郷共破損ニ付、拝借之
儀被相願可為難儀と被思召候、当時御事多ニハ候得共出
格之訳ヲ以金千両拝借被 仰付之
右於芙蓉之間、老中列座、和泉守申渡之
十二月廿七日
水野出羽守
領分地震ニ而二之丸住居向ヲ始城内外幷家中・町郷共悉
破損、其外領内損所等も不少候ニ付、拝借之儀被相願可
為難儀と被思召、当時御事多ニは候得共出格之訳を以
金三千両拝借被 仰付之
稲垣摂津守
同文言、居城破損其外領内損所も不少候ニ付、金弐千両
拝借被仰付之
亀井隠岐守
先達而居城住居向其外焼失ニ付、拝借之儀相願可為難儀
と被 思召、当時御事多ニて候得共、出格之訳ヲ以金弐
千両拝借被 仰付之
右於波之間、老中列座、和泉守申渡之
（中略）
十二月十六日
一水野出羽守殿ゟ為御知
兼而為御知被申述候通、出羽守在所沼津去月四日地震幷
豆州・三州も同様之内、津浪ニ而流失破損等左之通
一大手舛形内幷同所左右共土塀合八拾九間潰
一同所渡櫓石垣孕出大破
一同所橋台破損
一同所門際石垣拾四間半程崩
一同所土塀二ケ所合四十間余潰
一本丸門潰
一同所二重櫓台石孕出大破
一同所同断左右土塀長延七拾四間
一同所多門三ケ所潰
但土塀共
一同所石垣三間程崩
一同所外通土居三間程欠崩
一同所三重櫓台石孕出
一二之丸門潰
一同所石垣拾八間余崩
一同所番所潰
一同所桝形柵大破
一同所透御門破損
一同所土塀長延八拾四間潰
一同所外堀石垣五間崩
一同所北之方土居欠崩長延弐十間程
水際石垣三間程余
一同所玄関前門潰
一同所番所潰
一太皷櫓同
一東門大破
一同所番所同
一同所左右石垣合七間半崩
一同所南之方土塀三間潰
一同所橋台崩
一住居向不残諸役所共潰
一三ノ丸喰違門潰
一同所番所（ママ）
一同所外橋台左右石垣崩
一搦手門潰
一同所左右塀幷石垣共崩
一同所土居幷外通堀岸共所々崩
一外堰三ケ所崩
一角二重櫓石垣共大破
一同所南之方柵破損三拾二間
一丸馬出門
一土蔵
五ケ所潰三ケ所大破
一稲荷社壱ケ所潰
一大手外駒寄壱ケ所潰
一二之丸玄関前馬連大破
一同所腰掛潰
一勘定所幷表門客屋共潰
一同所裏門大破
一同所土蔵同
一同所物置潰
一地方役所潰
一作事方役所幷役割場共潰
一小人部屋二ケ所潰
一辻番所三ケ所同
一夜番所二ケ所
一厩二棟半潰
一武芸稽古場四ケ所潰
一学門所壱ケ所潰
一砲台置場壱ケ所潰
一焰焇蔵弐ケ所潰
一合薬製作所弐ケ所大破
一東西番所二ケ所潰
一伊豆嶋田役所壱ケ所潰
一水窪村役所壱ケ所大破
一侍屋敷六拾弐軒潰
一同七軒半潰
外不残大破
一長屋九棟潰
内五軒焼失
一同弐拾三棟半潰
此外不残大破
駿河国領分之内
一居宅
千四百十七軒潰
三軒流失
拾軒埋家
六百三十七軒半潰
三百九十軒大破
一土蔵
三百九十五ケ所潰
拾壱ケ所流失
五十四ケ所半潰
一物置
千三拾三ケ所潰
拾六ケ所流失
百八十八ケ所半潰
一寺院
六拾四ケ所潰
七ケ所半潰
一諸堂門鐘楼共
百五十八ケ所潰
弐拾ケ所半潰
一神社
四拾八ケ所潰
五ケ所半潰
一高札
弐ケ所潰
三ケ所半潰
一雑小屋
二百拾ケ所潰
三ケ所半潰
一漁船流失二十四艘
一網同断 四十三艘
伊豆国領分之内
一居宅
百四拾四軒潰
拾壱ケ所流失
四拾四ケ所半潰
五十六軒大破
一土蔵
弐拾ケ所潰
拾三ケ所半潰
一物置
七拾五ケ所潰
七ケ所半潰
一寺院
三ケ所潰
六ケ所半潰
一雑小屋
拾壱ケ所潰
弐ケ所半潰
家中領内共
怪我人弐百八拾七人
内男百三十二人
女百五十五人
一即死五拾壱人
内
男弐拾四人
女弐拾七人
一斃馬六疋
三河国大浜陣屋
一外構土塀之分長延五拾間余潰
一同囲所々大破
一玄関座敷向其外諸役所共大破
一表裏門二ケ所
一土蔵二ケ所
一同壱ケ所
一物置壱ケ所
一家中屋敷幷長屋向共大破
同国領分之内
一居宅
八十七軒潰
百四十二軒半潰
二百六軒大破
一土蔵
壱ケ所潰
五ケ所半潰
四十ケ所大破
一雑小屋
百壱ケ所潰
拾三ケ所半潰
二十八ケ所大破
一物置
三十二ケ所潰
二十六ケ所半潰
七十七ケ所大破
一高札壱ケ所潰
一神社 拾七ケ所破損
一寺院
拾四ケ所大破
壱ケ所半潰
八ケ所破損
一諸堂門鐘楼共
拾壱ケ所大破
四ケ所破損
壱ケ所半潰
一人馬怪我等無御座候
右之通御座候、尤崩地裂ニ而泥水或は土砂吹出、亡所・
荒所も不少候得共、未タ取調行届兼候付、追而可申上、
先御用番様江御届書被差出候、右為御知
十二月廿六日
一細川越中守様ゟ為御知
当十一月五日・同七日両度之大地震ニ而破損所等左之通
一御高札被建置候所五箇所
内弐箇所倒
三箇所破損
一御用屋敷三拾軒
内八軒潰
五軒倒
拾七軒破損
一社拾五箇所
内五箇（ママ）倒
拾箇所破損
一寺五拾壱箇所
内拾箇所倒
四拾壱箇所破損
一辻堂三拾壱箇所倒
一鳥居九箇所倒
一家弐千六百九拾五軒
八百九十九軒潰
内九百三拾六軒倒
八百六拾軒破損
一土蔵六百七拾壱軒
弐百五拾四軒潰
内五拾八軒倒
三百五拾九軒破損
一井戸壱箇所埋
一橋弐拾壱箇所崩
一船三拾艘破損
一岩崩弐百箇所余
一地引割弐百五拾箇所余
一倒木九拾本
一圧死六人
内男三人
女三人
一怪我人五人
内男四人
女壱人
一死牛馬三疋
内牛弐疋
馬壱疋
一怪我牛馬拾九疋
内牛七疋
馬拾弐疋
右之通御座候段、昨朝御用番様江御届書被成御差出候、
右為御知
（中略）
十二月廿三日
一松平越後守様ゟ為御知
越後守様御領分讃岐国小豆嶋之内、当十一月四日辰刻ゟ
地震、同五日申刻同夜亥刻両度ニ而別而強、十日迄之内
度々相震、其後引続少々ツゝ震動、今以相止不申趣、人
家其外破損所等左之通ニ御座候旨、今日御用番江御届被
仰達候、右為御知
一民家潰百四拾七軒
一同半潰七百七拾四軒
一土蔵潰弐拾四ケ所
一納屋潰九拾三ケ所
一同半潰四拾三ケ所
一塩釜屋潰拾六ケ所
一波戸石垣崩壱ケ所
一鹿垣破損弐千四百拾四間
一人牛馬怪我無之
十二月廿六日
一藤堂和泉守殿ゟ為御知
先達而為御知被申述候和泉守領分、去月四日五日大地震
高汐ニ而
伊勢之分
一城内外住居向幷櫓・多門・塀所々大破ニ相成申候
一本丸廻り石垣所々孕崩、南之方堀端道八間四方摺下
り、泥水吹出し申候
一往還道欠田畑山闕、池堤・井手・溝手切震割・摺下り
共、長二万三百三十五間
一汐入田畑百七拾九町三反
一塩浜沙入畝数七町余
一潰家七百七拾壱軒
一半潰千百六拾三軒
一傾家破損土蔵共合七百四拾五ケ所
一汐入家五十六軒
一井堰落・橋落・汐溜破損共、五百四十九ケ所
一破船流失船三艘
一流失割木壱万四百九十五把
一怪我人五人内
男四人
女壱人
一流死人四人女
伊賀之分
一城内外侍屋敷共当六月大地震ニ而崩損し処、追々修復
出来之場所破損申候
一堤切欠田畑井手溝手切、合長三万千百九拾七間
一潰家百五拾壱軒
一半潰弐千八十軒
一破損家千六百八十七軒
一山落・橋落四十四ケ所
大和山城之分
一潰家三十壱軒
一半潰三百五拾軒
一池堤損シ 三ケ所
一倒木十五本
内分佐渡守領分
一住居向・武具蔵・高塀・門・侍屋敷悉大破ニ相成申候
一潰家九十軒
一半潰弐百九十七軒
右之通破損所等有之、牛馬怪我無御座候、尤損亡高之儀
ハ追而御届可申上旨昨日御用番様江御届被致候旨
十二月廿七日
一諏訪因幡守殿ゟ為御知
先達而為御知被申上候因幡守領分信州諏訪郡地震ニ付破
損所左之通
一城内外侍屋敷破損家都合四拾五軒
内震潰九軒
半潰七軒
一民家潰家 五拾六軒
一同半潰家 百拾三軒
一薬師堂潰 壱ケ所
一川大土手震込 百二十間余
一作場道震込 拾五間余
一田畑幷村家居深壱尺程震割・震込、長百二十間余
一湖水畔田地長四丁余、横弐丁余震割幷地形不陸（ママ）相成申
候
右之通御座候、人馬怪我無御座候、城内破損之儀ハ先達
而申上候通御座候旨今朝御用番様江御届被差出候由
十二月廿九日
一藤堂和泉守殿ゟ為御知
和泉守領分当六月地震ニ付損亡為御知被申述候処、此節
収納ニ至リ高拾九万四千弐百六拾九石三斗四升四合壱夕
三才損毛、右之内九千八百拾五石八斗九升五才内分佐渡
守損毛高ニ御座候、尤去月再度之地震高汐ニ而損毛之儀
は来卯年収納之上御届被致候、御用番様御届被致候旨
正月十一日
一去ル四日晩立通飛脚道中常振今十一日申ノ上刻到着
十二月
一松平土佐守殿ゟ為御知
（注、〔地震海溢記〕にくわしい記事があるため省略）
二月三日
一去月廿四日晩立通飛脚、道中常振之処、起川ニ而一日逗留
有之、今三日到着
正月廿一日
一阿部伊勢守殿御渡候御書付写壱通、大目付柳生播磨守殿
ゟ来ル左之通
（袖うら）
「大目付江」
此度勢州海岸幷大坂近海為見分御勘定奉行石河土佐守始
役々被差遣候ニ付而ハ、国々地震津波ニ而人民窮苦致し
居候折柄ニ付、仕来不泥万端格別手軽ニ致し、村々ニお
ゐても無益之失費不相掛様道橋修復、休泊旅館取繕一切
無之、有来之通いたし、置附使者道固、音物等決而致間
敷候
但道橋休泊旅宿如何躰不行届之儀有之候而も不苦候
間、取繕間敷儀ハ勿論、農業之障ニ不相成様触外之人
馬等差出候儀堅く致間敷候
右之通向々江早々可被達候
正月
（中略）
正月廿一日
一出羽守様ゟ為御知
御領分去十一月四日辰下刻・同五日申下刻同夜戌刻地震
強、尤五日申下刻ハ地震別而強相震在々損所左之通
一往還道千百七拾弐間
但地割或震沈等
一土手幷土手台千弐百弐拾間
但右同断
一用水井手五拾五間
但地割
一橋三ケ所
但震落或損
一百姓家八百四拾弐軒
潰家九拾九軒
内半潰弐百百九拾軒
損家四百五拾三軒
一土蔵五拾九ケ所
潰三ケ所
内半潰拾四ケ所
損四拾弐ケ所
一納屋弐拾六軒
潰五軒
内半潰四軒
損拾七軒
一厩三拾壱軒
潰七軒
内半潰拾軒
損十四軒
一門九ケ所
潰三ケ所
内半潰三ケ所
損三ケ所
一小屋弐拾四軒
内潰九軒
半潰拾五軒
一塀覆六ケ所
内潰四ケ所
損弐ケ所
一社潰壱ケ所
一寺拾壱ケ所
内半潰三ケ所
損九ケ所
一庵潰壱ケ所
一堂潰壱ケ所
一籾蔵収納蔵拾七ケ所
内半潰壱ケ所
損拾六ケ所
一田畑三拾五町四反七畝歩
但震沈或割砂吹出貫所共
一死失女壱人
右之外御城内外無別条、死牛馬等無御座候段、今朝御用
番内藤紀伊守殿江御届書被指出之候、右為御知
正月
一松平備後守殿ゟ之為御知
先達而為御知被申述候備後守在所、去十一月四日地震
強、居所向初破損所左之通
一居所向破損 四拾六ケ所
一潰家 七拾六軒
一破損家 弐百弐拾七軒
一潰土蔵 拾三
一破損土蔵 九拾六
一潰雑小屋 弐拾六
一破損小屋 拾三
一寺院破損 拾五ケ所
一家中塀倒 四ケ所
一地割 弐ケ所
但壱ケ所八拾間壱ケ所六拾間
一畠沈 壱ケ所
但弐拾五歩
一人馬怪我無之
右之通御座候段御用番様江御届書被指出候、右為御知