地震史料集テキストデータベース
[未校訂]今度、常願寺川筋、地震ニ而出水後、又々出水仕との風聞御
座候ニ付、芦峅寺杣仁右衛門等八人、奥山之様子為見届方、
当十四日為指登、十七日未明罷帰り、見届方之趣、左ニ申上
候
一芦峅寺山コウ岳続ゟ（別本、高ケ岳）登山仕、大日ケ岳麓通り、称名瀧上ミ
越尾（別本越尻）と申所をこし、弥陀原野ゟ松尾辺ニ至り、見渡候処、
湯川筋之義ハ南縁小池山・熊倒レ余程下ゟ崩落チ、大鳶山
頭ゟ弐、三歩通崩落、小鳶山ハ過半余も崩レ、温泉場押
潰、其外刈込池下モ迄も多分山崩レいたし居、北縁之義、
古刈込辺ゟ松尾水谷下等モ所々崩落、弐里斗り之間、川埋
り居候得共、水は落石之下タを潜り、無滞相流レ、溜水無
之、此後も切出ル気遣更ニ無御座と奉存候、温泉高之湯小
屋と覚敷当りニ百間四方位之少き泥水溜りニ而、水出入不
仕分壱つ相見得申候、下タ之湯小屋当り之所等、所々ニ五
・六ケ所も煙り立上り申候、[都而|すべて]湯之辺高之だいらゟ広々
タル平地之様ニ相成居申候
一真川之義、奥妙神・中妙神等ゟ見込候処、大橋下も躰（ママ）ゟ半
道斗も奥山迄、両山崩レ落チ、川せき留り居候分、今度抜
出申候、夫ゟ下モ大川筋両縁共少々宛一躰ニ落チ崩レ、湯
道抔ハ少モ全キ所無之、其内ニモ鬼ケ丈（城）等五、六ケ所に水
少宛せき溜り居候分、今度右大抜ニ而不残切レ出、真川ゟ
下モ川筋真白ニ相成、川底さらへて流出申候、左候得は、
此末再ビ泥抜之気遣無之義と奉存候、真川大抜之ケ所ゟ谷
奥之義も、余程□見込十分ニハ難見得候得共、是ゟ奥ニ留
り居候ケ所ハ慥に無御座と奉存候
一称名川之義、少シ宛崩レ居ケ所ハ御座候得共、水留り程之
義無御座、称名滝壺等、落石大分有之候
一材木坂辺ゟ熊野権現・[餓鬼咽|がぎがのど]辺、不残崩レ、道無（別本道形）御座候、
小見村宗三郎稼場、近年被植置候杉抔も押埋り、上之躰（別本上手）ニ
少シ斗も残居候様ニ相見江申候、千手ケ原辺、藤橋ゟ百間
余も上江泥押上ゲ（別本乗上）有之候、孰ニも重而泥抜等之気遣は無之
義と奉存候
右仁右衛門等申聞候趣、聞取之儘御達申上候 以上
午三月
兵三郎
御郡所