地震史料集テキストデータベース
[未校訂]以寸楮申上候、寒気之節弥無御別条御入之由珍重不少候、先
頃は無御余義御上京之趣内々承候処、其跡にて江戸之大災追
々御聞及之通之次第驚入申候也、小川町焼失、四ツ谷下屋敷
ニ幽成仮小屋出来、旦那始御子方も御住居之由、余りニ被案
見候間、是又御承知之通急ニ去月十四日出立罷越申候処、旦
那ニも存掛（カ）無之処へ拙者之出府殊之外之説にて、誠ニ昼夜膝
下ニ被差置用弁致候得共、又爰元之義も彼是心配有之長逗留
ニも不相成、去月廿八日出立、当月四日無滞罷帰申候、江戸
表上下とも当時御下屋敷ニ誠ニごた〳〵致罷在候、御隠居之
御殿ハ御別条無之候間、夫江若殿并御方々御借用にて御住
居、駿河様ハ三間四間ニ竹柱萱葺之猪追小屋之様成小屋ヲ御
営、夫ニ御住居、余ハ此上之地震之御用心ニ而其外仮小屋取
立誠ニ前代未聞成事ニ御座候、拙者出立前之了簡にてハ直ニ
も江州へ御越申候筈心ニ而御座候処、出□後江戸之様子見得
候処にてハ何万之金ヲ積居候とも直ニ普請取（カ）掛之訳ニも不参
候間、其様ニ大金を直様集候ニも及不申候間、江州一条は何
れ来年程合を計候上之事ニ可相成、何分被差含被置候様可願
候、当年も五百金之御仂御願申候て追々延金ニ可相成段も委
細御承被申候物語申、不相替御厚志大悦被致候事ニ御座候、折
能右之為替竹川より逗留中相納、此節臨時入用多之時節、別
而御都合宜敷江戸役人共も殊之外之悦ニ御座候、来年之御上
京ハ何分頼入申候、且又京都より御帰時御立寄之此度類焼ニ
付ても御見舞被為進、拙者共へも何分之品被下置忝存申候、
且又同所より御持参之趣ニ而拙者生涯第一之楽シみ茶御恵投
被□、京都下々茶ハ当年は手ニ入不申候処、以御蔭帰宅後日日
致大楽申候、何れ春中ハ又々御越も可有之時は其内巨細話も
申留候、帰後も日々出入多にて今日迄も寸暇無之罷有申候、
御察可被下候、先々は無難ニ帰郷、此上之大慶ニ御座候 早々
頓首
十一月十一日 岡村十郎兵衛
武居□次郎様
まいる
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