地震史料集テキストデータベース

[未校訂]去ル二日夜地震并出火ニ付御府内在方とも破損潰家焼失家夥
敷有之、就而は材木諸色直段大工左官人足共其外諸職人手間
賃等猥ニ引上ケ、又は増手間酒代等ねたり、或は平常普請之
節被請候もの共出入場と唱、普請受負直段之高下材木諸色運
送之弁利ニ任セ、他ノ職人相雇候得は彼是差障り為及難儀候
族有之候趣以之外不埓之至ニ候、天変とは乍申災害ニ逢ひ候
もの共悉く難渋いたし候は申迄ニも無之、其厚薄ニ寄互ニ危
急を可助合筋ニ付、前書職業之もの共一時之利徳ニ拘り不申
正路ニ取計候様、其所之役人共ゟ厳重可申付候、若相触候趣
不取用もの有之候ハゝ早々訴出へく候、速ニ召捕可及吟味条
無用捨可申立候、此触書刻付を以順達留村ゟ可相返もの也
斎藤嘉兵衛
十月五日　役所　東海道
早川宿ゟ
三保宿迄
役人
十月六日問屋ゟ口書を以相達し候即刻鈴木方へ差遣し候事
追而書出相済候村々は別段差出ニ不及候、且当節柄之儀
ニ付村々申合惣代を以可申出候
其村々之内大工左官職之もの有之候ハゝ、大工何人・左官何
人と申儀書付ニいたし、来ル九日迄ニ無相違可差出候、右職
之もの無之候ハゝ其段も可申立候、尤右職之もの差出候分は
追而及沙汰候ハゝ他出等為致間敷候、此廻状刻付ヲ以早々順
達留村より可相返もの也
斎藤嘉兵衛
卯十月六日　役所　神奈川宿ゟ
小山村迄
廿一ケ村
右村々役人
地震火災等ニ付悪徒共党を結ひ人家等江押込不届之所行およ
ひ候ものも有之趣相聞候間、若右様之ものも有之候ハゝ差押
可訴出候此廻状早々順達、留り村ゟ可相返もの也
斎藤嘉兵衛
卯十月八日　役所　神奈川領
支配所
村々役人
今般地震災ニて御府内始近在所々潰家焼失等之混雑ニ乗し悪
もの共可立廻も難計、一同申合昼夜見廻り心附、若怪敷者見
懸候ハゝ捕押最寄廻先江可訴出事
一諸色直段引上ケ候もの有之候ハゝ其旨可申聞候事
一諸職人作料引上申間敷事
右之趣相心得最寄江可及通達、廻状順達留ゟ渡辺園十郎方へ
可相返候　以上
十月十二日　関東御取締役
此度地震ニ付
御城内破損所も数ケ所有之候処、世上一般材木其外差支も可
有之旨被　思召候ニ付、御締場所之外其儘被差置候旨被仰出
候間、銘々屋敷も其心得を以全く入用之ケ所而已格別手軽ニ
普請いたし候様可被得貴意候
十月
此度江戸表地震出火ニ付材木其外之諸色商人共ゟ在方へ注文
申遣候ハゝ、元直段成丈ケ下直ニ売出、運賃等決而引上ケ申
間敷候、若無謂高直ニ致し候もの於有之は可為曲事もの也
十月
（注、〔撰要永久録〕［35］の本文のあとに次の文あり）
右之通御書付出候間難有相心得廻状村名下令請印早々順達留
村ゟ可相返もの也
斎藤嘉兵衛
卯十月廿八日　役所
神奈川宿新猟師町
青木町　芝生村
下星川町　仏向村
和田村　坂本村
外十三ケ村
右村々役人
右廻状賃銭壱貫五百
十六文呉候様申聞候
得共上平間村共二本
持参之由ニ付達而相
談事金弐朱遣候、尤
不参ニ候ハゝ江戸宿
へ申談事可申越様申
遣候
（注、〔撰要永久録〕［41］、〔地震一件〕［39］と同文書、省略）
其村々地震ニ付潰れ家半潰家相成候困窮之もの共江申渡義有
之来ル十二日暁出立出役両人罷越候間刻限不遅様小前惣代之
もの壱人ツゝ召連夫々相揃罷在名前書認置右出役着之節差出
候様可致候廻状早々順達追而可相返者也
斎藤嘉兵衛
卯十二月九日　役所
鶴見村　神奈川町
生麦村　新猟師町共
西寺尾村　青木町
東寺尾村　小机村
鶴見（頭書）村へ来ル　川田村
十三日昼四時揃
神奈（頭書）川宿□（へ）
右同日昼九ツ時揃
下菅田村
右村々役人
十二月十日夜西寺尾村ゟ到来即刻青木町順廻致候